王道くんと、俺。

葉津緒

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第二章

12

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「そんな奴は……こうしてくれる!」

「いいい痛っ!? いたひッほめんなはい、や、あっ、トラひゃんっ」


ムニッと、柔らかな頬っぺたを掴んで左右に引っ張ってやる。
本気で痛がる郁人が目に涙を浮かべ、必死に俺の手を掴み離そうとする。
しかも、きちんと話すことが出来なくて舌足らずな感じがまた……。

あ、ヤバイ。何かこれ凄く楽しいわ。


『って、はっ!? きゃああー、郁人様に何てことしてるの富丘。離しなさいよ!』

『あ! ふ、郁人様の美しいお顔に触れるなんて羨まし、じゃなかった。富丘許さん!』

『大丈夫ですか郁人様!? 今すぐ富丘を殺してやりますからっ』


一気に教室が騒がしくなったが、俺は妙な興奮を覚えてしまい食い入るように郁人を見つめていた。
あー……でも本気でこれヤバイかも。
チンコ勃ってきちった。
(※最低)

あっれ、おかしいな。
確か俺ノーマルだった筈なんだけどなぁ。



「お、おい! 郁人スゲー痛がってるだろ、手を離せよお前!」


せっかくイイところだったのに、真っ赤な顔をした転入生が止めに入る。
チッ、邪魔すんなよ。つか氷川の奴しっかり押さえとけよ――って、何お前まで顔赤らめながら郁人を見てんだよ!?
嘘の噂なんか信じて軽蔑してるくせに、耳まで真っ赤ッかじゃねーか。

ああ?
よく見ればクラスの奴らほぼ全員、顔真っ赤だわ。鼻血出してるのや前屈みで股間押さえてる奴とか。
え……マジか。
俺を殺すとか言う声にまじって

「頼む、俺達の為にもっとやってくれ」

的な目で訴えてくる奴らもかなりいるし。
それはそれで少しムカつくぞ。

(俺が今、郁人にエロい顔させてんのはお前らに見せる為じゃねーよ!)


「あ? 関係無いだろ転入生には」

「も、痛ひっ……やらぁ、らめてトラひゃ」


ぐふぉッ!?
ちょっ、待った。今のは何か色々と本気で無理。うるうるの涙目で眉間にしわ寄せて、喘ぐように名前を呼ばれたりなんかしたら。
くそっダメだ、俺もう限界――。



「うるっせーぞお前ら。いい加減、黙って静かに席に着きやがれ。富丘! 今すぐその手を離さねーとこの世からテメエを抹殺すんぞ!?」



 ピタッ シーーーーン



いきなりドスのきいた千葉ちゃんの一声で吹っ飛びかけた理性が瞬時に戻り、サッと手を離す。

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