王道くんと、俺。

葉津緒

文字の大きさ
上 下
17 / 89
第二章

しおりを挟む
突然、掴まれた腕を引っ張られて瑞穂にぃの背後へ――。もしかして庇ってくれたのかな。
というか怒ってる?
うわ俺、瑞穂にぃが怒るとこなんて初めて見た!
昔から頭が良くて何でも出来て、背は高いし顔も良いし。その上もの凄く優しくて。
だから同い年なのに本当のお兄ちゃんみたいに思うくらい尊敬してんだけど。

な、何か違う人みたいでちょっと怖い。


「チッ」


でも、おかげであの偉そうで失礼な奴は去って行った。
やっぱ怖かったんだろうな、舌打ちしてたわりに顔青ざめてたから。へへん、ざまーみろ。

よっしゃー、これで職員室へ行けるぞ。
そう思って周りを見れば……何だ?
皆、真っ赤な顔で何かを見てる。
視線を辿るとそこには


(なな、何だこの人!? すっげー綺麗だし格好イイし、あの笑顔……っ)


言葉に出来ないほどの微笑みを浮かべた茶髪の(超美形な)人が、可愛い子達に囲まれて立っていた。
その笑顔は今まで見た誰よりも何よりも綺麗で可憐で妖艶で、格好良くて可愛くて。
……ダメだ、やっぱ上手く説明出来ない。
とにかく一目見ただけで心臓バクバク、体温上昇、全身真っ赤。な、何だこれ。
何で俺こんなドキドキしてんの。
か、顔が火照るっ。
うわ、うわーっ何これ何これえっ。


「うん?」


やがて周囲の異変に気が付いたらしく、目の前の笑顔が少し困ったような表情になり――。



「では、私達も行きましょうか」

「え? あっ……う、うん」


瑞穂にぃに促され、その人に背を向けて歩き出す。だけど、頭も身体もふわふわしてちゃんと物事を考えられない。
周囲が騒ぎ始めたことにも気付かない程、俺はまださっきの笑顔が気になってて。

(……っ!)

無意識に振り返ると、多分偶然なんだろうけど目が合った。
その上、笑顔で手を振ってくれ――


「あいつに近付いては駄目ですよ、歩」

「うえっ!?」


再び腕を掴まれ、強制的に前を向かされる。同時に冷たい瑞穂にぃの声が釘を刺す。


「な、何で?」

「あの男は外見と違って中身は本っ当に最低最悪なんですよ。とにかく、絶対に近付かないと約束して下さい。ああ、それとさっき名前を聞いてきた人のことも無視して構いませんから」


ニッコリ微笑みながら話し掛けられている筈なのに。どうして、凍りつきそうな程背筋が寒いのか。
ここで拒否したら絶対にダメな気がして、蒼白になった俺は何度も首を縦に振るのだった。



その後。
瑞穂にぃとは職員室前で別れ、まるでホストのような担任に教室へと案内された。
呼ばれて中に入ると、クラスメートからは酷いヤジばかり。
だから俺、根暗じゃねえっつーの。くそっ!


「じゃあ、瀬戸の席は最後列の窓から三番目な。あの空いてるトコだから」


ホストな千葉先生が言った最後列を目指して歩き出す。
えーと窓から三番目の……窓……え、うええぇえっ!


「あ……嘘。さ、さっきの人!?」



最後列の一番窓側には、あの笑顔の人が座っていたのだった。



<歩視点・終わり>

.
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

俺の愉しい学園生活

yumemidori
BL
ある学園の出来事を腐男子くん目線で覗いてみませんか?? #人間メーカー仮 使用しています

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

バッドエンドの異世界に悪役転生した僕は、全力でハッピーエンドを目指します!

BL
 16才の初川終(はつかわ しゅう)は先天性の心臓の病気だった。一縷の望みで、成功率が低い手術に挑む終だったが……。    僕は気付くと両親の泣いている風景を空から眺めていた。それから、遠くで光り輝くなにかにすごい力で引き寄せられて。    目覚めれば、そこは子どもの頃に毎日読んでいた大好きなファンタジー小説の世界だったんだ。でも、僕は呪いの悪役の10才の公爵三男エディに転生しちゃったみたい!  しかも、この世界ってバッドエンドじゃなかったっけ?  バッドエンドをハッピーエンドにする為に、僕は頑張る!  でも、本の世界と少しずつ変わってきた異世界は……ひみつが多くて?  嫌われ悪役の子どもが、愛されに変わる物語。ほのぼの日常が多いです。 ◎体格差、年の差カップル ※てんぱる様の表紙をお借りしました。

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

ザ・兄貴っ!

BL
俺の兄貴は自分のことを平凡だと思ってやがる。…が、俺は言い切れる!兄貴は… 平凡という皮を被った非凡であることを!! 実際、ぎゃぎゃあ五月蝿く喚く転校生に付き纏われてる兄貴は端から見れば、脇役になるのだろう…… が、実は違う。 顔も性格も容姿も運動能力も平凡並だと思い込んでいる兄貴… けど、その正体は――‥。

平凡な365日

葉津緒
BL
平凡脇役(中身非凡)の王道回顧録 1年間、王道連中を遠くから眺め続けた脇役(通行人A)の回想。 全寮制学園/脇役/平凡/中身非凡・毒舌 start→2010

王様のナミダ

白雨あめ
BL
全寮制男子高校、箱夢学園。 そこで風紀副委員長を努める桜庭篠は、ある夜久しぶりの夢をみた。 端正に整った顔を歪め、大粒の涙を流す綺麗な男。俺様生徒会長が泣いていたのだ。 驚くまもなく、学園に転入してくる王道転校生。彼のはた迷惑な行動から、俺様会長と風紀副委員長の距離は近づいていく。 ※会長受けです。 駄文でも大丈夫と言ってくれる方、楽しんでいただけたら嬉しいです。

この僕が、いろんな人に詰め寄られまくって困ってます!〜まだ無自覚編〜

小屋瀬 千風
BL
〜まだ無自覚編〜のあらすじ アニメ・漫画ヲタクの主人公、薄井 凌(うすい りょう)と、幼なじみの金持ち息子の悠斗(ゆうと)、ストーカー気質の天才少年の遊佐(ゆさ)。そしていつもだるーんとしてる担任の幸崎(さいざき)teacher。 主にこれらのメンバーで構成される相関図激ヤバ案件のBL物語。 他にも天才遊佐の事が好きな科学者だったり、悠斗Loveの悠斗の実の兄だったりと個性豊かな人達が出てくるよ☆ 〜自覚編〜 のあらすじ(書く予定) アニメ・漫画をこよなく愛し、スポーツ万能、頭も良い、ヲタク男子&陽キャな主人公、薄井 凌(うすい りょう)には、とある悩みがある。 それは、何人かの同性の人たちに好意を寄せられていることに気づいてしまったからである。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 【超重要】 ☆まず、主人公が各キャラからの好意を自覚するまでの間、結構な文字数がかかると思います。(まぁ、「自覚する前」ということを踏まえて呼んでくだせぇ) また、自覚した後、今まで通りの頻度で物語を書くかどうかは気分次第です。(だって書くの疲れるんだもん) ですので、それでもいいよって方や、気長に待つよって方、どうぞどうぞ、読んでってくだせぇな! (まぁ「長編」設定してますもん。) ・女性キャラが出てくることがありますが、主人公との恋愛には発展しません。 ・突然そういうシーンが出てくることがあります。ご了承ください。 ・気分にもよりますが、3日に1回は新しい話を更新します(3日以内に投稿されない場合もあります。まぁ、そこは善処します。(その時はまた近況ボード等でお知らせすると思います。))。

処理中です...