王道くんと、俺。

葉津緒

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第二章

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突然、掴まれた腕を引っ張られて瑞穂にぃの背後へ――。もしかして庇ってくれたのかな。
というか怒ってる?
うわ俺、瑞穂にぃが怒るとこなんて初めて見た!
昔から頭が良くて何でも出来て、背は高いし顔も良いし。その上もの凄く優しくて。
だから同い年なのに本当のお兄ちゃんみたいに思うくらい尊敬してんだけど。

な、何か違う人みたいでちょっと怖い。


「チッ」


でも、おかげであの偉そうで失礼な奴は去って行った。
やっぱ怖かったんだろうな、舌打ちしてたわりに顔青ざめてたから。へへん、ざまーみろ。

よっしゃー、これで職員室へ行けるぞ。
そう思って周りを見れば……何だ?
皆、真っ赤な顔で何かを見てる。
視線を辿るとそこには


(なな、何だこの人!? すっげー綺麗だし格好イイし、あの笑顔……っ)


言葉に出来ないほどの微笑みを浮かべた茶髪の(超美形な)人が、可愛い子達に囲まれて立っていた。
その笑顔は今まで見た誰よりも何よりも綺麗で可憐で妖艶で、格好良くて可愛くて。
……ダメだ、やっぱ上手く説明出来ない。
とにかく一目見ただけで心臓バクバク、体温上昇、全身真っ赤。な、何だこれ。
何で俺こんなドキドキしてんの。
か、顔が火照るっ。
うわ、うわーっ何これ何これえっ。


「うん?」


やがて周囲の異変に気が付いたらしく、目の前の笑顔が少し困ったような表情になり――。



「では、私達も行きましょうか」

「え? あっ……う、うん」


瑞穂にぃに促され、その人に背を向けて歩き出す。だけど、頭も身体もふわふわしてちゃんと物事を考えられない。
周囲が騒ぎ始めたことにも気付かない程、俺はまださっきの笑顔が気になってて。

(……っ!)

無意識に振り返ると、多分偶然なんだろうけど目が合った。
その上、笑顔で手を振ってくれ――


「あいつに近付いては駄目ですよ、歩」

「うえっ!?」


再び腕を掴まれ、強制的に前を向かされる。同時に冷たい瑞穂にぃの声が釘を刺す。


「な、何で?」

「あの男は外見と違って中身は本っ当に最低最悪なんですよ。とにかく、絶対に近付かないと約束して下さい。ああ、それとさっき名前を聞いてきた人のことも無視して構いませんから」


ニッコリ微笑みながら話し掛けられている筈なのに。どうして、凍りつきそうな程背筋が寒いのか。
ここで拒否したら絶対にダメな気がして、蒼白になった俺は何度も首を縦に振るのだった。



その後。
瑞穂にぃとは職員室前で別れ、まるでホストのような担任に教室へと案内された。
呼ばれて中に入ると、クラスメートからは酷いヤジばかり。
だから俺、根暗じゃねえっつーの。くそっ!


「じゃあ、瀬戸の席は最後列の窓から三番目な。あの空いてるトコだから」


ホストな千葉先生が言った最後列を目指して歩き出す。
えーと窓から三番目の……窓……え、うええぇえっ!


「あ……嘘。さ、さっきの人!?」



最後列の一番窓側には、あの笑顔の人が座っていたのだった。



<歩視点・終わり>

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