王道くんと、俺。

葉津緒

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第二章

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 ***



「一緒に行けなくてホントごめん、歩!」

「別にいーよ。紀幸、朝練なんだろ? 大丈夫、俺のことは気にするなって」


登校初日の今朝。
紀幸は部活の朝練で早めに登校しなくてはならず、しきりに謝ってきた。
俺よりでかいくせになんか犬みたいな奴だなー、と思いつつ玄関でお見送り。

実は俺、職員室に行かなきゃならないんだけど。場所は……まぁ誰かに聞けばいいか。
そう考えた直後にスマホが鳴る。


『おはよう歩、もう起きてましたか?』

「うん、おはよう瑞穂にぃ!」


目覚ましコールをくれた瑞穂にぃ。
職員室の場所を聞こうとしたら、電話じゃなんだし、案内してくれるって。
まずは寮の前で待ち合わせ。
でも「親衛隊」とかいうのが煩いらしく、人前で話し掛けたり一緒に並んで歩いたりは出来ない様で


『歩は少し離れて、私の後をついて来て下さいね?』

「オッケー! へへ、何だかスパイみたいで楽しそうだね、瑞穂にぃ!」


そんな二人だけの約束事にワクワクしながら、俺は寮を出たのだった。



寮から校舎へ向かう途中。
瑞穂にぃが歩くだけで、あちこちから悲鳴や歓声があがり、よく分からないけど周りの生徒が騒ぎ出した。

『キャーッ滝沢副会長様、今日もお綺麗ですー!』
『朝から瑞穂様にお会い出来るなんて、僕ツイてるかも』
『嗚呼……ステキ……』


えーっと。
一応ここって男子校だよ、なぁ。
黄色い(?)声がやたら聞こえてくるんだけど。
そういや昨日、紀幸が言ってた

「この学園では殆どの奴がホモかバイ」
「顔の良い奴(特に生徒会)は、恋愛対象としてかなりモテる」

って、これのことか?
な、何だか瑞穂にぃって凄い……のかな。
思わず顔を引き攣らせながら、見失わないように瑞穂にぃの後を追う。


ようやく生徒玄関口に着くと、何故か物凄い人だかりが。
「橘会長」やら「あの一年」とか「郁人様」だの、周りがひそひそ言いながら見つめる先には――ん?
朝っぱらから喧嘩してる奴がいるのか?
ギャラリーの隙間から見えたのは、睨み合う二人の生徒。
派手な赤髪を逆立てた背の高い奴と、さらに上背がある偉そうな奴。

それから、二人の近くにいた女の子みたいに可愛くて小柄な生徒数人と、彼らに囲まれながら膝をついてる茶髪の奴が一人。

.
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