王道くんと、俺。

葉津緒

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第一部/第一章

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今思うとあれは一種の幻術だったのかもしれない。どうやったのかは不明だが、敵の身体を硬直させ意識を朦朧とさせる……侮れん技だな。
(※違います)

その後もう一度話したいと思ったが、常に邪魔が入り、あっという間に奴の親衛隊が結成された。
そして予想外の噂が突如流れ始めた。


『美貌の外部生はバイでタチらしい』
『親衛隊の可愛い子達と毎日ヤりまくってるんだって』
『自分の親衛隊以外の子達とも遊んでるみたい』
『ただし相手は、自分より背が低くて可愛い子限定だってさ』

『親衛隊長の竹元優馬くんは、大好きな幼なじみで溺愛の恋人っぽい、最もお気に入りのセフレなんだって!』


何故か一つだけやたら違和感のある噂もまじっていたが……。
それまでの千賀郁人に対する学園内でのイメージは一変した。
タチである者は落胆し、逆にネコ達は喜びさらに熱い眼差しを奴に向ける。

信じ切れない俺様は、学園内の「情報屋」に仕事を依頼した。奴について詳しく調べるようにと。
だが結果は噂をほぼ裏付けるものだった。
いや、もっと酷い――。


『ヤバい相手の愛人にまで手を出した挙げ句それがバレて命の危険を感じ、暫く身を隠す為この学園へ来た……だと?』

『報告書にはそう書いてあるみたいですよ』

『…………』

『千賀郁人という人物は、ただの下半身バカのようですね。それも最低最悪な』


次期生徒会入りは確実な友人、滝沢瑞穂とともに目を通した情報屋からの報告書。
そもそも情報屋が嘘を教える筈が無い。
なのに素直に信じる事が出来なかった。
けれど現実は、瑞穂の言う通りだ。

“騙された”と思った。
奴の、千賀郁人の綺麗な笑顔に。
今まで一度も見たことが無い美しい笑顔が、偽りのものだったのかと。
そう考えただけで、胸が痛かった。



以降、奴を見かけても二度と話す気にはならなかった。
むしろ奴が誰かとイチャついたり、あの作られた笑顔を向ける姿を目にする度、激しく苛つき嫌悪する程だ。


「チッ……ムカつく」


そして今日。
生徒玄関口で、親衛隊らしき者達と抱き合いあの笑顔を振り撒く奴を見て、思わず蹴りを入れる。
――筈だったが、邪魔された。

奴の後輩だとか言う、赤髪のクソ生意気な一年。それと親衛隊長の竹元。キモい転入生、ついでに瑞穂まで。

しかも千賀郁人のヤロー、あの転入生を見た途端嬉しそうに笑いやがって。
クソッ!
苛々してその場を去ろうとしたが、去り際に振り返れば……
何なんだあいつ、あの笑顔!?


い、いや。もう俺様は騙されない。

奴の笑顔を遠くから一瞬見ただけで、再び身体中を駆け巡ったものなど。
魅入られたように動けなくなりそうだったのも。
ドクンと、思わず疼いてしまった理由は。


――――きっと激しい怒りのせい、だ。



<飛鳥視点・終わり>




【第一章/END】
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