「王道くんと、俺。」番外編

葉津緒

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清い交際(前編)

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「おい郁人、俺様の頬を思いっきりつねろ」


なんてことを急に言い出す会長。
えーと、これってまさかの俺様会長=Mでした的なカミングアウト?
でもまぁここはとりあえずご要望に応えてあげるのが親切、なのかな。
別に俺、Sじゃないんだけどねー恋人だもんねーよし頑張ってみよ。


「うん、いいよー」



 ギュウウウッ



「!! 痛、てぇえーっ!? お前いくらなんでも思いきり過ぎるだろうが! 少しくらい加減しやがれ――て、痛い……フハハ痛いぜ、痛いんだよな? くくっ」


………………。
なんか気持ち悪いんですけどこの人。
え、会長ってば本当にMなの?
痛いのが余程嬉しいのか気持ち良いのか、ニヤニヤ笑い出しちゃったよ。

どーしよ俺、S目指さなきゃダメ?(泣)


「うう……ねぇ俺これから毎日、会長を殴らないと駄目?」

「あ!? 何で俺様がお前に殴られなきゃならねーんだよ、しかも毎日って」

「え、だって会長マゾなんでしょ?」

「違げーよ!!」


あれ、違うの?



「それより郁人お前、何でいまだに俺様を『会長』呼ばわりしてんだ。付き合ってんだから名前で呼べよ」


と今度は少し拗ねた感じの会長……じゃなくて、えっと名前かぁ名前ねぇ。
んー(バ)会長って呼ぶのに慣れちゃってるから無理、とか言ったら可哀相だよねやっぱり。
会長の名前は『飛鳥』だから


「えっとじゃあ、あっちゃん?」

「は?」

「え、あっちゃんは嫌なの? じゃあ……すーちゃん、すーさん、かっちゃん、かーさん……お母さん?」

「おい! お前ふざけてるだろ」

「俺はいたって真面目だしー。んと、それじゃ“あっくん”は? 会長、あっくんて呼ばれるの嫌い?」

「あっくん」


ん?
動きが止まっちゃったよ、会長。
そんで何かニヤニヤし始めた。
変な妄想とか考え中ですかね?
でもそんな要素、今の会話に含まれてたかなぁ。
たまに会長って変なスイッチ入るよね。


「鼻の下が伸びてますよ気持ち悪い」


うん、そうそう。
――って、今のは俺じゃないからね。



「……何見てんだよ瑞穂、お前には関係ないだろ」

「副会長さん、こんにちわー」

「私も見たくて見てるわけじゃないですよ。そもそも、生徒会室の扉の前で恥ずかしげもなくデレデレいちゃつく方が悪いのでは? 正直、こちらも迷惑なんですが」

「だあッうっせ! 俺様がいつデレデレしたよ!? 迷惑だ? そりゃ悪かったな、おら行くぞ郁人」

「じゃあまたねー、副会長さん」


バイバイと手を振る俺を、ちらり横目で見たあと直ぐに生徒会室へ入って行く副会長。俺の噂の真相を知ったからといって、仲良くする気はないみたい。基本的に無視されてるからね。

会長と付き合いだしてからは特に、目が合っても微妙な感じだし。
やっぱり副会長には嫌われたままなのかなぁ。ちょっと悲しーかも。


「で、会長どこ行くのー?」

「あ? お前が一緒に来いって言ったんだろうが、親衛隊のお茶会とやらに」

「そっか忘れてた。俺の可愛いチワワちゃん達が待ってるんだった。ほら会長、もっと急いでよー」

「は!? おい待て、郁人テメ……!」



ということで今日は特別に、会長を俺のハーレムへご招待です。


.
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