「王道くんと、俺。」番外編

葉津緒

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四月馬鹿

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※会話文
4月1日、教室にて郁人と優馬の会話。



 ***



郁人「もぉ、優ちゃんなんて大っ嫌い。二度と顔も見たくない!」

優馬「え…………郁、人?」

郁人「気安く俺の名前を呼ばないでよ。それにクラスも違うんだから、早く自分の教室に帰ればぁ?」

優馬「!?」



 ザワザワ (どよめく教室内)



太賀「お、おい郁人どうしたんだよ。相手は優馬だぞ、まさか寝ぼけてるのか?」

千裕「そうだよ郁人くん。トラに言ったのなら分かるけど、一番仲の良い優馬くん相手にいきなり何を言ってるの?」

太賀「ちょっと待った、俺なら分かるってどーゆー意味!?」



郁人「トラちゃんとチーちゃんは黙ってて。俺は優ちゃんに言ったんだし」

優馬「……あ、何……で。俺、お前に何かしたか? お前が嫌がる、こと」

千裕「優馬くん」

太賀(うわ、あの優馬が泣きそうになってる。マジで何があったんだよ郁人?)


郁人「……」

優馬「なあ、答えてくれよ! まさか夕食前のおやつを禁止したから怒ってるのか? 親衛隊員にハグと、ちゅーするのを叱ったからか? お前が居眠りしてる間にこっそり髪の毛を三つ編みにしてリボンまで結わえたのが駄目なのか。それとも期間限定スペシャルプリンを勝手に食べ――」

郁人「食べたの!? 俺が大事にとっといたスペシャルプリンなのにッ。うわああ、優ちゃん酷いよーっ!」

クラス一同「え」



 ニヤリ



優馬「ばーか、食べてねぇよ。つか酷いのはお前だろ」

郁人「ゆ、優ちゃん? え……っと嘘なの?」

優馬「エイプリルフールの仕返しだ、馬鹿。この俺を騙そうったって、お前には無理なんだよ」

郁人「えへへバレたかぁ、さっすが優ちゃん。大嫌いなんて言ってごめんね?」



クラス一同「えええっ、嘘なの!?」


郁人「ふふふ、迫真の演技だったでしょ。優ちゃん以外の皆が完全に信じるくらい。俺、頑張りました♪」

太賀「何だ嘘かよ、びっくりしたー……。って、ああそうか四月一日だからな」

千裕「よく嘘だと分かったね優馬くん。でも最初は本気でショック受けてなかった? それに、さっきから口調がいつもと違ってるよ」

優馬「…………えっとー、郁人さまのお上手な演技に触発されて、思わず『やんちゃな僕』になりきってみました。ちゃんと出来てましたかぁ?」ニッコリ


クラス一同「そ、そうなんだ」


優馬(くそ、視線が痛ぇ! こいつの嘘に動揺して思わず素になっちまってたからな……覚えてろよ郁人)



郁人「うふふー、優ちゃん可愛い。涙目とか有り得ないくらい良い! その調子で千葉ちゃん×誘い受けなんかも期待してるね?」

千葉「期待すんな、いらねーよ」

郁人「うわっ、びっくりした。千葉ちゃんいつから俺の後ろにいたの?」

千葉「んなの別にいーだろ。それよか郁人、これからお前を犯すから一緒に資料準備室へ来い」

郁人「はい?」


一同「はあぁぁあッ!?」


千葉「というのはもちろん嘘だけどな。とりあえず荷物運びを手伝え」

郁人「へ? うわ、ちょっと待って、引っ張らないでよー。あ、じゃあ行ってくるね。優ちゃん、また後でね」

優馬「あ、ああ……(チッ、とんでもない発言しやがって千葉の野郎、本当に大丈夫か?)」



 ピタッ



千葉「そうだ、郁人お前先に行っとけ」

郁人「はぁい」

一同「?」


太賀「どうしたんですか千葉先生、忘れ物っスか?」



千葉「ああ、大事なことを一つ言い忘れたんだが。

さっき俺が『嘘だ』っつったのが嘘だったら

……お前ら、どーする?」




俺がいなくなってから
そんなことを呟いた千葉ちゃん。
何故か凍り付く一同。

そのままニヤリと悪そうな笑顔を浮かべ、春休みの教室を後にするホスト教師。
直後、クラスメートの悲鳴やら怒号が響き渡り、鬼の形相の優ちゃんが資料準備室へ急行したそうな。

え、俺?
残念ながら千葉ちゃんに美味しくいただかれちゃいました……。


っていうのは、もちろん嘘だけど!
嘘って本当、怖いよねー(笑)




【END】
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※補足:郁人と優馬達は入学式などの準備手伝いの為、春休み中に登校しています。教室にいる生徒の人数は1/3程度。

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