守るべきモノ

神崎

文字の大きさ
上 下
272 / 384
銀色

272

しおりを挟む
 春樹の部屋に布団を敷いて、政近はまたそこで寝る。春樹は最近ずっと倫子の部屋で寝泊まりをしているが、布団やシーツは頻繁に洗ったり干したりしているらしい。倫子が帰ってこないこともあるので、ここに寝ることもあるのだ。だが人が寝たシーツは気持ち悪いだろう。そう思って二人はシーツを取り替えていた。
「何でここで寝ないの?」
 政近はそういってシーツを取り替えていた。同じように春樹も枕カバーを取り替えている。
「取材へ行くことが多いらしいですよ。日帰りが出来ないような所はそのままホテルに泊まったりとか、知り合いの家に泊めてもらうそうですね。」
「その知り合いって男?」
「さぁ。俺はそこまで倫子のことを縛っていないですから。」
 おそらく大学に入って、あの入れ墨を入れたときから倫子は人と関わるようになった。それまでは空気のように息を潜めていたらしい。
「あんたって割と倫子のことを知らないですよね。って言うか知りたくないって言うか……。」
「話したくないことを無理矢理聞こうとは思いませんよ。」
「そんなものかねぇ。」
 人それぞれだろう。政近はそう思いながら、またシーツのチャックを締める。
「毛布は必要ですか。」
「寒かったら着ますよ。」
「だったら押入の中に毛布がありますから。」
 出て行こうとした春樹に、政近が声をかける。
「藤枝さん。この間借りた本みたいな感じの本って無いんですか?」
 すると春樹は本棚に近づいて、一冊の本を取りだした。
「だったらこれが良いですね。」
 同じ作家のモノだ。元々官能小説を書いていた女性作家の本で、これは一昔前の高度経済成長期のあたりの話で、この話のキーワードは「公害」らしい。
「ふーん……。面白そうだな。」
「よくこの作家も調べてますね。若い世代なのに、まるで見てきたかのように書いています。」
「こういう作家の作品も絵にしたいな。」
「あなたは筆が早いのでそれは可能かもしれませんが、自分が出来るキャパは知っておいた方が良い。病気にでもなれば穴があいて、迷惑をかけるのは出版社の方ですから。」
 春樹はそういって部屋を出る。確かに先ほどまでの時間は良かった。風呂から出てきた伊織も加わって、みんなで世に出ることはない話を作り上げる。そういう作り方も悪くないのかもしれない。
 だが心の中で誰かが囁く。
「人は裏切るものだよ。あまり信用してはいけない。」
 拳を握り春樹は風呂場へもう一度向かい、そしてタオルを手にすると倫子の部屋へ向かった。
「倫子。」
 声をかけると、倫子はまだ机に向かっていた。先ほどまでの話を練り直しているらしい。
「んー……。もう少し資料が欲しいな。シルクスクリーンとかポップアートの。」
「それは商業誌にならないよ。」
「そうだけどね……こう、作ったままだと気持ち悪いなと思って。商業誌にはならないかもしれないけれど……作品としては作り上げたいと思ってね。」
「同人誌で出す?」
「それも良いかもね。その場合、どこで売るのかしら。コミックマーケットとか、ネット上かなぁ。」
「本当に売り出すの?」
「冗談。こんなのを出版したら、このモチーフにしたアーティストの遺族から訴えられるわ。」
 その自覚はあったのか。ほっとして春樹は、いすに座っている倫子を背中から抱き寄せた。
「春樹?」
 春樹は何もいわずに倫子をそこからのぞき見る。そして唇を重ねた。重ねるだけだと思っていたのに、春樹は無理矢理その唇を舌で割る。
「ん……。」
 離そうと思っても春樹の手が肩をつかんでそれを許さない。そしてその手はそろそろと倫子の胸元に降りてきた。
 唇を離すと、倫子の口から吐息が漏れる。
「駄目……春樹。二人がいるのに……。」
「今日するつもりだったんだから。」
「声が出ちゃう。」
 尖ってきた感触がわかり、その先を指でなぞる。すると我慢しているように倫子の顔が赤くなった。
「ん……。」
 シャツの中に手を入れると、体温が手に伝わってくる。そして肌の感触。上に手を挙げると下着の感触があった。
「ここで?」
 赤い顔のまま倫子が聞くと、春樹はそのまま背中に手を回す。そして下着を取ると、倫子をいすから抱き抱えて布団の上に寝かせる。
「二人がいるのに……。」
「隣に泉さんはいない。声を上げても聞こえないよ。」
 着ていたパーカーとシャツを脱がせると、下着も取った。そしてそのまままた唇を重ねる。舌を絡ませて、倫子もまた答えてきた。
 そして春樹もそのまま上着とシャツを脱ぐ。
「寒くない?」
「布団をかぶればそうでもないよ。」
 肌が触れ合うと温かい。人の温もりだ。そして手を重ねると、肌とは違う感触がする。それは火傷のあとだ。おそらくこんなにひどいものであれば感覚も少し違うかもしれない。
 だがその腕が春樹を求めてくる。
「春樹……抱きしめて。」
 すると春樹はその体を抱きしめる。
 自分の中を払拭させたかった。政近もそして伊織も消して欲しい。そのために春樹を利用するのは卑怯かもしれない。だが抱いて欲しかった。
 少し体を離すと、春樹はその胸に触れた。胸をつかみあげて、その乳首に舌をはわせる。するとその乳首は堅くなっていった。
「ん……。あっ……。」
 わずかに歯をたてられ、声を抑えきれなかった。
「我慢できない?」
 舌を離して倫子を見ると、息を切らせていた。これでも我慢している方だろう。だが入れてしまったらきっと我慢できない。
 春樹は持ってきたタオルを倫子の口にあてがう。これで少し押さえられるはずだ。そう思ってズボンを脱がせる。
「染みてるな。ほらこの上からでもグチョグチョになってる。」
 下着の上からなぞると、倫子はもどかしそうに腰をくねらせた。声を上げたいのにあげられないもどかしさが、更に濡らしているのだろう。
 完全に脱がさずに、下着をずらしてそこに触れる。すんなりと指が受け入れそうだ。しかしその上、堅いところに指をはわせた。
「んーーーー!」
 足を立てさせて下着を取ると、倫子の声が更にあがる。
「ここ好き?」
 赤く充血しているところに指をはわせて、そして中に指を入れる。探るように指を中で動かし、微醺と倫子の体が反応した。
「ここ?」
 伊織のように力付くではない。政近のように慣れているわけでもない。感じるところを探るように指をはわせてくれる。体は正直にシーツを濡らしていく。
「んっんっ……。」
 指を抜き差しするだけで指が濡れていく。酒を飲んだあとでもこんなに濡れることがあっただろうか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

自習室の机の下で。

カゲ
恋愛
とある自習室の机の下での話。

隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました

加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
恋愛
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...