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唇を話って夢中で舌を絡めた。後ろ頭を手で添えると、倫子もまた政近の体に手を伸ばした。春樹よりも小さくて細身の体は、とても温かい。
唇を離すと、政近はそのままセーターの下から手を入れる。すると倫子は少し声を漏らした。
「ん……や……。」
「イヤなのか?ここ、相当立ってるのに。」
下着をずらして、乳首に指を這わせる。するともう堅く起立していた。
「せめてシャワーを浴びさせて。」
「汗なんかかいてねぇよ。かいていたとしてもその匂いも興奮するし。」
ぎゅっと摘まれる。その感触が少し痛い。なのにもっとして欲しいと思った。
そのとき抱き寄せている政近の携帯電話が震えるのを感じた。音を出していなかったのでバイブが作動したのだろう。
「電話みたいよ。」
「後で連絡する。」
「仕事のことかもしれないわ。出て。」
倫子はそういって手を引いた。その様子に政近は少し舌打ちをした。倫子とこんな風になれるチャンスはあまりないのだろうに、邪魔が入る。政近も手を出すと、その旨ポケットに入っていた携帯電話を取り出す。
「あぁ。お疲れさまです。ええ。良いですよ。え……マジですか?俺、行っていいんですか?……そんなことないですよ。レギュラーじゃないんでしょうし、勉強させていただきます。」
政近の顔が生き生きしている。何か嬉しいことがあったのかもしれない。そう思って倫子は押しつけられていた壁から離れる。
「やった。」
携帯電話を切った政近は、笑顔になっていた。
「何かあったの?」
「岡田義彦先生のアシスタントに入らないかって言われた。」
「え……あの劇画の?」
「あぁ。アシスタントは厳選されて使うらしいんだけど、今月号のマンガを見て使いたいって言ったらしい。」
「今から連載をするのにアシスタントなんて……。」
倫子はそういうと政近は首を横に振った。
「あの先生五十年は描いているんだ。あんな人の下で描ければ、一度でも相当勉強になる。気合いはいるな。」
もう先ほどまでのことを忘れているのかもしれない。政近は片隅にあるホワイトボードにスケジュールを書いた。
いっそこのまま忘れてくれないだろうか。そう思いながら、倫子はそっとジャンパーを手にする。そのとき背中に温かな感触が伝わってきた。
「何……。」
政近が背中から倫子を抱きしめていたのだ。
「お祝いしてくれよ。」
「何で私があなたの都合に合わせないといけないのかしら。」
「冷たいな。さっきまでしようと思ってたのに。」
何も言わないで、倫子はその体を振り払う。
「帰るわ。」
「冷めんなって。それともお前も他の女と同じか?」
「他の女?」
「仕事って言ったら、「私と仕事どっちが大事なの」って言ってくる女ばっか。お前、そんな阿保じゃないんだろ?」
人のことは言えない。自分だって一番は仕事で春樹はその次点でもないのだ。
「私にとってあなたは仕事上のパートナーでしょう。それは伊織も春樹も同じ。あなたは特別ではないの。」
「……。」
「私は春樹が好きなの。」
真っ直ぐにそんなことを言われると思っていなかった。それくらい本気なのだろう。
「だったら藤枝さんに隠し事なんかするなよ。俺といるの言ってねぇんだろ?」
「春樹はあなたに警戒をしているわ。一度寝たことも知っている。それから二度目はないって思っているもの。亜美と一緒ね。」
「……。」
「亜美も二度はさせなかったから。」
仕事のネタのためと男と寝ることはあったが、春樹とこうなる前は網が目を光らせていた。一度寝た男は、二度はない。亜美は何かしらの脅しをかけていた。それはヤクザの脅しのようなものだった。
「藤枝さんも似たようなものか?」
「確信はない。けれど、亜美のやり方によく似ているわ。あなたが私を好きなのはわかった。だけど、忘れた方が良い。」
「やだ。」
「駄目だって。あなたの身の為なのよ。」
すると政近は倫子の手を引いた。そしてその体を抱きしめる。
「そんなことで諦めきれるか。仕事だって「無理だ。諦めた方が良い。」っていろんな奴から言われて、それでも食い下がってきたんだ。諦めの悪さだったら、富岡に負けねぇ。」
「伊織に?」
続きを聞けなかった。無理矢理キスをすると、その唇を舌でこじ開けた。苦しくて何度も離そうと思った。だがそのたびに政近が求めてくる。
そのとき倫子の携帯電話がバッグから鳴った。その音に政近は無視をするように、またセーターの下に手を入れようとする。だがそれを倫子は振り払うと、政近から離れてバッグの中の携帯電話をチェックする。
「はい……。あ……そうでしたか。すいません。そうですね。今は出先なので……そうですね。あと一時間ほどで。えぇ……。」
そういって倫子は携帯電話の通話を終わらせた。そしてジャンパーを羽織る。
「帰るわ。仕事が出来たの。」
「何だよ。仕事って……。」
「あなたには関係ないわ。こっちの仕事よ。彼氏面しないで。」
マフラーを手にして、それを首に巻こうとしたときだった。その手を捕まれる。
「何?」
「こんな時に、月子を拉致した奴の気持ちが分かるなんてな。」
「……。」
「月子を拉致した主犯格の奴は、前から月子を狙ってた。離したくないって、返したくない、自分のものにしたいっていってた。俺もそう思う。お前を藤枝さんの所に返したくない。」
「……イヤよ。」
「わかっているけど……。」
「……春樹から何を脅されているのか知らないわ。でも……本気で好きなら、そんなことどうでもいいんじゃない?私は、それくらい本気なの。青柳のこともすべて忘れそうなのよ。あなたもそれくらいしたら?」
倫子はそういって玄関の方へ向かう。その後ろ姿に、政近は拳を握った。
本気だ。本当に倫子が好きなのだ。なのにその想いは届かないのだろうか。イヤ、違う。だったらどうして春樹に今日、政近と会うことを言わなかったのか。
それはわずかでも倫子の中に政近がいるのだ。そう思いたかった。
唇を離すと、政近はそのままセーターの下から手を入れる。すると倫子は少し声を漏らした。
「ん……や……。」
「イヤなのか?ここ、相当立ってるのに。」
下着をずらして、乳首に指を這わせる。するともう堅く起立していた。
「せめてシャワーを浴びさせて。」
「汗なんかかいてねぇよ。かいていたとしてもその匂いも興奮するし。」
ぎゅっと摘まれる。その感触が少し痛い。なのにもっとして欲しいと思った。
そのとき抱き寄せている政近の携帯電話が震えるのを感じた。音を出していなかったのでバイブが作動したのだろう。
「電話みたいよ。」
「後で連絡する。」
「仕事のことかもしれないわ。出て。」
倫子はそういって手を引いた。その様子に政近は少し舌打ちをした。倫子とこんな風になれるチャンスはあまりないのだろうに、邪魔が入る。政近も手を出すと、その旨ポケットに入っていた携帯電話を取り出す。
「あぁ。お疲れさまです。ええ。良いですよ。え……マジですか?俺、行っていいんですか?……そんなことないですよ。レギュラーじゃないんでしょうし、勉強させていただきます。」
政近の顔が生き生きしている。何か嬉しいことがあったのかもしれない。そう思って倫子は押しつけられていた壁から離れる。
「やった。」
携帯電話を切った政近は、笑顔になっていた。
「何かあったの?」
「岡田義彦先生のアシスタントに入らないかって言われた。」
「え……あの劇画の?」
「あぁ。アシスタントは厳選されて使うらしいんだけど、今月号のマンガを見て使いたいって言ったらしい。」
「今から連載をするのにアシスタントなんて……。」
倫子はそういうと政近は首を横に振った。
「あの先生五十年は描いているんだ。あんな人の下で描ければ、一度でも相当勉強になる。気合いはいるな。」
もう先ほどまでのことを忘れているのかもしれない。政近は片隅にあるホワイトボードにスケジュールを書いた。
いっそこのまま忘れてくれないだろうか。そう思いながら、倫子はそっとジャンパーを手にする。そのとき背中に温かな感触が伝わってきた。
「何……。」
政近が背中から倫子を抱きしめていたのだ。
「お祝いしてくれよ。」
「何で私があなたの都合に合わせないといけないのかしら。」
「冷たいな。さっきまでしようと思ってたのに。」
何も言わないで、倫子はその体を振り払う。
「帰るわ。」
「冷めんなって。それともお前も他の女と同じか?」
「他の女?」
「仕事って言ったら、「私と仕事どっちが大事なの」って言ってくる女ばっか。お前、そんな阿保じゃないんだろ?」
人のことは言えない。自分だって一番は仕事で春樹はその次点でもないのだ。
「私にとってあなたは仕事上のパートナーでしょう。それは伊織も春樹も同じ。あなたは特別ではないの。」
「……。」
「私は春樹が好きなの。」
真っ直ぐにそんなことを言われると思っていなかった。それくらい本気なのだろう。
「だったら藤枝さんに隠し事なんかするなよ。俺といるの言ってねぇんだろ?」
「春樹はあなたに警戒をしているわ。一度寝たことも知っている。それから二度目はないって思っているもの。亜美と一緒ね。」
「……。」
「亜美も二度はさせなかったから。」
仕事のネタのためと男と寝ることはあったが、春樹とこうなる前は網が目を光らせていた。一度寝た男は、二度はない。亜美は何かしらの脅しをかけていた。それはヤクザの脅しのようなものだった。
「藤枝さんも似たようなものか?」
「確信はない。けれど、亜美のやり方によく似ているわ。あなたが私を好きなのはわかった。だけど、忘れた方が良い。」
「やだ。」
「駄目だって。あなたの身の為なのよ。」
すると政近は倫子の手を引いた。そしてその体を抱きしめる。
「そんなことで諦めきれるか。仕事だって「無理だ。諦めた方が良い。」っていろんな奴から言われて、それでも食い下がってきたんだ。諦めの悪さだったら、富岡に負けねぇ。」
「伊織に?」
続きを聞けなかった。無理矢理キスをすると、その唇を舌でこじ開けた。苦しくて何度も離そうと思った。だがそのたびに政近が求めてくる。
そのとき倫子の携帯電話がバッグから鳴った。その音に政近は無視をするように、またセーターの下に手を入れようとする。だがそれを倫子は振り払うと、政近から離れてバッグの中の携帯電話をチェックする。
「はい……。あ……そうでしたか。すいません。そうですね。今は出先なので……そうですね。あと一時間ほどで。えぇ……。」
そういって倫子は携帯電話の通話を終わらせた。そしてジャンパーを羽織る。
「帰るわ。仕事が出来たの。」
「何だよ。仕事って……。」
「あなたには関係ないわ。こっちの仕事よ。彼氏面しないで。」
マフラーを手にして、それを首に巻こうとしたときだった。その手を捕まれる。
「何?」
「こんな時に、月子を拉致した奴の気持ちが分かるなんてな。」
「……。」
「月子を拉致した主犯格の奴は、前から月子を狙ってた。離したくないって、返したくない、自分のものにしたいっていってた。俺もそう思う。お前を藤枝さんの所に返したくない。」
「……イヤよ。」
「わかっているけど……。」
「……春樹から何を脅されているのか知らないわ。でも……本気で好きなら、そんなことどうでもいいんじゃない?私は、それくらい本気なの。青柳のこともすべて忘れそうなのよ。あなたもそれくらいしたら?」
倫子はそういって玄関の方へ向かう。その後ろ姿に、政近は拳を握った。
本気だ。本当に倫子が好きなのだ。なのにその想いは届かないのだろうか。イヤ、違う。だったらどうして春樹に今日、政近と会うことを言わなかったのか。
それはわずかでも倫子の中に政近がいるのだ。そう思いたかった。
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