守るべきモノ

神崎

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指輪

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 ストーブに火を入れて、お茶を淹れた。その間、政近はテレビの下にあるDVDを用意した。
「ソフトが入ってるな。抜いてもいい?」
「良いわ。泉が観ていたのかもしれないけれど、抜くのを忘れていたんでしょう?」
 DVDのソフトを抜くと、そこにはヒットした映画が入っている。泉のお気に入りの俳優がでているのだ。
「これ、観たことあるわ。面白かった。」
「有名な小説を映画にしたものね。」
「観た?」
「暇がないのよ。」
 本当はこんなことをしている場合ではないのだが、次を生み出すのには資料も必要なのだ。そして政近は自分が持ってきたDVDをセットすると、テレビをつける。そしてその映像を流した。
 字幕はないので、言葉を拾いながら内容をみる。どうやら、設定では男には恋人が居て、そしてその男の友人という立場で例のシーメールが居るのだ。金色の髪と茶色の瞳。どこをどう観ても女性に見える。
 だが服を脱ぎ出すと、男はかなりがたいがいい。そして女もメロンのような胸を持っていた。そしてその胸よりは少し小振りだが、シーメールにも胸がある。
「豊胸しているのかしら。」
「かもな。で、ほら男と女で骨格が違うだろ?たぶん、骨とかも削ってる。」
 女性ホルモンを打てばそんなことをしなくても女性らしい体つきになるだろう。だが女性ホルモンを打てば、性器は立たなくなる。それを危惧しているのだ。
 異色なAVかもしれない。だが普通の女なら、それを観ただけで顔が赤くなったり政近にも止めてくるのかもしれない。だが倫子の表情は普通だった。おそらくどんな映画を見ても同じだろう。
 しばらくすると、女がそのシーメールに入れ込まれた。そして女の口元には男の性器がくわえられている。肉のはじける音と、水の音が聞こえた。
「無修正って結構グロいわね。」
「このシーメール、結構立派なの持ってるな。奥まで届いてるみたいだ。」
 そういわれて倫子は煙草を手にするふりをして、視線をそらせた。春樹のモノは大きくて奥まで届く。そのたびに気が狂いそうになるのだ。それを思い出す。
「キャラクターで「美咲」がシーメールのモノにしたわ。女装だけで終わらせようと思ったけれど、そうじゃない方が良いかしら。」
「だな。そっちの方が男も女でも浮気の可能性があるってことに出来るだろう。」
 また画面に目を移すと、今度は女がそのシーメールに覆い被さり、性器に突っ込まれている。そしてその上から尻の穴に男が突っ込んでいた。
「二穴ってことか……。お前、後ろ経験ある?」
「無いわね。あなたはどうなの?」
「男のあれを突っ込まれる趣味はねぇよ。」
「……。」
 煙を吐き出しながら、倫子は何か考えているようだった。また想像を膨らませているのかもしれない。冷静にそれを観ているのは、本当に資料としてみているだけなのだろう。
「この場合、男は惨めね。」
「え?」
 女があえいでいる下で、シーメールは女と情熱的にキスをしている。その後ろから男が尻の穴に突っ込んでいるのは、男ではないといけないとかそういうことではなく、男の性器にしか興味がないといっているようだった。
「男もゲイだってことかしら。」
「そうじゃねぇよ。たぶん、この男は普通のAVとかにも出てる奴だ。有名な男優みたいだな。」
「ふーん。」
 すると倫子は煙草を置いたまま席を立つと、部屋に戻る。そして居間に戻ってきたときには、ノートとペンが握られていた。
「この関係性を見直しましょう。」
 倫子はそういってペンで指さす。
「嫉妬ではなく、恋心。」
「なるほど……見た目は女だけど、体は男だからな。女が惚れるのも無理はねぇ。」
「そう……だから……。」
 思った以上に政近が近い。倫子は咳払いをすると、少し距離をとった。
「……「飛鳥」の……。」
 距離をとったのに政近がまた近寄ってきた。倫子は不機嫌そうに煙草を消すと、政近をみる。
「近いわ。少し離れて。」
「俺、目が悪いんだよ。今日、コンタクトしてねぇし。」
「何で仕事の話をするのにコンタクトをしてないの?やる気ある?」
「そこまでひどい近視じゃねぇよ。」
 すると政近は、倫子の方へ手を回す。その様子に倫子は思わず身構えた。だが髪を結んでいるゴムをとり、それを指で回す。
「結んでるとうなじを舐めたくなるんだよ。」
「……。」
「舐められたい?」
「結構よ。」
 自分にも非があったのかもしれない。そう思いながら倫子は首を横に振る。
 すると政近は、倫子の手首に触れた。
「嫌。」
 そういって手を離すと、政近は少し笑った。
「火傷。肩が一番ひどいんだろ?
「え……。」
「あいつも知ってんのか?その火傷の理由。」
 どこで知ったのかわからない。だが倫子は体を離すように、後ろに下がった。だがドアが壁になって、抵抗は出来ない。
「や……。」
「隠すのは得意なんだろう?あいつとの関係もずっと隠してんだもんな。」
「どこまで知ってるわけ?」
 あくまで強気に倫子がいうと、政近は少し笑った。
「茶器があったな。小さい頃、温泉街にある湖の畔にあったカルチャーセンターで観た。そのあと、同じモノを「青柳グループ」の本社で観た。」
「……。」
「火傷、どこまでついてるか見せろよ。」
「嫌。帰って。」
 倫子はそういうと、政近は少し笑う。
「そういう抵抗が俺の一番の好物。あんたみたいなマゾヒストは、俺無しでいらせられなくしてやる。」
 すると政近は、その唇に近づこうとした。だが倫子の手がそれを止める。
「やめて。」
 唇を手で塞がれて、少しずつ体をよけた。だがその手を握られ、体を無理矢理倒される。
「や……。」
 すぐにネックレスの感触が伝わる。そして温もりが伝わってきた。必死に抵抗しようと体をよけようとしたが、その顔を捕まれる。そして唇が重なってきた。
「んっ……。」
 春樹とは違う煙草の匂い。すぐに唇を割られて、差し込まれた舌が器用に口の中を征服していく。不覚にもそれが心地良いと思った。
「倫子……。」
 しかし名前を呼ばれる声も違う。倫子の目の端から涙が流れた。
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