守るべきモノ

神崎

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素直

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 ベッドにつれてくると、春樹も自分の着ていたバスローブを脱ぐ。すると倫子は驚いたように春樹を見た。
「あ……。」
 酒が入ると立たないことがあるというのが嘘のようだ。倫子の上に乗りかかってきた春樹のそれは、立派に男だった。
「妻の前でも立たないことがあったのにな。」
 疲れているのよ。未来はそういって春樹をねぎらっていたが、内心は穏やかではなかったはずだ。自分でも役立たずだと思っていたこともあったのに、倫子の前では疲れていても何でも倫子と一緒になりたいと思っているのだろう。
 春樹はその倫子の体に覆い被さるように乗り上げた。そしてまた唇を重ねる。
「もっと舌を出して。上書きするから。」
 昼間に政近にキスをされたのを根に持っている。音を立ててキスをする。その間にも春樹は倫子の胸に手を寄せた。
「すごい。とろとろになってきた。」
 頬を赤く染めて、目もうつろになってきた。春樹はそう思いながら、倫子の口内をまた舐める。そして倫子を寝かせると、足を高く持ち上げた。腰も持ち上げると春樹は体勢を低く構え、その性器に舌を這わせた。
「あっ!」
 性器を広げて、その中にも舌を入れる。倫子は口を押さえながらそれに耐えているようだった。
「春……。あっ!あっ!」
 何度絶頂に達したのだろう。そのたびに体がびくびくと反応する。失神しそうだったらそれをやめて、それでもずっと体がびくびくしている。自分が嫌らしくなったようだ。
「春樹……春樹のも……。」
 せめて春樹も気持ちよくさせたい。そう思っていたが、春樹は首を横に振る。
「駄目。すぐ出るから。」
「だって……。」
「俺が出たらもう出来ないよ。若くないんだし。君の中で果てたい。」
 春樹はそういって、またそこに舌を這わせる。そのたびにうずうずとする。何度絶頂したのかわからない倫子は、そのまま息を切らせて春樹を見上げる。
「お願い……。」
「どうしたの?」
「入れて……。」
 すると春樹はその言葉に、倫子の頬をなでる。
「俺もそうしたいと思ってた。」
 そういって春樹はベッドの上にあるコンドームに手を伸ばす。そしてそれをつけると、倫子の足を持ち上げた。
 手でそれを支えると、ゆっくり音を立てて飲み込んでいく。
「あっ……入って……。」
 無意識だろうか、ぎゅっと締まってきた。入ってくるのに興奮しているのだ。
「落ち着いて。」
 すぐ射精しそうな感覚は、前と変わらない。倫子は目をうつろにさせながら、少し息を履いた。するとまたはいってくる感覚がある。
「んっ……。」
「痛い?」
「痛くないの。春樹……お願い。キスして。」
「キスしたら全部はいるよ。」
「全部入れて……奥でも口でもキスをして欲しい。」
 前に言った言葉だ。それを覚えていたのだろうか。思わず春樹は一気に入れ込み、倫子の唇にキスをする。
「気持ちいい。……倫子の中、すごい……。」
 倫子は涙目になりながら、自分からキスをする。
「春樹だから……。」
 こんな言葉が聞けると思ってなかった。思わず激しく動きたくなる。
「倫子……。駄目。もう我慢できない。」
 春樹はそういって腰を打ち付けた。そのたびに倫子は声を上げる。
「あっ……奥……奥に……。」
「すごい気持ちいい。」
 入れ込む度に水の音がする。尻を伝い、シーツはもう派手に濡れていた。それでも容赦は出来ない。
「奥……。あっ!」
 倫子を持ち上げて、また打ち付ける。すると倫子もまた春樹の体に手を伸ばした。
「あーーーー!イク!イっちゃう!」
 背中に少し痛みを感じた。倫子が爪を立てたのだ。びくびくと体を震わせて、それでも春樹の体から離れようとしない。
「倫子。俺もイクから……。ちょっと激しくする。」
「え……これ以上?」
 倫子を持ち上げてベッドの上に立ち壁に押しつけると、その中に打ち付けた。
「や……激し……。」
「あっ……イク……。倫子……。倫……。」
 春樹の声がとぎれ、倫子のお腹の奥で温かいものを感じたと同時に、すっと春樹の温かさと吐息だけを感じた。
 それを感じながら倫子は息を切らせ、春樹も最後まで出ると倫子を抱きしめた。だが倫子はそれを返さない。
「倫子?」
 キスをしようとして、倫子をみる。すると倫子は目を閉じて、ぐったりしていた。きっとイキすぎて、失神してしまったのかもしれない。
「倫子?」
 名前を呼ぶとすぐに倫子は目を開けた。
「ごめん……。ちょっと気が遠くなってて。」
「イキすぎたんだよ。」
 互いに少し笑い軽くキスをすると春樹は倫子の中から出て行く。そして倫子をベッドに寝かせた。
「こんなに胸がいっぱいになると思ってなかった。」
「え?」
「気持ちが入るとこんなに幸せなのね。」
 コンドームをとった春樹は、少し笑って倫子の額に唇を寄せた。
「宿泊にしようか。」
「変更って出来るの?」
 最初に休憩と言っているのだ。そんな変更が利くのだろうか。時計を見ると、そろそろ時間になる。
「状況次第だろうけど、平日だし大丈夫だと思うけど。」
 ベッドから降りると、春樹は灰皿と煙草を手にする。そして倫子のものも手にしてベッドにまたあがった。
「やっぱり早く帰りたいわ。」
 このまま春樹と居たい。だが、どこかで焦っていた。
「どうして?」
 春樹はそう聞くと、煙草をくわえて火をつける。
「泉が心配だから。」
「伊織君が居るよ。」
 もう倫子の出番ではない。だから倫子は倫子の幸せを考えればいいと思う。
「でも……。」
「そんなに心配なのか。」
 少し暗い顔をした。だが倫子も煙草を手にするとそれをくわえる。
「……昔、人が死んだの。」
「え?」
 大学の時、文芸サークルに入っていた。そのとき新人の歓迎会と言って、まだ高校を卒業したばかりの男に酒を飲ませていたのだ。
「……次の日になっても後輩の男の子は来なかった。二日酔いになったのかと思って……帰りに様子を見に行ったの。」
 あのときの光景を忘れない。トイレの前で男が倒れ、周りや本人にも吐瀉物がついていた。
「一人暮らしだったの?」
「えぇ。真新しい一人暮らし用の家電や家具があったし、誰も気がつかなかったんでしょう。」
 葬儀へ行ったとき、ずいぶんサークルの人たちは両親から責められた。飲めと強制したのだろうと。
「その話見たことがあるな。ネタにした?」
「えぇ。」
 ずいぶん評判になった話だった。それくらいの頃から、倫子達が通っていた大学のサークルで飲み会の席は酒が厳禁になったらしい。
「だから……泉もそうなるんじゃないのかって。」
 居ても立ってもいられないのはわかる。きっと宿泊にしてここに泊まっても、倫子はきっと寝ていられないだろう。
「わかった。時間通りに帰ろうか。でも……。」
「何?」
「今日は朝まで君と居たい。部屋に来てくれないか。」
 せめて場所が違っても倫子を抱きしめて眠りたい。その言葉に倫子は軽くうなづいた。
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