守るべきモノ

神崎

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意識

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 しばらくして泉もやってきた。泉は人一倍食べる方で、小さな体にどこにはいるのだろうと春樹は思いながら、塩タンを口に入れる。
「お酒は飲まないの?」
 すると泉は、ご飯にカルビを乗せて少し笑う。
「弱いんです。記憶がないことが多くて。」
 女性というのは少しお酒が弱いくらいがちょうどいい。酔ったふりをして男の体に寄っかかれば、そのまま男に持ち帰りされることもあるだろう。
 だがその隣で、肉よりも酒ばかり飲んでいる倫子は対照的だ。
「マッコリください。」
「まだ飲むの?」
 伊織も強い方だが、さらに強いようだ。
「そう言えば、昔亜美のコンテストの実験台になってたね。」
「コンテスト?」
 不思議そうに伊織が聞くと、倫子も少し笑う。
「そうだね。バーテンダーのコンテスト。牧緒と一緒にフレアカクテルのコンテストに出てた。パフォーマンスだけじゃなくて、味も審査に入るからって。」
「あのときはずーっと飲んでたね。でも普通に仕事してた。亜美が驚いてたわ。」
「そうね。」
 大学生の頃からの友人らしい二人と、一緒に住んでいる伊織。春樹は少し蚊帳の外にいるような感じがした。
「藤枝さんは、大学時代はどんな感じだったんですか?」
 泉が気を使って春樹に聞くと、春樹は少し笑っていった。
「あまり今と変わらない感じだよ。バイトして、授業は寝て。」
「バイトって?」
「本屋さん。」
 本の虫なのだ。それくらい本しか見ていない男だ。
「本当に本が好きなんですね。」
 倫子がそう言うと、頼んだマッコリを口にする。
「だから、出版社に勤められたときは嬉しかったですよ。まぁ……予想以上に激務ですけどね。」
「それも嬉しいんでしょう?マゾヒストですか?」
「そんな趣味はありません。」
 倫子はそう言って網の上の肉をひっくり返す。
「倫子。デザート食べない?アイス食べたい。」
「もう締めにいくつもり?」
「明日も仕事だもん。最近、店長が機嫌悪くてさ。」
「店長っていうと……あの川村さんよね。牧緒のお兄さんの。」
「そう。奥さんと喧嘩でもしたのかな。」
 考えられるのは一つしかない。だが礼二と寝るつもりは今後一切無いし、誘われても行く気はない。不倫はしたくないのだ。
 なのにこの間、春樹とキスをした。それが不倫ではないのかといわれれば微妙だ。セックスをしていない、感情がないから良いというわけではないだろう。
「いずれ機嫌は直るわよ。ずっと不機嫌ってことはないでしょうし。」
「そうだといいんだけど。」
「倫子はいつでも不機嫌そうだ。」
「なんですって?」
 伊織の言葉に倫子は少し機嫌が悪そうに聞く。
「だってさ朝は起きないし、編集者さんにこの間「担当を代えてもらう」って啖呵切ってたの聞いたよ。」
「変なことを聞くんだもの。」
「何を聞かれました?」
「……。」
 春樹の前でいいにくい。だが倫子は口を尖らせていった。
「処女ですか?って。」
「セクハラ。」
 その言葉に、泉も呆れたように言った。
「ばっかじゃないの。あいつ。」
 すると春樹は少し黙っていった。
「そう思われるのも仕方がないですよ。」
「え?」
 春樹は煙草を取り出して、倫子に言う。
「ベッドシーンをうちの作品でも入れてる作品がありますけど、リアリティーが無いと思います。何で勉強されてますか。」
「……AVとか。あとは、デリヘルとかに聞いてですね。」
「商売女だけではリアルとは言い難いでしょう。うちの加藤が、言うのも俺にはわかります。」
 実際体験して見ろと言うことだろうか。そのために春樹を利用するというのも、迷うところだろう。
「やっぱ……一度利用してみようかな。」
 そう言って倫子は携帯電話を取り出す。
「何?」
「出張ホスト。さっき、会った女王様が教えてくれたの。ほら、泉見てみて。」
「すごい。本当にこんな人が来るの?」
「かもしれないわね。」
 そんな問題じゃない。春樹は煙草を吸いながら、倫子を見ていた。この分だと、いつ恋愛小説がかけるのかわからない。そんな問題ではないのに。
「でもさ、倫子。またこういう人たちとはまた違うんじゃないの?」
「え?」
 泉の方が言ってくれた。男の口から言うよりも女の口から言った方が良いかもしれない。
「たぶん、藤枝さんが言っているのは愛のあるセックスってことでしょう?」
「そう言うこと。」
「出張ホストに愛なんか無いよ。」
「だから、疑似的にも。」
「疑似じゃ、リアルには思えないんじゃない?」
 泉はそう言うと、店員を呼ぶためにスイッチを押す。するとすぐに店員がやってきた。
「すいません。バニラアイスを。」
「はい。」
 泉もはっきり言う方だな。そうではないと倫子とはつき合えないのかもしれない。春樹はそう思いながら煙草の煙を吐き出す。
「だいたいさ、倫子もてないわけじゃないじゃない。何でつきあわないの?」
 すると倫子は不機嫌そうに煙草に手を伸ばした。
「面倒。こっちは仕事をしてるのにいちいち連絡を取らないといけないのとか、記念日とかどうでもいい。」
「男がいうのはわかるけど、女性がいうのは珍しいな。」
「男の方が忘れていることが多いよ。」
 すると泉は春樹に聞く。
「藤枝さんは結婚記念日とが覚えてます?」
「もちろん。籍を入れた日が、結婚記念日ならその日だね。」
「籍を?」
「式はまた別の日。俺は別に式なんかって思ったけれど、さすがに同じ出版社同士だからそうも言ってられなかったな。」
 同じ出版社の後輩と先輩とか、そんな感じなのだろう。だが春樹の仕事ぶりをみていたら、奥さんが意識不明だというのは都合が良いかもしれない。
 何せ、春樹は仕事しかしていないように思えるから。
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