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パニーニ
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ハードロック部署に帰ってくると、奏太がどこかに連絡をしているようだった。そして沙夜の姿を見て、少し手を上げる。デスクにやってくると奏太は受話器を置いてため息を付いた。
「間一髪だったな。」
「夏目さんは何も無かったの?」
すると奏太は頷いた。
「スタッフが純を呼びに行って、佐久間さんの楽屋に連れて行こうとしている直後だったらしい。つまり、件の騒ぎは楽屋は離れていたけど、佐久間さんの楽屋まではたどり着いていなかったんだ。」
それだけを聞いて沙夜は安心したように息をつく。一馬だけでは無い。純にも何かあってしまったら何を置いてでもテレビ局の方へ行きたいと思っていたから。
「良かった……。」
純は女性に組み敷かれた経験から、女性を嫌っているところがある。それは十年経とうと二十年経とうと、傷が癒えることは無い。
「話をあっちのテレビ局の方へしたらこっちに戻ってくるって言ってる。特に一馬には話があるだろうな。」
「前に仕事をしていたから?」
「一度きりだけど、あの曲はきっとポシャるよ。」
録音された佐久間芙美香の曲は奏太も聴いていた。さすがに何十年も第一線に居る歌手だ。キャリアの違いもあるだろうし、音の深み、声の厚さ、全てが桁違いで、ドラマの主題歌になると言っていたが、そのドラマにあるような生と死というのを見事に表現しているように感じた。
「そうよね。まさか若いスタッフに言い寄っていたなんて思ってなかった。ずっと独身を貫いているのは、昔の噂があったからだと思っていたんだけど。」
「大物歌手だろ?」
佐久間芙美香は前々から今は大物といわれている歌手の追っかけをしていたのだ。加藤啓介と同じくらいの年頃の歌手だが、加藤啓介の曲調よりももっとフォークに近いような歌手で、その歌手も弟子のように芙美香を可愛がっていたのだ。
だがその歌手は芙美香と関係を持つことは無かった。結婚と離婚を繰り返していたが、芙美香とは良い関係だと言うだけだろう。だが世の中はそう見てくれない。芙美香がその歌手から捨てられたというイメージが付いてしまった。
本当の芙美香は若い男が好きな女だった。十代後半から二十代くらいまでの可愛らしい男を自分の手で汚すのが好きらしい。そして今日、厳戒態勢で収録されようとしていたテレビ局のスタッフにもそういう男がいたのだ。マネージャーであるあいかは、注意をしていたようなのだがちょっとした隙を見て、芙美香はその男を楽屋に連れ込んだらしい。
抵抗を男はした。だが芙美香は脅しをかけてくる。ここで断ったら男が誘ってきたと公言すると。大物歌手であり尚且つ滅多にテレビなんかに出ないのに、苦労して出演をしてくれたのだ。それをそのスタッフ一人に潰され出もしたら、スタッフの未来は無いだろう。
「でもそのスタッフは耐えきれなかったのね。」
「当たり前だろ。レイプみたいなモノじゃん。」
前々からそんな噂があり、同じ目に遭っていたスタッフが感づいていた。そして行為をしようとしたその時、そのスタッフは芙美香の楽屋へ足を踏み入れ芙美香の行為は公になってしまったのだ。
「夏目さんが行かなくて本当に良かった。」
純にとって悪夢の再来になるところだった。そう思って沙夜はほっとする。
「でもさ……あいつが黙ってないと思うけど。」
「あいつ?」
「紫乃。」
紫乃の名前に沙夜は驚いて奏太を見る。
「どうして紫乃さんが?」
「ほら。見てみろよ。」
奏太がパソコンの映し出された画面を見ると、そこには佐久間芙美香のプロフィールが載っていた。いつデビューをしたのか、ヒット曲は何かとか、プライベートのことまで書かれている。その中に気になることがあった。
「この事務所って個人でしているところね。」
芙美香が所属するレコード会社は別にあるが、マネージメント関係の事務所は個人事務所だった。そしてその中にいくつかのバンドや歌手が在籍している。社長はおそらく芙美香のマネージャーであるあいかなのだろう。だがその事務所と提携している会社の大本の会社は、音響機器に強い家電のグループ会社だった。そのグループ会社の中には出版社とレコード会社もある。出版社は紫乃が在籍している会社であり、レコード会社は「Harem」が在籍してる会社だった。
「紫乃が黙ってるわけが無いよ。それから……本宮ってヤツも。これ、ニュースになるかな。」
「もみ消されるって事?」
「頭は下げたくないって思ってるだろうし。」
「……。」
だがもみ消すのは難しいだろう。そろそろニュースになってきているだろうし、そのドラマの主題歌もおそらく取り消される。だが今からこんなに金をつぎ込んでいるドラマの主題歌を作れる人がいるだろうか。そう考えるとテレビ局ももみ消すかも知れない。
「宮村ってヤツなら難しくないんじゃ無いのか。」
「かも知れないけど、その男性スタッフのことを考えると、同情するわ。」
「うん……。で……お前、まだどっか行くの?」
沙夜は置いている保冷バックを手にしようとしている。それを見て奏太は違和感を持ったのだろう。
「あぁ。鳴神さんに一緒に食事でもって言われて。」
「気に入られてるな。あの優男に。」
「優男に見えるの?」
「見た目だけな。くそ生意気。あんなので良く海外のバレエ団に籍を置けるよ。あっちのヤツってのは閉鎖的なところがあるのに、あんな奴がいたら絶対嫌われてるよ。」
「言っていることはまともよ。さすがに一馬の友達だけあるわ。」
その言葉に奏太は舌打ちをした。沙夜はおそらく順大と絡めるのが嬉しいのでは無い。一馬と仕事が出来るというのが嬉しいのだろう。
「何かあったら連絡するよ。それから、一馬と純が帰ってきたらクラシック部門にやれば良い?」
「あー。鳴神さんはこれから取材らしいのよ。食事を済ませたら私はこちらに戻ってくるから大丈夫だと思うけど。」
「それまでに戻ってこなかったらそっちにやるわ。」
「お願いね。」
沙夜はそう言ってまたオフィスを出て行く。正直、奏太が居てくれて良かった。順大のことと、佐久間芙美香のことと一緒に対応なんか出来ない。性格は受け入れられなくても、頼れるところは頼って良いのだ。そう教えてくれたのは一馬だった。
そしてこれから一馬と過ごせる時間が増えるだろう。おぼろげながらもどんな曲にするかは見えてきた。制作にこれからかかるなら、一馬のスタジオで作るだろう。
スタジオへは沙夜も行くことになる。仕事を確かにするかも知れないが、おそらくある程度きりが付いても一馬は沙夜を離すことは無い。つまりきっと何度も求めてくるはずだ。そう思うと顔が赤くなりそうになる。自分の中で期待するところもあるからだ。
クラシック部門がある階にたどり着いて、沙夜はそちらへ足を向ける。昼休憩はみんなもう終わっているのだろう。廊下には数人の人達が行き交っているが、手には資料なり楽譜なりを抱えている。のんきに会議室で食事などして良いのだろうか。そう思っていた。
そして会議室へやってくると、順大は携帯電話の画面を見て少し微妙な表情になっていた。
「お待たせしました。」
「いいや……。」
「どうかしましたか。」
「……取材が無くなった。」
その言葉に沙夜は驚いて順大の方を見る。すると順大はため息を付いて沙夜に言った。
「どこの雑誌の取材だったんですか?バレエの雑誌というのはあまり聞いたことが無いですが。」
大手の出版社から出ていることもあるが、バレエはこの国ではあまり需要が無い。なので順大が取材を受けるのは新聞社のスポーツ紙であったり、順大の見た目から女性誌なんかに載ることもある。これからバレエに興味を持ってくれれば良いと、思っていたから受けれるモノは受けていたのだが、それが無くなるとなると一本の仕事を失うことになる。つまり収入が減るのだ。
「この会社だ。」
その出版社を見て沙夜は驚いたように順大を見る。
「これは……。」
紫乃が居る会社だ。そうか。佐久間芙美香の件があって、取材をしようにも出来ない状況なのかも知れない。それなら責任が順大にあるわけでは無いのだ。
「なるほど……。それで……。」
「えぇ。そちらの出版社の都合だと思いますよ。でも確かにバレエの雑誌というのはそこまで無いですからね。」
「音楽雑誌は多いんだろう?」
「そうですね。同じ出版社でもハードロックの雑誌と総合的な音楽雑誌とありますから。」
「バレエだって規定とコンテンポラリーってのがあるのにな。くそ。」
バレエ団に所属しているのだ。それならそこまで金、金と言わなくても良いと思うのだが、そもそもどうしてこちらのテレビCMなんかに出ようと思ったのだろう。そんなことをしなくても生活は出来るだろうに。
「あの……込み入った話ですけど、そんなに仕事仕事と詰め込んでも……。」
「収入のことか?」
「えぇ。」
「バレエダンサーとしての寿命ってのはそんなに長くない。振付師って言うのも案外その道は狭いモノだ。なれるとは限らない。そうなると、生きていくために金が必要になってくるだろう?どうせ結婚なんかすることも無いだろうし、自分一人の老後の資金とかを考えるとな。」
「……老後……。」
「あんたも結婚はしそうに無いな。」
「まだ考えたこともありませんよ。あぁ。お茶でも買ってきましょうか。」
「水。」
「わかりました。行って来ますね。」
また会議室を出て行った。今度はそこまで長くかからないだろう。そう思ってまた携帯電話に手を伸ばす。
おそらくあの女は一馬といい仲なのだ。だが一馬は結婚していると言うし、子供が居るとも言っていた。だから嫌味のつもりで結婚はしないだろうと言ったのに、沙夜には伝わっていなかったようだ。そういう所も一馬に似ている。
いらつく女だ。そう思っていたのに、どうしてこんなに気になっているのだろう。そう思っていたときだった。部屋の外で男の叫び声と大きな音がした。そして女の悲鳴のような声が聞こえる。驚いて順大は携帯を手にしたまま会議室のドアへ向かい、そのドアを開ける。するとそこには倒れ込んでいる沙夜の姿があった。
「間一髪だったな。」
「夏目さんは何も無かったの?」
すると奏太は頷いた。
「スタッフが純を呼びに行って、佐久間さんの楽屋に連れて行こうとしている直後だったらしい。つまり、件の騒ぎは楽屋は離れていたけど、佐久間さんの楽屋まではたどり着いていなかったんだ。」
それだけを聞いて沙夜は安心したように息をつく。一馬だけでは無い。純にも何かあってしまったら何を置いてでもテレビ局の方へ行きたいと思っていたから。
「良かった……。」
純は女性に組み敷かれた経験から、女性を嫌っているところがある。それは十年経とうと二十年経とうと、傷が癒えることは無い。
「話をあっちのテレビ局の方へしたらこっちに戻ってくるって言ってる。特に一馬には話があるだろうな。」
「前に仕事をしていたから?」
「一度きりだけど、あの曲はきっとポシャるよ。」
録音された佐久間芙美香の曲は奏太も聴いていた。さすがに何十年も第一線に居る歌手だ。キャリアの違いもあるだろうし、音の深み、声の厚さ、全てが桁違いで、ドラマの主題歌になると言っていたが、そのドラマにあるような生と死というのを見事に表現しているように感じた。
「そうよね。まさか若いスタッフに言い寄っていたなんて思ってなかった。ずっと独身を貫いているのは、昔の噂があったからだと思っていたんだけど。」
「大物歌手だろ?」
佐久間芙美香は前々から今は大物といわれている歌手の追っかけをしていたのだ。加藤啓介と同じくらいの年頃の歌手だが、加藤啓介の曲調よりももっとフォークに近いような歌手で、その歌手も弟子のように芙美香を可愛がっていたのだ。
だがその歌手は芙美香と関係を持つことは無かった。結婚と離婚を繰り返していたが、芙美香とは良い関係だと言うだけだろう。だが世の中はそう見てくれない。芙美香がその歌手から捨てられたというイメージが付いてしまった。
本当の芙美香は若い男が好きな女だった。十代後半から二十代くらいまでの可愛らしい男を自分の手で汚すのが好きらしい。そして今日、厳戒態勢で収録されようとしていたテレビ局のスタッフにもそういう男がいたのだ。マネージャーであるあいかは、注意をしていたようなのだがちょっとした隙を見て、芙美香はその男を楽屋に連れ込んだらしい。
抵抗を男はした。だが芙美香は脅しをかけてくる。ここで断ったら男が誘ってきたと公言すると。大物歌手であり尚且つ滅多にテレビなんかに出ないのに、苦労して出演をしてくれたのだ。それをそのスタッフ一人に潰され出もしたら、スタッフの未来は無いだろう。
「でもそのスタッフは耐えきれなかったのね。」
「当たり前だろ。レイプみたいなモノじゃん。」
前々からそんな噂があり、同じ目に遭っていたスタッフが感づいていた。そして行為をしようとしたその時、そのスタッフは芙美香の楽屋へ足を踏み入れ芙美香の行為は公になってしまったのだ。
「夏目さんが行かなくて本当に良かった。」
純にとって悪夢の再来になるところだった。そう思って沙夜はほっとする。
「でもさ……あいつが黙ってないと思うけど。」
「あいつ?」
「紫乃。」
紫乃の名前に沙夜は驚いて奏太を見る。
「どうして紫乃さんが?」
「ほら。見てみろよ。」
奏太がパソコンの映し出された画面を見ると、そこには佐久間芙美香のプロフィールが載っていた。いつデビューをしたのか、ヒット曲は何かとか、プライベートのことまで書かれている。その中に気になることがあった。
「この事務所って個人でしているところね。」
芙美香が所属するレコード会社は別にあるが、マネージメント関係の事務所は個人事務所だった。そしてその中にいくつかのバンドや歌手が在籍している。社長はおそらく芙美香のマネージャーであるあいかなのだろう。だがその事務所と提携している会社の大本の会社は、音響機器に強い家電のグループ会社だった。そのグループ会社の中には出版社とレコード会社もある。出版社は紫乃が在籍している会社であり、レコード会社は「Harem」が在籍してる会社だった。
「紫乃が黙ってるわけが無いよ。それから……本宮ってヤツも。これ、ニュースになるかな。」
「もみ消されるって事?」
「頭は下げたくないって思ってるだろうし。」
「……。」
だがもみ消すのは難しいだろう。そろそろニュースになってきているだろうし、そのドラマの主題歌もおそらく取り消される。だが今からこんなに金をつぎ込んでいるドラマの主題歌を作れる人がいるだろうか。そう考えるとテレビ局ももみ消すかも知れない。
「宮村ってヤツなら難しくないんじゃ無いのか。」
「かも知れないけど、その男性スタッフのことを考えると、同情するわ。」
「うん……。で……お前、まだどっか行くの?」
沙夜は置いている保冷バックを手にしようとしている。それを見て奏太は違和感を持ったのだろう。
「あぁ。鳴神さんに一緒に食事でもって言われて。」
「気に入られてるな。あの優男に。」
「優男に見えるの?」
「見た目だけな。くそ生意気。あんなので良く海外のバレエ団に籍を置けるよ。あっちのヤツってのは閉鎖的なところがあるのに、あんな奴がいたら絶対嫌われてるよ。」
「言っていることはまともよ。さすがに一馬の友達だけあるわ。」
その言葉に奏太は舌打ちをした。沙夜はおそらく順大と絡めるのが嬉しいのでは無い。一馬と仕事が出来るというのが嬉しいのだろう。
「何かあったら連絡するよ。それから、一馬と純が帰ってきたらクラシック部門にやれば良い?」
「あー。鳴神さんはこれから取材らしいのよ。食事を済ませたら私はこちらに戻ってくるから大丈夫だと思うけど。」
「それまでに戻ってこなかったらそっちにやるわ。」
「お願いね。」
沙夜はそう言ってまたオフィスを出て行く。正直、奏太が居てくれて良かった。順大のことと、佐久間芙美香のことと一緒に対応なんか出来ない。性格は受け入れられなくても、頼れるところは頼って良いのだ。そう教えてくれたのは一馬だった。
そしてこれから一馬と過ごせる時間が増えるだろう。おぼろげながらもどんな曲にするかは見えてきた。制作にこれからかかるなら、一馬のスタジオで作るだろう。
スタジオへは沙夜も行くことになる。仕事を確かにするかも知れないが、おそらくある程度きりが付いても一馬は沙夜を離すことは無い。つまりきっと何度も求めてくるはずだ。そう思うと顔が赤くなりそうになる。自分の中で期待するところもあるからだ。
クラシック部門がある階にたどり着いて、沙夜はそちらへ足を向ける。昼休憩はみんなもう終わっているのだろう。廊下には数人の人達が行き交っているが、手には資料なり楽譜なりを抱えている。のんきに会議室で食事などして良いのだろうか。そう思っていた。
そして会議室へやってくると、順大は携帯電話の画面を見て少し微妙な表情になっていた。
「お待たせしました。」
「いいや……。」
「どうかしましたか。」
「……取材が無くなった。」
その言葉に沙夜は驚いて順大の方を見る。すると順大はため息を付いて沙夜に言った。
「どこの雑誌の取材だったんですか?バレエの雑誌というのはあまり聞いたことが無いですが。」
大手の出版社から出ていることもあるが、バレエはこの国ではあまり需要が無い。なので順大が取材を受けるのは新聞社のスポーツ紙であったり、順大の見た目から女性誌なんかに載ることもある。これからバレエに興味を持ってくれれば良いと、思っていたから受けれるモノは受けていたのだが、それが無くなるとなると一本の仕事を失うことになる。つまり収入が減るのだ。
「この会社だ。」
その出版社を見て沙夜は驚いたように順大を見る。
「これは……。」
紫乃が居る会社だ。そうか。佐久間芙美香の件があって、取材をしようにも出来ない状況なのかも知れない。それなら責任が順大にあるわけでは無いのだ。
「なるほど……。それで……。」
「えぇ。そちらの出版社の都合だと思いますよ。でも確かにバレエの雑誌というのはそこまで無いですからね。」
「音楽雑誌は多いんだろう?」
「そうですね。同じ出版社でもハードロックの雑誌と総合的な音楽雑誌とありますから。」
「バレエだって規定とコンテンポラリーってのがあるのにな。くそ。」
バレエ団に所属しているのだ。それならそこまで金、金と言わなくても良いと思うのだが、そもそもどうしてこちらのテレビCMなんかに出ようと思ったのだろう。そんなことをしなくても生活は出来るだろうに。
「あの……込み入った話ですけど、そんなに仕事仕事と詰め込んでも……。」
「収入のことか?」
「えぇ。」
「バレエダンサーとしての寿命ってのはそんなに長くない。振付師って言うのも案外その道は狭いモノだ。なれるとは限らない。そうなると、生きていくために金が必要になってくるだろう?どうせ結婚なんかすることも無いだろうし、自分一人の老後の資金とかを考えるとな。」
「……老後……。」
「あんたも結婚はしそうに無いな。」
「まだ考えたこともありませんよ。あぁ。お茶でも買ってきましょうか。」
「水。」
「わかりました。行って来ますね。」
また会議室を出て行った。今度はそこまで長くかからないだろう。そう思ってまた携帯電話に手を伸ばす。
おそらくあの女は一馬といい仲なのだ。だが一馬は結婚していると言うし、子供が居るとも言っていた。だから嫌味のつもりで結婚はしないだろうと言ったのに、沙夜には伝わっていなかったようだ。そういう所も一馬に似ている。
いらつく女だ。そう思っていたのに、どうしてこんなに気になっているのだろう。そう思っていたときだった。部屋の外で男の叫び声と大きな音がした。そして女の悲鳴のような声が聞こえる。驚いて順大は携帯を手にしたまま会議室のドアへ向かい、そのドアを開ける。するとそこには倒れ込んでいる沙夜の姿があった。
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