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一人飯
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少し早めに家を出たのは、たまたまだった。西藤裕太の奥さんの父親の調子が悪いので、入院している病院へ妻を送っていったから。この歳になると両親の調子が悪いというのは珍しい話では無い。季節の変わり目は特にそんな傾向にある。
元々奥さん側の父親は持病があり、乳担任を繰り返している。母親の方もそこまで精力的に動く方では無いのだ。二人の調子が悪くなったときには、奥さんだけでは無く隣の県に住んでいる奥さんの妹も兄の奥さんもやってくるのだ。
奥さんを病院へ送ったあと、裕太は車の中の音楽を変える。それは最近ずっと流している「二藍」と沙夜、そしてリー・ブラウンと向こうのコーディネーターの男が遊びで演奏した曲だった。
聴けば聴くほど敵わないと思う。植村朔太郎の結婚式の二次会の余興で沙夜と演奏をしたことがあるが、断然音が違う。リー・ブラウンが「二藍」を気に入ったと同時に沙夜のことも気に入った理由も何となくわかるようだ。
出来ればリー・ブラウンは「二藍」と沙夜をひっくるめて外国へ籍を移したいと申し出てきたのだが、それを六人は嫌がっているのだという。だが今の状態だったら六人はそれを迷っているはずだ。リーはそう言っていた。
それぞれに事情がある。その一つに宮村雅也のことが一つあるうだろうし説得すれば、こちらの国へ来るかもしれない。リーはそう言っていた。
確かに「二藍」のためにも沙夜のためにもこの国から出るのは良いことかも知れない。だが、まだ六人にはやり残したことがあるだろう。そう思いながら、会社にやってくる。車を置いて、会社の脇にあるコンビニでコーヒーを買った。そして会社のエントランスに入る。
まだ出社には早い時間なので、行き交う人達は少ない。中には夜通し仕事をしていた人も居るのだろうが、効率が悪いと思う。だがそれに裕太が気が付いたのは大分後のことだった。
バンド活動をしていたときは、夜型のメンバーもいて一晩中レコーディングをしていたこともある。もっと良いモノを、もっと精度の高いモノをと求めていた。外国のハードロックに負けないこの国のロックが出来るのだと信じていたから。
だが「二藍」はそんなことをしていない。当初三倉奈々子がしていたように、日が上がったらレコーディングをして日が沈んだら終わる。三食きっちりと食事をして適度な休憩を取り、家族との時間も大事にしてやっと音楽が出来るのだ。心身共に健康な状態では無ければ、音楽など出来ないだろう。音楽が無ければ生きていけないという人も居るが、実際は音楽が無くても生きていける。健康体では無ければ心も体も余裕は無くなるだろうから。
だから向こうの国でも、朝からレコーディングをして夜になったらコテージへ帰って眠っていたらしい。それだけに時差ぼけなど無ければ良いのだが。そう思いながら裕太はエレベーターを乗り、自分のオフィスへ入っていった。
まだ早すぎる時間だ。まだ誰も居ないだろうと思っていたのに、キーボードを叩く音がする。その音に裕太は驚いてそちらを見た。するとそこには沙夜の姿がある。
「泉さん……いつ帰ってきたの?」
すると沙夜は手を止めて裕太を見上げる。
「おはようございます。今朝、帰ってきました。それぞれのメンバーも今は自宅に帰っています。」
「そう……。で、なんで君がここに居るのか。」
「少しやらないといけないことがあったので。」
キーボードを叩き終わると、沙夜はプリンターの電源を入れた。そしてその紙をプリントアウトすると、裕太に差し出す。
「向こうの国での滞在にかかった経費のざっとした見積もりです。正確には二,三日後に向こうのコーディネーターから送られてくるとは思いますが、タイムラグがあると思うのでざっとした見積もりを。」
「あぁ……そうだったね。」
経費は帰ってきてから一週間以内に納めないといけない。それをきっちり守った上で沙夜は言っているのだろう。
「用事はこれだけです。すいません。二週間も空けていたのに、更に三日間もお休みを頂いて。」
「構わない。会社の決めていることだから。」
二週間の間、沙夜はずっと出勤していたことになる。だから少しまとまった休みをもらわなければ、公休すら消化出来ないのだ。
沙夜は自分のデスクに帰ると、パソコンの電源を切った。そして脇に置いていたキャリーケースを開くと、包みを取り出した。
「部長。これはお土産です。向こうのお菓子だそうですが。」
「ありがとう。みんなでわけるよ。」
有名な菓子だった。おそらく街なんかで買ったわけでは無く、空港で買ったようなモノだろう。沙夜は街を歩くような時間は無かったのだろうか。
「泉さんはこれからどこへ行くの?」
箱詰めのお菓子を置いて、裕太はそう聞くと沙夜は頷いて言う。
「……不動産屋さんへ行きます。ウィークリーが開いている所があれば良いのですが。」
「会社に言えば、社宅に入ることも出来ると思うけれど。」
そういう人も居ないことは無い。会社が借りているマンションの一室を、会社が面倒を見て安く社員に貸しているのだ。地方出身の新入社員なんかはそうする人が多いように思える。
「一時的なことです。ウィークリーだと一週間、二週間の単位で借りれると言いますし。」
「ホテルよりも気を遣わなくても良いからね。」
すると沙夜はぽつりと言った。
「ホテルだと料理が出来ないので。」
それが沙夜の一番ネックになっていることなのだろう。沙夜は料理が一番の息抜きなのだ。ホテルだとキッチンが付いていないことも多い。なので料理が出来るウィークリーを選んだのだ。
「泉さん。ずっと離れているわけでは無いよ。思ったよりも早く家には帰れるかも知れない。」
「……そうだと良いですね。」
沙夜の心中は複雑だった。帰りたいという気持ちもあるが、ウィークリーの場所を考えると帰りたく無いとも思える。それは一馬のスタジオが近い場所を選ぼうとしていたから。
そして今は芹と顔を合わせたくない。仕事で離れていたのを良いことに、一馬とセックスをした日もあったし、ウェディングドレス姿を見られてしまった。それが芹に希望を与えてしまったかも知れないのだから。
会社を出ると、そのまま沙夜は朝食を軽く取りそのまま不動産屋へ行く。開店したばかりの不動産屋は、バタバタしていたようだが丁寧に女性が対応してくれる。ここは一馬の奥さんである響子が紹介してくれたのだ。その響子も一馬がスタジオを探していたときに世話になったという。年頃はおそらく沙夜の母親くらいの年頃だろう。だから自分の娘が住むのならと言うのを前提に話をしているような気がした。
「この街は古い建物が多いですが、リフォームをしているので中は綺麗な物件は多いですよ。」
いくつかのウィークリーマンションがあるようだ。少し電車に乗ればビジネス街へ気軽に行けるので、短期で留まる人のためにもそういう物件がここにはあるらしい。短期で留まる人は割と若い人が多く、単身者ばかりなのだ。1Kや2Kの物件も結構ある。そういう物件が多いのは選択肢が広がって、都合が良い。
「内見されますか。」
「内見はともかくとして、すぐに住める所が良いです。」
ガスや電気がすぐ使えるような所。そういう所が良いと思っていたのだ。そしてその場所は限られた人にしか伝えたくない。会社は仕方ないとしても、翔や沙菜は微妙だし、芹には伝えたくなかった。
「わかりました。今だったらガス会社にも連絡が付くでしょうし、夜には住めるようになると思いますよ。」
そう言っていくつか出している部屋の中から、すぐに住める所を前に置いた。
「ここって……。」
「ガスじゃ無いんですよ。ここは。全部電気です。火事の心配がありませんね。」
オール電化という所もあるのだろう。その分割高に思えた。それに普通に生活するだけでも電気代が高くなりそうだと思う。
「実際に見た方が良いですよ。今から行きますか。」
「お願いします。」
こんなに何を急いでいるのかはわからない。その女性はそう思っていたが、訳ありの人というのは多い。脇に置いているスーツケースは家出をしてきた人のように思えた。だが話を聞けば、出張の帰りだという。
こんなにきちんとした家出をしてきた人なんかはあまり居ない。こういう所になるべく早く入りたいという人というのは、夫の暴力に悩んだ奥さんが家出をした人なんかが多いようだが、沙夜はしっかりしすぎている。もし夫が居るとしたら、自分が出て行かないで夫を追い出すような人になるだろう。そう思いながら女性は社用車の鍵を手にした。
元々奥さん側の父親は持病があり、乳担任を繰り返している。母親の方もそこまで精力的に動く方では無いのだ。二人の調子が悪くなったときには、奥さんだけでは無く隣の県に住んでいる奥さんの妹も兄の奥さんもやってくるのだ。
奥さんを病院へ送ったあと、裕太は車の中の音楽を変える。それは最近ずっと流している「二藍」と沙夜、そしてリー・ブラウンと向こうのコーディネーターの男が遊びで演奏した曲だった。
聴けば聴くほど敵わないと思う。植村朔太郎の結婚式の二次会の余興で沙夜と演奏をしたことがあるが、断然音が違う。リー・ブラウンが「二藍」を気に入ったと同時に沙夜のことも気に入った理由も何となくわかるようだ。
出来ればリー・ブラウンは「二藍」と沙夜をひっくるめて外国へ籍を移したいと申し出てきたのだが、それを六人は嫌がっているのだという。だが今の状態だったら六人はそれを迷っているはずだ。リーはそう言っていた。
それぞれに事情がある。その一つに宮村雅也のことが一つあるうだろうし説得すれば、こちらの国へ来るかもしれない。リーはそう言っていた。
確かに「二藍」のためにも沙夜のためにもこの国から出るのは良いことかも知れない。だが、まだ六人にはやり残したことがあるだろう。そう思いながら、会社にやってくる。車を置いて、会社の脇にあるコンビニでコーヒーを買った。そして会社のエントランスに入る。
まだ出社には早い時間なので、行き交う人達は少ない。中には夜通し仕事をしていた人も居るのだろうが、効率が悪いと思う。だがそれに裕太が気が付いたのは大分後のことだった。
バンド活動をしていたときは、夜型のメンバーもいて一晩中レコーディングをしていたこともある。もっと良いモノを、もっと精度の高いモノをと求めていた。外国のハードロックに負けないこの国のロックが出来るのだと信じていたから。
だが「二藍」はそんなことをしていない。当初三倉奈々子がしていたように、日が上がったらレコーディングをして日が沈んだら終わる。三食きっちりと食事をして適度な休憩を取り、家族との時間も大事にしてやっと音楽が出来るのだ。心身共に健康な状態では無ければ、音楽など出来ないだろう。音楽が無ければ生きていけないという人も居るが、実際は音楽が無くても生きていける。健康体では無ければ心も体も余裕は無くなるだろうから。
だから向こうの国でも、朝からレコーディングをして夜になったらコテージへ帰って眠っていたらしい。それだけに時差ぼけなど無ければ良いのだが。そう思いながら裕太はエレベーターを乗り、自分のオフィスへ入っていった。
まだ早すぎる時間だ。まだ誰も居ないだろうと思っていたのに、キーボードを叩く音がする。その音に裕太は驚いてそちらを見た。するとそこには沙夜の姿がある。
「泉さん……いつ帰ってきたの?」
すると沙夜は手を止めて裕太を見上げる。
「おはようございます。今朝、帰ってきました。それぞれのメンバーも今は自宅に帰っています。」
「そう……。で、なんで君がここに居るのか。」
「少しやらないといけないことがあったので。」
キーボードを叩き終わると、沙夜はプリンターの電源を入れた。そしてその紙をプリントアウトすると、裕太に差し出す。
「向こうの国での滞在にかかった経費のざっとした見積もりです。正確には二,三日後に向こうのコーディネーターから送られてくるとは思いますが、タイムラグがあると思うのでざっとした見積もりを。」
「あぁ……そうだったね。」
経費は帰ってきてから一週間以内に納めないといけない。それをきっちり守った上で沙夜は言っているのだろう。
「用事はこれだけです。すいません。二週間も空けていたのに、更に三日間もお休みを頂いて。」
「構わない。会社の決めていることだから。」
二週間の間、沙夜はずっと出勤していたことになる。だから少しまとまった休みをもらわなければ、公休すら消化出来ないのだ。
沙夜は自分のデスクに帰ると、パソコンの電源を切った。そして脇に置いていたキャリーケースを開くと、包みを取り出した。
「部長。これはお土産です。向こうのお菓子だそうですが。」
「ありがとう。みんなでわけるよ。」
有名な菓子だった。おそらく街なんかで買ったわけでは無く、空港で買ったようなモノだろう。沙夜は街を歩くような時間は無かったのだろうか。
「泉さんはこれからどこへ行くの?」
箱詰めのお菓子を置いて、裕太はそう聞くと沙夜は頷いて言う。
「……不動産屋さんへ行きます。ウィークリーが開いている所があれば良いのですが。」
「会社に言えば、社宅に入ることも出来ると思うけれど。」
そういう人も居ないことは無い。会社が借りているマンションの一室を、会社が面倒を見て安く社員に貸しているのだ。地方出身の新入社員なんかはそうする人が多いように思える。
「一時的なことです。ウィークリーだと一週間、二週間の単位で借りれると言いますし。」
「ホテルよりも気を遣わなくても良いからね。」
すると沙夜はぽつりと言った。
「ホテルだと料理が出来ないので。」
それが沙夜の一番ネックになっていることなのだろう。沙夜は料理が一番の息抜きなのだ。ホテルだとキッチンが付いていないことも多い。なので料理が出来るウィークリーを選んだのだ。
「泉さん。ずっと離れているわけでは無いよ。思ったよりも早く家には帰れるかも知れない。」
「……そうだと良いですね。」
沙夜の心中は複雑だった。帰りたいという気持ちもあるが、ウィークリーの場所を考えると帰りたく無いとも思える。それは一馬のスタジオが近い場所を選ぼうとしていたから。
そして今は芹と顔を合わせたくない。仕事で離れていたのを良いことに、一馬とセックスをした日もあったし、ウェディングドレス姿を見られてしまった。それが芹に希望を与えてしまったかも知れないのだから。
会社を出ると、そのまま沙夜は朝食を軽く取りそのまま不動産屋へ行く。開店したばかりの不動産屋は、バタバタしていたようだが丁寧に女性が対応してくれる。ここは一馬の奥さんである響子が紹介してくれたのだ。その響子も一馬がスタジオを探していたときに世話になったという。年頃はおそらく沙夜の母親くらいの年頃だろう。だから自分の娘が住むのならと言うのを前提に話をしているような気がした。
「この街は古い建物が多いですが、リフォームをしているので中は綺麗な物件は多いですよ。」
いくつかのウィークリーマンションがあるようだ。少し電車に乗ればビジネス街へ気軽に行けるので、短期で留まる人のためにもそういう物件がここにはあるらしい。短期で留まる人は割と若い人が多く、単身者ばかりなのだ。1Kや2Kの物件も結構ある。そういう物件が多いのは選択肢が広がって、都合が良い。
「内見されますか。」
「内見はともかくとして、すぐに住める所が良いです。」
ガスや電気がすぐ使えるような所。そういう所が良いと思っていたのだ。そしてその場所は限られた人にしか伝えたくない。会社は仕方ないとしても、翔や沙菜は微妙だし、芹には伝えたくなかった。
「わかりました。今だったらガス会社にも連絡が付くでしょうし、夜には住めるようになると思いますよ。」
そう言っていくつか出している部屋の中から、すぐに住める所を前に置いた。
「ここって……。」
「ガスじゃ無いんですよ。ここは。全部電気です。火事の心配がありませんね。」
オール電化という所もあるのだろう。その分割高に思えた。それに普通に生活するだけでも電気代が高くなりそうだと思う。
「実際に見た方が良いですよ。今から行きますか。」
「お願いします。」
こんなに何を急いでいるのかはわからない。その女性はそう思っていたが、訳ありの人というのは多い。脇に置いているスーツケースは家出をしてきた人のように思えた。だが話を聞けば、出張の帰りだという。
こんなにきちんとした家出をしてきた人なんかはあまり居ない。こういう所になるべく早く入りたいという人というのは、夫の暴力に悩んだ奥さんが家出をした人なんかが多いようだが、沙夜はしっかりしすぎている。もし夫が居るとしたら、自分が出て行かないで夫を追い出すような人になるだろう。そう思いながら女性は社用車の鍵を手にした。
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