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ドーナツ
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五人が話をしている間、沙夜はメッセージを送った。向こうの時間は夜遅くであり、メッセージが来ていても確認が出来るのは、こちらでは夜になるだろう。そう思っていたのだが、沙夜の携帯に着信が届く。沙夜はその相手に驚いて席を立った。
「電話か?」
沙夜の携帯にはこの時間はほとんど着信は無い。時差があるのでメッセージに限っているようなのに、着信だというのに違和感を感じたのだ。
「えぇ。起きてからで良いと思ったんだけど。」
そう言って沙夜はスタジオを出て行く。その様子にマイケルは複雑な思いを抱える。沙夜は一馬と不倫をしているらしいが、恋人が居るらしい。着信の相手はその恋人なのだろうか。一馬と不倫をしていても気が付かないような恋人は、きっと沙夜のことを放置しているか、関心が無いか、つまり愛情が冷めているのに惰性で付き合っている相手と言える。マイケルはそう思いながら資料に目を落とした。だがその文字も頭に入らない。どんな男が恋人なのだろうか。少なくとも束縛はしない男だろう。むしろ一馬の方が沙夜を縛っている気がした。
「……。」
そう思うと、マイケルは席を立つ。気になるのだ。普段なら立ち聞きなんかしない。なのに沙夜だけはそうしたいと思う。「夜」であることも最後まで認めなかったのだから。
スタジオを出ると、沙夜の姿を探す。話し声が聞こえてそちらへ向かった。
「……えぇ。そう……。だとしたらやはりそちらの方がまずいわね。「夜」のことは、あらかじめ予想が付いていたみたいで行動は早かったみたい。伝えるなら契約書にサインをするように言ってる。……うん……。平気。みんながいるから。でもやっぱりね……。」
「夜」のことを話しているようだ。その会話にマイケルは思わず息を潜める。
「どれだけ居てくれたら嬉しいだろうと思ったわ。え……。」
芹は今の時間まで仕事をしていたのは、仕事の追い込みをしているからだという。沙夜が帰ってきて数日間は、休みをもらうようになっているのだ。それを利用して芹も休暇を取る。そのために今は無理をしてでも仕事をしているのだから。
「この辺は海なのよ。だから山にでも行きましょう。紅葉ってもう終わっているかもしれないけれど。」
標高の高いところではまだ紅葉が楽しめる。そこへ行こうと芹は行ってくれた。それが嬉しく思える。
電話の一つだし、声をずっと聞いていなかった。芹に連絡をしたのは、確かに佐久間芙美香のことがきっかけだったかもしれないが、それでもこうやって何気ない話が出来るのが嬉しい。だがそれでも罪悪感になる。後ろめたいこと、つまり一馬のことが過るから。
「……無理はしないで。沙菜はどうしてる?」
沙菜の名前に芹も動揺した。沙菜はまだ帰ってきていない。おそらく撮影が押しているから。帰ってくるのは朝方になるだろう。
今日今の時間、沙菜が帰ってきてセックスをしなくて良かったと芹も思っていた。
「そう……わかった。じゃあ、おやすみなさい。」
そういって沙夜は通話を切る。そして廊下の壁にもたれかかった。そしてしばらくそうしていたが、すぐに思い直してスタジオへ向かおうと体を起こす。その時だった。そこに人が居ることに気が付いた。そしてそれはマイケルだったことに沙夜は少し動揺する。
「聞いていたの?趣味悪くない?立ち聞きなんて。」
「恋人か。」
「えぇ。」
「あちらに返ったらデートをするのか。」
「えぇ。そのつもり。」
「……その一馬に抱かれた体で恋人に抱かれるとはな。」
「あなたには関係ないわよね。」
わざと冷たい言い方をした。だがマイケルは動揺せずにいう。
「そうだな。それに関しては関係ない。だが……「夜」のことはこっちは大ありでね。」
その言葉に沙夜は少し動揺した。そんなところから聞いていたのかと思ったから。だがすぐに仕事の顔になる。
「契約書を用意するわ。それにサインをしたら全てを話す。」
「夜」のことはこちらの会社にも伝わっていたらしい。それもおそらくキャリーくらいの地位では無いと知られていなかったようだ。当然、末端であるマイケルやジョシュアが知るはずは無い。この国の社員があまり信用出来ないのはジョシュアや有佐を見てわかる。なので「夜」のことはトップシークレットになっていたのだ。
それも「二藍」が沙夜達の国を起点に、外国へ進出する為の布石なのだから。
「どうして表に出ない。あれだけ演奏も出来る、アレンジも出来るのだったら一人のアーティストとして十分……。」
「出来ないわ。その程度だから。」
「その程度?」
「その程度よ。」
沙夜はそういってスタジオへ戻ろうとした。その態度にマイケルは思わず沙夜の二の腕を掴む。
「あのフレーズだけでリーも俺もお前の実力がわかった。全部聴きたいと思えるくらい。あの演奏があれば、世界的にも認められるはずだ。」
「買いかぶりすぎよ。」
沙夜はそう言うと腕を放した。そしてため息を付くと、マイケルを見上げて言う。
「あの時のウェブ上の声が全てでしょう。誰でも思いつくようなフレーズで、演奏技術もプロというにはほど遠い、むしろアレンジをしてしまって作った人の怒りを買う。その程度なのよ。」
するとマイケルは首を横に振って言った。
「死んだヤツの曲をアレンジしているのは、死んだヤツが怒ると思っているのか。むしろ翔や純が作ったモノをアレンジして、二人が怒っているようには俺には見えない。むしろ……。」
「二人は妥協してくれているわ。それに「二藍」に関わるようになってから、ハードロックらしさがなくなったと……。」
「そのハードロックらしさというのは何なんだ。」
その言葉に沙夜は言葉を詰まらせる。自分が昔言ったことをマイケルが口にしたからだ。
「それは……。」
「俺はハードロックしか聴かなかったが、お前の音楽は新鮮だった。いや……「二藍」の音楽自体が、以前よりも色んなジャンルが入っていて心地良い。お前が関わっているからだろう。」
「……。」
「他のジャンルも聴いてみようと思えたんだ。その中にお前のモノがあれば良い。曲を聴かせてくれないか。」
すると沙夜は首を横に振る。そして顔色が真っ青になっていた。
「いや……。」
「沙夜。」
マイケルの手が再び沙夜の肩を掴む。そして正面を向かされた。
「実際に聴いても何も思わない。あなたがわかってくれるとは思えないから。」
「そこまで俺は信用が無いのか。」
「……仕事では信頼してる。だけど……あなたは事あるごとにハードロックでは無いと言っていたわね。「二藍」の音楽を。」
「……。」
「「夜」に関しても曲を聴いたことが無いと言っていたわ。でも今は僅かでも昔の音源がネットに上がっていることもあるのに、あなたはそれを聴こうともしない。生で聴いてそう思ったのかもしれないけれど、それでピアノを弾いてくれと言うのは虫が良すぎるんじゃ無いのかしら。」
そういうと沙夜は掴んでいるマイケルの手を振り払う。そしてスタジオへ戻ろうとした。その時だった。
沙夜の肩に再び手が置かれる。それはぐっと後ろに引き寄せられ、沙夜は後ろの方へ倒れそうになった。だが背中に温かいモノが当たる。そして匂いを感じた。それは男の匂い。腕を体に回され抱きしめられたと沙夜がわかるまで少し時間がかかったようだった。
「悪かった。」
「そんな手で黙らせようとするなんて……。」
沙夜はその体を振り払おうとした。だがマイケルはその腕に力を込めて、離さないようにする。そして弁解を始めた。
「確かに「夜」の音を俺は軽く受け止めていたのは事実だし、それをお前の前で言ってお前の信用を無くしたのは悪かったと思う。しかし調子が良いと言われても仕方ないのかもしれないが、俺もまたあれだけのフレーズでお前の音が好きになった。それに……お前自身にも。」
その言葉に沙夜は首を横に振る。そしてその体を振りほどいた。
「卑怯な男。」
沙夜はそう言って、スタジオへ戻って行く。その後ろ姿を見て、マイケルはため息を付いた。あと数日しか無いのに、仕事だけの関係で終わらせたくなかったからだ。
「電話か?」
沙夜の携帯にはこの時間はほとんど着信は無い。時差があるのでメッセージに限っているようなのに、着信だというのに違和感を感じたのだ。
「えぇ。起きてからで良いと思ったんだけど。」
そう言って沙夜はスタジオを出て行く。その様子にマイケルは複雑な思いを抱える。沙夜は一馬と不倫をしているらしいが、恋人が居るらしい。着信の相手はその恋人なのだろうか。一馬と不倫をしていても気が付かないような恋人は、きっと沙夜のことを放置しているか、関心が無いか、つまり愛情が冷めているのに惰性で付き合っている相手と言える。マイケルはそう思いながら資料に目を落とした。だがその文字も頭に入らない。どんな男が恋人なのだろうか。少なくとも束縛はしない男だろう。むしろ一馬の方が沙夜を縛っている気がした。
「……。」
そう思うと、マイケルは席を立つ。気になるのだ。普段なら立ち聞きなんかしない。なのに沙夜だけはそうしたいと思う。「夜」であることも最後まで認めなかったのだから。
スタジオを出ると、沙夜の姿を探す。話し声が聞こえてそちらへ向かった。
「……えぇ。そう……。だとしたらやはりそちらの方がまずいわね。「夜」のことは、あらかじめ予想が付いていたみたいで行動は早かったみたい。伝えるなら契約書にサインをするように言ってる。……うん……。平気。みんながいるから。でもやっぱりね……。」
「夜」のことを話しているようだ。その会話にマイケルは思わず息を潜める。
「どれだけ居てくれたら嬉しいだろうと思ったわ。え……。」
芹は今の時間まで仕事をしていたのは、仕事の追い込みをしているからだという。沙夜が帰ってきて数日間は、休みをもらうようになっているのだ。それを利用して芹も休暇を取る。そのために今は無理をしてでも仕事をしているのだから。
「この辺は海なのよ。だから山にでも行きましょう。紅葉ってもう終わっているかもしれないけれど。」
標高の高いところではまだ紅葉が楽しめる。そこへ行こうと芹は行ってくれた。それが嬉しく思える。
電話の一つだし、声をずっと聞いていなかった。芹に連絡をしたのは、確かに佐久間芙美香のことがきっかけだったかもしれないが、それでもこうやって何気ない話が出来るのが嬉しい。だがそれでも罪悪感になる。後ろめたいこと、つまり一馬のことが過るから。
「……無理はしないで。沙菜はどうしてる?」
沙菜の名前に芹も動揺した。沙菜はまだ帰ってきていない。おそらく撮影が押しているから。帰ってくるのは朝方になるだろう。
今日今の時間、沙菜が帰ってきてセックスをしなくて良かったと芹も思っていた。
「そう……わかった。じゃあ、おやすみなさい。」
そういって沙夜は通話を切る。そして廊下の壁にもたれかかった。そしてしばらくそうしていたが、すぐに思い直してスタジオへ向かおうと体を起こす。その時だった。そこに人が居ることに気が付いた。そしてそれはマイケルだったことに沙夜は少し動揺する。
「聞いていたの?趣味悪くない?立ち聞きなんて。」
「恋人か。」
「えぇ。」
「あちらに返ったらデートをするのか。」
「えぇ。そのつもり。」
「……その一馬に抱かれた体で恋人に抱かれるとはな。」
「あなたには関係ないわよね。」
わざと冷たい言い方をした。だがマイケルは動揺せずにいう。
「そうだな。それに関しては関係ない。だが……「夜」のことはこっちは大ありでね。」
その言葉に沙夜は少し動揺した。そんなところから聞いていたのかと思ったから。だがすぐに仕事の顔になる。
「契約書を用意するわ。それにサインをしたら全てを話す。」
「夜」のことはこちらの会社にも伝わっていたらしい。それもおそらくキャリーくらいの地位では無いと知られていなかったようだ。当然、末端であるマイケルやジョシュアが知るはずは無い。この国の社員があまり信用出来ないのはジョシュアや有佐を見てわかる。なので「夜」のことはトップシークレットになっていたのだ。
それも「二藍」が沙夜達の国を起点に、外国へ進出する為の布石なのだから。
「どうして表に出ない。あれだけ演奏も出来る、アレンジも出来るのだったら一人のアーティストとして十分……。」
「出来ないわ。その程度だから。」
「その程度?」
「その程度よ。」
沙夜はそういってスタジオへ戻ろうとした。その態度にマイケルは思わず沙夜の二の腕を掴む。
「あのフレーズだけでリーも俺もお前の実力がわかった。全部聴きたいと思えるくらい。あの演奏があれば、世界的にも認められるはずだ。」
「買いかぶりすぎよ。」
沙夜はそう言うと腕を放した。そしてため息を付くと、マイケルを見上げて言う。
「あの時のウェブ上の声が全てでしょう。誰でも思いつくようなフレーズで、演奏技術もプロというにはほど遠い、むしろアレンジをしてしまって作った人の怒りを買う。その程度なのよ。」
するとマイケルは首を横に振って言った。
「死んだヤツの曲をアレンジしているのは、死んだヤツが怒ると思っているのか。むしろ翔や純が作ったモノをアレンジして、二人が怒っているようには俺には見えない。むしろ……。」
「二人は妥協してくれているわ。それに「二藍」に関わるようになってから、ハードロックらしさがなくなったと……。」
「そのハードロックらしさというのは何なんだ。」
その言葉に沙夜は言葉を詰まらせる。自分が昔言ったことをマイケルが口にしたからだ。
「それは……。」
「俺はハードロックしか聴かなかったが、お前の音楽は新鮮だった。いや……「二藍」の音楽自体が、以前よりも色んなジャンルが入っていて心地良い。お前が関わっているからだろう。」
「……。」
「他のジャンルも聴いてみようと思えたんだ。その中にお前のモノがあれば良い。曲を聴かせてくれないか。」
すると沙夜は首を横に振る。そして顔色が真っ青になっていた。
「いや……。」
「沙夜。」
マイケルの手が再び沙夜の肩を掴む。そして正面を向かされた。
「実際に聴いても何も思わない。あなたがわかってくれるとは思えないから。」
「そこまで俺は信用が無いのか。」
「……仕事では信頼してる。だけど……あなたは事あるごとにハードロックでは無いと言っていたわね。「二藍」の音楽を。」
「……。」
「「夜」に関しても曲を聴いたことが無いと言っていたわ。でも今は僅かでも昔の音源がネットに上がっていることもあるのに、あなたはそれを聴こうともしない。生で聴いてそう思ったのかもしれないけれど、それでピアノを弾いてくれと言うのは虫が良すぎるんじゃ無いのかしら。」
そういうと沙夜は掴んでいるマイケルの手を振り払う。そしてスタジオへ戻ろうとした。その時だった。
沙夜の肩に再び手が置かれる。それはぐっと後ろに引き寄せられ、沙夜は後ろの方へ倒れそうになった。だが背中に温かいモノが当たる。そして匂いを感じた。それは男の匂い。腕を体に回され抱きしめられたと沙夜がわかるまで少し時間がかかったようだった。
「悪かった。」
「そんな手で黙らせようとするなんて……。」
沙夜はその体を振り払おうとした。だがマイケルはその腕に力を込めて、離さないようにする。そして弁解を始めた。
「確かに「夜」の音を俺は軽く受け止めていたのは事実だし、それをお前の前で言ってお前の信用を無くしたのは悪かったと思う。しかし調子が良いと言われても仕方ないのかもしれないが、俺もまたあれだけのフレーズでお前の音が好きになった。それに……お前自身にも。」
その言葉に沙夜は首を横に振る。そしてその体を振りほどいた。
「卑怯な男。」
沙夜はそう言って、スタジオへ戻って行く。その後ろ姿を見て、マイケルはため息を付いた。あと数日しか無いのに、仕事だけの関係で終わらせたくなかったからだ。
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