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弁護士
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翔と沙夜は遅くなるので食事は外で食べてくるらしい。「二藍」の誰かの事情なのだろう。ゴタゴタしているのだ。芹はそう思いながらシャワーから上がってくると部屋の換気のために窓を開けた。匂いが籠もっている気がするから。
そしてビニールに包まれているモノはコンドームとティッシュ。明日がゴミの日だからと、沙菜が処理をするらしい。あとは匂いを消すようなスプレーをかければ良い。そう思いながら芹はシャツを着た。そして畳の上に座り込むと自己嫌悪に陥りそうだった。
最初に沙菜とセックスをしたのは、ラブホテルの一室。そしてあまつさえ他人の家でセックスをしてしまった。しかも恋人の妹と。突っ込みどころが満載過ぎて笑えてくる。
沙夜はそれを知ってどう思うだろう。最低と罵るのだろうか。結婚したいなどと言っているのに妹と寝ているのだから、自分のやっていることが意地になっている気がする。
廊下で足音がして、沙菜が部屋に入ってきた。窓が開いているのを見て、少し納得したようだ。この中にいればわからないが匂いを気にしているのだろう。ここに沙夜が来ることもあるのだ。だから警戒しているに違いない。
「オナ○ーしてたって言えば良いのに。」
「してたってのもばれるのは嫌だ。」
「芹ってさ。少し潔癖なところがあるよね。それから姉さんを少し神格化しているんじゃ無いの?」
そう言って沙菜は畳の上に腰掛ける。
「どっちにしてもこんなのばれたら沙夜から何て言われるか。」
「ばれないよ。姉さんは仕事しかしてないのに。」
隙があるから芹に手を出すことが出来た。それにその隙を作った理由は、きっと一馬にあると思う。二人で閉店したラブホテル、そして今は倉庫とか音楽スタジオになっているようなところに入っていったのだ。それがどういう意味なのか、沙菜にはどうしても違う意味にしか捉えられない。
芹が結婚したいとまで言っているのに、沙夜は一馬と何かあるのかもしれないと思うと腹が立つ。こんなに沙夜のことを思っていて、結婚したいと言っているのに別の人を見ているのが嫌なのだ。
「外国へ今度行くじゃん。その時はセックス沢山出来るね。翔も姉さんも居ないんだし。」
「あぁ。俺その時はここにはいないんだよ。」
「え?そうだっけ?」
「Nの方に行くんだ。仕事の取材で。」
「あたしも付いて行こうかな。」
「来なくて良いよ。」
冷たい言い方をするようだが、そうでは無いと本当に沙菜の方に気が向いてしまいそうだった。あまりにも沙夜が側にいないのだから。
「歌手とか役者とかさ。まぁ……あたし達もそうだけど、本当に家に居ないよね。翔なんかスタジオに籠もる方が長いんじゃ無いのかな。」
「そんなモノなんだろうな。表に出るような仕事をしているヤツってのは。」
芹はそれを承知で沙夜と付き合っているのだ。だが沙夜はまだ家に帰ってくる方だろう。それなのに休みの日でも外に出掛けて家の中にはほとんど居ない。芹とは本当に時間が合わないのだ。
「でも芹さ。結局、うちの実家に行くのって少し遅らせたんでしょ?」
「うん。帰ってきてからで良いかと思って。思ったら少し焦りすぎているところだってあったし……。」
「そうじゃないんじゃ無い?」
そう言って沙菜は少し笑う。
「何が?」
「まぁ、姉さんには言い辛いよね。あたしとこういう事をしてるって。」
「言うなよ。お前。」
「わかってるよ。」
こんなことがばれれば翔だって沙菜を軽蔑する。それでも沙菜自体も芹の体が気持ちよくて離れづらいと思うところがあった。思った異常に気持ちの良いセックスをする男だと思う。少しサディストな所があったり、なのに丁寧に愛撫をするのは相手のことを考えているから。
AVというのは見せるセックスをするので、派手なパフォーマンスをすることが多い。それが気持ちいいとは限らないのだが、芹はそんなことを考えてしていない。つまりAV女優の「日和」というのを一切意識していないのだ。それがとても心地良い。
「姉さんは良いよね。こんなにまめにしてくれる人なんてそう居ないんだけど。」
「あいつ感じやすいよ。」
「うん。まぁ……相当濡れやすいってのは聞いているけど。」
最初に処女を奪わせた誠二という男から聞いている。処女だと言っていたのに出血も無く、シーツが相当汚れるくらい濡れていたらしい。濡れているからといって感じているとは限らないのに。実際沙夜からは痛みしか無かったという話を聞いている。つまりあの誠二という男は勘違いをしているのだ。
そして芹はそれを感じていて、丁寧に沙夜もまた感じるようにセックスをしていたのだろう。つまり芹もそう言うことに慣れているのだ。そしてそれを慣れさせたのは、一度居酒屋で会った紫乃という女性なのだろう。
「芹ってセックスはその……前に会った紫乃って人が最初なの?」
すると芹は頷いた。
「何もかもが初めてだった。俺、あまり男とか女とかって言うのが好きじゃ無くて。今思えば打算的だと思うけど。」
「打算的?」
「兄が近づけた。それで俺がまんまと填まったから。」
紫乃が好きだという気持ちはずっと持っていた。セックスをしたい、キスをしたいとずっと思っていたが、セックスをすれば子供が出来ない可能性がゼロでは無いのだ。そう思うとむやみにしたくなかった。もっと自分が責任を取れるまで、そして紫乃と肩を並べれるまで待とうと思い、就職が決まってやっと告白をしたのだ。
「長いね。それまでずっと待ってたんだ。で、その紫乃さんって人が教えてくれたの?」
「まぁ紫乃が教えた部分もあるけど、あとは兄さんが教えてくれたかな。高校生くらいの時にエロ本をくれたんだ。でもあまり興味は無かったかな。俺、どっちかって言うと写真なんかよりも文章の方がすんなり想像つくし。」
「あー……だからかぁ。」
そう言って沙菜は立ち上がると棚にある本を一冊取り出した。それは沙菜が好きで憧れていた男優の妻になった女性の本だった。今はその男は一般的な俳優になり、官能小説家だった妻は、今は官能のジャンルに縛られていない。その女性の本があったのだ。
「これ見て参考にしてたの?」
「まぁな。」
男と女の体は違う。それに個人差もあるのだ。その本はそう言っていた。だから沙夜が感じるところ、沙菜が感じるところを探るつもりだったのだが、それが沙菜にとっては丁寧な愛撫という結果に繋がったのだろう。
「あたしが教えたのも参考にしてよね。」
沙菜はそう言って本を棚にしまう。だがそう言っていながらも、沙夜に同じようなことをすると思うと腹が立ちそうだ。
「そういえば、今日ってご飯どうするの?姉さん達今日は遅くなるって言っていたけど。」
「そういえばそうだったな。何かあったかなぁ。必要に応じて買いに行くか。」
「一緒に行くよ。」
「お前が言っても役に立たないだろ。良いよ。なんだかんだ言っても体だって辛いだろうし。」
セックスのあとは倦怠感が襲ってくる。芹はそれを心配していたのだろう。優しい人だ。だからこそ、沙夜が何をしていたかと思うと腹が立つのだ。
その時だった。玄関のチャイムが鳴る。
「はい。はい。」
芹はそのまま部屋を出ると、玄関へ向かった。そしてのぞき穴から外を見る。そこにはお馴染みの顔があった。ドアを開けると、そこには中年の女性がいる。
「母さん。」
芹の母親だった。手には紙袋が握られている。
「連絡もしないで悪かったわね。ちょっと近くに来たモノだから寄ってみたんだけど。大丈夫だったかしら。」
「平気。仕事の休憩をしてたんだ。」
「今日は同居人さんは居ないの?」
「一人は居るけど。別に気を遣うようなヤツじゃ無いから。中でお茶でも淹れるわ。」
「あら。そう。悪いわね。あぁ。これ良かったら食べて。」
そう言って母親は芹にビニールの袋を手渡した。そこには、梨がいくつか入っている。
「梨じゃん。美味しいよな。これ親戚の?」
「そう。孝夫叔父さんのところのよ。あら。」
奥から沙菜が出て来た。その顔に母親は驚いたように見る。いつか沙夜を連れてきて、恋人だと紹介していた。その沙夜にそっくりだが、若干こちらの方が派手な印象がある。
「初めまして。泉沙菜と言います。」
「沙夜さんの?」
「双子の妹です。」
そう言われて母親は芹の方を見る。夜の商売をしているような女性に見えるようなケバい女だと思った。こんな女性が身内にいるのかと、心の中でため息を付いた。
そしてビニールに包まれているモノはコンドームとティッシュ。明日がゴミの日だからと、沙菜が処理をするらしい。あとは匂いを消すようなスプレーをかければ良い。そう思いながら芹はシャツを着た。そして畳の上に座り込むと自己嫌悪に陥りそうだった。
最初に沙菜とセックスをしたのは、ラブホテルの一室。そしてあまつさえ他人の家でセックスをしてしまった。しかも恋人の妹と。突っ込みどころが満載過ぎて笑えてくる。
沙夜はそれを知ってどう思うだろう。最低と罵るのだろうか。結婚したいなどと言っているのに妹と寝ているのだから、自分のやっていることが意地になっている気がする。
廊下で足音がして、沙菜が部屋に入ってきた。窓が開いているのを見て、少し納得したようだ。この中にいればわからないが匂いを気にしているのだろう。ここに沙夜が来ることもあるのだ。だから警戒しているに違いない。
「オナ○ーしてたって言えば良いのに。」
「してたってのもばれるのは嫌だ。」
「芹ってさ。少し潔癖なところがあるよね。それから姉さんを少し神格化しているんじゃ無いの?」
そう言って沙菜は畳の上に腰掛ける。
「どっちにしてもこんなのばれたら沙夜から何て言われるか。」
「ばれないよ。姉さんは仕事しかしてないのに。」
隙があるから芹に手を出すことが出来た。それにその隙を作った理由は、きっと一馬にあると思う。二人で閉店したラブホテル、そして今は倉庫とか音楽スタジオになっているようなところに入っていったのだ。それがどういう意味なのか、沙菜にはどうしても違う意味にしか捉えられない。
芹が結婚したいとまで言っているのに、沙夜は一馬と何かあるのかもしれないと思うと腹が立つ。こんなに沙夜のことを思っていて、結婚したいと言っているのに別の人を見ているのが嫌なのだ。
「外国へ今度行くじゃん。その時はセックス沢山出来るね。翔も姉さんも居ないんだし。」
「あぁ。俺その時はここにはいないんだよ。」
「え?そうだっけ?」
「Nの方に行くんだ。仕事の取材で。」
「あたしも付いて行こうかな。」
「来なくて良いよ。」
冷たい言い方をするようだが、そうでは無いと本当に沙菜の方に気が向いてしまいそうだった。あまりにも沙夜が側にいないのだから。
「歌手とか役者とかさ。まぁ……あたし達もそうだけど、本当に家に居ないよね。翔なんかスタジオに籠もる方が長いんじゃ無いのかな。」
「そんなモノなんだろうな。表に出るような仕事をしているヤツってのは。」
芹はそれを承知で沙夜と付き合っているのだ。だが沙夜はまだ家に帰ってくる方だろう。それなのに休みの日でも外に出掛けて家の中にはほとんど居ない。芹とは本当に時間が合わないのだ。
「でも芹さ。結局、うちの実家に行くのって少し遅らせたんでしょ?」
「うん。帰ってきてからで良いかと思って。思ったら少し焦りすぎているところだってあったし……。」
「そうじゃないんじゃ無い?」
そう言って沙菜は少し笑う。
「何が?」
「まぁ、姉さんには言い辛いよね。あたしとこういう事をしてるって。」
「言うなよ。お前。」
「わかってるよ。」
こんなことがばれれば翔だって沙菜を軽蔑する。それでも沙菜自体も芹の体が気持ちよくて離れづらいと思うところがあった。思った異常に気持ちの良いセックスをする男だと思う。少しサディストな所があったり、なのに丁寧に愛撫をするのは相手のことを考えているから。
AVというのは見せるセックスをするので、派手なパフォーマンスをすることが多い。それが気持ちいいとは限らないのだが、芹はそんなことを考えてしていない。つまりAV女優の「日和」というのを一切意識していないのだ。それがとても心地良い。
「姉さんは良いよね。こんなにまめにしてくれる人なんてそう居ないんだけど。」
「あいつ感じやすいよ。」
「うん。まぁ……相当濡れやすいってのは聞いているけど。」
最初に処女を奪わせた誠二という男から聞いている。処女だと言っていたのに出血も無く、シーツが相当汚れるくらい濡れていたらしい。濡れているからといって感じているとは限らないのに。実際沙夜からは痛みしか無かったという話を聞いている。つまりあの誠二という男は勘違いをしているのだ。
そして芹はそれを感じていて、丁寧に沙夜もまた感じるようにセックスをしていたのだろう。つまり芹もそう言うことに慣れているのだ。そしてそれを慣れさせたのは、一度居酒屋で会った紫乃という女性なのだろう。
「芹ってセックスはその……前に会った紫乃って人が最初なの?」
すると芹は頷いた。
「何もかもが初めてだった。俺、あまり男とか女とかって言うのが好きじゃ無くて。今思えば打算的だと思うけど。」
「打算的?」
「兄が近づけた。それで俺がまんまと填まったから。」
紫乃が好きだという気持ちはずっと持っていた。セックスをしたい、キスをしたいとずっと思っていたが、セックスをすれば子供が出来ない可能性がゼロでは無いのだ。そう思うとむやみにしたくなかった。もっと自分が責任を取れるまで、そして紫乃と肩を並べれるまで待とうと思い、就職が決まってやっと告白をしたのだ。
「長いね。それまでずっと待ってたんだ。で、その紫乃さんって人が教えてくれたの?」
「まぁ紫乃が教えた部分もあるけど、あとは兄さんが教えてくれたかな。高校生くらいの時にエロ本をくれたんだ。でもあまり興味は無かったかな。俺、どっちかって言うと写真なんかよりも文章の方がすんなり想像つくし。」
「あー……だからかぁ。」
そう言って沙菜は立ち上がると棚にある本を一冊取り出した。それは沙菜が好きで憧れていた男優の妻になった女性の本だった。今はその男は一般的な俳優になり、官能小説家だった妻は、今は官能のジャンルに縛られていない。その女性の本があったのだ。
「これ見て参考にしてたの?」
「まぁな。」
男と女の体は違う。それに個人差もあるのだ。その本はそう言っていた。だから沙夜が感じるところ、沙菜が感じるところを探るつもりだったのだが、それが沙菜にとっては丁寧な愛撫という結果に繋がったのだろう。
「あたしが教えたのも参考にしてよね。」
沙菜はそう言って本を棚にしまう。だがそう言っていながらも、沙夜に同じようなことをすると思うと腹が立ちそうだ。
「そういえば、今日ってご飯どうするの?姉さん達今日は遅くなるって言っていたけど。」
「そういえばそうだったな。何かあったかなぁ。必要に応じて買いに行くか。」
「一緒に行くよ。」
「お前が言っても役に立たないだろ。良いよ。なんだかんだ言っても体だって辛いだろうし。」
セックスのあとは倦怠感が襲ってくる。芹はそれを心配していたのだろう。優しい人だ。だからこそ、沙夜が何をしていたかと思うと腹が立つのだ。
その時だった。玄関のチャイムが鳴る。
「はい。はい。」
芹はそのまま部屋を出ると、玄関へ向かった。そしてのぞき穴から外を見る。そこにはお馴染みの顔があった。ドアを開けると、そこには中年の女性がいる。
「母さん。」
芹の母親だった。手には紙袋が握られている。
「連絡もしないで悪かったわね。ちょっと近くに来たモノだから寄ってみたんだけど。大丈夫だったかしら。」
「平気。仕事の休憩をしてたんだ。」
「今日は同居人さんは居ないの?」
「一人は居るけど。別に気を遣うようなヤツじゃ無いから。中でお茶でも淹れるわ。」
「あら。そう。悪いわね。あぁ。これ良かったら食べて。」
そう言って母親は芹にビニールの袋を手渡した。そこには、梨がいくつか入っている。
「梨じゃん。美味しいよな。これ親戚の?」
「そう。孝夫叔父さんのところのよ。あら。」
奥から沙菜が出て来た。その顔に母親は驚いたように見る。いつか沙夜を連れてきて、恋人だと紹介していた。その沙夜にそっくりだが、若干こちらの方が派手な印象がある。
「初めまして。泉沙菜と言います。」
「沙夜さんの?」
「双子の妹です。」
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