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スイートポテト
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鶏の天ぷらとサツマイモの天ぷらが揚がったくらいの時に、沙菜が帰ってきた。そして久しぶりに四人が揃って食事をしている。サツマイモは揚げると甘みが増すが、おかずにもなるのでとても便利だと思う。
「姉さんさ。スイートポテトって作れない?」
芋の天ぷらを食べて沙菜はそう聞くと、沙夜は少し驚いたように聞く。
「作れないことは無いけれど、あなたが個人的に楽しみたいの?数は必要ないかしら。」
すると沙菜は手を振って言う。
「今度レズモノに出るんだけど、その相手役の女の子は凄いこだわりがあるみたいでさ。」
「こだわり?」
「ビーガンなのよ。」
すると沙夜は少し箸を止めて迷っているようだった。
「ビーガンって何?」
翔は沙菜にそう聞くと、沙菜は思い出しながら言う。
「菜食主義者なのよね。」
その言葉に芹は首を横に振る。
「ただ単に菜食主義のベジタリアンってわけじゃ無いだろ。ビーガンって事は。」
「え?違うの?」
沙菜はそう言うと、芹は頷いた。
「ベジタリアンは乳製品や卵は口にするけれど、ビーガンってなるとそれも口にしない。着るモノも動物性のモノは身につけない。そいつ麻とか綿しか着ないのか?」
「そうみたい。衣装だったら何でも着ているみたいだけど、私服は東南アジアの民族衣装みたいなモノを着ているみたい。化粧品だって手作りだし。」
「生きるだけで手間がかかるような女だな。」
芹はそう言うと沙菜は手を振って言う。
「でもその子、凄い評判良いんだよ。男優の中でもピカイチ。」
食生活や生活習慣で相当気を遣っているからだろう。それが体に素直に出ているのだ。
「ちょっと難しそうね。スイートポテトってなると……卵も生クリームも使えないし。蜂蜜も駄目なのよねぇ。」
沙夜はそう言って少し考えてるようだった。
「砂糖は?」
芹はそう聞くと、沙夜は首をひねって言う。
「甜菜糖とか黒糖を使えば何とかなるかもしれないけれど、スイートポテトの特有の照りなんかはどうするかなぁ。」
「あとは豆乳とか?」
翔がそう聞くと、沙夜は頷いた。
「沙菜。その子との撮影っていつ?」
「冬だからそんなに焦ってないよ。」
少ししたら外国へ行く。治の都合に合わせるのだ。アルバムの発売は冬に予定をしているとしか言っていない。なので時間の都合は合わせられる。
その間にそのスイートポテトを作ってみても良いだろう。
「忍さんと連絡をしてみようかな。辰雄さん越しに連絡は出来るし。」
「そういえば、今日、辰雄さんの所に行ったんだろ?どうだった?」
芹がそう聞くと、沙夜は少し笑って言う。
「もう産まれそうなくらいお腹が大きくてね。それでも鶏舎の掃除なんかをしているのよ。動かないと嫌みたいでね。」
「忍さんらしいよ。」
芹と沙夜の共通の話題に、翔と沙菜は蚊帳の外だ。だが沙菜はそもそもそんな田舎に興味は無いし、翔は沙夜に拒絶されたばかりだ。おそらく翔が行くことは無いかもしれない。
だが翔は要らないことを言ったとは思っていない。沙夜は一馬に惹かれているとしか思えなかったのだから。
沙菜が風呂から出ると沙夜に声をかける。すると沙夜はすぐに下着や部屋着を持って風呂場へ向かった。それを見て、沙菜はそっと芹の部屋のドアをノックする。
「芹。ちょっと良い?」
すると芹はパソコンの画面から目を離して、沙菜の方を見る。
「なんだよ。」
ドアを閉めて沙菜は芹の前に座り込んだ。沙菜は寝るときは露出があるような緩いシャツやショートパンツを履いている。体を締め付けたくないのだ。その割には胸にはナイトブラというモノをしている。胸を垂らしたくないと思っているのかもしれない。
「今日さ。母さんから連絡があってさ。」
「お前の?」
「うん。」
「何の用事だったんだ。」
すると沙菜は少し戸惑ったように言う。
「姉さんにお見合いをさせたいから、いつ帰って来れそうなのかって。」
「お前に聞くことかなぁ。」
「姉さんは母さんをブロックしているから、あたしに連絡をいつもよこすのよ。」
やはり早めに挨拶に行った方が良い。芹はそう思いながら机に置いていた卓上カレンダーを見る。だが詩集が発売されるのだ。芹自身も時間があまりない。
「ねぇ、マジでうちに来るつもりなの?」
「お前は認めないかもしれないけど、親が良いって言ったらお前だって反対しづらいだろ。」
「姉さんに言ってるの?」
「まだ。」
「何で言えないの?姉さんがお風呂出たら言ったら良いのに。」
「……るせぇな。お前に指示されなくても良いから。」
すると沙菜は頬を膨らませて言う。
「本当に結婚する気があるのかもわからないよ。芹を見てると。それに姉さんは結婚する気なんか無いように見えるけど。」
仕事と自分のしたいことだけを考えている。芹のことも見ていないようだ。
「お前に何がわかるんだよ。あいつだってお前のことなんか考えてないのに。」
「姉さんは考えてくれているよ。」
「だったらなんで辛い高菜漬けなんかお前に食わせようとしてるんだよ。唐辛子の辛さはお前が苦手にしてるってわかっててさ。」
「高菜漬け?あぁ、さっきのご飯で出てたヤツ?あれくらいならあたし食べられるよ。姉さんはそれをわかってやってたんでしょ?わかって無いの芹じゃん。」
許容範囲も沙夜はわかっていたのだ。だからすんなり漬物を出した。そして沙夜を信用しているように、沙菜が沙夜に頼み事をするのも沙夜を信用しているからだ。
「ったく……。沙夜と喧嘩っぽくなったのに、無駄だったじゃん。」
「喧嘩?」
「お前が食えないだろうから出すなって言ったんだよ。そしたら食べたくなければ食べないで良いって。」
「姉さんはいつもそんな感じじゃん。ご飯だって無理して食べて貰おうとは思ってないよ。作るのは好きで、食べて美味しいって言われるのは何よりも嬉しいことかもしれないけれど、食べたくないのを無理に食べさせようとは思ってないし。」
「……。」
「芹ってあまり姉さんのことがわかってないよね。もしかして翔の方がまだわかってるんじゃ無いの?」
「そんなわけねぇよ。俺が……。」
「二人の時間だって少ないし、恋人同士に見えない。相手がピンチの時にしか駆けつけられなくて、心のよりどころにもなってないのに恋人なんてちゃんちゃらおかしいよ。母さんを説得なんか絶対出来ないわ。」
その言葉に、芹はむっとしたように沙菜に言う。
「どんな母親よりも兄嫁ほど性悪じゃ無いだろ。」
「その兄嫁にもまだ話は出来ていないんでしょ?身内になるんだよ?芹は理想ばかり並べてて、現実を見ていないじゃない。」
「忙しいんだよ。」
「仕事が忙しいって、姉さんだって忙しいじゃ無い。」
「最悪籍だけでも入れるから。」
「だから許すはず無いって。」
「お前は反対なんだろうけど、沙夜はどう思ってるかなんてお前にはわからないだろ?」
「わかってるよ。姉妹だもん。姉さんは……。」
その時だった芹の部屋をガラッと開けられて、二人はそちらを見る。そこには翔の姿があった。不機嫌そうに二人を見下ろす。
「うるさい。喧嘩なら別でしてくれないか。」
声が筒抜けだったのだろう。ばつが悪そうに沙菜はその場をあとにする。それにこれ以上言っても何も変わらないと思うから。
そして翔も部屋に戻ろうとしたときだった。リビングのドアが開いて、沙夜が出てきた。
「あぁ。ちょうど良かった。翔。お風呂空いたからどうぞ。」
沙夜は何も聞いていないようだった。そう思いながら翔はいつも通りの顔に戻る。
「沙夜さ。」
すると沙夜は不思議そうに翔を見る。
「何?」
「……芹と結婚するつもりなのか?」
すると沙夜はちらっと芹の部屋の方を見ると、ぽつりと言う。
「現実的では無いわね。」
「え?」
沙夜には一馬のこともある。そして芹にはすずのことや紫乃のこと。そして互いの家庭環境のこと。それを考えると結婚するというのは難しい気がした。
「私も芹も仕事をしていて、もし私が妊娠でもしたらって考えるとね。フリーの芹が支えられるくらい収入があれば良いんだけど。」
「フリーって言うのはそんなに厳しいかな?」
「そうね。それで母が納得するとは思えないけれど。」
そう言って沙夜は部屋に戻る。そして携帯電話を手にすると、メッセージをチェックした。一馬からのメッセージが届いていて、添え付けられた画像には今日、沙夜がお裾分けをしたサツマイモで作ったサラダがある。こういう使い方もあるのかと、沙夜は感心しながらメッセージを送った。
するとすぐに一馬からのメッセージが届く。またスタジオに来て欲しいと。奥さんと子供が居ないとき、そして沙夜の都合が良いときなどそんなに無いと思っていたが、案外時間というのは作ろうと思えば作られる。今日だって行くつもりは無かったのに、短い時間でも会いたいと思ったのは辰雄からの言葉からだった。
絶対に認めてくれる関係では無いのに、それでも見て見ぬふりをしてくれる。それが嬉しかった。
「姉さんさ。スイートポテトって作れない?」
芋の天ぷらを食べて沙菜はそう聞くと、沙夜は少し驚いたように聞く。
「作れないことは無いけれど、あなたが個人的に楽しみたいの?数は必要ないかしら。」
すると沙菜は手を振って言う。
「今度レズモノに出るんだけど、その相手役の女の子は凄いこだわりがあるみたいでさ。」
「こだわり?」
「ビーガンなのよ。」
すると沙夜は少し箸を止めて迷っているようだった。
「ビーガンって何?」
翔は沙菜にそう聞くと、沙菜は思い出しながら言う。
「菜食主義者なのよね。」
その言葉に芹は首を横に振る。
「ただ単に菜食主義のベジタリアンってわけじゃ無いだろ。ビーガンって事は。」
「え?違うの?」
沙菜はそう言うと、芹は頷いた。
「ベジタリアンは乳製品や卵は口にするけれど、ビーガンってなるとそれも口にしない。着るモノも動物性のモノは身につけない。そいつ麻とか綿しか着ないのか?」
「そうみたい。衣装だったら何でも着ているみたいだけど、私服は東南アジアの民族衣装みたいなモノを着ているみたい。化粧品だって手作りだし。」
「生きるだけで手間がかかるような女だな。」
芹はそう言うと沙菜は手を振って言う。
「でもその子、凄い評判良いんだよ。男優の中でもピカイチ。」
食生活や生活習慣で相当気を遣っているからだろう。それが体に素直に出ているのだ。
「ちょっと難しそうね。スイートポテトってなると……卵も生クリームも使えないし。蜂蜜も駄目なのよねぇ。」
沙夜はそう言って少し考えてるようだった。
「砂糖は?」
芹はそう聞くと、沙夜は首をひねって言う。
「甜菜糖とか黒糖を使えば何とかなるかもしれないけれど、スイートポテトの特有の照りなんかはどうするかなぁ。」
「あとは豆乳とか?」
翔がそう聞くと、沙夜は頷いた。
「沙菜。その子との撮影っていつ?」
「冬だからそんなに焦ってないよ。」
少ししたら外国へ行く。治の都合に合わせるのだ。アルバムの発売は冬に予定をしているとしか言っていない。なので時間の都合は合わせられる。
その間にそのスイートポテトを作ってみても良いだろう。
「忍さんと連絡をしてみようかな。辰雄さん越しに連絡は出来るし。」
「そういえば、今日、辰雄さんの所に行ったんだろ?どうだった?」
芹がそう聞くと、沙夜は少し笑って言う。
「もう産まれそうなくらいお腹が大きくてね。それでも鶏舎の掃除なんかをしているのよ。動かないと嫌みたいでね。」
「忍さんらしいよ。」
芹と沙夜の共通の話題に、翔と沙菜は蚊帳の外だ。だが沙菜はそもそもそんな田舎に興味は無いし、翔は沙夜に拒絶されたばかりだ。おそらく翔が行くことは無いかもしれない。
だが翔は要らないことを言ったとは思っていない。沙夜は一馬に惹かれているとしか思えなかったのだから。
沙菜が風呂から出ると沙夜に声をかける。すると沙夜はすぐに下着や部屋着を持って風呂場へ向かった。それを見て、沙菜はそっと芹の部屋のドアをノックする。
「芹。ちょっと良い?」
すると芹はパソコンの画面から目を離して、沙菜の方を見る。
「なんだよ。」
ドアを閉めて沙菜は芹の前に座り込んだ。沙菜は寝るときは露出があるような緩いシャツやショートパンツを履いている。体を締め付けたくないのだ。その割には胸にはナイトブラというモノをしている。胸を垂らしたくないと思っているのかもしれない。
「今日さ。母さんから連絡があってさ。」
「お前の?」
「うん。」
「何の用事だったんだ。」
すると沙菜は少し戸惑ったように言う。
「姉さんにお見合いをさせたいから、いつ帰って来れそうなのかって。」
「お前に聞くことかなぁ。」
「姉さんは母さんをブロックしているから、あたしに連絡をいつもよこすのよ。」
やはり早めに挨拶に行った方が良い。芹はそう思いながら机に置いていた卓上カレンダーを見る。だが詩集が発売されるのだ。芹自身も時間があまりない。
「ねぇ、マジでうちに来るつもりなの?」
「お前は認めないかもしれないけど、親が良いって言ったらお前だって反対しづらいだろ。」
「姉さんに言ってるの?」
「まだ。」
「何で言えないの?姉さんがお風呂出たら言ったら良いのに。」
「……るせぇな。お前に指示されなくても良いから。」
すると沙菜は頬を膨らませて言う。
「本当に結婚する気があるのかもわからないよ。芹を見てると。それに姉さんは結婚する気なんか無いように見えるけど。」
仕事と自分のしたいことだけを考えている。芹のことも見ていないようだ。
「お前に何がわかるんだよ。あいつだってお前のことなんか考えてないのに。」
「姉さんは考えてくれているよ。」
「だったらなんで辛い高菜漬けなんかお前に食わせようとしてるんだよ。唐辛子の辛さはお前が苦手にしてるってわかっててさ。」
「高菜漬け?あぁ、さっきのご飯で出てたヤツ?あれくらいならあたし食べられるよ。姉さんはそれをわかってやってたんでしょ?わかって無いの芹じゃん。」
許容範囲も沙夜はわかっていたのだ。だからすんなり漬物を出した。そして沙夜を信用しているように、沙菜が沙夜に頼み事をするのも沙夜を信用しているからだ。
「ったく……。沙夜と喧嘩っぽくなったのに、無駄だったじゃん。」
「喧嘩?」
「お前が食えないだろうから出すなって言ったんだよ。そしたら食べたくなければ食べないで良いって。」
「姉さんはいつもそんな感じじゃん。ご飯だって無理して食べて貰おうとは思ってないよ。作るのは好きで、食べて美味しいって言われるのは何よりも嬉しいことかもしれないけれど、食べたくないのを無理に食べさせようとは思ってないし。」
「……。」
「芹ってあまり姉さんのことがわかってないよね。もしかして翔の方がまだわかってるんじゃ無いの?」
「そんなわけねぇよ。俺が……。」
「二人の時間だって少ないし、恋人同士に見えない。相手がピンチの時にしか駆けつけられなくて、心のよりどころにもなってないのに恋人なんてちゃんちゃらおかしいよ。母さんを説得なんか絶対出来ないわ。」
その言葉に、芹はむっとしたように沙菜に言う。
「どんな母親よりも兄嫁ほど性悪じゃ無いだろ。」
「その兄嫁にもまだ話は出来ていないんでしょ?身内になるんだよ?芹は理想ばかり並べてて、現実を見ていないじゃない。」
「忙しいんだよ。」
「仕事が忙しいって、姉さんだって忙しいじゃ無い。」
「最悪籍だけでも入れるから。」
「だから許すはず無いって。」
「お前は反対なんだろうけど、沙夜はどう思ってるかなんてお前にはわからないだろ?」
「わかってるよ。姉妹だもん。姉さんは……。」
その時だった芹の部屋をガラッと開けられて、二人はそちらを見る。そこには翔の姿があった。不機嫌そうに二人を見下ろす。
「うるさい。喧嘩なら別でしてくれないか。」
声が筒抜けだったのだろう。ばつが悪そうに沙菜はその場をあとにする。それにこれ以上言っても何も変わらないと思うから。
そして翔も部屋に戻ろうとしたときだった。リビングのドアが開いて、沙夜が出てきた。
「あぁ。ちょうど良かった。翔。お風呂空いたからどうぞ。」
沙夜は何も聞いていないようだった。そう思いながら翔はいつも通りの顔に戻る。
「沙夜さ。」
すると沙夜は不思議そうに翔を見る。
「何?」
「……芹と結婚するつもりなのか?」
すると沙夜はちらっと芹の部屋の方を見ると、ぽつりと言う。
「現実的では無いわね。」
「え?」
沙夜には一馬のこともある。そして芹にはすずのことや紫乃のこと。そして互いの家庭環境のこと。それを考えると結婚するというのは難しい気がした。
「私も芹も仕事をしていて、もし私が妊娠でもしたらって考えるとね。フリーの芹が支えられるくらい収入があれば良いんだけど。」
「フリーって言うのはそんなに厳しいかな?」
「そうね。それで母が納得するとは思えないけれど。」
そう言って沙夜は部屋に戻る。そして携帯電話を手にすると、メッセージをチェックした。一馬からのメッセージが届いていて、添え付けられた画像には今日、沙夜がお裾分けをしたサツマイモで作ったサラダがある。こういう使い方もあるのかと、沙夜は感心しながらメッセージを送った。
するとすぐに一馬からのメッセージが届く。またスタジオに来て欲しいと。奥さんと子供が居ないとき、そして沙夜の都合が良いときなどそんなに無いと思っていたが、案外時間というのは作ろうと思えば作られる。今日だって行くつもりは無かったのに、短い時間でも会いたいと思ったのは辰雄からの言葉からだった。
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