触れられない距離

神崎

文字の大きさ
上 下
366 / 719
卵焼き

365

しおりを挟む
 湯船の中で沙夜は見られるのが恥ずかしいように一馬に背中を向けていた。自分の体に自信があるわけでは無い。昔から沙菜と共に胸も尻も発育が良かったのだが、沙菜のように胸が極端に大きいわけでは無いし、第一体が細すぎるのだ。男が好きな体というのはもっと肉付きが良いモノだろう。
 昔、インターネットの誹謗中傷で食事が喉を通らないときもあった。そしてそれに今は解放されているが、食事もまともに取れないこともある。「二藍」のメンツにはある程度の休憩はあっても自分の休憩は後回しになることも多いのだ。
 それが沙夜の細さの原因かも知れない。
「沙夜。こちらを向け。」
 一馬はそう言うが、沙夜は首を横に振る。
「恥ずかしい。」
 すると一馬はその体を引き寄せると自分の体に寄せた。まるで抱きかかえているように感じる。
「え……。」
「抱きしめたいと思っているのは俺だけか?」
 すると沙夜はその意味がわかり、首を横に振る。
「……そうじゃないんだけど……その……。私……あまり女性らしい体でも無いし。」
「十分だ。柔らかいな。女は。」
 確かに奥さんの体よりも細身で、筋肉もあまり無い。一馬の奥さんは毎朝ランニングをしたり、たまにはジムに通ったりして体力を付けているが、沙夜はあまりそういうことをしない。
 ただ、休みの度に山へ行って農家の畑を手伝ったり、海へ行って魚を釣ったりしているらしい。それが体力を付けているのだろう。
「男の人は堅いのね。」
 確かにこの体勢はお互いの体を直接見るわけでは無い。だから少しずつ恥ずかしさも無くなっているようだ。沙夜は手を回されている一馬の腕に触れると、その指先を見る。弦を普段押さえている指は、堅いたこがある。純にもあるモノで、純は笑いながら、最初は指が切れたこともあると言っていた。それだけ真剣に楽器に向き合ってきたのだろう。
「沙夜。」
 腕に触れている手を少し避けると、沙夜の後ろ頭に手を添えた。すると沙夜は簡単に一馬の方を振り向く。そしてお互いの顔が近づくと、沙夜も一馬の頬に手を添えた。そして唇が触れ合い、少しその唇が開くと舌が絡み合う。
「んっ……。」
 苦しそうな声がする。それでも辞めたくなかった。沙夜はそのまま一馬の方へ体を向けると、一馬もその胸に手を添える。
「あっ……。」
 唇が離れると、沙夜はその感覚に体を震わせた。思わず声が漏れる。そして一馬もその胸に触れている手に少し力を入れた。すると沙夜の顔が益々赤くなっていく。
 そして沙夜の体を少し持ち上げると胸の先に舌を這わせる。すると沙夜は更に声を上げた。
「ああああ!吸わないで!ね……。一馬……。」
 その声を無視するように堅く尖っている乳首に、舐めているのを見せつけるように舌を伸ばして舐めあげていく。唇を少し尖らせて吸うと更に声を上げ、軽く噛むとまた声を上げる。
 こんな反応をされて無事な男がいるだろうか。
「いや……あっ!」
「嫌か?辞めるか?」
 意地悪そうに一馬はそう聞いて胸から手を離そうとした。だが沙夜の手が一馬の首に回される。
「そういう意味じゃ無いの。んっ!ここで……こういうことを……。」
「こういう場だ。いくら声を上げても構わない。それにしても胸だけでそんなに乱れるとはな。」
 奥さんもかなり敏感な方だ。だが沙夜も相当敏感だと思う。その感覚は音楽や料理だけに発揮されているのでは無く、こういうところでも発揮されているのだ。
「や……あっ……。一馬。お願い……。」
「どうした?」
「酷くして。お願い……。」
 芹の前では絶対言わない。芹にもプライドがあるからだ。そう思ってそれを言わなかったのだが、一馬にはすんなり言えた。
 すると一馬は両方の乳首に指を這わせ、ぐっと引く。そして指の先でもてあそぶようにぐりぐりと乳首をこね回す。
「あっ!あ……。」
「沙夜。こっちを見ろ。その顔、俺に見せるんだ。」
 普段とは違う顔だった。きっと翔でもこんな顔を見せたことは無いだろう。顔を赤くして、もたれかかっている体がガクガクと震え始めた。
「あっ!ああああ!駄目。い……。」
 ガクッガクッと力が抜けたように一馬の膝の上に座り込んだ。これだけ早く絶頂に達してしまったのだ。感じやすいと言っても、相当なモノだと思う。
 沙夜の初めての男が勘違いをしたのも何となくわかる気がした。
「沙夜。こっちを向け。」
 沙夜はまだ息切れをしている。その体を少し離すと、沙夜はまだトロンとした顔をしていた。そして一馬はそのまま沙夜の唇にキスをする。お互いに舌を出し、顎には唾液が垂れている。
 そして体を離すと、沙夜の体を抱き上げて湯船から出た。
「のぼせるな。続きは部屋でするか。」
「うん……。」
 やっと覚悟をしてくれた。それが嬉しくて、沙夜を降ろすとその体をぎゅっと抱きしめる。

 軽く体を拭いただけで髪も乾かさないまま一馬はベッドに沙夜を誘導する。沙夜の足取りはお没居ていなくて、支えてやらないとその場に座り込んでしまいそうだった。それくらいバスルームで感じてしまっていたのだろう。
 のぼせてしまったのかと言うくらい顔が赤い。その様子を見て、一馬はベッドにすぐに乗り上げようとした。だがふと思い出したように自分のバッグに手を伸ばす。底の方にあるコンドームの箱はここへ来る前に買ったモノだった。
 自分の住んでいるアパートの一階は、アダルトグッズが置かれている。コンドームはそこで買うようにしていたが、この間買ったばかりでまた次のものを買うのは店員に不自然に思われる。なので普段は行かない店で買ったモノだが、おいていて良かったと思う。それくらい少し特殊なモノだった。
 その箱を手にして今度こそベッドに乗り上げた。すると沙夜はその間に少し冷静になってしまったのかも知れない。少し俯いていた。
「嫌か?」
 すると沙夜は首を横に振った。
「今更嫌なんて言えないわ。」
「無理はしなくてもいい。俺だって無理矢理はしたくないんだから。お前が欲しいとは思うが、お前が求めていないなら仕方が無いだろう。」
「意地悪ね。」
 すると一馬は少し驚いたように沙夜を見る。
「意地悪か?」
「求めていないわけが無いのに。」
 その言葉に一馬は少し笑うと、沙夜の頬に手を伸ばす。そして顎に指を滑らせると顎を少し押して口を開かせる。その口にキスをした。
 ここの部屋では無いが、この建物で初めてキスをした。お互いに想う人がいるのだろうに、それでもその影を重ねること無くお互いを見ているのだ。
 沙夜もあまり経験は無いのだろう。最初にセックスをしたのは大学生の頃。そしてそのあとはずっと時が経って芹とした。キス自体も慣れていないだろう。それは舌を絡める行為で何となくわかる。
 AVすらまともに見ていない。ただそういうモノはエンターテイメントであり、見せるためのモノだ。参考にはならない。一馬もそれなりに経験はしているが、正しいモノというモノはわからない。ただ、触れ合いたい。手に入れたいという感情だけかも知れない。お互いに想う人は自分では無くても良いのだ。その寂しさを埋める行為なのだから。
「酷くして良いと言っていたな。」
 口を離すと沙夜は少し頷いた。すると一馬は体を屈ませると、胸の上あたりに唇を寄せる。生温かい感触がしたが、すぐにチクッと言う感触がして思わず声が出た。
「いっ……。」
 一馬が唇を離すと、そこには赤い字が出来ていた。
「しばらく裸にはなれないな。」
 沙夜もその跡を見ると、少し複雑な感情になる。自分が望んだことかも知れないが、芹とはしばらくセックスは出来ないだろう。芹は沙夜が嫌がれば無理矢理することは無いし、沙夜が求めることは無い。そもそもそんな時間は今はあまり無いし、芹だって忙しそうなのだから。
「今だけね。」
 その言葉に一馬はその跡に触れて言う。
「だったらいくつでも付けてやろうか。お前は割とこういうモノが付きやすいな。」
 若干の脂肪があるからだろう。だがすぐにそれが付いたと言うことは治りも早いはずだ。そう思って一馬は沙夜を寝かせると、その反対の片側にまた跡を付ける。その度に沙夜は声を上げた。
 そして沙夜の下腹部に視線を移す。するとこれだけの行為で尻のあたりに僅かにシミが出来ていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...