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卵焼き
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まだ純と遥人はここに来る気配は無い。危険なのは翔だろう。翔は打ち合わせで楽器のメーカーの本社に居る。その打ち合わせはいつ終わるのかわからないのだから。
そう思いながら治は一馬の話を聞いていた。奏太が沙夜を狙っているのは誰でもわかることだ。おそらく直接関わっていない裕太でもわかっていると思う。それくらいあらか様だったからだ。
それが沙夜にとっては迷惑な話だし、何より芹のこともあったから。
だが芹を恋人だという事は出来ない事情もある。それは紫乃のことが関係しているからだ。一馬はそういった意味では芹の事情も沙夜の事情も良くわかっている。だから誰よりも恋人のふりをして尚且つ不倫をしていて、奏太のはいる隙は無いと思わせているのは好都合だと思っていた。それに一馬の奥さんもそれには納得していることだ。不倫関係にあるのは真実では無いのだから。ふりなら別に何をしてもかまわないと思う。
しかしそれが真実になったとなると、話は違ってくる。治は呆れたように一馬を見上げて言った。
「あのさ。一馬。」
「何だ。」
「まだ奥さんに愛情ってある?子供がいるから家族をしてるってだけ?」
すると一馬は首を横に振る。そうでは無いのだろう。やはり奥さんと別れるというわけでは無いようだ。
「苦労して手に入れた妻だ。離したくないし、子供だって離れたくは無い。」
「だったら沙夜さんを見るようなことなんか出来ないだろ。俺だって妻や子供のことで手一杯なんだ。他の女を見るような暇は無い。そりゃ……AVくらいはたまに見るけどさ。それはただ単に性処理だよ。」
「……正直俺がそんなに器用だと思わなかったんだが。」
沙夜はその声を聞きながら弁当の蓋をしめた。一馬の言葉が苦しい。それに頭が痛くなりそうだった。
「確かに不器用だと思うよ。俺もまぁ……似たようなモノだけど。」
治はスタジオミュージシャンをしながら、子供向けの音楽教室でドラムの講師をしていた。それでやっと食べられていたのだ。そこに今の奥さんが押しかけ女房のような形で同棲を始めたのだが、それが今までずっと続いている。
「夫婦というのは疑い始めたらキリが無い。最初はほんの少しのほころびが徐々に大きくなるんだ。今の俺の家族がその状態になる。」
「ほころび?」
「子供が欲しいと思ってた。二人目の子供だ。」
「一馬。それは……。」
治にも言って良いことなのだろうか。沙夜はそれが少し不安だった。一馬はその弁当箱をしめると、お茶を口にする。その手が少し震えていた。
「そういや、ずいぶん頑張っていたよな。子供三歳くらいか?」
「あぁ。」
「だったらもう一人作るのには別に遅くは無いよな。三歳差くらいがちょうど良いみたいだし。」
治の子供は年子だった。だから奥さんも治も相当苦労したのを覚えている。
「子供が欲しいと思ってたのは俺だけだった。」
「え?」
「妻はピルを飲んでいてな。それを俺に黙っていたんだ。」
「奥さんは欲しくなかったって事か?」
すると沙夜が首を横に振る。
「違うの。橋倉さん。女性がそういうモノを飲むのはある程度の事情があるの。別に避妊だけに、ピルを飲むわけでは無いのだから。」
すると治は首を横に振る。その言葉に完全に一馬の気持ちに寄り添えたのだ。それは一馬がずっと悩んでいたことで、それを無碍にした奥さんの気持ちが治には理解がどうしても出来ない。
「話し合うことも出来たはずだ。その行動は、悩んでいる一馬をあざ笑っているようにしか俺には思えないよ。沙夜さん。あのさ、男ってのは女の事情は良くわかっていないし、わかろうともしないって言うのかもしれないけど、女だって男の事情を知ろうともしないじゃないか。」
「……治も何かあったのか?」
すると治は口を尖らせて言う。
「……昔さ。子供が生まれたばかりの時かな。俺の実家に子供を店に行ったんだよ。俺には兄と姉がいてさ。もうどちらも結婚して、兄が実家の側で家を建ててるし、子供も二人とも居るんだ。俺が一番遅かったくらいだ。」
生活も安定していなかったからだろう。やっと将来が見えて、結婚をしたのだ。式をせずに、役所に届けを出してそのあと旅行に行った。その時にはもう奥さんは妊娠中だったので無理をさせないように気をつけていたのだ。
「生まれてきた子供を見てさ。うちの親は俺に似てないし、妻にも似ていないって言い放ったんだ。それがどうしても許せなくて絶縁してやろうかと思ったくらいだ。」
似て無くてもかまわない。自分の子供だ。幼い頃は似ていなくても育っていけば似てくると思っていたが、育てば育つほどやはり似ていないと思えてくる。
「俺さ。妻に内緒でこっそりDNAを調べて貰ったんだ。」
すると結果は、二人ともが治の子供では無かったのだ。治の子供と思っていた子供は、奥さんの幼なじみである男の子供だった。
「……嘘……。」
沙夜はその言葉に驚いて治を見た。治もそれはもう誰にも言わずにおこうと思っていたことだったが、一馬と沙夜のことを聞いて黙っていられなかったのだろう。
「今度生まれてくる子供はどうなんだ。」
一馬はそう聞くと、治は頷いた。
「今度は俺の子供だよ。それは確定しているかな。」
「どうして?」
すると治はため息を付いて言った。
「その幼なじみが死んだから。」
誰よりも悲しんでいたと思う。だが治はそれを冷えた目でしか見れなかった。むしろそれで自分の元に返ってくるかも知れないという、卑怯な考えすら浮かんだのだ。
「……あいつの側にいる真二郎がもし死んだりしたら、あいつが悲しんでいる隣で俺は内心ほくそ笑むかも知れない。」
「幼なじみがいるって言ってたっけ。」
「あぁ。俺なんかよりも男と女のことに手慣れていて、俺なんかよりも男前の男だ。」
「それでも奥さんはお前を選んだんだろう。」
「……そうだけどな。さすがに息子が真二郎の影響を受けているのがわかると、ちょっとな……。」
「まぁ。そうだよな。そりゃ、不安にもなるか。それで……沙夜さんか。」
治は卵焼きを摘まんで、沙夜の方を見る。一馬の事情はわかったが、沙夜も同じようなことを抱えているのだろうか。芹に何か事情があって、苦しんでいるのかも知れない。それに手を差し伸べたのが一馬だったのだ。
「それでも俺、応援は出来ないな。一馬も沙夜さんも別にお互いのパートナーを捨ててまで一緒になりたいってわけじゃ無いんだろ?」
「そうだが……。」
「……避妊だけはきっちりしろよ。」
そう言って卵焼きを口に入れる。甘い卵焼きは、子供に合わせるだけでは無くきっとあの南の土地で治の奥さんは生まれ育ったのだ。その土地の作り方があるのだろう。治には馴染みがあまり無い味付けだったが、あの幼なじみは子の卵焼きが好きだったと言っていた。その話を聞く度に、治の気が立っていたことなど奥さんは気づきもしなかっただろう。
そして今度生まれてくる子供。きっと治の子供なのだ。そう信じていたが、どこかで疑っていた。もしあの幼なじみ以外の人だったら。自分はどれだけ我慢をすれば良いのだろう。もしかして自分には子供が出来ないのでは無いかとさえ疑ってくる。そういった意味では一馬は羨ましかった。
どう考えても一馬の息子は一馬の子供だったから。一馬のミニチュア版のような息子を捨ててまで、沙夜を抱きたいと思うのだろうか。
「橋倉さん。あの……。」
しかし沙夜はどうしても気が進まなかった。だが治は首を振って言う。
「一馬がここまで言うって事は、もう何かしらの行動はしているんだろう?」
「それは……。」
「手を繋ぐとかさ。外国のフェスに行った時も近いなとは思ってたし、それに二人で出掛けたことだってあるわけだしさ。」
疑わせるだけだと思っていたのだが、その距離が近すぎるのに治は違和感を持っていたのだ。すると一馬が頷いて言う。
「キスはした。」
すると治は吹き出したように笑い出す。そして沙夜の方を見ると顔が真っ赤になっていた。やはり沙夜はこういう事に全く慣れていないのだ。それが可愛いと思える。一馬が何を置いても手を出したい理由はここにあったのだろう。
そう思いながら治は一馬の話を聞いていた。奏太が沙夜を狙っているのは誰でもわかることだ。おそらく直接関わっていない裕太でもわかっていると思う。それくらいあらか様だったからだ。
それが沙夜にとっては迷惑な話だし、何より芹のこともあったから。
だが芹を恋人だという事は出来ない事情もある。それは紫乃のことが関係しているからだ。一馬はそういった意味では芹の事情も沙夜の事情も良くわかっている。だから誰よりも恋人のふりをして尚且つ不倫をしていて、奏太のはいる隙は無いと思わせているのは好都合だと思っていた。それに一馬の奥さんもそれには納得していることだ。不倫関係にあるのは真実では無いのだから。ふりなら別に何をしてもかまわないと思う。
しかしそれが真実になったとなると、話は違ってくる。治は呆れたように一馬を見上げて言った。
「あのさ。一馬。」
「何だ。」
「まだ奥さんに愛情ってある?子供がいるから家族をしてるってだけ?」
すると一馬は首を横に振る。そうでは無いのだろう。やはり奥さんと別れるというわけでは無いようだ。
「苦労して手に入れた妻だ。離したくないし、子供だって離れたくは無い。」
「だったら沙夜さんを見るようなことなんか出来ないだろ。俺だって妻や子供のことで手一杯なんだ。他の女を見るような暇は無い。そりゃ……AVくらいはたまに見るけどさ。それはただ単に性処理だよ。」
「……正直俺がそんなに器用だと思わなかったんだが。」
沙夜はその声を聞きながら弁当の蓋をしめた。一馬の言葉が苦しい。それに頭が痛くなりそうだった。
「確かに不器用だと思うよ。俺もまぁ……似たようなモノだけど。」
治はスタジオミュージシャンをしながら、子供向けの音楽教室でドラムの講師をしていた。それでやっと食べられていたのだ。そこに今の奥さんが押しかけ女房のような形で同棲を始めたのだが、それが今までずっと続いている。
「夫婦というのは疑い始めたらキリが無い。最初はほんの少しのほころびが徐々に大きくなるんだ。今の俺の家族がその状態になる。」
「ほころび?」
「子供が欲しいと思ってた。二人目の子供だ。」
「一馬。それは……。」
治にも言って良いことなのだろうか。沙夜はそれが少し不安だった。一馬はその弁当箱をしめると、お茶を口にする。その手が少し震えていた。
「そういや、ずいぶん頑張っていたよな。子供三歳くらいか?」
「あぁ。」
「だったらもう一人作るのには別に遅くは無いよな。三歳差くらいがちょうど良いみたいだし。」
治の子供は年子だった。だから奥さんも治も相当苦労したのを覚えている。
「子供が欲しいと思ってたのは俺だけだった。」
「え?」
「妻はピルを飲んでいてな。それを俺に黙っていたんだ。」
「奥さんは欲しくなかったって事か?」
すると沙夜が首を横に振る。
「違うの。橋倉さん。女性がそういうモノを飲むのはある程度の事情があるの。別に避妊だけに、ピルを飲むわけでは無いのだから。」
すると治は首を横に振る。その言葉に完全に一馬の気持ちに寄り添えたのだ。それは一馬がずっと悩んでいたことで、それを無碍にした奥さんの気持ちが治には理解がどうしても出来ない。
「話し合うことも出来たはずだ。その行動は、悩んでいる一馬をあざ笑っているようにしか俺には思えないよ。沙夜さん。あのさ、男ってのは女の事情は良くわかっていないし、わかろうともしないって言うのかもしれないけど、女だって男の事情を知ろうともしないじゃないか。」
「……治も何かあったのか?」
すると治は口を尖らせて言う。
「……昔さ。子供が生まれたばかりの時かな。俺の実家に子供を店に行ったんだよ。俺には兄と姉がいてさ。もうどちらも結婚して、兄が実家の側で家を建ててるし、子供も二人とも居るんだ。俺が一番遅かったくらいだ。」
生活も安定していなかったからだろう。やっと将来が見えて、結婚をしたのだ。式をせずに、役所に届けを出してそのあと旅行に行った。その時にはもう奥さんは妊娠中だったので無理をさせないように気をつけていたのだ。
「生まれてきた子供を見てさ。うちの親は俺に似てないし、妻にも似ていないって言い放ったんだ。それがどうしても許せなくて絶縁してやろうかと思ったくらいだ。」
似て無くてもかまわない。自分の子供だ。幼い頃は似ていなくても育っていけば似てくると思っていたが、育てば育つほどやはり似ていないと思えてくる。
「俺さ。妻に内緒でこっそりDNAを調べて貰ったんだ。」
すると結果は、二人ともが治の子供では無かったのだ。治の子供と思っていた子供は、奥さんの幼なじみである男の子供だった。
「……嘘……。」
沙夜はその言葉に驚いて治を見た。治もそれはもう誰にも言わずにおこうと思っていたことだったが、一馬と沙夜のことを聞いて黙っていられなかったのだろう。
「今度生まれてくる子供はどうなんだ。」
一馬はそう聞くと、治は頷いた。
「今度は俺の子供だよ。それは確定しているかな。」
「どうして?」
すると治はため息を付いて言った。
「その幼なじみが死んだから。」
誰よりも悲しんでいたと思う。だが治はそれを冷えた目でしか見れなかった。むしろそれで自分の元に返ってくるかも知れないという、卑怯な考えすら浮かんだのだ。
「……あいつの側にいる真二郎がもし死んだりしたら、あいつが悲しんでいる隣で俺は内心ほくそ笑むかも知れない。」
「幼なじみがいるって言ってたっけ。」
「あぁ。俺なんかよりも男と女のことに手慣れていて、俺なんかよりも男前の男だ。」
「それでも奥さんはお前を選んだんだろう。」
「……そうだけどな。さすがに息子が真二郎の影響を受けているのがわかると、ちょっとな……。」
「まぁ。そうだよな。そりゃ、不安にもなるか。それで……沙夜さんか。」
治は卵焼きを摘まんで、沙夜の方を見る。一馬の事情はわかったが、沙夜も同じようなことを抱えているのだろうか。芹に何か事情があって、苦しんでいるのかも知れない。それに手を差し伸べたのが一馬だったのだ。
「それでも俺、応援は出来ないな。一馬も沙夜さんも別にお互いのパートナーを捨ててまで一緒になりたいってわけじゃ無いんだろ?」
「そうだが……。」
「……避妊だけはきっちりしろよ。」
そう言って卵焼きを口に入れる。甘い卵焼きは、子供に合わせるだけでは無くきっとあの南の土地で治の奥さんは生まれ育ったのだ。その土地の作り方があるのだろう。治には馴染みがあまり無い味付けだったが、あの幼なじみは子の卵焼きが好きだったと言っていた。その話を聞く度に、治の気が立っていたことなど奥さんは気づきもしなかっただろう。
そして今度生まれてくる子供。きっと治の子供なのだ。そう信じていたが、どこかで疑っていた。もしあの幼なじみ以外の人だったら。自分はどれだけ我慢をすれば良いのだろう。もしかして自分には子供が出来ないのでは無いかとさえ疑ってくる。そういった意味では一馬は羨ましかった。
どう考えても一馬の息子は一馬の子供だったから。一馬のミニチュア版のような息子を捨ててまで、沙夜を抱きたいと思うのだろうか。
「橋倉さん。あの……。」
しかし沙夜はどうしても気が進まなかった。だが治は首を振って言う。
「一馬がここまで言うって事は、もう何かしらの行動はしているんだろう?」
「それは……。」
「手を繋ぐとかさ。外国のフェスに行った時も近いなとは思ってたし、それに二人で出掛けたことだってあるわけだしさ。」
疑わせるだけだと思っていたのだが、その距離が近すぎるのに治は違和感を持っていたのだ。すると一馬が頷いて言う。
「キスはした。」
すると治は吹き出したように笑い出す。そして沙夜の方を見ると顔が真っ赤になっていた。やはり沙夜はこういう事に全く慣れていないのだ。それが可愛いと思える。一馬が何を置いても手を出したい理由はここにあったのだろう。
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