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鶏ハム
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K街から外れにあるラブホテルへ行く前に、コンビニで水を買った。店員が怪しげな顔をしていたのは、きっと時間的にホステスがうろうろしている時間では無いので、おそらくデリヘル嬢くらいにしか見えなかったのだろう。デリヘルもピンからキリで、普段とは違って女性らしい格好をしている沙夜とはいえ、地味に見えるタイプも居るのだ。そういう人に見えたのだろう。
その道すがら、強引に誘ってきていた一馬に違和感を持っていた。何となく家に帰りたくない感じがする。奥さんと何かあったのかもしれない。そう思いながら指定されたホテルの前に着く。
ラブホテルによっては粗悪な所がある。安い所は、古くて壁が薄く隣の客の声なんかも聞こえてくるだけでは無く、隠しカメラを仕込まれていてその映像を裏ビデオとして販売される所もあるのだ。そういう所は近くにアンテナを立てられている車が離れて数台停まっているらしい。違法なので、警察だって取り締まっているが数が多すぎて取り締まれない所もあるのだろう。いわゆる放置されているのだ。
しっかりしている所もあるが、しっかりしすぎてる所は男女がバラバラに入ったり、男女のカップルや多人数は入れない所もある。そうなると都合は悪い。
一馬が知っているホテルは、そういう所が寛大な所なのだ。場合によってはデリヘルを自宅に呼びたくなくて、ホテルで行為をさせる所がある。ここはそういうホテルなのだ。フロントに言えば、部屋を案内してくれる。何でそういう事まで知っているのかわからない。K街で育ったとはいえ詳しすぎるだろう。
そう思いながら指定された部屋へ向かった。三階の隅の部屋。その前に立つと、その部屋のチャイムを鳴らした。すると髪を結んでサングラスを取った一馬がドアを開ける。いつも通りの一馬の姿に沙夜はほっとした。
「綺麗な所ね。」
「昔から建っている所だが、リニューアルしたんだろうな。聞いてはいたが、思った以上だった。」
そう言いながら部屋に入る。ラブホテルというのはどこも同じようなモノだろう。白いシーツのベッドと、ソファー。そして大きなテレビが備えられていた。
「良く来ているの?」
奥さんと二人目の子供を望んでいた。だからたまに場所を変えてしてみることもあるらしい。それはホテルだったり、温泉宿だったりするのだろう。だが二人目が欲しいと躍起になっていたのは一馬だけだったのかも知れない。
沙夜はソファーに座るとバッグを置いた。その隣に一馬も座る。普通のカップルだったらそのままシャワーを浴びたり、そのままベッドになだれ込むのだろう。休憩で取っていると言っていた。時間がもったいなければすぐにでもセックスをしたりするのだろう。だがセックスをしに来たわけでは無いのだ。
「いや。兄から聞いていた。」
「兄って……酒屋の?」
何度か沙夜も会ったことがある人だ。一馬とはあまり似ていない兄で、背は低く沙夜よりも背が低いように思えた。それに中年太りをしている。だが人が良さそうだしなにより優しい。酒のアドバイスだって的確だった。
「仕事には真面目な兄なんだが、こう……デリヘルとか、キャバクラとか、イメクラとか、そういうモノが好きで義理の姉の目を誤魔化しては利用しているらしい。デリヘルを家に呼ぶわけには行かないから、呼ぶ時にはここを利用していると聞いていたんだ。」
「そうだったの。」
冗談交じりに一馬も使いたければ、ここが良いよと言われていたがまさか実際に自分が利用すると思ってなかった。
「ところで何かあったの?奥様とうまくいっていないのかしら。」
あまり雑談に時間を取るわけにはいかない。終電だってあるし、一馬もあまり家を空けられないだろうと思ったのだ。
「いきなり聞くんだな。時間は気にしなくても良いのだが。泊まりと言っているし。」
「泊まり?」
「そっちの方が時間に急かされないで済むから。」
その言葉にやはり一馬は家に帰りたくない事情があるように思えた。大体、一馬は家族思いなイメージがあり、その通りだと思っていた。なのに家に帰りたくない事情は何なのだろう。
「私は仕事と言って来たのよ。泊まりとなったらまた嘘を言わないといけなくなるし。」
「芹さんに?」
「えぇ。それから……翔にも。」
「翔か……。」
あれだけ拒否されていても、沙夜しか見ていない一途さは凄いと思う。見習うべき事だろう。
「それで、奥様と喧嘩でもしたの?」
「ずっと気にかかっていたことだ。妻に幼なじみがいて、仕事上でもパートナーになっている男のことを話したことがあるか。」
「えぇ。私も何度か会ったことがあるわ。店で挨拶したくらいだけど。」
綺麗な顔立ちの男だと思った。おそらく純粋にこちらの国の血が入っているわけでは無いらしい。クォーターだと言っていたからか、目の色の色素も薄く、帽子であまり良く見たわけでは無いが金色の髪を持っているのだという。
「うちの近くに住んでいて、俺のいない時なんかは家出食事をご馳走になることもあるらしい。海斗もあいつには懐いていてな。」
「良い関係ね。」
まるで一馬と自分を見ているようだ。仕事上のパートナーであり、それ以上の関係は無いのだから。
「昔は、あいつが妻に惚れていた所もあったらしい。妻が拉致をされた時も、周りはみんな妻が進んで車に乗ったのではないかと疑われた時も、あいつだけはそんなわけは無いとあいつの祖父と共にあいつの味方になっていたんだ。だが妻はそれ以上の感情を持たなかった。あいつが迫っていた時期もあったようだが、妻はずっと拒否をしていたのだし。」
「近すぎて家族みたいになってしまったのかしら。」
「そうかも知れない。結婚をすると言った時も、あいつは内心悔しかったのかも知れないが、式にも来てくれた。諸手を挙げて祝ってくれると思っていたのだが……。」
海外でフェスをして帰国した時、一馬は沙夜を連れて家に帰ってきた。妻は沙夜をずっと知っているし、親しみやすいと思っていたに違いない。それに話をしないといけないこともある。そう思って連れて帰ったのだが、その日の夜のことだった。その幼なじみからメッセージを貰い、仕事帰りにその幼なじみと会ったのだという。
「俺が無神経だと言ってきた。」
「一馬が?」
どんな状態で奥さんが居たのかも知らないで、のんきに他の女性を家に上がらせて泊まらせる。それがどんなに酷いことをしていたのか、一馬にはわからないのかと言ってきたのだ。
その言葉に一馬は戸惑った。普通通りの奥さんで、沙夜の話も冷静に聞いていたし、自分の意見もずっと言っていたように思える。沙夜にとっても奥さんにとっても今のこの関係は複雑なのだから。
「本当だったら帰国して真っ先に妻や子供の無事な姿を見るのが当たり前だと思う。側にいない五日間、無事に過ごしていたのか。まだ海斗だって三歳なんだ。元気に見えるが熱だって出すこともある。変な病気にかかることだってある。それは突然のことだ。それをないがしろにして、自分のことを優先したと。」
「そんなことまでいう人には見えなかったけれど……。もしかしてその五日間で何かあったの?」
すると一馬は手を前で組んだ。それは手が震えていたからだ。
「……妻の方の両親がいきなり来たらしい。」
奥さんの実家は電車を乗り継いでいかないといけないが、そこまで離れているわけでは無い。それでもあまり顔も見たくないと、住所も教えていなかったのだがどこでその住所を知ったのかはわからない。
「どうして知ったのか怖いわね。」
「あとで聞いたら、妹から聞いたらしい。妹も今度結婚するから、両親に挨拶をしに行ったんだ。その時に、その条件として妻の住所を教えて欲しいと言ってきた。結婚式に姉にも招待状を送らないといけないだろうし、第一、どこに住んでいるのかもわからないような身内がいる所に妹側の家も心配だろうと。」
「……絶対口だけだわ。」
「俺もそう思う。ただうちを知りたかっただけに思えるな。」
時間は早朝。妻がランニングから帰ってきて、いつものように朝食を作ろうとしていたタイミングだった。
いきなりやってきた母親は、部屋の様子を見て汚いだの、洗濯物が溜まっているだの、口やかましいことを言ってきたのだ。
確かに部屋は汚いよりは綺麗な方が良いに決まっている。だが子供を抱えて仕事もしていて、家事も完璧にこなすような人など居ないだろう。それに今は一馬もいなくて、子供の世話だって奥さんがずっとしているようなモノなのだ。片付いていないのは当然だと思う。
「それでも初孫なんでしょう?海斗君は可愛いとは言わなかったの?」
「海斗は妻にあまり似ていない。どちらかというと俺に似ているようだ。それも気に入らないようだし、尚且つ髪が長いだろう。」
「それは事情もあるじゃ無い。」
子供は一馬が好きなのだ。憧れもあるだろう。だから髪を一馬のように伸ばしたいと言っているのだから。
「可愛くないと言い放ってな。店が開いたら散髪屋に連れて行くと言いだしたらしい。」
「どこまで自分勝手なのかしら。」
それでも母親なのだ。そう思って我慢しようと思っていた。その時だった。
幼なじみが部屋を訪れてきた。一馬がいない間、その幼なじみは家の様子を気にしていて、奥さんの手が回らない時には手を貸していたらしい。特に今日は奥さんは早く店へ行きたいと思っていた。だから子供を保育園へ送るのに、その幼なじみに手助けをして貰おうと夕べ話をして、そのお礼に朝食をご馳走するから早めに家に来てもらっていただけの話だったが、それは母親を更に逆上させる。
「夫以外の男を夫の居ない間に家に連れてくるのは、淫乱な証拠だ。やはりあの事件は妻が車に進んで乗ったのではないかと言い出したんだ。」
あの事件とは奥さんが中学生の頃に、拉致をされて輪姦されたことだった。身内、特に母親は未だに周りの声に流されて、奥さんが進んで車に乗り込んで乱交騒ぎをしたと思っているらしい。味方をしたのは母方の祖父と幼なじみだけだったのだ。
「馬鹿じゃ無いの?」
旦那がいないので一人で出来ることは限られている。なので他の人が手を差し伸べて貰うのは悪いことでは無い。それを理解しないで、過去の辛かった事件を持ち出すのは本当に頭が悪い人なのだと思った。それにそれを孫の前で言うこともどうにかしていると思う。
沙夜も母親とは折り合いが悪い。だがこの母親の方が、更に頭が悪いように感じた。
その道すがら、強引に誘ってきていた一馬に違和感を持っていた。何となく家に帰りたくない感じがする。奥さんと何かあったのかもしれない。そう思いながら指定されたホテルの前に着く。
ラブホテルによっては粗悪な所がある。安い所は、古くて壁が薄く隣の客の声なんかも聞こえてくるだけでは無く、隠しカメラを仕込まれていてその映像を裏ビデオとして販売される所もあるのだ。そういう所は近くにアンテナを立てられている車が離れて数台停まっているらしい。違法なので、警察だって取り締まっているが数が多すぎて取り締まれない所もあるのだろう。いわゆる放置されているのだ。
しっかりしている所もあるが、しっかりしすぎてる所は男女がバラバラに入ったり、男女のカップルや多人数は入れない所もある。そうなると都合は悪い。
一馬が知っているホテルは、そういう所が寛大な所なのだ。場合によってはデリヘルを自宅に呼びたくなくて、ホテルで行為をさせる所がある。ここはそういうホテルなのだ。フロントに言えば、部屋を案内してくれる。何でそういう事まで知っているのかわからない。K街で育ったとはいえ詳しすぎるだろう。
そう思いながら指定された部屋へ向かった。三階の隅の部屋。その前に立つと、その部屋のチャイムを鳴らした。すると髪を結んでサングラスを取った一馬がドアを開ける。いつも通りの一馬の姿に沙夜はほっとした。
「綺麗な所ね。」
「昔から建っている所だが、リニューアルしたんだろうな。聞いてはいたが、思った以上だった。」
そう言いながら部屋に入る。ラブホテルというのはどこも同じようなモノだろう。白いシーツのベッドと、ソファー。そして大きなテレビが備えられていた。
「良く来ているの?」
奥さんと二人目の子供を望んでいた。だからたまに場所を変えてしてみることもあるらしい。それはホテルだったり、温泉宿だったりするのだろう。だが二人目が欲しいと躍起になっていたのは一馬だけだったのかも知れない。
沙夜はソファーに座るとバッグを置いた。その隣に一馬も座る。普通のカップルだったらそのままシャワーを浴びたり、そのままベッドになだれ込むのだろう。休憩で取っていると言っていた。時間がもったいなければすぐにでもセックスをしたりするのだろう。だがセックスをしに来たわけでは無いのだ。
「いや。兄から聞いていた。」
「兄って……酒屋の?」
何度か沙夜も会ったことがある人だ。一馬とはあまり似ていない兄で、背は低く沙夜よりも背が低いように思えた。それに中年太りをしている。だが人が良さそうだしなにより優しい。酒のアドバイスだって的確だった。
「仕事には真面目な兄なんだが、こう……デリヘルとか、キャバクラとか、イメクラとか、そういうモノが好きで義理の姉の目を誤魔化しては利用しているらしい。デリヘルを家に呼ぶわけには行かないから、呼ぶ時にはここを利用していると聞いていたんだ。」
「そうだったの。」
冗談交じりに一馬も使いたければ、ここが良いよと言われていたがまさか実際に自分が利用すると思ってなかった。
「ところで何かあったの?奥様とうまくいっていないのかしら。」
あまり雑談に時間を取るわけにはいかない。終電だってあるし、一馬もあまり家を空けられないだろうと思ったのだ。
「いきなり聞くんだな。時間は気にしなくても良いのだが。泊まりと言っているし。」
「泊まり?」
「そっちの方が時間に急かされないで済むから。」
その言葉にやはり一馬は家に帰りたくない事情があるように思えた。大体、一馬は家族思いなイメージがあり、その通りだと思っていた。なのに家に帰りたくない事情は何なのだろう。
「私は仕事と言って来たのよ。泊まりとなったらまた嘘を言わないといけなくなるし。」
「芹さんに?」
「えぇ。それから……翔にも。」
「翔か……。」
あれだけ拒否されていても、沙夜しか見ていない一途さは凄いと思う。見習うべき事だろう。
「それで、奥様と喧嘩でもしたの?」
「ずっと気にかかっていたことだ。妻に幼なじみがいて、仕事上でもパートナーになっている男のことを話したことがあるか。」
「えぇ。私も何度か会ったことがあるわ。店で挨拶したくらいだけど。」
綺麗な顔立ちの男だと思った。おそらく純粋にこちらの国の血が入っているわけでは無いらしい。クォーターだと言っていたからか、目の色の色素も薄く、帽子であまり良く見たわけでは無いが金色の髪を持っているのだという。
「うちの近くに住んでいて、俺のいない時なんかは家出食事をご馳走になることもあるらしい。海斗もあいつには懐いていてな。」
「良い関係ね。」
まるで一馬と自分を見ているようだ。仕事上のパートナーであり、それ以上の関係は無いのだから。
「昔は、あいつが妻に惚れていた所もあったらしい。妻が拉致をされた時も、周りはみんな妻が進んで車に乗ったのではないかと疑われた時も、あいつだけはそんなわけは無いとあいつの祖父と共にあいつの味方になっていたんだ。だが妻はそれ以上の感情を持たなかった。あいつが迫っていた時期もあったようだが、妻はずっと拒否をしていたのだし。」
「近すぎて家族みたいになってしまったのかしら。」
「そうかも知れない。結婚をすると言った時も、あいつは内心悔しかったのかも知れないが、式にも来てくれた。諸手を挙げて祝ってくれると思っていたのだが……。」
海外でフェスをして帰国した時、一馬は沙夜を連れて家に帰ってきた。妻は沙夜をずっと知っているし、親しみやすいと思っていたに違いない。それに話をしないといけないこともある。そう思って連れて帰ったのだが、その日の夜のことだった。その幼なじみからメッセージを貰い、仕事帰りにその幼なじみと会ったのだという。
「俺が無神経だと言ってきた。」
「一馬が?」
どんな状態で奥さんが居たのかも知らないで、のんきに他の女性を家に上がらせて泊まらせる。それがどんなに酷いことをしていたのか、一馬にはわからないのかと言ってきたのだ。
その言葉に一馬は戸惑った。普通通りの奥さんで、沙夜の話も冷静に聞いていたし、自分の意見もずっと言っていたように思える。沙夜にとっても奥さんにとっても今のこの関係は複雑なのだから。
「本当だったら帰国して真っ先に妻や子供の無事な姿を見るのが当たり前だと思う。側にいない五日間、無事に過ごしていたのか。まだ海斗だって三歳なんだ。元気に見えるが熱だって出すこともある。変な病気にかかることだってある。それは突然のことだ。それをないがしろにして、自分のことを優先したと。」
「そんなことまでいう人には見えなかったけれど……。もしかしてその五日間で何かあったの?」
すると一馬は手を前で組んだ。それは手が震えていたからだ。
「……妻の方の両親がいきなり来たらしい。」
奥さんの実家は電車を乗り継いでいかないといけないが、そこまで離れているわけでは無い。それでもあまり顔も見たくないと、住所も教えていなかったのだがどこでその住所を知ったのかはわからない。
「どうして知ったのか怖いわね。」
「あとで聞いたら、妹から聞いたらしい。妹も今度結婚するから、両親に挨拶をしに行ったんだ。その時に、その条件として妻の住所を教えて欲しいと言ってきた。結婚式に姉にも招待状を送らないといけないだろうし、第一、どこに住んでいるのかもわからないような身内がいる所に妹側の家も心配だろうと。」
「……絶対口だけだわ。」
「俺もそう思う。ただうちを知りたかっただけに思えるな。」
時間は早朝。妻がランニングから帰ってきて、いつものように朝食を作ろうとしていたタイミングだった。
いきなりやってきた母親は、部屋の様子を見て汚いだの、洗濯物が溜まっているだの、口やかましいことを言ってきたのだ。
確かに部屋は汚いよりは綺麗な方が良いに決まっている。だが子供を抱えて仕事もしていて、家事も完璧にこなすような人など居ないだろう。それに今は一馬もいなくて、子供の世話だって奥さんがずっとしているようなモノなのだ。片付いていないのは当然だと思う。
「それでも初孫なんでしょう?海斗君は可愛いとは言わなかったの?」
「海斗は妻にあまり似ていない。どちらかというと俺に似ているようだ。それも気に入らないようだし、尚且つ髪が長いだろう。」
「それは事情もあるじゃ無い。」
子供は一馬が好きなのだ。憧れもあるだろう。だから髪を一馬のように伸ばしたいと言っているのだから。
「可愛くないと言い放ってな。店が開いたら散髪屋に連れて行くと言いだしたらしい。」
「どこまで自分勝手なのかしら。」
それでも母親なのだ。そう思って我慢しようと思っていた。その時だった。
幼なじみが部屋を訪れてきた。一馬がいない間、その幼なじみは家の様子を気にしていて、奥さんの手が回らない時には手を貸していたらしい。特に今日は奥さんは早く店へ行きたいと思っていた。だから子供を保育園へ送るのに、その幼なじみに手助けをして貰おうと夕べ話をして、そのお礼に朝食をご馳走するから早めに家に来てもらっていただけの話だったが、それは母親を更に逆上させる。
「夫以外の男を夫の居ない間に家に連れてくるのは、淫乱な証拠だ。やはりあの事件は妻が車に進んで乗ったのではないかと言い出したんだ。」
あの事件とは奥さんが中学生の頃に、拉致をされて輪姦されたことだった。身内、特に母親は未だに周りの声に流されて、奥さんが進んで車に乗り込んで乱交騒ぎをしたと思っているらしい。味方をしたのは母方の祖父と幼なじみだけだったのだ。
「馬鹿じゃ無いの?」
旦那がいないので一人で出来ることは限られている。なので他の人が手を差し伸べて貰うのは悪いことでは無い。それを理解しないで、過去の辛かった事件を持ち出すのは本当に頭が悪い人なのだと思った。それにそれを孫の前で言うこともどうにかしていると思う。
沙夜も母親とは折り合いが悪い。だがこの母親の方が、更に頭が悪いように感じた。
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