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ピクトリアケーキ
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やはりここへ来ていたと奏太は思いながら、道路を渡って沙夜のところへ近づいていく。そして沙夜の向こうには、クラブの屋号とイベントのポスターが貼られていた。きっと沙夜はここへ来ていたのだ。翔がキラキラしているところを見に。
「やっぱ来てたんだな。千草さんはどうだった?」
奏太はそう聞くと、沙夜は首をかしげる。
「どうって言われても、私はここを通り過ぎただけだし。」
ちらっと向こうの方で芹と沙菜が話をしているのを見る。こちらの様子には気がついていないようだ。
「望月さん。見に行くか?純も入っているだろう。」
「どうだろうな。音楽を聴きに行くだけなら良いけど、あぁいう所って言うのは女が寄ってくるだろう?酒も美味しくないし。」
確か二人は一馬の奥さんの所へ行くと言っていた。なのになぜここに居るのだろう。沙夜はそう思いながら、二人を見ていた。
「花岡さんの奥様にはちゃんと話は出来たの?」
すると奏太はため息を付いて言う。
「これからってところだな。」
すると遥人も頷いた。
「俺も信用をされるためには、もう少し話をする必要があると思った。悪い人では無いみたいなんだけどなぁ。」
あのパティシエは変な色気がある。性趣向は女性のはずなのに、見つめられるとぼんやりしてしまうのだ。純粋なこの国の人では無いからだろうか。
「少し思うこともあってさ。ちょっと飯と酒を飲むかって言ってこっちに来たんだけど。沙夜さんも一緒に来ないか。」
どうやら沙菜と芹は遥人にも見えていないらしい。遥人もそう言って誘ってきた。
「ごめんなさい。ちょっと人を待ってて。」
「人?」
沙夜はそう言ってちらっと芹と沙菜の方を見る。なるほど。デート中だったのかと遥人は、野暮なことを言ったと少し後悔していた。しかし奏太の表情が変わる。
「あの女……。」
「沙菜さんと芹さんか。何を話してるのかな。」
「何か用事があるって言って、芹が連れて行ったんだけど。」
「沙菜さんが詳しいのってあっちのことだけだと思ったけど。」
「失礼ね。」
「褒めてるんだよ。人に聞けることじゃないし、詳しく教えてくれたらこっちだって助かるじゃん。」
「あら。栗山さんは知りたいの?」
「まぁ、人生の潤いにはなるよ。結婚とかはまだしないし。ん?望月さんどうした?ぼんやりして。」
ぼんやりと芹と沙菜の方を見ている。そして二人は話を終えると、三人のところへ近づいてきた。
「お待たせ。ん?」
すると沙菜は奏太を見てわざと驚いたような表情になる。
「あら?この間はどうも。」
「あー……。お疲れ。」
そう言えば奏太が沙菜と一緒に合コンをしたという話をしていた。トイレで他の女優とセックスをしていたと。だから顔見知りなのだろうか。
「はるかちゃんとはあれからどう?」
「そんな名前だっけ。覚えてないわ。」
「やだ。あのトイレの人めっちゃ良いっていってたのに。」
その会話を聞いて遥人すら呆れた顔をしている。話は見えてこないが、想像が出来たからだろう。
「そんなことを言うなよ。誤解される。」
「誤解?誰に?」
ちらっと沙夜の方を見る。しかし沙夜は興味が無さそうに芹の方を見ていた。
「何の話をしていたの?」
「このあとのことな。この辺は盗聴器とか盗撮器があるからやばいって話。良いところを教えてもらった。」
「え?」
どこに行きたいのかがわかって沙夜は少し頬を染める。今度デートをするのだから、その時にセックスをするのだろうと思っていたが、どうやら芹はそう思っていなかったらしい。
「今度じゃ駄目なの?」
沙夜はそう聞くと、芹は意地悪そうに笑う。
「お前は嫌なのか?」
「そうじゃないけど……明日の用意をしたいの。朝食とか。ご飯を炊いていたいし。」
「朝飯?パンで良いじゃん。そこにさ、十二時までしてるパン屋があるんだって。後で行こう。」
三人には聞こえないようにそれでも芹は強引にそう言うと、沙夜は諦めたようにため息を付く。だがそれは幸せの証拠でもあった。
「なぁ。泉さんとこのAV女優って、何の繋がり?」
奏太の言葉に沙菜はため息を付いて言う。事実なのだが、あまりこういう公の場で言われたくなかったからだ。その辺の常識が欠けているらしい。
「姉妹よ。双子の。」
「え?」
よく見れば似ていると思う。派手な沙菜と、地味にしている沙夜は、化粧なんかをすれば見間違えるかもしれない。
「姉妹か。よく見たら似ている。あんたもピアノを弾くのか?」
「あたしは音楽は全然。まぁ地下アイドルをしてたときもあるけどね。」
「って事は栗山さんと同じような感じ?」
すると沙菜は手を振ってそれを否定した。
「あたしは地下から出れなかったアイドルだったのよ。高校を卒業して、グラビアからこの仕事。栗山さんみたいに、あんな大きなホールで歌ったりすることは無かったのよ。」
「ふーん。」
「で、はるかちゃんとは連絡は取ってないの?」
その名前に奏太は手を振って否定する。
「名前すら知らない相手なのに連絡なんか取れるかよ。」
「でもはるかちゃんは、ずっと探しているみたいよ。あなたのこと。体って言うよりも超マメに前戯してくれる人って。それから言葉責め?サドなの?」
「知るか。」
沙夜の前でそんな話をされたくなかった。せっかく潔癖なイメージが付いていると思ったのに。
「若いな。望月さん。俺、俺、遊びなんかもう二十代の前半頃で卒業だよ。芹さんもそうだろ?」
すると芹も苦笑いをした。芹もまた沙夜の前でそんな話をされたくなかったからだ。だが沙夜自体は興味が無さそうに、芹が言っていたパン屋の方向を見ている。
「芹は少し前まで、遊んでたんでしょ?セフレはいたの?」
「居ないよ。面倒だし。ちょっと遊んだからって彼女ズラするのも面倒だから。」
「体だけって事か。良いね。やっぱ芹は男優になれるわ。」
「なれないって。俺そんな立派なモノなんか持ってないし。」
「モノの大きさじゃ無いって。男優なんかほとんど仮性だし、サイズなんか普通なんだから。」
AV女優というのはこんなモノなのだろうか。もしかしたら寄っているからそんなことを口に出すのだろうかと遥人は思っていた。だが沙夜の言葉でそれが違うことはわかった。
「沙菜。いい加減にしなさいよ。それに栗山さんとあまり長い時間、この往来で話しているのは良くないわ。」
すると沙菜は肩をすくませていった。
「クラブの中には芸能人とかも居るよ。あと同じ女優とかも。」
「それでも、駄目なの。栗山さんはこっちのイメージもあるんだし。」
「あぁ。翔といい仲ってヤツ?そんなの誰も信じてないって。」
手を振って沙菜はそれを否定する。そして携帯電話の時計を見ると、クラブの入り口の方に目をとめた。
「そろそろ翔の出番かな。じゃあ、芹。明日楽しみにしてる。」
「適当に見繕っていいんだろう?」
「良いよ。じゃあね。」
沙菜はそう言ってクラブの方へ戻って行った。その後ろ姿を見て、奏太は少しため息を付く。奔放すぎて怖い女だと思っていた。そして自分のイメージが沙夜の中で崩れてしまったようなそんな気分になる。これを挽回したい。
「泉さん。あのさ……。」
「何?」
「誤解をしないで欲しいんだけど。俺……。」
「何の誤解?別に良いんじゃ無い?二十六,七で遊ばないのは不自然よね?栗山さん。」
すると遥人も苦笑いをした。心当たりが無いわけでは無いからだ。
「やっぱ来てたんだな。千草さんはどうだった?」
奏太はそう聞くと、沙夜は首をかしげる。
「どうって言われても、私はここを通り過ぎただけだし。」
ちらっと向こうの方で芹と沙菜が話をしているのを見る。こちらの様子には気がついていないようだ。
「望月さん。見に行くか?純も入っているだろう。」
「どうだろうな。音楽を聴きに行くだけなら良いけど、あぁいう所って言うのは女が寄ってくるだろう?酒も美味しくないし。」
確か二人は一馬の奥さんの所へ行くと言っていた。なのになぜここに居るのだろう。沙夜はそう思いながら、二人を見ていた。
「花岡さんの奥様にはちゃんと話は出来たの?」
すると奏太はため息を付いて言う。
「これからってところだな。」
すると遥人も頷いた。
「俺も信用をされるためには、もう少し話をする必要があると思った。悪い人では無いみたいなんだけどなぁ。」
あのパティシエは変な色気がある。性趣向は女性のはずなのに、見つめられるとぼんやりしてしまうのだ。純粋なこの国の人では無いからだろうか。
「少し思うこともあってさ。ちょっと飯と酒を飲むかって言ってこっちに来たんだけど。沙夜さんも一緒に来ないか。」
どうやら沙菜と芹は遥人にも見えていないらしい。遥人もそう言って誘ってきた。
「ごめんなさい。ちょっと人を待ってて。」
「人?」
沙夜はそう言ってちらっと芹と沙菜の方を見る。なるほど。デート中だったのかと遥人は、野暮なことを言ったと少し後悔していた。しかし奏太の表情が変わる。
「あの女……。」
「沙菜さんと芹さんか。何を話してるのかな。」
「何か用事があるって言って、芹が連れて行ったんだけど。」
「沙菜さんが詳しいのってあっちのことだけだと思ったけど。」
「失礼ね。」
「褒めてるんだよ。人に聞けることじゃないし、詳しく教えてくれたらこっちだって助かるじゃん。」
「あら。栗山さんは知りたいの?」
「まぁ、人生の潤いにはなるよ。結婚とかはまだしないし。ん?望月さんどうした?ぼんやりして。」
ぼんやりと芹と沙菜の方を見ている。そして二人は話を終えると、三人のところへ近づいてきた。
「お待たせ。ん?」
すると沙菜は奏太を見てわざと驚いたような表情になる。
「あら?この間はどうも。」
「あー……。お疲れ。」
そう言えば奏太が沙菜と一緒に合コンをしたという話をしていた。トイレで他の女優とセックスをしていたと。だから顔見知りなのだろうか。
「はるかちゃんとはあれからどう?」
「そんな名前だっけ。覚えてないわ。」
「やだ。あのトイレの人めっちゃ良いっていってたのに。」
その会話を聞いて遥人すら呆れた顔をしている。話は見えてこないが、想像が出来たからだろう。
「そんなことを言うなよ。誤解される。」
「誤解?誰に?」
ちらっと沙夜の方を見る。しかし沙夜は興味が無さそうに芹の方を見ていた。
「何の話をしていたの?」
「このあとのことな。この辺は盗聴器とか盗撮器があるからやばいって話。良いところを教えてもらった。」
「え?」
どこに行きたいのかがわかって沙夜は少し頬を染める。今度デートをするのだから、その時にセックスをするのだろうと思っていたが、どうやら芹はそう思っていなかったらしい。
「今度じゃ駄目なの?」
沙夜はそう聞くと、芹は意地悪そうに笑う。
「お前は嫌なのか?」
「そうじゃないけど……明日の用意をしたいの。朝食とか。ご飯を炊いていたいし。」
「朝飯?パンで良いじゃん。そこにさ、十二時までしてるパン屋があるんだって。後で行こう。」
三人には聞こえないようにそれでも芹は強引にそう言うと、沙夜は諦めたようにため息を付く。だがそれは幸せの証拠でもあった。
「なぁ。泉さんとこのAV女優って、何の繋がり?」
奏太の言葉に沙菜はため息を付いて言う。事実なのだが、あまりこういう公の場で言われたくなかったからだ。その辺の常識が欠けているらしい。
「姉妹よ。双子の。」
「え?」
よく見れば似ていると思う。派手な沙菜と、地味にしている沙夜は、化粧なんかをすれば見間違えるかもしれない。
「姉妹か。よく見たら似ている。あんたもピアノを弾くのか?」
「あたしは音楽は全然。まぁ地下アイドルをしてたときもあるけどね。」
「って事は栗山さんと同じような感じ?」
すると沙菜は手を振ってそれを否定した。
「あたしは地下から出れなかったアイドルだったのよ。高校を卒業して、グラビアからこの仕事。栗山さんみたいに、あんな大きなホールで歌ったりすることは無かったのよ。」
「ふーん。」
「で、はるかちゃんとは連絡は取ってないの?」
その名前に奏太は手を振って否定する。
「名前すら知らない相手なのに連絡なんか取れるかよ。」
「でもはるかちゃんは、ずっと探しているみたいよ。あなたのこと。体って言うよりも超マメに前戯してくれる人って。それから言葉責め?サドなの?」
「知るか。」
沙夜の前でそんな話をされたくなかった。せっかく潔癖なイメージが付いていると思ったのに。
「若いな。望月さん。俺、俺、遊びなんかもう二十代の前半頃で卒業だよ。芹さんもそうだろ?」
すると芹も苦笑いをした。芹もまた沙夜の前でそんな話をされたくなかったからだ。だが沙夜自体は興味が無さそうに、芹が言っていたパン屋の方向を見ている。
「芹は少し前まで、遊んでたんでしょ?セフレはいたの?」
「居ないよ。面倒だし。ちょっと遊んだからって彼女ズラするのも面倒だから。」
「体だけって事か。良いね。やっぱ芹は男優になれるわ。」
「なれないって。俺そんな立派なモノなんか持ってないし。」
「モノの大きさじゃ無いって。男優なんかほとんど仮性だし、サイズなんか普通なんだから。」
AV女優というのはこんなモノなのだろうか。もしかしたら寄っているからそんなことを口に出すのだろうかと遥人は思っていた。だが沙夜の言葉でそれが違うことはわかった。
「沙菜。いい加減にしなさいよ。それに栗山さんとあまり長い時間、この往来で話しているのは良くないわ。」
すると沙菜は肩をすくませていった。
「クラブの中には芸能人とかも居るよ。あと同じ女優とかも。」
「それでも、駄目なの。栗山さんはこっちのイメージもあるんだし。」
「あぁ。翔といい仲ってヤツ?そんなの誰も信じてないって。」
手を振って沙菜はそれを否定する。そして携帯電話の時計を見ると、クラブの入り口の方に目をとめた。
「そろそろ翔の出番かな。じゃあ、芹。明日楽しみにしてる。」
「適当に見繕っていいんだろう?」
「良いよ。じゃあね。」
沙菜はそう言ってクラブの方へ戻って行った。その後ろ姿を見て、奏太は少しため息を付く。奔放すぎて怖い女だと思っていた。そして自分のイメージが沙夜の中で崩れてしまったようなそんな気分になる。これを挽回したい。
「泉さん。あのさ……。」
「何?」
「誤解をしないで欲しいんだけど。俺……。」
「何の誤解?別に良いんじゃ無い?二十六,七で遊ばないのは不自然よね?栗山さん。」
すると遥人も苦笑いをした。心当たりが無いわけでは無いからだ。
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