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パウンドケーキ
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三時間の生放送の間、司会者はCMの度に目の調子を見ていたようだ。時に点眼薬をさして、様子を見ている。あまり本調子では無いのだろう。
だがこの司会者では無いといけないこともある。ほどよい笑いを交えたトークの腕はやはり誰も真似は出来ないのだ。おかげでトークを苦手としている翔や一馬もやっと一言二言話をしているように思えた。それがSNSでも割と話題になっている。
特に一馬はテレビの前では話をしない男で有名なのだ。その男が一言二言話をしただけで、ファンは嬉しいのだろう。
放送終了後のSNSにはそのトークの話題と、そしてアレンジを変えた曲の評価が書き込まれている。評価は悪くないと言ったところだろう。違法ではあるが、もう演奏が動画投稿サイトにアップされていた。
「嬉しい悲鳴ではあるけどね。」
沙夜はそう思いながらその投稿者の名前をチェックする。テレビ局が見つければ、上げた人も訴えることが出来るからだ。
愛達は本番が終わると帰っていった。その帰り間際、愛は沙夜に名刺を渡してくれた。会って最初に名刺をもらったが、裏を見るとそこには手書きの電話番号が書かれている。それはいつでも困ったことがあったら連絡を欲しいと言うことだろう。こういう気遣いが出来る人なのだ。だから芹が母のように惹かれているのだろう。
「沙夜さん。着替えが終わったよ。」
治が顔を覗かせてそう言うと、沙夜は楽屋の中に入る。五人とも来た時と同じ格好だ。
「ゴミは分別した?」
「うん。」
衣装も掛けられている。あとで衣装さんが取りに来るのだ。
「じゃあ行きましょうか。ラジオ局は二十三時入りね。」
日付が変わる二十四時からスタートして、人気のパーソナリティとトークをしたり音楽を流したり、最後には簡易的な演奏をする。そのために車の中に楽器を置いていたのだ。
「ドラムやシンセの機材は会社の人達がいつもどおりに運んでくれるの?」
「えぇ。会社の一階の倉庫ね。」
「チェックしたいなぁ。この間、スタッフに運ばれて壊れかけたヤツもあるし。」
「あれって結局壊れたのか?」
純がそう聞くと、翔は頷いた。
「電子機器って結構繊細だし、乱暴に扱ったら壊れるのは当然なんだけど。」
だからいつも楽器をしまう時には、翔はついていきたいのだが今日は付いていられない。だから不安になるのだ。
「壊れていたら言って。会社に報告するから。」
「そのためのチェックをしたいんだ。」
それだけでは無いと思う。それは残る四人みんなが思っていたことだった。せっかくのクリスマスイブなのだから、二人で居たいと思っているのだろう。だが肝心の沙夜が何も思っていない。
「わかったわ。会社へ一緒に行きましょうか。他の人達は、直帰よね?」
「あぁ。タクシーチケットもらってる。」
「じゃあそれで。」
テレビ局を出る時にも手続きが居る。それを沙夜がしている間、遥人は少し笑って翔に告げる。
「翔。思い切ったな。」
「え?」
「二人になりたいんだろう?」
手続きをしている沙夜の姿を見ながら、遥人はそう行くと翔の顔が少し赤くなる。図星だからだ。
「こんな時じゃ無いと、二人になれないから。家に帰れば芹も居るし……。」
やはり一番のネックになっているのは芹のようだ。翔も芹も相当意識しているのがわかる。どちらが沙夜を奪うかで更にバチバチと火花が散っているように見えた。
「お待たせ。行きましょうか。」
沙夜が五人に近づいて、地下の駐車場へ向かった。その間別のアーティストや芸能人とすれ違う。遥人はその中に知っている人などが居て、少し挨拶をしていた。こういう繋がりを大事にしているのだろう。
そして沙夜が停めているバンに、五人は乗り込みその運転席には沙夜が乗る。エンジンをかけるとラジオで演奏をする曲が流れた。それは「二藍」の曲では無い。有名アーティストのクリスマスソングで、これも渡摩季が作詞したモノだった。
「二藍」のクリスマスソングとはテイストが違い、ぐっと前向きな曲だった。印象的なのは「二人に降り積もる雪が祝福をしてくれている」というところ。付き合いたてのカップルを歌っているように感じた。
「あ、雪が降り出したわね。」
地下の駐車場から外に出ると、白いモノがフロントガラスに降ってきた。それを見て遥人は少し笑って言った。
「みぞれだよ。」
「みぞれ?」
「雨に雪が混ざっている状態。」
「へぇ……。」
助手席には遥人が乗っているのだ。その後ろに翔と純。そしてその後ろに一馬と治が乗っている。一番後ろは三人掛けになっているが、体の大きな二人が乗るとゆったり座れるだろうという気遣いからだった。
「沙夜さんは雪が珍しい方?」
遥人がそう聞くと、沙夜は首を横に振った。
「いいえ。そうでも無いわね。雪かきをするほどでは無いけれど、年に数回は積もるようなところだったから。」
「雪かきをしなくても良いの?」
「昼には溶けてしまうから。でもその日の夜の方が危険だったわね。アイスバーンになっているから。」
「車のブレーキがきかなくてスケート状態だろ?」
「その通り。」
「兄夫婦が旅行へ行ったときに同じ目に遭ってね。事故はしなかったけど、死ぬかと思ったって兄が言っていたな。」
「そう言えば栗山さんは次男だったわね。」
「うん。」
「お兄さんはこの関係では無いでしょう?」
「普通にサラリーマン。保険会社に居るよ。俺にも入った方が良いってこの間勧められてね。」
「生命保険くらいは入っていた方が良いわ。」
「医療保険をさ。」
「ガンでは保険が出ない時もあるのよ。そういうときのための医療保険ね。最近はガンでも保険料が出るモノがあるの。少し掛け金は高いけれど、家族が居ない人はそういうモノに入ることがあるから。それを勧めたんじゃ無いのかしらね。」
なるべく関係の無い話をしている。そして先程のことを忘れようとしているようにも見えた。遥人と話をしているのはそのためだろうか。疑問が残り、そしてラジオ局に着いた。
テレビ局よりは大きくない建物で、他にもラジオの収録をするためのブースがあったりする。そしてテレビ局よりはセキュリティーが良いわけでは無い。鍵も財布も自分たちで管理をしないといけないのだ。
「一応控え室には鍵がかかるみたいだけれど、荷物は持っていっても良いそうね。携帯電話だけは音を消して欲しいと言われているけれど。」
「それはそうだ。」
治は少し笑い、携帯電話の音を消す。すると残った四人も同じようにした。すると珍しく一馬がその画面を見て少し笑う。
「どうしたんだ。一馬。」
「嫁が仕事が終わって、うちの実家に息子を迎えに行ったんだがな。」
「あぁ、今日はどうしても迎えに行けないって言ってたな。この時期は大変だよな。」
「姪が息子を寝かしつけて、そのまま一緒に眠ってしまったらしい。義姉から今日は息子を泊まらせてあげたら良いと言われてな。朝、迎えに行くらしい。」
「って事は今日は帰ったら奥さんだけか。」
「あぁ。少し予想はしていた。そういう事もあるし。息子には悪いが、嫁を独占出来るチャンスだな。」
その言葉に治は少し笑った。付き合っている頃から奥さんとは知っている仲だし、治の奥さんとも仲が良いのは知っている。
だが最初は一馬はあまりガツガツしたタイプでは無かった。絶倫の噂は噂だけだったように思える。だが奥さんを隠さなくなって、一馬は割と変わったと思う。奥さんが好きで好きでたまらないようだ。そのおそろいのブレスレットが物語っている。
「ここって少し音を出しても良いんだろ?少し合わせようぜ。」
純がそう言ってギターを取り出す。普段使っているエレキギターでは無くてアコースティックギターなのだ。一馬もアコースティックベースを取り出す。最近買ったらしい。
他にも治はジャンベを、翔もミニのキーボードを持ってきていた。その時だった。
「あ、しまった。」
沙夜はそう言ってバッグの中を見る。そして五人に言った。
「合わせててくれる?えっと……三十分になったらスタジオへ行くから。」
「どうしたの?」
「忘れ物を車にしたみたい。ちょっと取ってくるわ。」
そう言って沙夜は部屋を出て行く。すると純が笑いながら言う。
「珍しいな。沙夜さんが忘れ物なんて。」
その言葉に翔は嫌な予感がした。だがこの場を置いて沙夜に会いに行くわけにはいかない。合わせる時間があまりないのだから。
だがこの司会者では無いといけないこともある。ほどよい笑いを交えたトークの腕はやはり誰も真似は出来ないのだ。おかげでトークを苦手としている翔や一馬もやっと一言二言話をしているように思えた。それがSNSでも割と話題になっている。
特に一馬はテレビの前では話をしない男で有名なのだ。その男が一言二言話をしただけで、ファンは嬉しいのだろう。
放送終了後のSNSにはそのトークの話題と、そしてアレンジを変えた曲の評価が書き込まれている。評価は悪くないと言ったところだろう。違法ではあるが、もう演奏が動画投稿サイトにアップされていた。
「嬉しい悲鳴ではあるけどね。」
沙夜はそう思いながらその投稿者の名前をチェックする。テレビ局が見つければ、上げた人も訴えることが出来るからだ。
愛達は本番が終わると帰っていった。その帰り間際、愛は沙夜に名刺を渡してくれた。会って最初に名刺をもらったが、裏を見るとそこには手書きの電話番号が書かれている。それはいつでも困ったことがあったら連絡を欲しいと言うことだろう。こういう気遣いが出来る人なのだ。だから芹が母のように惹かれているのだろう。
「沙夜さん。着替えが終わったよ。」
治が顔を覗かせてそう言うと、沙夜は楽屋の中に入る。五人とも来た時と同じ格好だ。
「ゴミは分別した?」
「うん。」
衣装も掛けられている。あとで衣装さんが取りに来るのだ。
「じゃあ行きましょうか。ラジオ局は二十三時入りね。」
日付が変わる二十四時からスタートして、人気のパーソナリティとトークをしたり音楽を流したり、最後には簡易的な演奏をする。そのために車の中に楽器を置いていたのだ。
「ドラムやシンセの機材は会社の人達がいつもどおりに運んでくれるの?」
「えぇ。会社の一階の倉庫ね。」
「チェックしたいなぁ。この間、スタッフに運ばれて壊れかけたヤツもあるし。」
「あれって結局壊れたのか?」
純がそう聞くと、翔は頷いた。
「電子機器って結構繊細だし、乱暴に扱ったら壊れるのは当然なんだけど。」
だからいつも楽器をしまう時には、翔はついていきたいのだが今日は付いていられない。だから不安になるのだ。
「壊れていたら言って。会社に報告するから。」
「そのためのチェックをしたいんだ。」
それだけでは無いと思う。それは残る四人みんなが思っていたことだった。せっかくのクリスマスイブなのだから、二人で居たいと思っているのだろう。だが肝心の沙夜が何も思っていない。
「わかったわ。会社へ一緒に行きましょうか。他の人達は、直帰よね?」
「あぁ。タクシーチケットもらってる。」
「じゃあそれで。」
テレビ局を出る時にも手続きが居る。それを沙夜がしている間、遥人は少し笑って翔に告げる。
「翔。思い切ったな。」
「え?」
「二人になりたいんだろう?」
手続きをしている沙夜の姿を見ながら、遥人はそう行くと翔の顔が少し赤くなる。図星だからだ。
「こんな時じゃ無いと、二人になれないから。家に帰れば芹も居るし……。」
やはり一番のネックになっているのは芹のようだ。翔も芹も相当意識しているのがわかる。どちらが沙夜を奪うかで更にバチバチと火花が散っているように見えた。
「お待たせ。行きましょうか。」
沙夜が五人に近づいて、地下の駐車場へ向かった。その間別のアーティストや芸能人とすれ違う。遥人はその中に知っている人などが居て、少し挨拶をしていた。こういう繋がりを大事にしているのだろう。
そして沙夜が停めているバンに、五人は乗り込みその運転席には沙夜が乗る。エンジンをかけるとラジオで演奏をする曲が流れた。それは「二藍」の曲では無い。有名アーティストのクリスマスソングで、これも渡摩季が作詞したモノだった。
「二藍」のクリスマスソングとはテイストが違い、ぐっと前向きな曲だった。印象的なのは「二人に降り積もる雪が祝福をしてくれている」というところ。付き合いたてのカップルを歌っているように感じた。
「あ、雪が降り出したわね。」
地下の駐車場から外に出ると、白いモノがフロントガラスに降ってきた。それを見て遥人は少し笑って言った。
「みぞれだよ。」
「みぞれ?」
「雨に雪が混ざっている状態。」
「へぇ……。」
助手席には遥人が乗っているのだ。その後ろに翔と純。そしてその後ろに一馬と治が乗っている。一番後ろは三人掛けになっているが、体の大きな二人が乗るとゆったり座れるだろうという気遣いからだった。
「沙夜さんは雪が珍しい方?」
遥人がそう聞くと、沙夜は首を横に振った。
「いいえ。そうでも無いわね。雪かきをするほどでは無いけれど、年に数回は積もるようなところだったから。」
「雪かきをしなくても良いの?」
「昼には溶けてしまうから。でもその日の夜の方が危険だったわね。アイスバーンになっているから。」
「車のブレーキがきかなくてスケート状態だろ?」
「その通り。」
「兄夫婦が旅行へ行ったときに同じ目に遭ってね。事故はしなかったけど、死ぬかと思ったって兄が言っていたな。」
「そう言えば栗山さんは次男だったわね。」
「うん。」
「お兄さんはこの関係では無いでしょう?」
「普通にサラリーマン。保険会社に居るよ。俺にも入った方が良いってこの間勧められてね。」
「生命保険くらいは入っていた方が良いわ。」
「医療保険をさ。」
「ガンでは保険が出ない時もあるのよ。そういうときのための医療保険ね。最近はガンでも保険料が出るモノがあるの。少し掛け金は高いけれど、家族が居ない人はそういうモノに入ることがあるから。それを勧めたんじゃ無いのかしらね。」
なるべく関係の無い話をしている。そして先程のことを忘れようとしているようにも見えた。遥人と話をしているのはそのためだろうか。疑問が残り、そしてラジオ局に着いた。
テレビ局よりは大きくない建物で、他にもラジオの収録をするためのブースがあったりする。そしてテレビ局よりはセキュリティーが良いわけでは無い。鍵も財布も自分たちで管理をしないといけないのだ。
「一応控え室には鍵がかかるみたいだけれど、荷物は持っていっても良いそうね。携帯電話だけは音を消して欲しいと言われているけれど。」
「それはそうだ。」
治は少し笑い、携帯電話の音を消す。すると残った四人も同じようにした。すると珍しく一馬がその画面を見て少し笑う。
「どうしたんだ。一馬。」
「嫁が仕事が終わって、うちの実家に息子を迎えに行ったんだがな。」
「あぁ、今日はどうしても迎えに行けないって言ってたな。この時期は大変だよな。」
「姪が息子を寝かしつけて、そのまま一緒に眠ってしまったらしい。義姉から今日は息子を泊まらせてあげたら良いと言われてな。朝、迎えに行くらしい。」
「って事は今日は帰ったら奥さんだけか。」
「あぁ。少し予想はしていた。そういう事もあるし。息子には悪いが、嫁を独占出来るチャンスだな。」
その言葉に治は少し笑った。付き合っている頃から奥さんとは知っている仲だし、治の奥さんとも仲が良いのは知っている。
だが最初は一馬はあまりガツガツしたタイプでは無かった。絶倫の噂は噂だけだったように思える。だが奥さんを隠さなくなって、一馬は割と変わったと思う。奥さんが好きで好きでたまらないようだ。そのおそろいのブレスレットが物語っている。
「ここって少し音を出しても良いんだろ?少し合わせようぜ。」
純がそう言ってギターを取り出す。普段使っているエレキギターでは無くてアコースティックギターなのだ。一馬もアコースティックベースを取り出す。最近買ったらしい。
他にも治はジャンベを、翔もミニのキーボードを持ってきていた。その時だった。
「あ、しまった。」
沙夜はそう言ってバッグの中を見る。そして五人に言った。
「合わせててくれる?えっと……三十分になったらスタジオへ行くから。」
「どうしたの?」
「忘れ物を車にしたみたい。ちょっと取ってくるわ。」
そう言って沙夜は部屋を出て行く。すると純が笑いながら言う。
「珍しいな。沙夜さんが忘れ物なんて。」
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