80 / 684
ポテトサラダ
79
しおりを挟む
やがて寒い冬がやってくる頃。沙夜の忙しさはピークを迎える。
アルバムの発売が近づくにつれて、個々の仕事の管理、CDショップへの売り込み、そのあとのツアーのためのホールの予約。機材の予約。人員の確保。印刷所への連絡など、それらを一人で全てこなし、今日も終電ギリギリだった。
それでも忙しいのは自分だけでは無い。もっと忙しいのは「二藍」の五人なのだから。電車の中吊り広告には、遥人が写っているファッション誌の広告が載っている。カーキ色のだぶっとしたモッズコートは今年の流行らしい。その隣には女性が写っている。おそらく恋人とするという触れ込みのコーディネートなのだろう。
それでもその間に距離はある。あまり近すぎてもいらない噂を立てられるからだ。
「この間の雑誌さぁ。」
OLが話をしている。手には翔が載っている雑誌が握られている。
「マジでゲイなのかな。この歌手もゲイの噂があるし。」
「翔は遥人でしょ?」
男と二人で写っていてもそういう噂になるのか。沙夜はそう思いながら、電車の壁にもたれかかる。そして電車が停まり、沙夜はその駅で降りると声をかけられた。
「泉さん。」
声をかけられた方を見ると、そこには翔の姿があった。そしてその奥には天草裕太の姿がある。沙夜の方を見て少し頭を下げる。
「天草さん。」
「泉さん。悪いけど、ちょっと言って欲しいんだけど。」
「どうしました。」
すると裕太はへらっとした笑顔を浮かべて沙夜に言う。
「いやさ。今度ソロアルバムを出すって話を聞いてさ。俺、是非ともコラボをしたいと思って。」
沙夜はその言葉に首を横に振る。
「そういう話はレコード会社越しにするモノです。もし千草さんがしたいというのであれば、こちらからそちらのレコード会社の方へ話をしますが、それを飛び越えてアーティスト同士でするのは話が違います。この世界が長いんですから、それくらいわかっているでしょう?」
相変わらず可愛くない女だ。裕太はそう思いながら心の中で舌打ちをする。
「でもさぁ。アーティスト同士がしたいと言えば……。」
「それに千草さんのソロアルバムの話は、まだ企画段階の話です。今から話を煮詰めることですから。」
「でも声をかけているのは居るんだよね。」
「いますよ。天草さんの名前はその中にはありませんけど。」
沙夜はどんなときでも強気なのだ。それが本当に可愛くない。
「本当に望んでいるなら、レコード会社に言ってください。正攻法でしか話はしませんから。千草さん。行きましょう。最寄り駅は一緒でしたよね。」
「あぁ。そういうことです。すいません。天草さん。」
ホームを降りていく。その二人の姿を見て、裕太はまた心の中で舌打ちをする。そしてあの女が邪魔をするのであれば、またあの女を調べてみるしか無い。どんな人でも弱みの一つや二つはあるはずなのだから。付くならそこだろう。そう思いながら、裕太はまたやってきた電車と逆の電車に乗った。
最近は朝早く起きて、朝ご飯と弁当、それから夕食まで用意をしているようだ。作り置きが出来るモノというおかずは限られてくる。だから沙夜はそうしているのだろう。
今日はハンバーグだった。だが半分くらいは豆腐や野菜類で、あまり肉肉しくはない。だがそっちの方が温めたときに堅くならないのだ。
「困ったモノね。」
「ストーカーみたいだ。」
翔と向かい合って食事をしていると、沙夜は少しため息を付いた。今日はもう沙菜は寝ているらしい。明日が早いと言っていたからだ。
「天草さんとはどうかしら。コラボしてみたいと思う?」
沙夜がそう聞くと、翔は首を横に振った。翔が人を拒絶するのは紗理那くらいだと思っていたが、どうやら違うらしい。
「ちょっと古いんだよな。天草さんの音って。」
翔ならさすがに敏感に感じるだろう。沙夜はそう思って安心した。
「望月さんは?」
「望月さんはもう一度してみたいと思う。あと……。」
仕事の話を家の中に持ち込まないのがルールなのだが、さすがにこの忙しさで打ち合わせも出来ない。特に翔は遥人の次くらいに忙しい。遥人は芸能事務所越しに話が来るが、翔は直接クライアントと顔を合わせないこともあるのだから。
沙夜はメモを取りながらまた箸を持つ。
「西藤部長に話をしてみる。」
本当は「夜」とコラボレーションをして欲しいと言っていた。だがいくら探してもその「夜」という人物は浮かび上がってこない。ついに西藤裕太はさじを投げてしまったのだという。
「「夜」は関われないかも知れない。だけどね。」
翔は沙夜を見て言う。
「……沙夜は関わって欲しいと思う。」
すると沙夜は驚いたように翔を見る。
「関わるじゃ無い。どれだけ関わっていると思うのよ。マネジメントで……。」
「じゃなくて、音楽に。」
その言葉に沙夜は首を横に振る。
「名前だけで売れるものは、一枚売れても次が続かない。私が関わればそうなるわ。」
「沙夜。」
「駄目。私は……。」
その時リビングのドアが開いた。そこには芹の姿があった。
「コーヒー飲みたい。」
「芹。あなたまたこたつで寝るような真似をしないでよ。」
「わかってるよ。」
最近、芹は夜寝ているらしい。前は夜中中起きていたのだが今は夜中でも眠り、朝には起き出して沙夜の手伝いをしてからまた一眠りするらしい。それでも三日に一度はこたつで眠っている。
「明日、魚?」
「うん。冷凍しておいた鰺フライね。それからポテトサラダ。」
「ポテトサラダ好きだな。あのジャガイモ美味くて。」
「そうね。」
二人で田舎に出掛けたのだという。あの時から沙夜と芹の距離が近くなった気がする。その頃、自分はシンガーソングライターだという男と一緒に写真に収まっていた。あのシンガーソングライターは本当にゲイらしくて、対談の時も翔に言い寄りそうで嫌だったのだ。
いや。何より沙夜がその噂を信じてしまったら嫌だと思う。
「沙夜。そう言えばさ。この間辰雄さんから連絡が来てさ。」
「あら?いつの間に辰雄さんと連絡先を交換したの?」
「別に。聞きたいことがあって、この間郵送してくれた伝票に書いてる連絡先に連絡したら、あっちからも連絡来たし。」
「そう。それで何だって?」
「今度酒を送ってきてくれるって言ってた。」
「あら。本当?」
「どぶろくだって。」
「今度の休みの時にでも……。」
二人の世界が出来上がっている気がした。翔とは仕事の話すらままならないのに、芹とはこうして仕事以外の話も出来るのだから。どうしてあの時、一緒に行けなかったのだろう。そうしたら、この立場は自分の立場だったかも知れないのに。
「辰雄さんって。沙夜が世話になってる人だっけ?」
「そう。元ホストだって言ってたな。」
「ホストねぇ。俺、そういう道は行かなかったな。弟はそういう道も行ってたみたいだけど。」
その言葉に沙夜は首をかしげて言う。
「最近、見ないわね。」
「何が?」
「慎吾って人。役者をしているとかって言っていて、前はテレビ局なんかでも見たことがあったのに。」
「あぁ。別に役者だからテレビ局にずっといるわけじゃ無いよ。」
翔はそう言うと、沙夜は不思議そうに翔を見る。
「スタジオってまぁ……各所にあってね。普通の家みたいな所で撮ることもあるんだ。そういう所に行くなら、テレビ局には居ないよ。それに最近は舞台の方が多いみたいでね。」
「舞台か。ミュージカルみたいな?」
「そうだな。」
背が高い男なのだ。きっと舞台でも栄えるだろう。
「そう言えば栗山さんもその話があったわね。ミュージカルだけど。」
「やるかなぁ。あいつ。」
「プラス思考だものね。新しい仕事に物怖じしないわ。それどころか新しい刺激になると思っているみたい。」
「凄いな。遥人のそういう所は尊敬出来るよ。」
だが遥人は内心、翔とゲイの噂があるのを良いと思っていないのだ。一馬の話によると、遥人は割と性差別が激しい方なのだという。ゲイカルチャーなどには「異常者」と素で言える人なのだ。その辺は猫をかぶっていると言うことなのだろう。
アルバムの発売が近づくにつれて、個々の仕事の管理、CDショップへの売り込み、そのあとのツアーのためのホールの予約。機材の予約。人員の確保。印刷所への連絡など、それらを一人で全てこなし、今日も終電ギリギリだった。
それでも忙しいのは自分だけでは無い。もっと忙しいのは「二藍」の五人なのだから。電車の中吊り広告には、遥人が写っているファッション誌の広告が載っている。カーキ色のだぶっとしたモッズコートは今年の流行らしい。その隣には女性が写っている。おそらく恋人とするという触れ込みのコーディネートなのだろう。
それでもその間に距離はある。あまり近すぎてもいらない噂を立てられるからだ。
「この間の雑誌さぁ。」
OLが話をしている。手には翔が載っている雑誌が握られている。
「マジでゲイなのかな。この歌手もゲイの噂があるし。」
「翔は遥人でしょ?」
男と二人で写っていてもそういう噂になるのか。沙夜はそう思いながら、電車の壁にもたれかかる。そして電車が停まり、沙夜はその駅で降りると声をかけられた。
「泉さん。」
声をかけられた方を見ると、そこには翔の姿があった。そしてその奥には天草裕太の姿がある。沙夜の方を見て少し頭を下げる。
「天草さん。」
「泉さん。悪いけど、ちょっと言って欲しいんだけど。」
「どうしました。」
すると裕太はへらっとした笑顔を浮かべて沙夜に言う。
「いやさ。今度ソロアルバムを出すって話を聞いてさ。俺、是非ともコラボをしたいと思って。」
沙夜はその言葉に首を横に振る。
「そういう話はレコード会社越しにするモノです。もし千草さんがしたいというのであれば、こちらからそちらのレコード会社の方へ話をしますが、それを飛び越えてアーティスト同士でするのは話が違います。この世界が長いんですから、それくらいわかっているでしょう?」
相変わらず可愛くない女だ。裕太はそう思いながら心の中で舌打ちをする。
「でもさぁ。アーティスト同士がしたいと言えば……。」
「それに千草さんのソロアルバムの話は、まだ企画段階の話です。今から話を煮詰めることですから。」
「でも声をかけているのは居るんだよね。」
「いますよ。天草さんの名前はその中にはありませんけど。」
沙夜はどんなときでも強気なのだ。それが本当に可愛くない。
「本当に望んでいるなら、レコード会社に言ってください。正攻法でしか話はしませんから。千草さん。行きましょう。最寄り駅は一緒でしたよね。」
「あぁ。そういうことです。すいません。天草さん。」
ホームを降りていく。その二人の姿を見て、裕太はまた心の中で舌打ちをする。そしてあの女が邪魔をするのであれば、またあの女を調べてみるしか無い。どんな人でも弱みの一つや二つはあるはずなのだから。付くならそこだろう。そう思いながら、裕太はまたやってきた電車と逆の電車に乗った。
最近は朝早く起きて、朝ご飯と弁当、それから夕食まで用意をしているようだ。作り置きが出来るモノというおかずは限られてくる。だから沙夜はそうしているのだろう。
今日はハンバーグだった。だが半分くらいは豆腐や野菜類で、あまり肉肉しくはない。だがそっちの方が温めたときに堅くならないのだ。
「困ったモノね。」
「ストーカーみたいだ。」
翔と向かい合って食事をしていると、沙夜は少しため息を付いた。今日はもう沙菜は寝ているらしい。明日が早いと言っていたからだ。
「天草さんとはどうかしら。コラボしてみたいと思う?」
沙夜がそう聞くと、翔は首を横に振った。翔が人を拒絶するのは紗理那くらいだと思っていたが、どうやら違うらしい。
「ちょっと古いんだよな。天草さんの音って。」
翔ならさすがに敏感に感じるだろう。沙夜はそう思って安心した。
「望月さんは?」
「望月さんはもう一度してみたいと思う。あと……。」
仕事の話を家の中に持ち込まないのがルールなのだが、さすがにこの忙しさで打ち合わせも出来ない。特に翔は遥人の次くらいに忙しい。遥人は芸能事務所越しに話が来るが、翔は直接クライアントと顔を合わせないこともあるのだから。
沙夜はメモを取りながらまた箸を持つ。
「西藤部長に話をしてみる。」
本当は「夜」とコラボレーションをして欲しいと言っていた。だがいくら探してもその「夜」という人物は浮かび上がってこない。ついに西藤裕太はさじを投げてしまったのだという。
「「夜」は関われないかも知れない。だけどね。」
翔は沙夜を見て言う。
「……沙夜は関わって欲しいと思う。」
すると沙夜は驚いたように翔を見る。
「関わるじゃ無い。どれだけ関わっていると思うのよ。マネジメントで……。」
「じゃなくて、音楽に。」
その言葉に沙夜は首を横に振る。
「名前だけで売れるものは、一枚売れても次が続かない。私が関わればそうなるわ。」
「沙夜。」
「駄目。私は……。」
その時リビングのドアが開いた。そこには芹の姿があった。
「コーヒー飲みたい。」
「芹。あなたまたこたつで寝るような真似をしないでよ。」
「わかってるよ。」
最近、芹は夜寝ているらしい。前は夜中中起きていたのだが今は夜中でも眠り、朝には起き出して沙夜の手伝いをしてからまた一眠りするらしい。それでも三日に一度はこたつで眠っている。
「明日、魚?」
「うん。冷凍しておいた鰺フライね。それからポテトサラダ。」
「ポテトサラダ好きだな。あのジャガイモ美味くて。」
「そうね。」
二人で田舎に出掛けたのだという。あの時から沙夜と芹の距離が近くなった気がする。その頃、自分はシンガーソングライターだという男と一緒に写真に収まっていた。あのシンガーソングライターは本当にゲイらしくて、対談の時も翔に言い寄りそうで嫌だったのだ。
いや。何より沙夜がその噂を信じてしまったら嫌だと思う。
「沙夜。そう言えばさ。この間辰雄さんから連絡が来てさ。」
「あら?いつの間に辰雄さんと連絡先を交換したの?」
「別に。聞きたいことがあって、この間郵送してくれた伝票に書いてる連絡先に連絡したら、あっちからも連絡来たし。」
「そう。それで何だって?」
「今度酒を送ってきてくれるって言ってた。」
「あら。本当?」
「どぶろくだって。」
「今度の休みの時にでも……。」
二人の世界が出来上がっている気がした。翔とは仕事の話すらままならないのに、芹とはこうして仕事以外の話も出来るのだから。どうしてあの時、一緒に行けなかったのだろう。そうしたら、この立場は自分の立場だったかも知れないのに。
「辰雄さんって。沙夜が世話になってる人だっけ?」
「そう。元ホストだって言ってたな。」
「ホストねぇ。俺、そういう道は行かなかったな。弟はそういう道も行ってたみたいだけど。」
その言葉に沙夜は首をかしげて言う。
「最近、見ないわね。」
「何が?」
「慎吾って人。役者をしているとかって言っていて、前はテレビ局なんかでも見たことがあったのに。」
「あぁ。別に役者だからテレビ局にずっといるわけじゃ無いよ。」
翔はそう言うと、沙夜は不思議そうに翔を見る。
「スタジオってまぁ……各所にあってね。普通の家みたいな所で撮ることもあるんだ。そういう所に行くなら、テレビ局には居ないよ。それに最近は舞台の方が多いみたいでね。」
「舞台か。ミュージカルみたいな?」
「そうだな。」
背が高い男なのだ。きっと舞台でも栄えるだろう。
「そう言えば栗山さんもその話があったわね。ミュージカルだけど。」
「やるかなぁ。あいつ。」
「プラス思考だものね。新しい仕事に物怖じしないわ。それどころか新しい刺激になると思っているみたい。」
「凄いな。遥人のそういう所は尊敬出来るよ。」
だが遥人は内心、翔とゲイの噂があるのを良いと思っていないのだ。一馬の話によると、遥人は割と性差別が激しい方なのだという。ゲイカルチャーなどには「異常者」と素で言える人なのだ。その辺は猫をかぶっていると言うことなのだろう。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる