夏から始まる

神崎

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温泉街

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 思い切って一緒に風呂に入ろうといったものの、ここの温泉は無色透明で匂いがするだけだ。なので菊子の体は蓮にさらされている。それがとても恥ずかしい。
「……あまり見ないで。」
 胸を隠すその腕が、少し赤い。それが日焼けをしたということだろう。おそらく明日か、明後日か、その腕は黒くなり皮がむけるかもしれない。
「化粧をしていないときは日焼け止めくらい塗らないのか?」
 蓮は菊子に近づくと、その腕を持ち上げた。
「あまり好きじゃないの。匂いがあるものは……。」
「俺は香水が好きだから、結構匂いがあると思ったんだけどな。」
「蓮の匂いは好きよ。でも……今からはそれも厳しいかもしれないわね。」
「どうしてだ。」
「料理に余計な香りがついてしまうから、化粧も控えるの。」
「そうだったな。」
 その掴んでいる手を引き寄せると、蓮は菊子の体を抱きしめた。
「……菊子。」
 菊子もその体に手を伸ばしてきた。それを感じて、蓮はそのまま菊子の唇にキスをする。舌を絡ませて、激しく唇を重ねた。
「ん……。」
 温かいお湯の中で、柔らかなものが手に触れる。それをぐっと掴み、先にある堅いところに指をはわせた。
「……蓮……。」
 唇を離すと、菊子の頬が赤く染まっていた。また体調が悪くなるとまずい。蓮は立ち上がると、菊子の手を引いた。
「続きはあがってからにしよう。」
 脱衣所へ向かい体を拭くと、そのままタオル一枚で部屋に戻ろうとした。そのときだった。
「蓮……あの……。」
 まずい。さっき菊子に少し触れただけで、タオルで押さえ切れていなかった。
「……正直だな。体は。」
 ため息を付いて、蓮は部屋に戻る。すると菊子はベッドの前で蓮の手を引いた。
「どうした。」
 すると菊子はその腰に巻かれているタオルをとる。そこはもう大きく張っていた。そしてそれに指をはわせる。
「……菊子……。ん……。」
 少しずつ慣れてきている。ひざまづいて、タオル一枚で蓮の性器に指をはわせ、唇がその上に重なった。
「蓮……どんどん大きくなってる。」
「あぁ……。」
 蓮はたまらずベッドに腰掛けて、菊子は床にひざまづいた。そしてそれを手で少し握る。
「……ん……。菊子……。」
 口の中で大きくなる。動かす度に水の音が響いた。
「菊子。あまりしないでくれ。」
「どうして?」
 口を離して、菊子は不思議そうに聞いた。
「口に出すより、お前の中で出したい。」
 床に座っている菊子を抱き寄せると、そのタオルをはずした。そこには白い裸体がある。膝で蓮をまたぐと、自然に足も開いた。
 柔らかい胸に触れると、菊子は吐息を漏らす。
「ん……。」
 最初にしたときよりも少し大きくなったと思う。だがその感度はそのころよりも敏感になっている。乳首に触れ、少し強めに摘むと菊子はさらに声を漏らした。
「あっ……。」
「首に捕まってろ。」
 手を首に回させて、親指と中指で乳首を掴み人差し指でその先をなで回す。すると菊子の顔がさらに赤くなった。
「あっ……蓮……。」
 そのまま反対の手で、広げられている足の間に指をはわせた。そこはもうじっとりと濡れ始めていた。
「菊子。」
 指を離して、その濡れた指を菊子に見せる。
「ほら。こんなに濡れてる。嫌らしい体だな。」
「や……蓮。そんなことを言わないで……。恥ずかしいから……。」
 顔を赤くさせて、首を横に振る。だが再び指をそこにはわせると、さっきよりも濡れていた。あぁ、あいつの言ったとおりなんだ。
「菊子って、とてもしっかりしてるように見えるでしょ?でもたぶんだけど、ちょっとマゾヒストなんじゃないのかしら。試しにちょっと言葉で責めてみたら?すごい濡れるかもしれないし。」
 梅子はあの日、そんなことを言ってたのだ。それはおそらく的中している。
「ほら。ここも堅くなって……。」
 性器の上の堅いところに触れる。そこと乳首を撫でると菊子の膝ががくがくと痙攣し始めた。
「あ……あ……。蓮……。駄目……あっ!ああああ!」
 まだ指もいれていないのに、菊子はそのままのけぞるように絶頂に達してしまったらしい。指を離すと、蓮に倒れ込むように体を重ねてきた。
「菊子。もうイったのか?」
 体をベッドに押し倒すと、菊子の表情がトロンとしてうつろにこちらを見ている。顔は赤く、息も切らせていた。
「意地悪。」
「意地悪したくなった。」
 そのまだ快感の余韻が残っているその体に、蓮は乗りかかるように組み敷く。そして唇をまた重ねた。そしてその首もと、胸元に唇を這わせる。胸を掴みその乳首に舌を這わせ、吸ったり少しかんだりする度に声を上げる。足をもぞもぞと動かしているのを見て、蓮は少し笑う。
「どうした。足に何かあるのか?」
 すると菊子は顔を赤くして、蓮から視線をそらせた。
「ずっと……濡れているから……。」
「どこが?」
「……どうして今日はそんなに意地悪なの?」
 耳元で蓮は囁くように聞く。耳にと息がかかり、さらに声を上げそうだ。
「……あっ……。」
「言って。」
 声を上げてそれを消えるような声で言うと、蓮は菊子のひざを立てた。そしてそこに指を触れると、もう尻のあたりまで愛液が垂れている。指を突き立てて、確かめるように感じるところを探る。そのたびに水の音とともに菊子は声を上げた。
「あっ……。そこが……あっ……あっ……。」
「音が聞こえるか?ほら。こんなに濡れて……シーツまで垂れてる。」
 二本の指でそこをこする度に、体を震わせて、声を上げた。自分で感じてくれる菊子の反応に、蓮はもっとしたくなる。もっと濡らして、もっと感じさせたくなった。
 口を離して菊子を見ると、何度も絶頂に達したようで肌も顔もピンクに染まっている。
「大丈夫か?お前。」
 顔に近づいて軽くキスをすると、菊子はうつろな目で蓮の方をみる。そして消えるような声で言った。
「お願い。どうにかなりそう……。」
「どうした。」
「い……いれて欲しい。」
 その言葉に蓮は少し笑った。
「どこに?何を?」
 すると菊子の顔がさらに赤くなる。
「意地悪。」
 その言葉と視線にぞくっとした。求める目と、手と、すべてが愛おしい。
 ベッドの上を見ると、ティッシュの隣にコンドームが二つある。その一つを手にして、自分のものにかぶせた。そして菊子の方をみる。その間少し落ち着いたように息を整えていた。
 足を広げて、蓮はその濡れているところに指を這わせた。その衝撃で、菊子はまたシーツを掴む。
「ん……。」
 その手を離して、蓮はその入り口にすり当てるとゆっくりその中に入っていった。
「あ……。」
 その感覚に、蓮も思わず声を上げた。こんなに良かっただろうか。狭くて温かい。ぬめっとした感触は、奥へ行く度に締め付けてくる。
「……奥まで入ったな。」
 余裕はない。すぐにでも射精しそうだ。だが何度もイかせたい。蓮は腰を少し浮かせるように、菊子を持ち上げると容赦なく打ち込んでいく。
「あっ!あっ!蓮……れ……。あっ!」
 菊子がイく度に、そこが締まる。
 体勢を変える度に、蜜が溢れる。
「お前のココ、すごい気持ちいいな。」
 奥に入り込んだまま、蓮は菊子の唇にキスをする。そしてその唇を這なすと、赤い顔をさせた菊子の頬に手を添えてうつろな目に言う。
「菊子。好き。ずっとそばにいてくれ。」
 その言葉に菊子の目がすっと細くなり、菊子の方から再びキスをする。
「私も好き。蓮、一緒にいてもいいの?」
「あぁ。居て。俺のそばに……。」
 時間ぎりぎりまでその行為を続け、用意されたコンドームを使い終わったとき、シーツがひどく濡れていた。
 それをそのままにしてあとにするのは恥ずかしいものがある。だがそういうものなのだろう。軽くお湯で体を流すと、二人は部屋を出ていった。
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