67 / 85
態度 の 軟化
しおりを挟む
小さな頃から他の人には見えないものが見えるのがイヤだった。最初はそれが見えると訴えても、「妄想好きな子供」と言うレッテルを貼られ、少しすれば奇異の目で見られていたから。
だから見えるものを作れないだろうか。人間が生み出したほかの動物や魔物でも作れないものを作り、人間に認められたいと思っていた。
「設計図をたてて、組み立てて、形になるのが面白かったんです。そのための企業は、ここは最適でした。」
「でもあなたの製品はまだ実用化されていないですね。」
その通りだ。まだ私は無力。山口さんのアシスタントでしかないのだから。山口さんが同じキャリアの時は、もう実用化されている製品がある上ヒット作をしているのに、私は相変わらず統計を取りそれを報告するしか仕事としてはない。
でもそれはそれでいいのかもしれない。最近はそう思う。
山口さんが立案した製品でも、私が少し出も関わっていればそれでいいのだと思う。
薄暗い廊下が少しずつ明るくなっていく。側にある窓を覗くともう空が明るくなってきていた。今日は少し眠っただけだった。と言っても気絶しているような感じではあったが。
「夜が明けますね。」
一度家にかえって、シャワーを浴びる暇はあるだろうか。無いかも知れない。そのまま会社に行った方が早いかもしれないな。
「今日はお休みを取ったらどうですか。」
愛さんはそう言って私をみる。
「いいえ。会社でしたいこともあるので。」
「報告書では、あなたたちの部署は作業が遅れているわけではありませんし、一日休むくらいでは支障はありません。病欠の連絡をしておいてください。」
「……。」
有無を言わせないのは、この家族みんなそうなのだろうか。
「わかりました。」
それからしばらくして、桐彦さんと社長が部屋から出てきた。こうしてみるととても似ている。髪をあげているか、下ろしているかの差だけだ。
「まだいたのか。」
桐彦さんはそう言って私を驚いた目で見ていた。
「えぇ。」
「今日も仕事だろう。支障があるのではないのか。」
「今日は病気です。」
「は?」
「三十八度の熱がでて。」
すると社長は顔をくしゃくしゃにして笑った。
「社長の待えでよくさぼる口実を言えたものだ。」
こういうところは似ていない。こんな表情を桐彦さんはする事はないだろう。
「ワタシは帰らないといけない。」
「あぁ。悪かった。こんなところまで足を運ばせて。」
「……親父に何かあれば、また知らせてくれ。」
変わったものだ。こんなにここに来るのをいやがっていたのに。何か誤解があったのだろう。
私は桐彦さんの後をついて行く。そしてエレベーターに二人で乗った。その間、彼は黙ったままだった。
「……。」
何か考えているのかもしれない。
そして下の階にたどり着く。玄関を抜ける富を切るような冷たい風が、吹き抜けた。
「寒い。」
たぶん今までなら、そう言えば桐彦さんが肩を抱いてくれたのだろう。今はそんなことをしない。そう。私たちにはもう何の関係もないのだから。
「六花。ワタシ達の関係は解消された。しかし、それはワタシ達の目的のためだ。」
「……えぇ。わかっています。」
人工魔を作る企業を探るために、私は餌になる。そのために彼との関係を解消させたのだ。
「だが、貴様のことを諦めた訳じゃない。」
「……。」
「息吹などにはもったいない。いずれ私に戻ってくるだろう。」
そんなことはあり得ない。わかっているのに、彼はそう言わないと耐えられなかったのかもしれない。
「そんなときが来ればいいですね。」
「では、また連絡をする。それから……。」
「はい。」
「息吹に連絡をするようにいってくれ。」
「息吹に?」
あんなに殺しそうだった息吹をどうして許したのだろう。
ううん。きっと許したんじゃない。
駒が必要だから彼を一時的に許したのだろう。桐彦さんというのはそういう人だ。
それから桐彦さんはタクシーで、私は行く方向が逆だったため、バスに乗った。始発はもう出ている。
それから駅で降りて、また電車に乗る。いつもは乗らない逆方向の電車。そして駅で降りると、今度こそ自分のアパートに戻ってきた。
その部屋のドアの前に夜には桐彦さんがいたのだが、今いるのは息吹だった。息吹は私の姿を見つけると、駆け寄ってきた。
「……どこへ行っていた。」
「病院。」
「……どうして?」
「言う必要があるかしら。」
桐彦さんの事を息吹に言う必要はない。たぶん、父も母もいない彼だ。父親が死にそうだと言ってもその感情は理解できないかもしれない。
それに桐彦さんについて行ったと言ったら、彼はきっと怒りに身を任せるはずだから。
「ここに来ることは言っておいたはずだが。」
「……そうだったかしら。」
確かにそう言っていたような気がする。それは申し訳ない。
「入る?」
部屋の鍵を開けて、息吹を部屋に入れた。部屋の電気をつけると、エアコンの暖房を入れた。
「会社は?」
「熱があるの。今日は休むから。」
コートを脱いで、ハンガーに掛ける。そしてジャケットも脱いだ。そのときだった。
体をドン!と置される感覚があった。衝撃で私は壁に額をぶつけそうになったけれど、それは腕をついて阻止する。
「何?」
「首。」
彼の声が耳元近くで聞こえた。首筋に暖かくてぬめりとした感触が伝わってくる。そしてちくりとわずかに痛みを感じた。
「何をしているの?」
ジャケットが足下に落ち、彼は私を自分の方に向ける。そしてブラウスのボタンを一つ一つ外していった。
「あとどこを付けられてる?」
そう言って彼は私の体に、触れていった。
だから見えるものを作れないだろうか。人間が生み出したほかの動物や魔物でも作れないものを作り、人間に認められたいと思っていた。
「設計図をたてて、組み立てて、形になるのが面白かったんです。そのための企業は、ここは最適でした。」
「でもあなたの製品はまだ実用化されていないですね。」
その通りだ。まだ私は無力。山口さんのアシスタントでしかないのだから。山口さんが同じキャリアの時は、もう実用化されている製品がある上ヒット作をしているのに、私は相変わらず統計を取りそれを報告するしか仕事としてはない。
でもそれはそれでいいのかもしれない。最近はそう思う。
山口さんが立案した製品でも、私が少し出も関わっていればそれでいいのだと思う。
薄暗い廊下が少しずつ明るくなっていく。側にある窓を覗くともう空が明るくなってきていた。今日は少し眠っただけだった。と言っても気絶しているような感じではあったが。
「夜が明けますね。」
一度家にかえって、シャワーを浴びる暇はあるだろうか。無いかも知れない。そのまま会社に行った方が早いかもしれないな。
「今日はお休みを取ったらどうですか。」
愛さんはそう言って私をみる。
「いいえ。会社でしたいこともあるので。」
「報告書では、あなたたちの部署は作業が遅れているわけではありませんし、一日休むくらいでは支障はありません。病欠の連絡をしておいてください。」
「……。」
有無を言わせないのは、この家族みんなそうなのだろうか。
「わかりました。」
それからしばらくして、桐彦さんと社長が部屋から出てきた。こうしてみるととても似ている。髪をあげているか、下ろしているかの差だけだ。
「まだいたのか。」
桐彦さんはそう言って私を驚いた目で見ていた。
「えぇ。」
「今日も仕事だろう。支障があるのではないのか。」
「今日は病気です。」
「は?」
「三十八度の熱がでて。」
すると社長は顔をくしゃくしゃにして笑った。
「社長の待えでよくさぼる口実を言えたものだ。」
こういうところは似ていない。こんな表情を桐彦さんはする事はないだろう。
「ワタシは帰らないといけない。」
「あぁ。悪かった。こんなところまで足を運ばせて。」
「……親父に何かあれば、また知らせてくれ。」
変わったものだ。こんなにここに来るのをいやがっていたのに。何か誤解があったのだろう。
私は桐彦さんの後をついて行く。そしてエレベーターに二人で乗った。その間、彼は黙ったままだった。
「……。」
何か考えているのかもしれない。
そして下の階にたどり着く。玄関を抜ける富を切るような冷たい風が、吹き抜けた。
「寒い。」
たぶん今までなら、そう言えば桐彦さんが肩を抱いてくれたのだろう。今はそんなことをしない。そう。私たちにはもう何の関係もないのだから。
「六花。ワタシ達の関係は解消された。しかし、それはワタシ達の目的のためだ。」
「……えぇ。わかっています。」
人工魔を作る企業を探るために、私は餌になる。そのために彼との関係を解消させたのだ。
「だが、貴様のことを諦めた訳じゃない。」
「……。」
「息吹などにはもったいない。いずれ私に戻ってくるだろう。」
そんなことはあり得ない。わかっているのに、彼はそう言わないと耐えられなかったのかもしれない。
「そんなときが来ればいいですね。」
「では、また連絡をする。それから……。」
「はい。」
「息吹に連絡をするようにいってくれ。」
「息吹に?」
あんなに殺しそうだった息吹をどうして許したのだろう。
ううん。きっと許したんじゃない。
駒が必要だから彼を一時的に許したのだろう。桐彦さんというのはそういう人だ。
それから桐彦さんはタクシーで、私は行く方向が逆だったため、バスに乗った。始発はもう出ている。
それから駅で降りて、また電車に乗る。いつもは乗らない逆方向の電車。そして駅で降りると、今度こそ自分のアパートに戻ってきた。
その部屋のドアの前に夜には桐彦さんがいたのだが、今いるのは息吹だった。息吹は私の姿を見つけると、駆け寄ってきた。
「……どこへ行っていた。」
「病院。」
「……どうして?」
「言う必要があるかしら。」
桐彦さんの事を息吹に言う必要はない。たぶん、父も母もいない彼だ。父親が死にそうだと言ってもその感情は理解できないかもしれない。
それに桐彦さんについて行ったと言ったら、彼はきっと怒りに身を任せるはずだから。
「ここに来ることは言っておいたはずだが。」
「……そうだったかしら。」
確かにそう言っていたような気がする。それは申し訳ない。
「入る?」
部屋の鍵を開けて、息吹を部屋に入れた。部屋の電気をつけると、エアコンの暖房を入れた。
「会社は?」
「熱があるの。今日は休むから。」
コートを脱いで、ハンガーに掛ける。そしてジャケットも脱いだ。そのときだった。
体をドン!と置される感覚があった。衝撃で私は壁に額をぶつけそうになったけれど、それは腕をついて阻止する。
「何?」
「首。」
彼の声が耳元近くで聞こえた。首筋に暖かくてぬめりとした感触が伝わってくる。そしてちくりとわずかに痛みを感じた。
「何をしているの?」
ジャケットが足下に落ち、彼は私を自分の方に向ける。そしてブラウスのボタンを一つ一つ外していった。
「あとどこを付けられてる?」
そう言って彼は私の体に、触れていった。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる