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二年目
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キッチンに立って夕食の片づけを終えると、米をといだ。朝はパンを食べているけれど、結局昼ご飯のお弁当とか夕食とかでご飯は必要だ。
女二人で住んでいるときはそうでもないと思っていた米だったけれど、男二人がいるだけで結構ご飯を炊く機会はあって、米が結構減るなぁ。
炊飯器に研ぎ終わった米をセットして予約ボタンを押す。すると茅さんがお風呂から上がってきた。上下スウェットの姿は、いつもの姿だ。
「風呂お前も入れよ。冬だからすぐ冷めるし。」
「そうね。じゃあ入ろうかな。」
キッチンから離れて部屋に戻り、下着を取りに行く。そしてお風呂場にはいると、洗濯物がもう乾いてそのままなのを思い出した。
「茅さん。」
そのまま私は洗濯物をかごに入れて、リビングに戻ってきた。
「何?」
キッチンに入って流しの下にあるお酒を物色しようとしていた茅さんは、急に呼ばれてこちらを見る。
「洗濯物畳んでくれる?」
「え?俺が?」
「いいじゃない。柊と私の分は私で畳むから。」
「あいつにもさせろよ。」
「色々してくれているのよ。お米とか買ってきてくれるし。お願いね。」
「仕方ねぇな。」
キッチンから出ると、彼はそのかごを手にしてソファの上で洗濯物を手にする。
再び脱衣所へ行くと、私は服を脱ぎだした。
そして下着姿になると、背中に手を回して下着を取った。確かに最近、下着のサイズが合っていないのかもしれない。今度買いに行くか。そう思っていると、脱衣所のドアが急に開いた。
「何?」
思わず手で隠してしまった。そこにはバスタオルやタオルを持った茅さんがいたから。
「まだ入っていなかったのか。」
「急に開けないでよ。」
「いいじゃん。減るもんじゃあるまいし……何回も見ただろ?」
そういって彼は私のそばにある、引き出しを開けてタオルをしまった。そしてこちらを見る。
「相変わらず、ちっちぇえな。」
むっとして、私は茅さんを外に押し出した。
「うるさいな。」
「俺が大きくしてやるよ。」
「バカね。」
そういって脱衣所のドアを閉めた。上機嫌そうな茅さんの笑い声が聞こえる。あー。もう。大きくなったかもって思ったのに。
お風呂から出てくると、茅さんはすでにソファの上で新聞を読んでいた。きっとリリーの裁判の結果を見ているのだ。実際目にしたとは言え、やはりショックだったのかもしれない。
「お風呂上がったわ。」
「おう。そこ洗濯物、置いてる。」
きちんと畳まれた洗濯物がかごの中に置いてあった。
「私たちの分はいいのに。」
「別に。ついでだから。」
私はそれを手にして、部屋に戻っていった。明かりをつけてクローゼットの中にそれをしまうと、ベッドの上に座ってドライヤーで髪を乾かし出した。
ずいぶん長くなったものだ。切るタイミングを見失った気がする。この時期は乾かすのも面倒。切ってしまえば後は楽なのにな。
髪が乾いて、ドライヤーをしまった。そして冷えないように上着を着ると、いすに座った。そしてバックの中からノートを取り出す。試験があるから。
「桜。」
ドアを無神経に開ける人がいる。それは茅さんだった。というか茅さんしかいないしな。」
「何?どうしたの?」
「桔梗から電話。お前出ねぇからって。」
「あぁ。ずっとマナーモードにしてた。」
私はそういって彼の携帯電話を手にした。
「もしもし。」
「桜さんか。何かあったのではないかと思った。」
心配する声。それは柊さんによく似た声で、胸が高鳴りそうになる。
「すいません。ちょっとマナーモードから戻すのを忘れてて。」
「そうか。特に何もなければ良かったのだが。」
藤堂先生は、少し咳払いをしてそしてライターをつけた音がした。
「どうしました?」
「芙蓉と少し話をして聞いたのだが、君が柊と共に茅の所にいると聞いた。」
「えぇ。事実です。」
「男二人で暮らすなど、大丈夫なのだろうか。もし良ければ、うちにいてもかまわないのだが。」
「……何とか暮らしてます。まだそんなに時間がたっているわけではないのですが、母もそれで納得しています。」
「しかし……。」
「先生のところに行った方が、母はきっと嫌がりますよ。」
「……。」
ふと横を見ると、茅さんがどんな内容なのかとじっとこちらを見ている。私は立ち上がると、ベッドに腰掛けた。その様子を見て茅さんもベッドに腰掛けてくる。
「あわよくば、はありません。母は今の恋人ときっと結婚しますから。」
「私もずっと彼女を思っていた。誰も祝福しなくても、一緒になると思っていてね。」
「……まるで誰かのよう。」
「誰か?」
思う人はいた。だけどこの場で言えるわけがない。
「とにかく、私はここにいます。話を付けたかったら、母と話してみてください。まだ話せていないのでしょう?」
「あぁ。」
「でも母は、あなたが私や柊さんにしたことを知っている。そんなあなたに私を任せられるとは思いません。」
「……あれは……仕方がないことだった。君を欺いて、君の恋人のふりをして、君から恋人を引き離せと言う姉からの指示だったから。」
「何故か、なども考えずにただ彼女に従ったのですか。」
「姉には逆らえない。」
「……何も考えずに、彼女の言うとおりにしたのですか。」
「あんなヤクザの言うとおりにしてまで、私たちを育ててくれたのだ。君にはわからないだろう。胡桃さんから、何不自由なく育った君には。」
最後の方は怒りがこもっていたように思える。もう何を言っても聞き入れてもらえないだろう。
「そうでしたね。すいません。生意気な口を。」
「いいや。悪かった。こっちこそ熱くなってしまって。」
「……卒業まで、ここにいます。」
「そうだった。あと数ヶ月か。だから彼女も了解したのかもしれない。せいぜい貞操を守ることだ。」
「わかってます。」
「では夜分失礼した。」
「おやすみなさい。」
そういって私は電話を切った。そして茅さんに電話を渡す。
「ありがとう。」
「生意気なのは今に始まった事じゃねぇ。」
「気をつけないといけないわね。」
そういって私はバックから携帯電話を取り出した。そこには先生からの着信が数件。マナーモードを解除すると、机の上に携帯電話を置いた。
「心配してたのか。」
「えぇ。男二人のところにいても大丈夫なのだろうかと。」
「あいつが心配する立場かよ。百合の片棒を担いでたくせに。」
「……そうね。」
少し笑い、私はいすに座る。もうこれ以上先生を責めたくはなかった。
女二人で住んでいるときはそうでもないと思っていた米だったけれど、男二人がいるだけで結構ご飯を炊く機会はあって、米が結構減るなぁ。
炊飯器に研ぎ終わった米をセットして予約ボタンを押す。すると茅さんがお風呂から上がってきた。上下スウェットの姿は、いつもの姿だ。
「風呂お前も入れよ。冬だからすぐ冷めるし。」
「そうね。じゃあ入ろうかな。」
キッチンから離れて部屋に戻り、下着を取りに行く。そしてお風呂場にはいると、洗濯物がもう乾いてそのままなのを思い出した。
「茅さん。」
そのまま私は洗濯物をかごに入れて、リビングに戻ってきた。
「何?」
キッチンに入って流しの下にあるお酒を物色しようとしていた茅さんは、急に呼ばれてこちらを見る。
「洗濯物畳んでくれる?」
「え?俺が?」
「いいじゃない。柊と私の分は私で畳むから。」
「あいつにもさせろよ。」
「色々してくれているのよ。お米とか買ってきてくれるし。お願いね。」
「仕方ねぇな。」
キッチンから出ると、彼はそのかごを手にしてソファの上で洗濯物を手にする。
再び脱衣所へ行くと、私は服を脱ぎだした。
そして下着姿になると、背中に手を回して下着を取った。確かに最近、下着のサイズが合っていないのかもしれない。今度買いに行くか。そう思っていると、脱衣所のドアが急に開いた。
「何?」
思わず手で隠してしまった。そこにはバスタオルやタオルを持った茅さんがいたから。
「まだ入っていなかったのか。」
「急に開けないでよ。」
「いいじゃん。減るもんじゃあるまいし……何回も見ただろ?」
そういって彼は私のそばにある、引き出しを開けてタオルをしまった。そしてこちらを見る。
「相変わらず、ちっちぇえな。」
むっとして、私は茅さんを外に押し出した。
「うるさいな。」
「俺が大きくしてやるよ。」
「バカね。」
そういって脱衣所のドアを閉めた。上機嫌そうな茅さんの笑い声が聞こえる。あー。もう。大きくなったかもって思ったのに。
お風呂から出てくると、茅さんはすでにソファの上で新聞を読んでいた。きっとリリーの裁判の結果を見ているのだ。実際目にしたとは言え、やはりショックだったのかもしれない。
「お風呂上がったわ。」
「おう。そこ洗濯物、置いてる。」
きちんと畳まれた洗濯物がかごの中に置いてあった。
「私たちの分はいいのに。」
「別に。ついでだから。」
私はそれを手にして、部屋に戻っていった。明かりをつけてクローゼットの中にそれをしまうと、ベッドの上に座ってドライヤーで髪を乾かし出した。
ずいぶん長くなったものだ。切るタイミングを見失った気がする。この時期は乾かすのも面倒。切ってしまえば後は楽なのにな。
髪が乾いて、ドライヤーをしまった。そして冷えないように上着を着ると、いすに座った。そしてバックの中からノートを取り出す。試験があるから。
「桜。」
ドアを無神経に開ける人がいる。それは茅さんだった。というか茅さんしかいないしな。」
「何?どうしたの?」
「桔梗から電話。お前出ねぇからって。」
「あぁ。ずっとマナーモードにしてた。」
私はそういって彼の携帯電話を手にした。
「もしもし。」
「桜さんか。何かあったのではないかと思った。」
心配する声。それは柊さんによく似た声で、胸が高鳴りそうになる。
「すいません。ちょっとマナーモードから戻すのを忘れてて。」
「そうか。特に何もなければ良かったのだが。」
藤堂先生は、少し咳払いをしてそしてライターをつけた音がした。
「どうしました?」
「芙蓉と少し話をして聞いたのだが、君が柊と共に茅の所にいると聞いた。」
「えぇ。事実です。」
「男二人で暮らすなど、大丈夫なのだろうか。もし良ければ、うちにいてもかまわないのだが。」
「……何とか暮らしてます。まだそんなに時間がたっているわけではないのですが、母もそれで納得しています。」
「しかし……。」
「先生のところに行った方が、母はきっと嫌がりますよ。」
「……。」
ふと横を見ると、茅さんがどんな内容なのかとじっとこちらを見ている。私は立ち上がると、ベッドに腰掛けた。その様子を見て茅さんもベッドに腰掛けてくる。
「あわよくば、はありません。母は今の恋人ときっと結婚しますから。」
「私もずっと彼女を思っていた。誰も祝福しなくても、一緒になると思っていてね。」
「……まるで誰かのよう。」
「誰か?」
思う人はいた。だけどこの場で言えるわけがない。
「とにかく、私はここにいます。話を付けたかったら、母と話してみてください。まだ話せていないのでしょう?」
「あぁ。」
「でも母は、あなたが私や柊さんにしたことを知っている。そんなあなたに私を任せられるとは思いません。」
「……あれは……仕方がないことだった。君を欺いて、君の恋人のふりをして、君から恋人を引き離せと言う姉からの指示だったから。」
「何故か、なども考えずにただ彼女に従ったのですか。」
「姉には逆らえない。」
「……何も考えずに、彼女の言うとおりにしたのですか。」
「あんなヤクザの言うとおりにしてまで、私たちを育ててくれたのだ。君にはわからないだろう。胡桃さんから、何不自由なく育った君には。」
最後の方は怒りがこもっていたように思える。もう何を言っても聞き入れてもらえないだろう。
「そうでしたね。すいません。生意気な口を。」
「いいや。悪かった。こっちこそ熱くなってしまって。」
「……卒業まで、ここにいます。」
「そうだった。あと数ヶ月か。だから彼女も了解したのかもしれない。せいぜい貞操を守ることだ。」
「わかってます。」
「では夜分失礼した。」
「おやすみなさい。」
そういって私は電話を切った。そして茅さんに電話を渡す。
「ありがとう。」
「生意気なのは今に始まった事じゃねぇ。」
「気をつけないといけないわね。」
そういって私はバックから携帯電話を取り出した。そこには先生からの着信が数件。マナーモードを解除すると、机の上に携帯電話を置いた。
「心配してたのか。」
「えぇ。男二人のところにいても大丈夫なのだろうかと。」
「あいつが心配する立場かよ。百合の片棒を担いでたくせに。」
「……そうね。」
少し笑い、私はいすに座る。もうこれ以上先生を責めたくはなかった。
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