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二年目
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この間までクリスマスツリーだ、サンタクロースだと騒いでいたところに七福神や門松が置かれている。それを見て芙蓉さんは不思議そうだった。
「何?この太った人。」
「神様ね。」
「神様が七人もいるの?」
「そう。」
「この竹は?」
「門松。本来なら家の玄関先に置いて、神様を受け入れるものだって言われてるわね。」
芙蓉さんは目にする物何もかもが初めてのようで、これは?これは?と聞いてくる。お陰で買い物が全く進まない。
「芙蓉。いい加減にしろよ。買い物行くんだろ?」
「制服、新調するんだったらこっちよ。」
「あ、制服ね。桜さんのお下がりでいいよ。」
「私の?」
「あんまり身長変わらないよ。変じゃないと思う。」
それを聞いて、茅さんは笑いながら言った。
「サイズが合わないとこもあるだろ?」
胸回りのことを言ってるの?ムカつくなぁ。
「大丈夫。桜さん。柊さんがいるから。」
「何で、柊さん?」
「揉めばおっきくなるって、母さんが言ってた。」
顔が赤くなる。何でこういうことも知っているんだろう。この子は。
「あ、可愛い。」
芙蓉さんは本当に風船のようにふらふらする。何というか、奔放だな。
「桜。」
「何?」
「俺が大きくしても良いけどな。」
肩に手を置かれそうになって、私はその手をぎゅっとつねった。
「いてぇ。」
「誰が悪いの?」
結局芙蓉さんは、ピンクのダウンのジャンパー、白と黒のセーターを二枚、色あせたジーパンを一枚、そのほか下着なんかを買った。
それを一度車に載せると、また外に出る。
「すげぇ荷物だな。まるで家出だ。」
「ほとんど荷物無かったものね。」
下着なんかも見れば本当にぼろぼろのものばかりで、サイズも全く合っていなかった。多分、こういうものにお金を使わなかったのだろう。
「悪かったのかな。」
「いいや。別にそれでお前の国では普通だったんだろ?国の生活水準ってものがあるんだよ。この国では、それでは見苦しいって言われるんだよ。」
「見苦しい?」
「んー。ちょっと変わっているって言うか。」
「母さんがね、変わってることって悪いことじゃないよっていっつも言ってた。この国は「個性」を潰すって。だからあたしにあまり来て欲しくないって。」
確かにそうかもしれないな。同級生なんかと他愛もない話をしたくない、接客なんてしたくないって言うのが本当の私だ。でもそれではこの国では生きていけない。
この国で生きていくためには、多少、人に合わせることっていうことが必要になってくる。でもそれがきっと個性を潰すってことなのかもしれない。
「まぁ、お前がこの国で生きていくんだったら、人に合わせることも多少必要だな。出た杭は打たれるから。」
「あたし杭なんかじゃないけど。」
「そういう意味じゃないわ。」
そのとき芙蓉さんが足を止めた。それは今年、クリスマスプレゼントを買った「HORN」の店の前。
「入りたい。」
「こういうの好きなのか?」
苦笑いをして、茅さんは彼女をみた。
「うん。お父さんが好きだったから。」
そういって彼女は入っていく。それに続いて、私も茅さんも入っていった。
「すごーい。アロハ着たい。」
「寒いよ。」
「じゃあ、このジャンパー良いなぁ。ブルー。いい色。」
「バカか。ビンテージじゃねぇか。」
古いロックがかかる店内は狭い。所狭しと商品が置いてある。そんな中、奥から一人の女性が彼女らに近づいてきた。
「いらっしゃい。何かお探し?」
前にも見た茨さんという人だ。今日も派手だな。入れ墨は隠さず堂々と出している。それも宣伝なのか、それとも彼女の趣味なのか。
「……ここ墨も入れてんのか。」
「まぁね。一応奥でやってるよ。ボディピアスもある。あんたのピアス、センス良いわね。」
しゃがれた声で、茨さんは茅さんのピアスをみた。それは私がクリスマスに茅さんにあげたものだ。それを茨さんは知っているのだろうか。
「貰い物でね。」
「へぇ。彼女から?」
「にしたいヤツ。」
「あんたみたいな男を振る女なんてたいしたもんだわ。」
感心したように茨さんは茅さんの首元や手の甲の入れ墨も見ていた。
「どこの国で?」
「あぁ、東南アジアかな。こっちはアメリカ方面。」
「いい感じだね。」
「そりゃどうも。あんたも墨もいい感じだな。」
茨さんは私が買ったピアスを彼の耳にあることは、気が付いているのだろうか。その青いカラーコンタクトの奥は、真実が見えているのだろうか。
「茅叔父さん。あたしこれがいい。これ欲しい。」
そういって芙蓉さんが手にしたのは、一枚のアロハシャツだった。和柄のアロハなんて珍しいと思う。
「あぁ。それが良いかい?いいセンスしてるね。あんた。ちょっと値引きしてやるよ。」
そういってそのアロハシャツを手にして、茨さんは奥へ行ってしまった。続いて芙蓉さんも行ってしまう。
「桜。」
その後ろ姿を見送り、ほかの商品を見ていると、茅さんに急に呼ばれた。そして彼は私の左手を無言で握ってくる。
「何?」
彼はその左手の薬指に指輪を入れた。
「八号か。すげぇ細え。」
銀色の指輪が鈍く光る。少し太い指輪は、私の指にしっくりと合ったとは言いづらい。
「買ってやろうか?」
「いらないわ。」
指輪をはずすと、指輪のあるところを探した。そしてその指輪をしまう。
「どれがいい?」
「一つなら持っているから。」
私の右の薬指には、指輪がある。柊さんが贈ってくれた指輪だった。
「何?この太った人。」
「神様ね。」
「神様が七人もいるの?」
「そう。」
「この竹は?」
「門松。本来なら家の玄関先に置いて、神様を受け入れるものだって言われてるわね。」
芙蓉さんは目にする物何もかもが初めてのようで、これは?これは?と聞いてくる。お陰で買い物が全く進まない。
「芙蓉。いい加減にしろよ。買い物行くんだろ?」
「制服、新調するんだったらこっちよ。」
「あ、制服ね。桜さんのお下がりでいいよ。」
「私の?」
「あんまり身長変わらないよ。変じゃないと思う。」
それを聞いて、茅さんは笑いながら言った。
「サイズが合わないとこもあるだろ?」
胸回りのことを言ってるの?ムカつくなぁ。
「大丈夫。桜さん。柊さんがいるから。」
「何で、柊さん?」
「揉めばおっきくなるって、母さんが言ってた。」
顔が赤くなる。何でこういうことも知っているんだろう。この子は。
「あ、可愛い。」
芙蓉さんは本当に風船のようにふらふらする。何というか、奔放だな。
「桜。」
「何?」
「俺が大きくしても良いけどな。」
肩に手を置かれそうになって、私はその手をぎゅっとつねった。
「いてぇ。」
「誰が悪いの?」
結局芙蓉さんは、ピンクのダウンのジャンパー、白と黒のセーターを二枚、色あせたジーパンを一枚、そのほか下着なんかを買った。
それを一度車に載せると、また外に出る。
「すげぇ荷物だな。まるで家出だ。」
「ほとんど荷物無かったものね。」
下着なんかも見れば本当にぼろぼろのものばかりで、サイズも全く合っていなかった。多分、こういうものにお金を使わなかったのだろう。
「悪かったのかな。」
「いいや。別にそれでお前の国では普通だったんだろ?国の生活水準ってものがあるんだよ。この国では、それでは見苦しいって言われるんだよ。」
「見苦しい?」
「んー。ちょっと変わっているって言うか。」
「母さんがね、変わってることって悪いことじゃないよっていっつも言ってた。この国は「個性」を潰すって。だからあたしにあまり来て欲しくないって。」
確かにそうかもしれないな。同級生なんかと他愛もない話をしたくない、接客なんてしたくないって言うのが本当の私だ。でもそれではこの国では生きていけない。
この国で生きていくためには、多少、人に合わせることっていうことが必要になってくる。でもそれがきっと個性を潰すってことなのかもしれない。
「まぁ、お前がこの国で生きていくんだったら、人に合わせることも多少必要だな。出た杭は打たれるから。」
「あたし杭なんかじゃないけど。」
「そういう意味じゃないわ。」
そのとき芙蓉さんが足を止めた。それは今年、クリスマスプレゼントを買った「HORN」の店の前。
「入りたい。」
「こういうの好きなのか?」
苦笑いをして、茅さんは彼女をみた。
「うん。お父さんが好きだったから。」
そういって彼女は入っていく。それに続いて、私も茅さんも入っていった。
「すごーい。アロハ着たい。」
「寒いよ。」
「じゃあ、このジャンパー良いなぁ。ブルー。いい色。」
「バカか。ビンテージじゃねぇか。」
古いロックがかかる店内は狭い。所狭しと商品が置いてある。そんな中、奥から一人の女性が彼女らに近づいてきた。
「いらっしゃい。何かお探し?」
前にも見た茨さんという人だ。今日も派手だな。入れ墨は隠さず堂々と出している。それも宣伝なのか、それとも彼女の趣味なのか。
「……ここ墨も入れてんのか。」
「まぁね。一応奥でやってるよ。ボディピアスもある。あんたのピアス、センス良いわね。」
しゃがれた声で、茨さんは茅さんのピアスをみた。それは私がクリスマスに茅さんにあげたものだ。それを茨さんは知っているのだろうか。
「貰い物でね。」
「へぇ。彼女から?」
「にしたいヤツ。」
「あんたみたいな男を振る女なんてたいしたもんだわ。」
感心したように茨さんは茅さんの首元や手の甲の入れ墨も見ていた。
「どこの国で?」
「あぁ、東南アジアかな。こっちはアメリカ方面。」
「いい感じだね。」
「そりゃどうも。あんたも墨もいい感じだな。」
茨さんは私が買ったピアスを彼の耳にあることは、気が付いているのだろうか。その青いカラーコンタクトの奥は、真実が見えているのだろうか。
「茅叔父さん。あたしこれがいい。これ欲しい。」
そういって芙蓉さんが手にしたのは、一枚のアロハシャツだった。和柄のアロハなんて珍しいと思う。
「あぁ。それが良いかい?いいセンスしてるね。あんた。ちょっと値引きしてやるよ。」
そういってそのアロハシャツを手にして、茨さんは奥へ行ってしまった。続いて芙蓉さんも行ってしまう。
「桜。」
その後ろ姿を見送り、ほかの商品を見ていると、茅さんに急に呼ばれた。そして彼は私の左手を無言で握ってくる。
「何?」
彼はその左手の薬指に指輪を入れた。
「八号か。すげぇ細え。」
銀色の指輪が鈍く光る。少し太い指輪は、私の指にしっくりと合ったとは言いづらい。
「買ってやろうか?」
「いらないわ。」
指輪をはずすと、指輪のあるところを探した。そしてその指輪をしまう。
「どれがいい?」
「一つなら持っているから。」
私の右の薬指には、指輪がある。柊さんが贈ってくれた指輪だった。
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