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二年目
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目を覚ますと、柊さんが横で眠っている。こんな幸せなことがあっていいのだろうか。だけど、体を彼の方に向けようとして、肩が更に激痛が走る。
「痛ぁ。」
その声で柊さんが目を覚ましてしまったようだ。
「どうした。」
「肩が痛くて。」
「無理させたか。見せろ。」
そういって彼は起きあがろうとした私の体を、また倒した。
「腫れてるな。医者に行くか?」
「ううん。大丈夫。」
「無理をするな。」
目だけで私は時計を見る。ん?よく見るとすごい時間じゃない?
「柊、仕事は?」
すると彼はふっと笑った。
「有給。一応派遣でもあるから。どうせ今日は仕事にならないと思ったし。」
「そう。なら大丈夫?」
私はそういって体を起こした。
「今日は「窓」を休め。それじゃ仕事出来ないだろう。」
そう言って彼はベッドから降りると、脱ぎ捨てられたジーパンから携帯電話を取り出した。
「……。」
しばらくすると彼は電話を始めた。
「葵か。桜の肩がおかしい。今日は休ませる。……うん。……医者に連れて行く。お前のせいでもあるんだろう?……ふん……。もう心配するな。」
そう言って彼は電話を切った。そしてまだ横になってる私が寝てるベッドに腰掛けた。
「どこか行きつけがあるか。前に行ったところでいいのか。」
「うん。」
「バイクだと掴まれないな。茅に……。」
また携帯電話を手にしかけて、彼は手を止めた。そうだ。茅さんは夕べ、私に気があることを柊さんに伝えたのだ。彼の心情は複雑だろう。弟のように可愛がっていた人の色んな部分を知った。
「柊。大丈夫。歩いてでも行ける所よ。」
「だったら俺がついて行ってやる。」
「フフ。大丈夫。」
彼は私の唇にキスをすると、下着を身につけジーパンだけを履いた。
「保冷剤があるか?」
「うん。冷凍庫に。」
「持ってきてやる。」
そう言って彼は、脱ぎ捨てられたシャツを身につけるとリビングに出て行った。
「あ、おはようございます。」
どうやら母さんが起きているらしい。
「久しぶりねぇ。こんな時間にいるの。」
「あぁ。そうですね。」
「フフ。あんた、夕べは新しい自分を開花させたのかしら。」
「は?」
「あんなにSっ気があるとは思わなかったわ。あんたSなら、ウチの娘が死んじゃうと思っちゃってね。」
なんつー所を聞いてたんだ。しかも聞き耳立ててるなんて。ウチの母さんってどんな人なんだ。
「俺はノーマルなつもりでしたけどね。」
「死なせない程度に頼むわ。」
「……保冷剤はどれですか。」
「あぁ。冷凍庫の上の方にあるわ。どうしたの?Sはかまわないけど、打ったり叩いたりしたの?」
「それこそ趣味じゃない。女を打って何が楽しいのかわかりませんよ。」
「あら、だったら何なの?夕べ繁華街すごい騒ぎだったの、それが何か関係ある?」
「それはあまり関係ないでしょう。」
「まぁ、ウチの娘はあんな時間に繁華街に出るようなアホじゃないけど。」
そのとき部屋のチャイムが鳴った。
「誰だ。」
「あんた出るんじゃないわよ。はいはーい。」
すると部屋に柊さんが入ってきた。手には保冷剤が握られている。
「先に下着を付けろ。それから冷やして、シャツを着ればいい。」
「うん。」
茅さんがしてくれた方法と同じだ。だけど、今日は腕を上げるのも痛い。しばらく痛いのかなぁ。
「桜さん。」
ドアをバンと開けられて、入ってきたのは芙蓉さんだった。
「芙蓉さん?」
下着姿の私にかまわず、ベッドの上に飛び込んできた。
「何で下着なの?」
「ちょっと怪我をして。」
その姿に、柊さんが驚いたような表情で見ていた。ひいたような感じ。
「ん?」
その柊さんの姿に、彼女はさっと私の後ろに隠れた。
「どうしたの。」
「怖い人だ。」
「怖い人?」
その言葉に、柊さんは苦笑いをして私の肩にぐるっと巻くように保冷剤入りのタオルを巻き付けた。
「怖い人か。お前にとっては怖い人かもな。」
「……桜。誰?」
「柊。」
「柊?母さんがいつも言ってた名前。」
私は手渡されたシャツを身につけて、彼女の方を見た。
「柊にはトゲがあるって。近づかない方がいいって。」
「トゲか。確かに葉にはトゲがある。」
「桜の恋人、この人?」
「そうよ。」
「母さん、嫌がってた。茅叔父さんも嫌がってた。ほんとにいい人?騙されてない?」
本人目の前に、ズバズバ言うな。柊さんも苦笑いをしている。
「私を騙しても何のメリットもないわ。」
「売られない?」
「私には何の価値もないわ。」
「そう?桜、可愛いのに。」
芙蓉さんはそう言って私の腰にぎゅっと抱きついてきた。
「離れろ。」
低い声でたしなめると、彼女はそのまま後ろへ行ってしまった。
「柊。脅さないで。私よりも年下よ。」
柊さんの娘かもしれないとは言えなかったけれど。
「そうよ。脅さないで。」
「くそ。生意気な……。」
すると部屋の前に、茅さんが立っていた。
「柊もたじたじだな。」
「茅。こいつを連れてきたのはお前か。」
「あぁ。今日、俺は午後出勤にしてもらったから、これから警察へ行く。その前に桜に会いたいって来たんだよ。良かったな。」
明らかに邪魔しに来てる。
「茅。その後でいい。病院まで送れ。」
「病院?あぁ。お前冷やしてなかったな?柊といちゃいちゃする暇があるんなら冷やせよ。」
あー。もう。そんな言い方嫌だなぁ。
「痛ぁ。」
その声で柊さんが目を覚ましてしまったようだ。
「どうした。」
「肩が痛くて。」
「無理させたか。見せろ。」
そういって彼は起きあがろうとした私の体を、また倒した。
「腫れてるな。医者に行くか?」
「ううん。大丈夫。」
「無理をするな。」
目だけで私は時計を見る。ん?よく見るとすごい時間じゃない?
「柊、仕事は?」
すると彼はふっと笑った。
「有給。一応派遣でもあるから。どうせ今日は仕事にならないと思ったし。」
「そう。なら大丈夫?」
私はそういって体を起こした。
「今日は「窓」を休め。それじゃ仕事出来ないだろう。」
そう言って彼はベッドから降りると、脱ぎ捨てられたジーパンから携帯電話を取り出した。
「……。」
しばらくすると彼は電話を始めた。
「葵か。桜の肩がおかしい。今日は休ませる。……うん。……医者に連れて行く。お前のせいでもあるんだろう?……ふん……。もう心配するな。」
そう言って彼は電話を切った。そしてまだ横になってる私が寝てるベッドに腰掛けた。
「どこか行きつけがあるか。前に行ったところでいいのか。」
「うん。」
「バイクだと掴まれないな。茅に……。」
また携帯電話を手にしかけて、彼は手を止めた。そうだ。茅さんは夕べ、私に気があることを柊さんに伝えたのだ。彼の心情は複雑だろう。弟のように可愛がっていた人の色んな部分を知った。
「柊。大丈夫。歩いてでも行ける所よ。」
「だったら俺がついて行ってやる。」
「フフ。大丈夫。」
彼は私の唇にキスをすると、下着を身につけジーパンだけを履いた。
「保冷剤があるか?」
「うん。冷凍庫に。」
「持ってきてやる。」
そう言って彼は、脱ぎ捨てられたシャツを身につけるとリビングに出て行った。
「あ、おはようございます。」
どうやら母さんが起きているらしい。
「久しぶりねぇ。こんな時間にいるの。」
「あぁ。そうですね。」
「フフ。あんた、夕べは新しい自分を開花させたのかしら。」
「は?」
「あんなにSっ気があるとは思わなかったわ。あんたSなら、ウチの娘が死んじゃうと思っちゃってね。」
なんつー所を聞いてたんだ。しかも聞き耳立ててるなんて。ウチの母さんってどんな人なんだ。
「俺はノーマルなつもりでしたけどね。」
「死なせない程度に頼むわ。」
「……保冷剤はどれですか。」
「あぁ。冷凍庫の上の方にあるわ。どうしたの?Sはかまわないけど、打ったり叩いたりしたの?」
「それこそ趣味じゃない。女を打って何が楽しいのかわかりませんよ。」
「あら、だったら何なの?夕べ繁華街すごい騒ぎだったの、それが何か関係ある?」
「それはあまり関係ないでしょう。」
「まぁ、ウチの娘はあんな時間に繁華街に出るようなアホじゃないけど。」
そのとき部屋のチャイムが鳴った。
「誰だ。」
「あんた出るんじゃないわよ。はいはーい。」
すると部屋に柊さんが入ってきた。手には保冷剤が握られている。
「先に下着を付けろ。それから冷やして、シャツを着ればいい。」
「うん。」
茅さんがしてくれた方法と同じだ。だけど、今日は腕を上げるのも痛い。しばらく痛いのかなぁ。
「桜さん。」
ドアをバンと開けられて、入ってきたのは芙蓉さんだった。
「芙蓉さん?」
下着姿の私にかまわず、ベッドの上に飛び込んできた。
「何で下着なの?」
「ちょっと怪我をして。」
その姿に、柊さんが驚いたような表情で見ていた。ひいたような感じ。
「ん?」
その柊さんの姿に、彼女はさっと私の後ろに隠れた。
「どうしたの。」
「怖い人だ。」
「怖い人?」
その言葉に、柊さんは苦笑いをして私の肩にぐるっと巻くように保冷剤入りのタオルを巻き付けた。
「怖い人か。お前にとっては怖い人かもな。」
「……桜。誰?」
「柊。」
「柊?母さんがいつも言ってた名前。」
私は手渡されたシャツを身につけて、彼女の方を見た。
「柊にはトゲがあるって。近づかない方がいいって。」
「トゲか。確かに葉にはトゲがある。」
「桜の恋人、この人?」
「そうよ。」
「母さん、嫌がってた。茅叔父さんも嫌がってた。ほんとにいい人?騙されてない?」
本人目の前に、ズバズバ言うな。柊さんも苦笑いをしている。
「私を騙しても何のメリットもないわ。」
「売られない?」
「私には何の価値もないわ。」
「そう?桜、可愛いのに。」
芙蓉さんはそう言って私の腰にぎゅっと抱きついてきた。
「離れろ。」
低い声でたしなめると、彼女はそのまま後ろへ行ってしまった。
「柊。脅さないで。私よりも年下よ。」
柊さんの娘かもしれないとは言えなかったけれど。
「そうよ。脅さないで。」
「くそ。生意気な……。」
すると部屋の前に、茅さんが立っていた。
「柊もたじたじだな。」
「茅。こいつを連れてきたのはお前か。」
「あぁ。今日、俺は午後出勤にしてもらったから、これから警察へ行く。その前に桜に会いたいって来たんだよ。良かったな。」
明らかに邪魔しに来てる。
「茅。その後でいい。病院まで送れ。」
「病院?あぁ。お前冷やしてなかったな?柊といちゃいちゃする暇があるんなら冷やせよ。」
あー。もう。そんな言い方嫌だなぁ。
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