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二年目
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柊さんたちを隣のクラスの喫茶店に連れて行くと、やはり悲鳴にもにた歓声が上がる。
「何?あのイケメン。」
「芸能人でもないのにあのかっこよさ。」
主に女子がきゃあきゃあ言っていて、男子はちょっと引いた感じ。だけど多分男子は柊さんを見てるな。これは。
「がたい良いな。あの人。何かしてんのかな。」
「トレーニングの仕方とかさ。」
別の意味で大人気だ。
「人気だね。」
「まぁね。去年もあんな感じだったわ。」
私は竹彦を連れて自分たちのクラスのドアを開いた。すると別の意味で「ぎゃあ!」と歓声が上がる。
「竹彦?」
「すげぇ。別人みたいだ。」
「かっこいい!」
準備をしていた人たちも手を止めて、竹彦に近づいた。
「久しぶり。」
「今何してんの?」
「家の手伝い。」
「すげぇ。金髪。」
そういうことはみんなに任せておいて、私は自分の仕事に戻っていった。
「玲緒君。これってさ……。」
音楽を担当してくれている玲緒君に話を聞きながら、音楽のチェックをしていた。
「スピーカーはないから、これだけって言うのも頼りない話だよね。」
「まぁしかたないわよ。案外衣装に手間取ったし。」
「問題は部屋に響くかどうかだよ。」
「案外響いてたわ。大丈夫よ。リスニングのテストの時に使うラジカセ借りてきたんだし。」
「うん。まぁそうだね。」
「昨日の感じでは大丈夫だった。悪かったら、次までに何とかしないといけないわね。」
そのとき私の携帯電話が鳴った。あわててそれを見る。
「バイブにしておきなよ。」
「そうね。ごめん。ごめん。」
メッセージが一件。それは茅さんだった。
”クラスがわからない。”
茅さんまでここに来てんの?わぁ。なんか大集合だ。
「ごめん。ちょっと出てくる。」
「でも、もう時間無いよ。」
「一分で帰る。」
そういって私はクラスを飛び出すと、隣のクラスへやってきた。そのクラスは喫茶店で、葵さんと柊さんがコーヒーを飲んでいたが、葵さんは手をつけていなかったようだった。
「柊さん。」
「どうした。」
急に現れた私にそのクラスの人たちはぽかんとしていたみたいだけど、話すこと話したらすぐ出て行くもんね。
「茅さんが来てるみたいなんだけど、学校の中で迷ってるみたい。」
「あいつ、ここに来たことあるんじゃないのか。」
「面接は、蓮さんが来てたから。」
「そうか。じゃあ、連絡を取ってみる。悪かったな。忙しいときに。」
そういって彼は席を立った。
「葵はどうする?」
「私も行きましょう。茅に会うのは久しぶりですから。」
よく言うよ。この人も。
劇が始まってしまえば、私の出番はそんなに無い。必要なのは出演者、音楽、背景を変える人くらいだ。
ただ今回よりも、次。次回よりも、その次。結果を出さなければ、つまらないモノになる。だからそれをチェックしなきゃいけない。
「やだ。白雪ったら、拾ったものでもすぐ口にするんだから。だから変な病気になるのよ。」
「卑しい子ね。」
どっと笑いが起きる。うーん。こんなところで笑いをとるつもりはなかったんだけど。
すると竹彦君が私に近づいてきた。
「ねぇ。桜さん。」
「何?」
「この脚本書いたの、誰?」
「みんなで書いた。私も含めてね。」
「そう。珍しい言い回しだなと思って。」
「どうして?」
「女は女言葉。男は男言葉を使ってる。最近ではみんな同じような言葉遣いだから、わからないかもしれないけど。」
うーん。そうなのかな。
「でもみんな女装や男装をしているから、女言葉、男言葉の方が寄り強調されるじゃない。」
「そうだね。」
顔を寄せてそんな話をしている。周りのお客さんに迷惑がかからないように。
やがて三十分くらいの劇は終わり、お客さんは捌けていく。さてと、注意すべきところは……と。
「桜。」
廊下から声をかけられて、私はそっちを振り返った。そこには柊さんがいる。
「柊。」
急に呼ばれて、周りの人たちも「え?」と思いながらこちらを見ていた。
「何?」
「……あー。まぁいい。後でメッセージ送るから。」
すると彼は行ってしまった。その後ろを葵さんが笑いながら、私に言う。
「彼はヤキモチを焼いていたんですよ。」
「何でですか?」
「仲が良さそうでしたからね。」
ん?あぁ。さっき劇をしている最中に、竹彦と話していたのがそんなに気に入らなかったのか。やっぱ小さい男だな。
「桜さん。」
私はやっと呼ばれて葵さんに礼を言うと、みんなの元へ帰って行った。
「このシーンさ。やっぱ「ですか。」じゃなくて「です」って完結した方がいい。」
「女性だから、「ですわ」の方がいいと思うんだけど。」
「おい。今時「ですわ」なんていう奴いるか?」
言葉の端、言葉のちょっとしたところを直していく。もうこれくらいしか修正個所がないのだ。
「何?あのイケメン。」
「芸能人でもないのにあのかっこよさ。」
主に女子がきゃあきゃあ言っていて、男子はちょっと引いた感じ。だけど多分男子は柊さんを見てるな。これは。
「がたい良いな。あの人。何かしてんのかな。」
「トレーニングの仕方とかさ。」
別の意味で大人気だ。
「人気だね。」
「まぁね。去年もあんな感じだったわ。」
私は竹彦を連れて自分たちのクラスのドアを開いた。すると別の意味で「ぎゃあ!」と歓声が上がる。
「竹彦?」
「すげぇ。別人みたいだ。」
「かっこいい!」
準備をしていた人たちも手を止めて、竹彦に近づいた。
「久しぶり。」
「今何してんの?」
「家の手伝い。」
「すげぇ。金髪。」
そういうことはみんなに任せておいて、私は自分の仕事に戻っていった。
「玲緒君。これってさ……。」
音楽を担当してくれている玲緒君に話を聞きながら、音楽のチェックをしていた。
「スピーカーはないから、これだけって言うのも頼りない話だよね。」
「まぁしかたないわよ。案外衣装に手間取ったし。」
「問題は部屋に響くかどうかだよ。」
「案外響いてたわ。大丈夫よ。リスニングのテストの時に使うラジカセ借りてきたんだし。」
「うん。まぁそうだね。」
「昨日の感じでは大丈夫だった。悪かったら、次までに何とかしないといけないわね。」
そのとき私の携帯電話が鳴った。あわててそれを見る。
「バイブにしておきなよ。」
「そうね。ごめん。ごめん。」
メッセージが一件。それは茅さんだった。
”クラスがわからない。”
茅さんまでここに来てんの?わぁ。なんか大集合だ。
「ごめん。ちょっと出てくる。」
「でも、もう時間無いよ。」
「一分で帰る。」
そういって私はクラスを飛び出すと、隣のクラスへやってきた。そのクラスは喫茶店で、葵さんと柊さんがコーヒーを飲んでいたが、葵さんは手をつけていなかったようだった。
「柊さん。」
「どうした。」
急に現れた私にそのクラスの人たちはぽかんとしていたみたいだけど、話すこと話したらすぐ出て行くもんね。
「茅さんが来てるみたいなんだけど、学校の中で迷ってるみたい。」
「あいつ、ここに来たことあるんじゃないのか。」
「面接は、蓮さんが来てたから。」
「そうか。じゃあ、連絡を取ってみる。悪かったな。忙しいときに。」
そういって彼は席を立った。
「葵はどうする?」
「私も行きましょう。茅に会うのは久しぶりですから。」
よく言うよ。この人も。
劇が始まってしまえば、私の出番はそんなに無い。必要なのは出演者、音楽、背景を変える人くらいだ。
ただ今回よりも、次。次回よりも、その次。結果を出さなければ、つまらないモノになる。だからそれをチェックしなきゃいけない。
「やだ。白雪ったら、拾ったものでもすぐ口にするんだから。だから変な病気になるのよ。」
「卑しい子ね。」
どっと笑いが起きる。うーん。こんなところで笑いをとるつもりはなかったんだけど。
すると竹彦君が私に近づいてきた。
「ねぇ。桜さん。」
「何?」
「この脚本書いたの、誰?」
「みんなで書いた。私も含めてね。」
「そう。珍しい言い回しだなと思って。」
「どうして?」
「女は女言葉。男は男言葉を使ってる。最近ではみんな同じような言葉遣いだから、わからないかもしれないけど。」
うーん。そうなのかな。
「でもみんな女装や男装をしているから、女言葉、男言葉の方が寄り強調されるじゃない。」
「そうだね。」
顔を寄せてそんな話をしている。周りのお客さんに迷惑がかからないように。
やがて三十分くらいの劇は終わり、お客さんは捌けていく。さてと、注意すべきところは……と。
「桜。」
廊下から声をかけられて、私はそっちを振り返った。そこには柊さんがいる。
「柊。」
急に呼ばれて、周りの人たちも「え?」と思いながらこちらを見ていた。
「何?」
「……あー。まぁいい。後でメッセージ送るから。」
すると彼は行ってしまった。その後ろを葵さんが笑いながら、私に言う。
「彼はヤキモチを焼いていたんですよ。」
「何でですか?」
「仲が良さそうでしたからね。」
ん?あぁ。さっき劇をしている最中に、竹彦と話していたのがそんなに気に入らなかったのか。やっぱ小さい男だな。
「桜さん。」
私はやっと呼ばれて葵さんに礼を言うと、みんなの元へ帰って行った。
「このシーンさ。やっぱ「ですか。」じゃなくて「です」って完結した方がいい。」
「女性だから、「ですわ」の方がいいと思うんだけど。」
「おい。今時「ですわ」なんていう奴いるか?」
言葉の端、言葉のちょっとしたところを直していく。もうこれくらいしか修正個所がないのだ。
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