229 / 355
二年目
229
しおりを挟む
柊さんたちを隣のクラスの喫茶店に連れて行くと、やはり悲鳴にもにた歓声が上がる。
「何?あのイケメン。」
「芸能人でもないのにあのかっこよさ。」
主に女子がきゃあきゃあ言っていて、男子はちょっと引いた感じ。だけど多分男子は柊さんを見てるな。これは。
「がたい良いな。あの人。何かしてんのかな。」
「トレーニングの仕方とかさ。」
別の意味で大人気だ。
「人気だね。」
「まぁね。去年もあんな感じだったわ。」
私は竹彦を連れて自分たちのクラスのドアを開いた。すると別の意味で「ぎゃあ!」と歓声が上がる。
「竹彦?」
「すげぇ。別人みたいだ。」
「かっこいい!」
準備をしていた人たちも手を止めて、竹彦に近づいた。
「久しぶり。」
「今何してんの?」
「家の手伝い。」
「すげぇ。金髪。」
そういうことはみんなに任せておいて、私は自分の仕事に戻っていった。
「玲緒君。これってさ……。」
音楽を担当してくれている玲緒君に話を聞きながら、音楽のチェックをしていた。
「スピーカーはないから、これだけって言うのも頼りない話だよね。」
「まぁしかたないわよ。案外衣装に手間取ったし。」
「問題は部屋に響くかどうかだよ。」
「案外響いてたわ。大丈夫よ。リスニングのテストの時に使うラジカセ借りてきたんだし。」
「うん。まぁそうだね。」
「昨日の感じでは大丈夫だった。悪かったら、次までに何とかしないといけないわね。」
そのとき私の携帯電話が鳴った。あわててそれを見る。
「バイブにしておきなよ。」
「そうね。ごめん。ごめん。」
メッセージが一件。それは茅さんだった。
”クラスがわからない。”
茅さんまでここに来てんの?わぁ。なんか大集合だ。
「ごめん。ちょっと出てくる。」
「でも、もう時間無いよ。」
「一分で帰る。」
そういって私はクラスを飛び出すと、隣のクラスへやってきた。そのクラスは喫茶店で、葵さんと柊さんがコーヒーを飲んでいたが、葵さんは手をつけていなかったようだった。
「柊さん。」
「どうした。」
急に現れた私にそのクラスの人たちはぽかんとしていたみたいだけど、話すこと話したらすぐ出て行くもんね。
「茅さんが来てるみたいなんだけど、学校の中で迷ってるみたい。」
「あいつ、ここに来たことあるんじゃないのか。」
「面接は、蓮さんが来てたから。」
「そうか。じゃあ、連絡を取ってみる。悪かったな。忙しいときに。」
そういって彼は席を立った。
「葵はどうする?」
「私も行きましょう。茅に会うのは久しぶりですから。」
よく言うよ。この人も。
劇が始まってしまえば、私の出番はそんなに無い。必要なのは出演者、音楽、背景を変える人くらいだ。
ただ今回よりも、次。次回よりも、その次。結果を出さなければ、つまらないモノになる。だからそれをチェックしなきゃいけない。
「やだ。白雪ったら、拾ったものでもすぐ口にするんだから。だから変な病気になるのよ。」
「卑しい子ね。」
どっと笑いが起きる。うーん。こんなところで笑いをとるつもりはなかったんだけど。
すると竹彦君が私に近づいてきた。
「ねぇ。桜さん。」
「何?」
「この脚本書いたの、誰?」
「みんなで書いた。私も含めてね。」
「そう。珍しい言い回しだなと思って。」
「どうして?」
「女は女言葉。男は男言葉を使ってる。最近ではみんな同じような言葉遣いだから、わからないかもしれないけど。」
うーん。そうなのかな。
「でもみんな女装や男装をしているから、女言葉、男言葉の方が寄り強調されるじゃない。」
「そうだね。」
顔を寄せてそんな話をしている。周りのお客さんに迷惑がかからないように。
やがて三十分くらいの劇は終わり、お客さんは捌けていく。さてと、注意すべきところは……と。
「桜。」
廊下から声をかけられて、私はそっちを振り返った。そこには柊さんがいる。
「柊。」
急に呼ばれて、周りの人たちも「え?」と思いながらこちらを見ていた。
「何?」
「……あー。まぁいい。後でメッセージ送るから。」
すると彼は行ってしまった。その後ろを葵さんが笑いながら、私に言う。
「彼はヤキモチを焼いていたんですよ。」
「何でですか?」
「仲が良さそうでしたからね。」
ん?あぁ。さっき劇をしている最中に、竹彦と話していたのがそんなに気に入らなかったのか。やっぱ小さい男だな。
「桜さん。」
私はやっと呼ばれて葵さんに礼を言うと、みんなの元へ帰って行った。
「このシーンさ。やっぱ「ですか。」じゃなくて「です」って完結した方がいい。」
「女性だから、「ですわ」の方がいいと思うんだけど。」
「おい。今時「ですわ」なんていう奴いるか?」
言葉の端、言葉のちょっとしたところを直していく。もうこれくらいしか修正個所がないのだ。
「何?あのイケメン。」
「芸能人でもないのにあのかっこよさ。」
主に女子がきゃあきゃあ言っていて、男子はちょっと引いた感じ。だけど多分男子は柊さんを見てるな。これは。
「がたい良いな。あの人。何かしてんのかな。」
「トレーニングの仕方とかさ。」
別の意味で大人気だ。
「人気だね。」
「まぁね。去年もあんな感じだったわ。」
私は竹彦を連れて自分たちのクラスのドアを開いた。すると別の意味で「ぎゃあ!」と歓声が上がる。
「竹彦?」
「すげぇ。別人みたいだ。」
「かっこいい!」
準備をしていた人たちも手を止めて、竹彦に近づいた。
「久しぶり。」
「今何してんの?」
「家の手伝い。」
「すげぇ。金髪。」
そういうことはみんなに任せておいて、私は自分の仕事に戻っていった。
「玲緒君。これってさ……。」
音楽を担当してくれている玲緒君に話を聞きながら、音楽のチェックをしていた。
「スピーカーはないから、これだけって言うのも頼りない話だよね。」
「まぁしかたないわよ。案外衣装に手間取ったし。」
「問題は部屋に響くかどうかだよ。」
「案外響いてたわ。大丈夫よ。リスニングのテストの時に使うラジカセ借りてきたんだし。」
「うん。まぁそうだね。」
「昨日の感じでは大丈夫だった。悪かったら、次までに何とかしないといけないわね。」
そのとき私の携帯電話が鳴った。あわててそれを見る。
「バイブにしておきなよ。」
「そうね。ごめん。ごめん。」
メッセージが一件。それは茅さんだった。
”クラスがわからない。”
茅さんまでここに来てんの?わぁ。なんか大集合だ。
「ごめん。ちょっと出てくる。」
「でも、もう時間無いよ。」
「一分で帰る。」
そういって私はクラスを飛び出すと、隣のクラスへやってきた。そのクラスは喫茶店で、葵さんと柊さんがコーヒーを飲んでいたが、葵さんは手をつけていなかったようだった。
「柊さん。」
「どうした。」
急に現れた私にそのクラスの人たちはぽかんとしていたみたいだけど、話すこと話したらすぐ出て行くもんね。
「茅さんが来てるみたいなんだけど、学校の中で迷ってるみたい。」
「あいつ、ここに来たことあるんじゃないのか。」
「面接は、蓮さんが来てたから。」
「そうか。じゃあ、連絡を取ってみる。悪かったな。忙しいときに。」
そういって彼は席を立った。
「葵はどうする?」
「私も行きましょう。茅に会うのは久しぶりですから。」
よく言うよ。この人も。
劇が始まってしまえば、私の出番はそんなに無い。必要なのは出演者、音楽、背景を変える人くらいだ。
ただ今回よりも、次。次回よりも、その次。結果を出さなければ、つまらないモノになる。だからそれをチェックしなきゃいけない。
「やだ。白雪ったら、拾ったものでもすぐ口にするんだから。だから変な病気になるのよ。」
「卑しい子ね。」
どっと笑いが起きる。うーん。こんなところで笑いをとるつもりはなかったんだけど。
すると竹彦君が私に近づいてきた。
「ねぇ。桜さん。」
「何?」
「この脚本書いたの、誰?」
「みんなで書いた。私も含めてね。」
「そう。珍しい言い回しだなと思って。」
「どうして?」
「女は女言葉。男は男言葉を使ってる。最近ではみんな同じような言葉遣いだから、わからないかもしれないけど。」
うーん。そうなのかな。
「でもみんな女装や男装をしているから、女言葉、男言葉の方が寄り強調されるじゃない。」
「そうだね。」
顔を寄せてそんな話をしている。周りのお客さんに迷惑がかからないように。
やがて三十分くらいの劇は終わり、お客さんは捌けていく。さてと、注意すべきところは……と。
「桜。」
廊下から声をかけられて、私はそっちを振り返った。そこには柊さんがいる。
「柊。」
急に呼ばれて、周りの人たちも「え?」と思いながらこちらを見ていた。
「何?」
「……あー。まぁいい。後でメッセージ送るから。」
すると彼は行ってしまった。その後ろを葵さんが笑いながら、私に言う。
「彼はヤキモチを焼いていたんですよ。」
「何でですか?」
「仲が良さそうでしたからね。」
ん?あぁ。さっき劇をしている最中に、竹彦と話していたのがそんなに気に入らなかったのか。やっぱ小さい男だな。
「桜さん。」
私はやっと呼ばれて葵さんに礼を言うと、みんなの元へ帰って行った。
「このシーンさ。やっぱ「ですか。」じゃなくて「です」って完結した方がいい。」
「女性だから、「ですわ」の方がいいと思うんだけど。」
「おい。今時「ですわ」なんていう奴いるか?」
言葉の端、言葉のちょっとしたところを直していく。もうこれくらいしか修正個所がないのだ。
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
性欲のない義父は、愛娘にだけ欲情する
如月あこ
恋愛
「新しい家族が増えるの」と母は言った。
八歳の有希は、母が再婚するものだと思い込んだ――けれど。
内縁の夫として一緒に暮らすことになった片瀬慎一郎は、母を二人目の「偽装結婚」の相手に選んだだけだった。
慎一郎を怒らせないように、母や兄弟は慎一郎にほとんど関わらない。有希だけが唯一、慎一郎の炊事や洗濯などの世話を妬き続けた。
そしてそれから十年以上が過ぎて、兄弟たちは就職を機に家を出て行ってしまった。
物語は、有希が二十歳の誕生日を迎えた日から始まる――。
有希は『いつ頃から、恋をしていたのだろう』と淡い恋心を胸に秘める。慎一郎は『有希は大人の女性になった。彼女はいずれ嫁いで、自分の傍からいなくなってしまうのだ』と知る。
二十五歳の歳の差、養父娘ラブストーリー。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる