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二年目
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シャワーを浴びる。それだけで疲れが飛んでいく気がした。生理は来ていない。最近柊さんには会えていない。だから明日は柊さんも楽しめるのかもしれない。
気が遠くなるほどいつも絶頂に誘ってくれる。だから彼にも気持ちよくなって欲しい。それだけだった。
藤堂先生に呼び出されて教室に帰るといろいろと聞かれたけれど、本を探していたということだけ伝えた。それくらい誰でも出来るよねぇとみんなで言っていた。向日葵だけは「気をつけて」と言ってくれる。向日葵はなんだかんだで心配してくれるのだ。柊さんのことは当初反対していたけれど、自分の年上の彼氏が思った以上に長続きしていることから、年上の彼氏も悪くないと思っているのかもしれない。
だけど私は柊さんが年上だろうと、年下だろうと、同級生だろうときっと彼を好きになっている。
ん?
シャワーのお湯と混ざって、下に赤いものが混ざっている。
「あーあ。」
私はため息を思わずついてしまった。連絡しないといけないな。出来なくなったって。
いつも木曜日は私のバイトが休みなので、いつも時間をあけてくれていた。だけど今日は用事があると言って会えなかった。ヒジカタコーヒーのことを相談したかったけれど、仕方ないか。まぁ自分のことだしな。柊さんに相談してもな。
文化祭の準備を終えると時計を見る。十七時。結局文化祭の出し物は「創作昔話「白雪と七人の小人たち 現代版」」と言うなんかよくわかんない話になった。
”義母「インターネットで調べましょ。この世で一番美しい女性は……と……ん?何ですって?まぁ。あのハリウッドの女優ですって?あんなの整形に決まってんじゃないの。削除。削除。それ以外で。と。」
白雪「お義母さん。何しているの?」
義母「ぎくり。いやぁね。白雪ちゃんったら。まだ起きてたの?こんな遅くまで起きてたら、肌に悪いわ。おっぱいも成長しないのよ。あんたも、あたしみたいに玉の輿に乗りなさいな。」
白雪「玉の輿?お父さんとお義母さんって愛し合って結婚したんじゃないの?財産目当てだったの?きー(怒)許せなーい!」”
まぁ。そんな感じの話。まぁ、ちょっとずつ意見を出しながらだから、つじつまの合わないこともあるだろうけど、それは目を瞑ってもらおう。素人の作った脚本だもの。
靴箱へ行き、携帯電話を開いてみる。そこには母のメッセージが入っている。
”帰りにゴミ袋買ってきて。”
コンビニでいいか。そう思いながら靴を履いた。そして帰ろうと、玄関をでたとき、私は金色の髪の人を見た。ん?この学校にこんな人いたっけ?
その人は校舎裏に回っていく。私もそれを追いかけていくと、その人はある程度のところで足を止めた。
「竹彦君?」
竹彦は前に見たときよりも髪が伸びていた。金色の髪は、もう目を覆うくらいになっている。そのお陰でピアスは目立たなくなってる気がするけれど。
「どうしたの?」
「……君に話があってね。」
「携帯でも良かったのに。」
「携帯越しで話せないことだから。」
何なんだろう。私は少し気になりながらも、彼を見上げる。
「単刀直入に言う。僕もあまり時間がないから。」
「ん。」
「……百合さんが戻ってきた。」
「百合さんが?」
目の前が真っ暗になりそうだった。少しよろけ、それでも足を踏ん張る。自分の足で立たなきゃいけない。
「一時帰国だ。すぐに戻るらしい。」
「何で今更この国に用事があるの?まさか……柊を?」
「違うみたいだ。ヒジカタコーヒーに用事があるらしい。」
「ヒジカタコーヒーに?」
「あぁ。コーヒーの本場のような土地に住んでいるんだ。どうやら彼女が選定して、コーヒーの豆を輸入しているらしい。前は彼女の弟がしていたことだけど、弟は今年帰ってきてこっちでの受け口になっている。」
「……茅さんのことね。」
「それから、その豆をいち早く仕入れているのが「窓」。」
「葵さんのところに?」
「あぁ。どちらにしても、ヒジカタコーヒーの用事でこっちに帰ってきている。」
「……。」
「最近柊さんに会ってる?」
「会えてない。今日も……会うと言っていたけれど……。」
イヤな想像しかできない。やだ。夢が現実になりそうで。
「桜さん。」
「ごめん。何でもないの。教えてくれてありがとう。」
「大丈夫?」
「信じてるから。」
信じていると何度も言った。でもこの時ほど頼りない「信じてる」があっただろうか。
ゴミ袋を買って帰ったのが奇跡だった。ふらふらと帰ってきた私を、母さんは驚いたように見ていた。
「顔色悪いね。どうしたの?お腹痛いの?」
「うん。ちょっとキツくなった。」
「そう。鎮痛剤飲む?」
「食べてから飲むから。」
私はそういって、自分の部屋に戻った。こんな時でも自分がイヤになる。
心配させてはいけない。だから本音は言わない。
私は好きに、いつでも泣くことは出来ないのだ。
「桜。あたし仕事行くね。カレー作ってあるから、柊さんが来たら食べてもらってもいいし、持って行ってもいいわよ。」
堪えろ。涙を流してはいけない。
ドアを開けて、私は母さんに言う。
「柊、今日忙しいって。」
「そう。何してんのか知らないけど大変ねぇ。まぁいいわ。カレーだし、明日の方が美味しいかもね。」
派手なワンピースを着て、彼女はバックを持って出て行ってしまった。その瞬間私の目に我慢していた涙がこぼれた。
気が遠くなるほどいつも絶頂に誘ってくれる。だから彼にも気持ちよくなって欲しい。それだけだった。
藤堂先生に呼び出されて教室に帰るといろいろと聞かれたけれど、本を探していたということだけ伝えた。それくらい誰でも出来るよねぇとみんなで言っていた。向日葵だけは「気をつけて」と言ってくれる。向日葵はなんだかんだで心配してくれるのだ。柊さんのことは当初反対していたけれど、自分の年上の彼氏が思った以上に長続きしていることから、年上の彼氏も悪くないと思っているのかもしれない。
だけど私は柊さんが年上だろうと、年下だろうと、同級生だろうときっと彼を好きになっている。
ん?
シャワーのお湯と混ざって、下に赤いものが混ざっている。
「あーあ。」
私はため息を思わずついてしまった。連絡しないといけないな。出来なくなったって。
いつも木曜日は私のバイトが休みなので、いつも時間をあけてくれていた。だけど今日は用事があると言って会えなかった。ヒジカタコーヒーのことを相談したかったけれど、仕方ないか。まぁ自分のことだしな。柊さんに相談してもな。
文化祭の準備を終えると時計を見る。十七時。結局文化祭の出し物は「創作昔話「白雪と七人の小人たち 現代版」」と言うなんかよくわかんない話になった。
”義母「インターネットで調べましょ。この世で一番美しい女性は……と……ん?何ですって?まぁ。あのハリウッドの女優ですって?あんなの整形に決まってんじゃないの。削除。削除。それ以外で。と。」
白雪「お義母さん。何しているの?」
義母「ぎくり。いやぁね。白雪ちゃんったら。まだ起きてたの?こんな遅くまで起きてたら、肌に悪いわ。おっぱいも成長しないのよ。あんたも、あたしみたいに玉の輿に乗りなさいな。」
白雪「玉の輿?お父さんとお義母さんって愛し合って結婚したんじゃないの?財産目当てだったの?きー(怒)許せなーい!」”
まぁ。そんな感じの話。まぁ、ちょっとずつ意見を出しながらだから、つじつまの合わないこともあるだろうけど、それは目を瞑ってもらおう。素人の作った脚本だもの。
靴箱へ行き、携帯電話を開いてみる。そこには母のメッセージが入っている。
”帰りにゴミ袋買ってきて。”
コンビニでいいか。そう思いながら靴を履いた。そして帰ろうと、玄関をでたとき、私は金色の髪の人を見た。ん?この学校にこんな人いたっけ?
その人は校舎裏に回っていく。私もそれを追いかけていくと、その人はある程度のところで足を止めた。
「竹彦君?」
竹彦は前に見たときよりも髪が伸びていた。金色の髪は、もう目を覆うくらいになっている。そのお陰でピアスは目立たなくなってる気がするけれど。
「どうしたの?」
「……君に話があってね。」
「携帯でも良かったのに。」
「携帯越しで話せないことだから。」
何なんだろう。私は少し気になりながらも、彼を見上げる。
「単刀直入に言う。僕もあまり時間がないから。」
「ん。」
「……百合さんが戻ってきた。」
「百合さんが?」
目の前が真っ暗になりそうだった。少しよろけ、それでも足を踏ん張る。自分の足で立たなきゃいけない。
「一時帰国だ。すぐに戻るらしい。」
「何で今更この国に用事があるの?まさか……柊を?」
「違うみたいだ。ヒジカタコーヒーに用事があるらしい。」
「ヒジカタコーヒーに?」
「あぁ。コーヒーの本場のような土地に住んでいるんだ。どうやら彼女が選定して、コーヒーの豆を輸入しているらしい。前は彼女の弟がしていたことだけど、弟は今年帰ってきてこっちでの受け口になっている。」
「……茅さんのことね。」
「それから、その豆をいち早く仕入れているのが「窓」。」
「葵さんのところに?」
「あぁ。どちらにしても、ヒジカタコーヒーの用事でこっちに帰ってきている。」
「……。」
「最近柊さんに会ってる?」
「会えてない。今日も……会うと言っていたけれど……。」
イヤな想像しかできない。やだ。夢が現実になりそうで。
「桜さん。」
「ごめん。何でもないの。教えてくれてありがとう。」
「大丈夫?」
「信じてるから。」
信じていると何度も言った。でもこの時ほど頼りない「信じてる」があっただろうか。
ゴミ袋を買って帰ったのが奇跡だった。ふらふらと帰ってきた私を、母さんは驚いたように見ていた。
「顔色悪いね。どうしたの?お腹痛いの?」
「うん。ちょっとキツくなった。」
「そう。鎮痛剤飲む?」
「食べてから飲むから。」
私はそういって、自分の部屋に戻った。こんな時でも自分がイヤになる。
心配させてはいけない。だから本音は言わない。
私は好きに、いつでも泣くことは出来ないのだ。
「桜。あたし仕事行くね。カレー作ってあるから、柊さんが来たら食べてもらってもいいし、持って行ってもいいわよ。」
堪えろ。涙を流してはいけない。
ドアを開けて、私は母さんに言う。
「柊、今日忙しいって。」
「そう。何してんのか知らないけど大変ねぇ。まぁいいわ。カレーだし、明日の方が美味しいかもね。」
派手なワンピースを着て、彼女はバックを持って出て行ってしまった。その瞬間私の目に我慢していた涙がこぼれた。
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