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二年目
201
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木曜日だから、「窓」のバイトは休み。昼休み、携帯電話が鳴り、それを見るとメッセージが入っていた。柊さんからだった。用事がないので、家に来いというもの。私はそれにメッセージを送ると、資料を見る。今年も文化祭と体育祭の事でてんやわんやなのだ。
「劇がしたい。」
というクラスの意見に、どんなモノが劇になるのかちょっと調べてみようと思ったのだ。
「はー。面倒。」
机にうっつぶしながら資料を見ていると、誰かが机の前に立った。
「よう。」
匠だった。彼も毎日のように学校で会ったなぁ。就職組だもんね。
「何?」
「そういうのさ、他の奴に任せればいいのに。」
「何で?」
「おまえも就職組だろ?ただでさえ大変なのに、そんなことまで抱え込むんじゃねぇよ。去年のことを忘れたのか?」
その言葉にクラスがざわっとなる。そういえば、私は倒れたりしたんだっけ。
「文化祭までには決まってるでしょ?大丈夫よ。」
「つってもさぁ。」
「何?匠。心配してくれてんの?ありがたいわー。」
「別にお前に心配してるわけじゃねぇよ。」
軽口を叩いて、彼は周りの人たちに冷やかされていた。
「駄目よ。匠。桜、彼氏いるんだから。」
「るせー。そんなんじゃねぇよ。」
匠がどっか行ったので、私はまた資料に目を移した。匠がからかわれて、みんなが目を移したその視線をぬって、向日葵が声をかけてきた。
「どうしたの?」
「外。ほら。廊下。」
そこにはこちらを見ている藤堂先生がいた。
「何?」
「なんか怒られるようなことでもした?」
「してないと思うけど。」
すると彼はすっと廊下を歩いていった。
「何でこっち見てたんだろうね。」
「わかんない。」
そういえば移動教室の時、少し話したけれどなんかそれについて気になってんのかな。
にしては、こっちを睨んでいるような感じに見えるんだけど。まぁ、素が怖いような感じだしなぁ。そういうところも柊さんに似てる。
「学校の図書館にあるような本をベースにした演劇。」
「劇するクラスの注意?」
「学校の図書館にもサロメとかあるんだけど、ストリップしていいのかしら。」
「さすがに駄目でしょ。」
「何か見てこようかな。向日葵も行く?」
「あたしいいわ。」
私はそういって席を立つと、教室を出ていった。そして隣の校舎に向かおうとしたときだった。誰かが着いてくるのを感じて、校舎に入るとその入り口のドアの死角で待つ。
すると入ってきたのは藤堂先生だった。
「藤堂先生?」
すると彼は表情を変えずに、私に言う。
「すっかり不審者になるところだった。君に話があるのだが、教師と内密に話も出来ない。」
「……先生。携帯を教えておきましょうか。」
「そうしてくれ。」
携帯の番号を教えると、彼は少し笑った気がした。
「どうしました?」
「別に何て事はない。今まで私は工業高校でね、携帯の番号は男子生徒と教師くらいしか入っていなかったのだけど、まさか女子生徒のモノが入るとはね。」
「……必要でしたら、教えますよ。茅さんのお兄さんですし。」
「茅と同じアパートに住んでいると聞いた。」
「えぇ。それから母とも古いつき合いだそうです。」
「君は……もしかして、沖田胡桃さんの娘か。」
「はい。母を知ってますか。」
すると彼は少し黙り込んだ。そして私を見る。
「昔、色々あった。」
「色々?」
「大人のことだ。君にいう必要はない。」
まぁ聞くこともないけれど。
それにしても近くで見ると柊さんによく似てるな。髪が長くないし、そんなにがたいがいい方じゃないけど背丈とかはよく似てる。
「じゃあ、私図書館へ行くので。」
「あぁ。桜さん。」
階段を上がろうとした私に彼が声をかけた。それで私の足が止まる。
「どうしました?」
「あなたはうちの姉にも似ていますよ。」
「やめてください。」
「どうして?」
「会ったこともない人に似ていると言われても微妙です。」
「確かにそうかもしれないな。失礼した。」
階段を上がりながら、それを言われるのが一番いやなのだと、言い聞かせていた。
柊さんは私を百合さんの代わりになどしていない。そういわれた。だけど、不安はいつもつきまとっているのだから。
柊さんの家にやってくるとき、私はいつも髪をほどく。そして私服に着替える。ここから出るときはだいたい二十一時を過ぎているから。
少しの距離でも、補導されないという可能性はない。
いつもジーパンだったから、たまにはワンピースでも着ようと薄い青のワンピースを着た。そして首に掛かっている指輪をはめると、部屋を出ていった。
「あら。今日可愛いのね。どうしたの?」
「たまには着たくなった。」
「フフ。いつもそんな感じにしてればいいのに。せっかく女の子なんだから。」
いつものように母さんはタッパーにおかずを詰めてくれている。筑前煮を今日は作ったらしい。
「母さん。今日さ……。」
「ん?」
「あ、正確には今日じゃないんだけど、英語の先生が新しい先生が来てさ。母さんのこと知ってるみたいだったわ。」
「へぇ。誰かしら。」
「藤堂先生。なんか茅さんのお兄さんっていってたかな。」
すると母さんは驚いたようにこちらをみた。
「桔梗さんかしら。あぁ。マジか。」
「どうしたの?」
「……元カレよ。今の彼氏との兼ね合いもあるから、あまり関わりたくなかったんだけど。」
「いやな別れ方でもしたの?」
「まぁね、喧嘩別れになったかしら。お姉さんのところに行くっていうから、別れたのよ。」
「……。」
「留学ね。遠距離には向かないし。あたしは。」
百合さんのところにいたこともあるんだ。だからそんなことをいっていたんだなぁ。
「劇がしたい。」
というクラスの意見に、どんなモノが劇になるのかちょっと調べてみようと思ったのだ。
「はー。面倒。」
机にうっつぶしながら資料を見ていると、誰かが机の前に立った。
「よう。」
匠だった。彼も毎日のように学校で会ったなぁ。就職組だもんね。
「何?」
「そういうのさ、他の奴に任せればいいのに。」
「何で?」
「おまえも就職組だろ?ただでさえ大変なのに、そんなことまで抱え込むんじゃねぇよ。去年のことを忘れたのか?」
その言葉にクラスがざわっとなる。そういえば、私は倒れたりしたんだっけ。
「文化祭までには決まってるでしょ?大丈夫よ。」
「つってもさぁ。」
「何?匠。心配してくれてんの?ありがたいわー。」
「別にお前に心配してるわけじゃねぇよ。」
軽口を叩いて、彼は周りの人たちに冷やかされていた。
「駄目よ。匠。桜、彼氏いるんだから。」
「るせー。そんなんじゃねぇよ。」
匠がどっか行ったので、私はまた資料に目を移した。匠がからかわれて、みんなが目を移したその視線をぬって、向日葵が声をかけてきた。
「どうしたの?」
「外。ほら。廊下。」
そこにはこちらを見ている藤堂先生がいた。
「何?」
「なんか怒られるようなことでもした?」
「してないと思うけど。」
すると彼はすっと廊下を歩いていった。
「何でこっち見てたんだろうね。」
「わかんない。」
そういえば移動教室の時、少し話したけれどなんかそれについて気になってんのかな。
にしては、こっちを睨んでいるような感じに見えるんだけど。まぁ、素が怖いような感じだしなぁ。そういうところも柊さんに似てる。
「学校の図書館にあるような本をベースにした演劇。」
「劇するクラスの注意?」
「学校の図書館にもサロメとかあるんだけど、ストリップしていいのかしら。」
「さすがに駄目でしょ。」
「何か見てこようかな。向日葵も行く?」
「あたしいいわ。」
私はそういって席を立つと、教室を出ていった。そして隣の校舎に向かおうとしたときだった。誰かが着いてくるのを感じて、校舎に入るとその入り口のドアの死角で待つ。
すると入ってきたのは藤堂先生だった。
「藤堂先生?」
すると彼は表情を変えずに、私に言う。
「すっかり不審者になるところだった。君に話があるのだが、教師と内密に話も出来ない。」
「……先生。携帯を教えておきましょうか。」
「そうしてくれ。」
携帯の番号を教えると、彼は少し笑った気がした。
「どうしました?」
「別に何て事はない。今まで私は工業高校でね、携帯の番号は男子生徒と教師くらいしか入っていなかったのだけど、まさか女子生徒のモノが入るとはね。」
「……必要でしたら、教えますよ。茅さんのお兄さんですし。」
「茅と同じアパートに住んでいると聞いた。」
「えぇ。それから母とも古いつき合いだそうです。」
「君は……もしかして、沖田胡桃さんの娘か。」
「はい。母を知ってますか。」
すると彼は少し黙り込んだ。そして私を見る。
「昔、色々あった。」
「色々?」
「大人のことだ。君にいう必要はない。」
まぁ聞くこともないけれど。
それにしても近くで見ると柊さんによく似てるな。髪が長くないし、そんなにがたいがいい方じゃないけど背丈とかはよく似てる。
「じゃあ、私図書館へ行くので。」
「あぁ。桜さん。」
階段を上がろうとした私に彼が声をかけた。それで私の足が止まる。
「どうしました?」
「あなたはうちの姉にも似ていますよ。」
「やめてください。」
「どうして?」
「会ったこともない人に似ていると言われても微妙です。」
「確かにそうかもしれないな。失礼した。」
階段を上がりながら、それを言われるのが一番いやなのだと、言い聞かせていた。
柊さんは私を百合さんの代わりになどしていない。そういわれた。だけど、不安はいつもつきまとっているのだから。
柊さんの家にやってくるとき、私はいつも髪をほどく。そして私服に着替える。ここから出るときはだいたい二十一時を過ぎているから。
少しの距離でも、補導されないという可能性はない。
いつもジーパンだったから、たまにはワンピースでも着ようと薄い青のワンピースを着た。そして首に掛かっている指輪をはめると、部屋を出ていった。
「あら。今日可愛いのね。どうしたの?」
「たまには着たくなった。」
「フフ。いつもそんな感じにしてればいいのに。せっかく女の子なんだから。」
いつものように母さんはタッパーにおかずを詰めてくれている。筑前煮を今日は作ったらしい。
「母さん。今日さ……。」
「ん?」
「あ、正確には今日じゃないんだけど、英語の先生が新しい先生が来てさ。母さんのこと知ってるみたいだったわ。」
「へぇ。誰かしら。」
「藤堂先生。なんか茅さんのお兄さんっていってたかな。」
すると母さんは驚いたようにこちらをみた。
「桔梗さんかしら。あぁ。マジか。」
「どうしたの?」
「……元カレよ。今の彼氏との兼ね合いもあるから、あまり関わりたくなかったんだけど。」
「いやな別れ方でもしたの?」
「まぁね、喧嘩別れになったかしら。お姉さんのところに行くっていうから、別れたのよ。」
「……。」
「留学ね。遠距離には向かないし。あたしは。」
百合さんのところにいたこともあるんだ。だからそんなことをいっていたんだなぁ。
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