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二年目
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何度も唇を重ね、吐息が交差した。
「やだ……。」
やっとでた言葉は拒否の言葉。だけど茅さんは私を離そうとしない。温かい体が私を包む。それは柊さんじゃない。わかっているから拒否した。
「好きだ。」
絞り出したような声。震える手。体。多分彼にも余裕がない。
「私には……柊さんがいます。」
柊さんの顔が浮かび、私はやっと彼を離そうとその体を離そうと手に力を入れた。しかし彼はそれを離そうとしない。
「柊は今はいないだろう。それに必要なときにいない。」
「それでも待ちたいから……。」
「そんなつまんねぇ女になるな。」
彼はそう言って私は少し離し、私の目を覗き見る。
「桜。俺だったらここにいる。」
「どうして連絡一つくれないのか、柊のことがわからないと思っていても、私は柊だけしか見てないから。」
彼の目を見ていう。じゃないときっと彼は私をまた奪おうと思うだろうから。
「あなたじゃない……んっ!」
しかし彼はその言葉を言わせないように、私の唇にまたキスをした。器用にそれでも力強く動くその舌は、私を求めている柊さんによく似ていて、彼とのキスを勘違いさせるようだった。
目を瞑ればきっと彼と思えるかもしれない。だから目を瞑らなかった。違う人なのだと。彼は柊さんの代わりじゃないと。
「やめてください。」
唇を離されたときやっと、私は言葉を発することが出来た。だけどその言葉は彼に届いていたのだろうか。彼は私の首もとに唇を這わせる。
「忘れられないんだったら、忘れさせてやる。」
「……。」
耳元で囁く声は、柊さんのものじゃない。低くても彼のようには心に響かないから。
「私は好きじゃない。」
「好きじゃなくても抱かれるだろう。抱かれれば心が変わることもある。」
「ないです。」
私は力ずくで彼の体を押して、体を離した。多分、私の頬には涙が伝っている。
「一度……抱かれたこともある。だけど……何も感じなかった。体は感じたかもしれないけれど、それに転ぶこともなかった。実感したのは……柊に対する愛だけだった。」
どんなにぞんざいな扱いを受けても、私は柊さんしか見えてなかった。
「……そんなに操を立てる男じゃないのに。あいつが今何をしているのかもわからないのに、他の女のところに行ってるかもしれないのに。それでもお前は……。」
「イヤなんです。彼以外に触れられるのが。」
「桜。意固地になるな。お前の初恋なのかもしれないけれど、あいつにとっては初恋でも何でもないんだから。」
「……。」
「好きと言ってくれる奴の目を見ろよ。俺だって柊と同じくらいお前を見てる。」
「……茅さん……。」
すると彼はふっと笑った。
「やっと名前を呼んだな。」
頬に手を伸ばされて、涙を拭われた。そしてその後ろにあるバスルームへ行くと、タオルを渡された。
「拭けよ。」
「……。」
「もう襲ったりしねぇから。」
「……。」
タオルを取ると私はしゃがみ込み、それを顔に当てて思いっきり泣いた。
他の人では埋められない。柊さんじゃないと駄目なんだ。
そのまま私は茅さんの家をでる。まだ明るい日差しは、夕日にすらなっていない。
部屋に帰ると、母さんが料理をしていた。今日はなすの味噌炒めをしているらしい。
「美味しそうね。」
「バイトどうしたの?」
「今日はちょっと事情があってクローズにしているんですって。」
「ふーん。まぁたまにはいいかもね。葵も働きすぎだわ。で、連絡はあった?」
首を横に振ると、母さんはため息を付いた。
「どこ行ってんのかしらね。本当に大丈夫かしら。」
「……母さん。私ね、去年蓬さんの前で啖呵を切ったわ。」
「へぇ。あんたが?」
意外そうに私を見る母さんは、私にサラダを作るようにいう。
「柊が何者でもかまわない。もしやくざになっても、それについて行くって。」
「……やくざの情婦になろうっていうの?」
「実際はなんないと思う。でもそれくらいの覚悟で柊を好きになったって言ったの。忘れてたかもしれない。」
「そう……。」
トマトを切りながら、私はふっと笑った。
「でも不安は不安。私の知らないところで何をしているのかって。」
「それはそうよ。ちゃんと聞くのよ。」
「うん。」
そのとき、玄関のドアの鍵が開く音がした。母さんと顔を見合わせて、私はそこへ向かう。
玄関を見ると、そこには靴を脱いでいる柊さんの姿があった。
「柊?」
「あら、柊さんがきたの?」
その声に母さんまで廊下にやってきた。二人で様子を見ていると、彼は驚いたようにこちらを見る。
「二人揃って珍しいものを見るような様子だな。どうしたんだ。」
「あのね。柊さん。どうしたんだじゃないでしょ?」
「は?」
彼はきっと何もわかっていない。夜に私が気を揉んで、リスクを犯しながら繁華街へ行ったことも、机にうっつぶして寝ていたことも、ずっとこの部屋で待っていたことも、それにつけ込もうと茅さんに襲われそうになったことも、彼は何もわかっていなかった。
「今までどこにいたの?」
「どこって……色々あるんだ。」
「あんた、夕べここに来るって言ってこなかったんでしょう?」
すると彼はその言葉に少し表情を変えた。
「……桜。あの……。」
我慢の限界だった。私はつかつかと彼の前に歩いていくと、手を伸ばして彼の頬を叩いた。
「やだ……。」
やっとでた言葉は拒否の言葉。だけど茅さんは私を離そうとしない。温かい体が私を包む。それは柊さんじゃない。わかっているから拒否した。
「好きだ。」
絞り出したような声。震える手。体。多分彼にも余裕がない。
「私には……柊さんがいます。」
柊さんの顔が浮かび、私はやっと彼を離そうとその体を離そうと手に力を入れた。しかし彼はそれを離そうとしない。
「柊は今はいないだろう。それに必要なときにいない。」
「それでも待ちたいから……。」
「そんなつまんねぇ女になるな。」
彼はそう言って私は少し離し、私の目を覗き見る。
「桜。俺だったらここにいる。」
「どうして連絡一つくれないのか、柊のことがわからないと思っていても、私は柊だけしか見てないから。」
彼の目を見ていう。じゃないときっと彼は私をまた奪おうと思うだろうから。
「あなたじゃない……んっ!」
しかし彼はその言葉を言わせないように、私の唇にまたキスをした。器用にそれでも力強く動くその舌は、私を求めている柊さんによく似ていて、彼とのキスを勘違いさせるようだった。
目を瞑ればきっと彼と思えるかもしれない。だから目を瞑らなかった。違う人なのだと。彼は柊さんの代わりじゃないと。
「やめてください。」
唇を離されたときやっと、私は言葉を発することが出来た。だけどその言葉は彼に届いていたのだろうか。彼は私の首もとに唇を這わせる。
「忘れられないんだったら、忘れさせてやる。」
「……。」
耳元で囁く声は、柊さんのものじゃない。低くても彼のようには心に響かないから。
「私は好きじゃない。」
「好きじゃなくても抱かれるだろう。抱かれれば心が変わることもある。」
「ないです。」
私は力ずくで彼の体を押して、体を離した。多分、私の頬には涙が伝っている。
「一度……抱かれたこともある。だけど……何も感じなかった。体は感じたかもしれないけれど、それに転ぶこともなかった。実感したのは……柊に対する愛だけだった。」
どんなにぞんざいな扱いを受けても、私は柊さんしか見えてなかった。
「……そんなに操を立てる男じゃないのに。あいつが今何をしているのかもわからないのに、他の女のところに行ってるかもしれないのに。それでもお前は……。」
「イヤなんです。彼以外に触れられるのが。」
「桜。意固地になるな。お前の初恋なのかもしれないけれど、あいつにとっては初恋でも何でもないんだから。」
「……。」
「好きと言ってくれる奴の目を見ろよ。俺だって柊と同じくらいお前を見てる。」
「……茅さん……。」
すると彼はふっと笑った。
「やっと名前を呼んだな。」
頬に手を伸ばされて、涙を拭われた。そしてその後ろにあるバスルームへ行くと、タオルを渡された。
「拭けよ。」
「……。」
「もう襲ったりしねぇから。」
「……。」
タオルを取ると私はしゃがみ込み、それを顔に当てて思いっきり泣いた。
他の人では埋められない。柊さんじゃないと駄目なんだ。
そのまま私は茅さんの家をでる。まだ明るい日差しは、夕日にすらなっていない。
部屋に帰ると、母さんが料理をしていた。今日はなすの味噌炒めをしているらしい。
「美味しそうね。」
「バイトどうしたの?」
「今日はちょっと事情があってクローズにしているんですって。」
「ふーん。まぁたまにはいいかもね。葵も働きすぎだわ。で、連絡はあった?」
首を横に振ると、母さんはため息を付いた。
「どこ行ってんのかしらね。本当に大丈夫かしら。」
「……母さん。私ね、去年蓬さんの前で啖呵を切ったわ。」
「へぇ。あんたが?」
意外そうに私を見る母さんは、私にサラダを作るようにいう。
「柊が何者でもかまわない。もしやくざになっても、それについて行くって。」
「……やくざの情婦になろうっていうの?」
「実際はなんないと思う。でもそれくらいの覚悟で柊を好きになったって言ったの。忘れてたかもしれない。」
「そう……。」
トマトを切りながら、私はふっと笑った。
「でも不安は不安。私の知らないところで何をしているのかって。」
「それはそうよ。ちゃんと聞くのよ。」
「うん。」
そのとき、玄関のドアの鍵が開く音がした。母さんと顔を見合わせて、私はそこへ向かう。
玄関を見ると、そこには靴を脱いでいる柊さんの姿があった。
「柊?」
「あら、柊さんがきたの?」
その声に母さんまで廊下にやってきた。二人で様子を見ていると、彼は驚いたようにこちらを見る。
「二人揃って珍しいものを見るような様子だな。どうしたんだ。」
「あのね。柊さん。どうしたんだじゃないでしょ?」
「は?」
彼はきっと何もわかっていない。夜に私が気を揉んで、リスクを犯しながら繁華街へ行ったことも、机にうっつぶして寝ていたことも、ずっとこの部屋で待っていたことも、それにつけ込もうと茅さんに襲われそうになったことも、彼は何もわかっていなかった。
「今までどこにいたの?」
「どこって……色々あるんだ。」
「あんた、夕べここに来るって言ってこなかったんでしょう?」
すると彼はその言葉に少し表情を変えた。
「……桜。あの……。」
我慢の限界だった。私はつかつかと彼の前に歩いていくと、手を伸ばして彼の頬を叩いた。
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