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二年目
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期末試験が終わり、クラスは解放された空気になる。この成績が、就職先にも同封されるので、みんな真剣だった。
それが解放されたので、いきなり空気が軽くなったらしい。
「桜。今日、お茶していかない?」
向日葵にそういわれた。確かに試験は午前中だけだったから、「窓」へ行くまでは時間がある。誘われていつも断っていたから、たまにはつきあわないといけないのかなぁ。
「食事できる?」
「うん。え?行くの?」
「バイトまで時間あるしね。」
「わぁ。嬉しい。いっつも桜ってつきあってくれなかったもんね。」
本当なら、家に帰って家の掃除をしないといけないけど、明日休みだしな。明日ゆっくりしよう。
向日葵の他に二人の友達と、学校を出ると駅の方へ向かった。
駅の方には雨後の竹の子のようにカフェが出来ている。格好は本当に出来る店員のようだけど、中には来る女性に声をかけてくる店員も多い。
まぁ、高校生に声をかける人はいないだろうけど。
例外はいるのかな。ロリコンとか。
ん?あーもう。誰が柊さんがロリコンだって?
「どうしたの?桜。百面相。」
「え?んー。何でもないよ。じゃあ行こうか。」
いつの間にか足を止めてたらしい。バックを握りなおして、私は向日葵たちの後を追った。
「えーマジで?」
たどり着いたのは、表通りに面した日当たりのいいオープンカフェ、だったところらしい。
らしいって言うのは、閉店していたからなんだけど。がらーんとしていて、いす一つ残っていない。
「まじで潰れちゃったんだ。」
友達の一人が入り口にあった紙を見て言う。確かに閉店のご案内って書いている。
「信二さんどこ行ったのかなぁ。」
信二さんとでも言うらしい。そのイケメン店員。
「仕方ないよ。違うトコ行こうよ。」
「どこあったっけ?」
友達が携帯でその辺を検索していた。もう帰ろうかな。私はそう思ったときだった。
「あ、桜だ。」
通り過ぎようとしていた男が私に声をかけた。それは茅さんと明さんだった。
「茅さんと明さん。こんにちは。」
「どうしたんだ。ん?友達?」
「じょしこーせーじゃん。」
やめてよ。そのぎらぎらした感じ。明さんは笑いながら私たちに近づいてきた。
「どっか遊びにでも行くの?」
「えぇ。ちょっとお茶でもして帰ろうかと思ってたんですけど。」
ちらりと潰れたカフェを見る。すると明さんは納得したように、そこを見た。
「あーここね。撤退するって言ってた。こういうカフェ、今多いからなぁ。」
「桜ぁ。」
ちょいちょいと袖を捕まれて、向日葵は私を呼ぶ。彼らに聞こえないように、ちょっと間をあけた。
「誰?」
「あーんー。バイト先のお客さんで……一人は葵さんの友達。」
なんて答えて良いかわからなくて、私はそう答えた。
「胡散臭いよ。行こうよ。」
「そうね。じゃあ、ちょっと挨拶して……。」
そう思っていたのに、他の友達たちは明さんや茅さんの話術にはまったらしい。
「あはは。そうなんだー。」
「ねぇ。向日葵。信二さん、この近所のカフェにいるらしいよ。」
信二さんとか言う男の人がどんな人かは知らないけど、私たちはもう彼らから離れようとしてたのになぁ。
「案内してあげようか?ちょっと奥まっているけど。」
「信二さんのラテアートすごいんだって。行こうよ。」
断ろうと思って、私は彼らに声をかける。
「私、食事したいんでやっぱ……。」
「飯食えるって。なんなら奢ろうか?」
「まじで?ラッキー。」
はー。なんて言うか、赤ん坊の手を捻るように簡単なんだろうな。こういう女子高生をデートに誘うのって。
大通りから少し入ったところにあるカフェは、とても涼しい。大きな窓は外の通りがとてもよく見える。
そして店内は白を基調にしていて明るく、「窓」とは対照的に見えた。そしてギャルソンエプロンをつけた男性はみんなイケメンで、背が高い。可愛い系から、クールな感じまでいろんなイケメンがいるけど、柊さんが一番かっこいいし、葵さんの方が手際が良いように見えた。
さ、ご飯食べたらさっさと帰ろう。何せ明さんも茅さんもなぜか向かいにいるのだから。
「パスタのAセット。コーヒーで。」
「はい。」
「カフェラテにしないの?桜。」
「うん。」
「ラテアート面白いよ。」
なんかコーヒーの上にお絵かきして何が楽しいんだって思うけど、それがいいのかな。
「桜。頼めばいい。どうせ同じ値段だ。」
「……わかりました。ではそのコーヒーをカフェラテにしてもらえますか。」
「はい。」
黒髪のクール系のイケメン店員という言葉がぴったりなその人が、信二さんらしい。さて、何が出てくるのか。
「桜。パスタどれを頼んだ?」
「Aです。」
「トマトか。俺もそれにしよう。」
「飲み物はどうしますか。」
「んー紅茶でいいや。」
ん?紅茶?珍しいな。茅さんが紅茶飲むなんて。いつも「窓」ではコーヒー一択なのに。
「アハハ。そーなんですか?」
向日葵たちは明さんと何か話をしているみたいだった。多分女子高生が好きそうな話題。テレビの話や、芸能人の話。私はふと外を見て、行き交う人たちを見ていた。
「桜は、芸能人って誰が好きなの?」
「わかんない。テレビ見ないし。」
「えー?じゃあ音楽は?」
「うーん。あっ!最近のほら、なんて言ったかな。バンドの……。」
「ばばぁかよ。思い出せねぇの。」
茅さんの言葉にみんなが笑っていた。くそぉ。恥ずかしい。
それが解放されたので、いきなり空気が軽くなったらしい。
「桜。今日、お茶していかない?」
向日葵にそういわれた。確かに試験は午前中だけだったから、「窓」へ行くまでは時間がある。誘われていつも断っていたから、たまにはつきあわないといけないのかなぁ。
「食事できる?」
「うん。え?行くの?」
「バイトまで時間あるしね。」
「わぁ。嬉しい。いっつも桜ってつきあってくれなかったもんね。」
本当なら、家に帰って家の掃除をしないといけないけど、明日休みだしな。明日ゆっくりしよう。
向日葵の他に二人の友達と、学校を出ると駅の方へ向かった。
駅の方には雨後の竹の子のようにカフェが出来ている。格好は本当に出来る店員のようだけど、中には来る女性に声をかけてくる店員も多い。
まぁ、高校生に声をかける人はいないだろうけど。
例外はいるのかな。ロリコンとか。
ん?あーもう。誰が柊さんがロリコンだって?
「どうしたの?桜。百面相。」
「え?んー。何でもないよ。じゃあ行こうか。」
いつの間にか足を止めてたらしい。バックを握りなおして、私は向日葵たちの後を追った。
「えーマジで?」
たどり着いたのは、表通りに面した日当たりのいいオープンカフェ、だったところらしい。
らしいって言うのは、閉店していたからなんだけど。がらーんとしていて、いす一つ残っていない。
「まじで潰れちゃったんだ。」
友達の一人が入り口にあった紙を見て言う。確かに閉店のご案内って書いている。
「信二さんどこ行ったのかなぁ。」
信二さんとでも言うらしい。そのイケメン店員。
「仕方ないよ。違うトコ行こうよ。」
「どこあったっけ?」
友達が携帯でその辺を検索していた。もう帰ろうかな。私はそう思ったときだった。
「あ、桜だ。」
通り過ぎようとしていた男が私に声をかけた。それは茅さんと明さんだった。
「茅さんと明さん。こんにちは。」
「どうしたんだ。ん?友達?」
「じょしこーせーじゃん。」
やめてよ。そのぎらぎらした感じ。明さんは笑いながら私たちに近づいてきた。
「どっか遊びにでも行くの?」
「えぇ。ちょっとお茶でもして帰ろうかと思ってたんですけど。」
ちらりと潰れたカフェを見る。すると明さんは納得したように、そこを見た。
「あーここね。撤退するって言ってた。こういうカフェ、今多いからなぁ。」
「桜ぁ。」
ちょいちょいと袖を捕まれて、向日葵は私を呼ぶ。彼らに聞こえないように、ちょっと間をあけた。
「誰?」
「あーんー。バイト先のお客さんで……一人は葵さんの友達。」
なんて答えて良いかわからなくて、私はそう答えた。
「胡散臭いよ。行こうよ。」
「そうね。じゃあ、ちょっと挨拶して……。」
そう思っていたのに、他の友達たちは明さんや茅さんの話術にはまったらしい。
「あはは。そうなんだー。」
「ねぇ。向日葵。信二さん、この近所のカフェにいるらしいよ。」
信二さんとか言う男の人がどんな人かは知らないけど、私たちはもう彼らから離れようとしてたのになぁ。
「案内してあげようか?ちょっと奥まっているけど。」
「信二さんのラテアートすごいんだって。行こうよ。」
断ろうと思って、私は彼らに声をかける。
「私、食事したいんでやっぱ……。」
「飯食えるって。なんなら奢ろうか?」
「まじで?ラッキー。」
はー。なんて言うか、赤ん坊の手を捻るように簡単なんだろうな。こういう女子高生をデートに誘うのって。
大通りから少し入ったところにあるカフェは、とても涼しい。大きな窓は外の通りがとてもよく見える。
そして店内は白を基調にしていて明るく、「窓」とは対照的に見えた。そしてギャルソンエプロンをつけた男性はみんなイケメンで、背が高い。可愛い系から、クールな感じまでいろんなイケメンがいるけど、柊さんが一番かっこいいし、葵さんの方が手際が良いように見えた。
さ、ご飯食べたらさっさと帰ろう。何せ明さんも茅さんもなぜか向かいにいるのだから。
「パスタのAセット。コーヒーで。」
「はい。」
「カフェラテにしないの?桜。」
「うん。」
「ラテアート面白いよ。」
なんかコーヒーの上にお絵かきして何が楽しいんだって思うけど、それがいいのかな。
「桜。頼めばいい。どうせ同じ値段だ。」
「……わかりました。ではそのコーヒーをカフェラテにしてもらえますか。」
「はい。」
黒髪のクール系のイケメン店員という言葉がぴったりなその人が、信二さんらしい。さて、何が出てくるのか。
「桜。パスタどれを頼んだ?」
「Aです。」
「トマトか。俺もそれにしよう。」
「飲み物はどうしますか。」
「んー紅茶でいいや。」
ん?紅茶?珍しいな。茅さんが紅茶飲むなんて。いつも「窓」ではコーヒー一択なのに。
「アハハ。そーなんですか?」
向日葵たちは明さんと何か話をしているみたいだった。多分女子高生が好きそうな話題。テレビの話や、芸能人の話。私はふと外を見て、行き交う人たちを見ていた。
「桜は、芸能人って誰が好きなの?」
「わかんない。テレビ見ないし。」
「えー?じゃあ音楽は?」
「うーん。あっ!最近のほら、なんて言ったかな。バンドの……。」
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