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二年目
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どうしていつも会いたいと願うと、彼はいつも隣にいるのだろう。このところ頻繁に目を覚ますと、柊さんが隣で眠っている。私が眠っている間にやってきて一緒に眠っているのだから、多分私を抱きしめているだけなんだろうけど。
最近は私も柊さんも忙しくてゆっくりする暇はないからそれはそれで嬉しいのだけど、彼は大丈夫なのだろうか。私に合わせるとあまり眠れてないことになるけれど。
せめてゆっくり眠らせてあげようと、私はそっと隣から抜け出そうとした。しかし彼が寝ぼけているのかぎゅっと抱きしめた。
「くるし……。」
それはちょっときつくて思わず息が止まりそうだった。見上げると、彼の顎の髭がよく見える。
「桜……。」
寝ぼけているように、私の名前を呼ぶ。ふわっと胸が熱くなる。私も彼の胸に顔を埋めて、その体に手を伸ばした。
「ずっとこうしていたいけど……。」
「そうだな。」
その言葉に私は驚いたように彼を見上げた。すると目が開いている。
「起きてたなんて意地悪です。」
「さっき起きた。」
すると彼は私の頭をなでた。そして軽く唇を合わせる。
「桜。就職活動をがんばってるみたいだな。」
「はい。志望は絞れましたけど……。」
ヒジカタコーヒーのことを言っていいのだろうか。茅さんは希望は聞くとは言っていたけれど、彼が人事を決めているわけじゃないしそれを信じていいのかまだわからない。
「俺だってずっとここにいるわけじゃないから。」
「派遣だから?」
「それもあるけど、派遣だとどうしてもすぐに「切る」と言われたら、収入が無くなるからな。するとお前に悪いだろう。」
「私に?」
「お前は働いているのに、俺が働いていないのは立場的にもイヤだ。ヒモみたいなことをしたくない。」
そんなものなのかな。と言うか、高校卒業したら、一緒になるって思っているの?一緒にならなくても、もしかして結婚とか考えてるの?
ぎゃあ。
確かに歳違うし、子供とか考えると早い方がいいのかもしれないけど、でも、でもさ、まだ早くない?十七なんだけどまだ。
「どうしたんだ。百面相して。」
「え?そんなに変わってました?」
「うん。可愛いな。」
「やめてくださいよ。照れますから。」
そんなことを柊さんがいうと思ってなかった。しかも表情が変わらないから、さらに恥ずかしい。
「就職するところは、俺のことを考えなくて良いから。お前の好きなようにすればいい。」
「……でも……それで離れてしまったら……。」
「離れない。確かに不安はないことはない。お前はモテるしな。」
「柊さんだって……。」
「お前も不安か?」
「えぇ。」
大きな手がぽんぽんと頭に触れる。それが安心させる。
「だったら、俺もお前のそばにいるから。」
「そばに?」
「あぁ。来年をめどに就職するから。俺もお前と同じ立場ってわけだ。」
「髪を切るんですか。」
「……めんどくさくなくて良かったんだがな。仕方ない。こういうのは、社会人としてあり得ないと言われたしな。」
何かもったいない気がする。髪が長いのがとても似合っていたのに。
「私のために?」
目だけで私を見る。それが少し怖い気がした。もしかして思い上がっているんじゃないかって思って。
「そうだ。お前のためだ。」
そういうと彼は私の胸に顔を埋めてきた。
「頑張れ。」
そういって彼は私の方を見上げた。また唇を合わせる。
朝学校へ行くと、靴箱で向日葵と一緒になった。
「おはよー。桜。」
「おはよ。今日も元気ねぇ。」
「うん。」
上履きに履き替えると、向日葵は私の隣で下級生の男の子の話をした。どうやらバスケ部の男の子に可愛い子がいるらしい。うん。その話は私も知っている。
バスケがすごく上手で、背が高い男の子。いきなりレギュラー入りしているといってたな。可愛いって言われていて、もてはやされているのにすごく無愛想で、それが返って可愛いらしい。痘痕もえくぼとはよく言っている。
「ところでさ、桜の家って竹彦君の家と近所だっけ?」
いきなり竹彦の名前が出て驚いた。でも隠す必要もないと私はうなずいた。
「そうね。近所っちゃ近所ね。歩いていける距離。どうかした?」
「うーん。この間、美貴たちと駅前でお茶してたんだけどさ。そのとき竹彦君みたのよ。」
「竹彦君を?」
「喪服着ててさ。家、葬祭場って言ってたっけ?」
「うん。」
「それにしてはさ、ちょっとおかしいっていうか。」
「おかしい?」
「背も伸びてたからさ。」
「成長期、やっと来たんだね。」
「それだけじゃないの。何か、髪も伸びてたし金色だったし、すごいピアスの数だし。何かチンピラみたいな。」
その言葉に私は黙ってしまった。本当に彼は「椿」になってしまったのかもしれないと思って。
学校の帰り、私はつい立ち止まってしまった。
それは分かれ道。「宮木家 葬儀場」と書いている看板がたっている。そこにはきっと竹彦がいる。
椿をしながら、他の職に就くことはできるらしい。それが組に入っていないメリットになると言っていた。だから何があっても、組は守ってくれない。だから強さが必要なのだという。
きっと竹彦は強くなったのだとおもう。元々そういう素質はあったのだろうから。
きっと竹彦は、柊さんのようにきっと人を傷つけることに抵抗がない人になるのかもしれない。
最近は私も柊さんも忙しくてゆっくりする暇はないからそれはそれで嬉しいのだけど、彼は大丈夫なのだろうか。私に合わせるとあまり眠れてないことになるけれど。
せめてゆっくり眠らせてあげようと、私はそっと隣から抜け出そうとした。しかし彼が寝ぼけているのかぎゅっと抱きしめた。
「くるし……。」
それはちょっときつくて思わず息が止まりそうだった。見上げると、彼の顎の髭がよく見える。
「桜……。」
寝ぼけているように、私の名前を呼ぶ。ふわっと胸が熱くなる。私も彼の胸に顔を埋めて、その体に手を伸ばした。
「ずっとこうしていたいけど……。」
「そうだな。」
その言葉に私は驚いたように彼を見上げた。すると目が開いている。
「起きてたなんて意地悪です。」
「さっき起きた。」
すると彼は私の頭をなでた。そして軽く唇を合わせる。
「桜。就職活動をがんばってるみたいだな。」
「はい。志望は絞れましたけど……。」
ヒジカタコーヒーのことを言っていいのだろうか。茅さんは希望は聞くとは言っていたけれど、彼が人事を決めているわけじゃないしそれを信じていいのかまだわからない。
「俺だってずっとここにいるわけじゃないから。」
「派遣だから?」
「それもあるけど、派遣だとどうしてもすぐに「切る」と言われたら、収入が無くなるからな。するとお前に悪いだろう。」
「私に?」
「お前は働いているのに、俺が働いていないのは立場的にもイヤだ。ヒモみたいなことをしたくない。」
そんなものなのかな。と言うか、高校卒業したら、一緒になるって思っているの?一緒にならなくても、もしかして結婚とか考えてるの?
ぎゃあ。
確かに歳違うし、子供とか考えると早い方がいいのかもしれないけど、でも、でもさ、まだ早くない?十七なんだけどまだ。
「どうしたんだ。百面相して。」
「え?そんなに変わってました?」
「うん。可愛いな。」
「やめてくださいよ。照れますから。」
そんなことを柊さんがいうと思ってなかった。しかも表情が変わらないから、さらに恥ずかしい。
「就職するところは、俺のことを考えなくて良いから。お前の好きなようにすればいい。」
「……でも……それで離れてしまったら……。」
「離れない。確かに不安はないことはない。お前はモテるしな。」
「柊さんだって……。」
「お前も不安か?」
「えぇ。」
大きな手がぽんぽんと頭に触れる。それが安心させる。
「だったら、俺もお前のそばにいるから。」
「そばに?」
「あぁ。来年をめどに就職するから。俺もお前と同じ立場ってわけだ。」
「髪を切るんですか。」
「……めんどくさくなくて良かったんだがな。仕方ない。こういうのは、社会人としてあり得ないと言われたしな。」
何かもったいない気がする。髪が長いのがとても似合っていたのに。
「私のために?」
目だけで私を見る。それが少し怖い気がした。もしかして思い上がっているんじゃないかって思って。
「そうだ。お前のためだ。」
そういうと彼は私の胸に顔を埋めてきた。
「頑張れ。」
そういって彼は私の方を見上げた。また唇を合わせる。
朝学校へ行くと、靴箱で向日葵と一緒になった。
「おはよー。桜。」
「おはよ。今日も元気ねぇ。」
「うん。」
上履きに履き替えると、向日葵は私の隣で下級生の男の子の話をした。どうやらバスケ部の男の子に可愛い子がいるらしい。うん。その話は私も知っている。
バスケがすごく上手で、背が高い男の子。いきなりレギュラー入りしているといってたな。可愛いって言われていて、もてはやされているのにすごく無愛想で、それが返って可愛いらしい。痘痕もえくぼとはよく言っている。
「ところでさ、桜の家って竹彦君の家と近所だっけ?」
いきなり竹彦の名前が出て驚いた。でも隠す必要もないと私はうなずいた。
「そうね。近所っちゃ近所ね。歩いていける距離。どうかした?」
「うーん。この間、美貴たちと駅前でお茶してたんだけどさ。そのとき竹彦君みたのよ。」
「竹彦君を?」
「喪服着ててさ。家、葬祭場って言ってたっけ?」
「うん。」
「それにしてはさ、ちょっとおかしいっていうか。」
「おかしい?」
「背も伸びてたからさ。」
「成長期、やっと来たんだね。」
「それだけじゃないの。何か、髪も伸びてたし金色だったし、すごいピアスの数だし。何かチンピラみたいな。」
その言葉に私は黙ってしまった。本当に彼は「椿」になってしまったのかもしれないと思って。
学校の帰り、私はつい立ち止まってしまった。
それは分かれ道。「宮木家 葬儀場」と書いている看板がたっている。そこにはきっと竹彦がいる。
椿をしながら、他の職に就くことはできるらしい。それが組に入っていないメリットになると言っていた。だから何があっても、組は守ってくれない。だから強さが必要なのだという。
きっと竹彦は強くなったのだとおもう。元々そういう素質はあったのだろうから。
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