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一年目
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結局文化祭の実行委員の女子は、私。体育祭の実行委員は、向日葵になった。男子は、なんと文化祭の実行委員が竹彦だった。そして体育祭は匠になったらしい。
「お前、一学期謹慎食らったんだから、これくらいやれよ。」
というのが理由らしい。そこで内申を上げてもなぁ。
そして別の日。今度は文化祭での出し物について話し合った。
「何でもいいよー。決めたことには従うしさ。」
「適当に何でもいいよ。」
「休憩所とか?」
「マジで?」
マジキレそう。自分たちの文化祭だろうに。横を見ると、竹彦も同じような感じだった。しかしふと彼は私に話しかけた。
「桜さん、夏休みの合いだコーヒーのメーカーのバイトしてたんだっけ。」
その言葉にクラスの人たちがうん?という表情になる。
「やってたけど。」
「コーヒー豆を安く仕入れられないの?」
「喫茶店でもするの?」
「カフェ。」
待って、「窓」でしてるようなコーヒーをここで入れれるわけないじゃん。
「でも多分喫茶店とかカフェってどこでもやるんじゃない?なんか目立ったことしないと、儲からないよ。」
「……。」
そのとき私の頭の中にピンとひらめいた。
「男子は女装ね。」
「は?」
「女子は男装ね。」
「えー?何言ってんの?桜。」
さすがに向日葵まで非難してきた。
「何でもいいんでしょ?私は考えを一つ言っただけ。これ以外の何かアイデアがあったら言って。」
適当に言ったことだけど、みんな黙り込んでしまった。確かに何でもいい。さっさと決めて。と言ったのはみんなだ。それに文句を言うのなんか筋違いだと思う。
「でも男装ってなんか興味あるよ。コスプレみたいで。」
「コスプレ?なんかいいね。」
やばい。適当に言ったのに、すげぇ食いついてくる。
「女装なんかできっかよ。」
「足の毛剃るのか?」
「俺、無理。」
男子はやっぱり反対らしい。そりゃそうだろうな。恥ずかしいに決まってる。
「なーに。どうせ一日だけじゃない。やろうよ。」
「やだ。」
あーあ。男子対女子の対決になっちゃった。困ったなぁ。ちらりと竹彦の方を見ると、冷静に彼はその様子を見ていたようだった。女装には抵抗がない彼だ。どうでもいいのかもしれない。
ふと私と目があった。そして小声で言う。
「……よく言ったね。」
「ナイスなアイデアだと思うけど。」
「……。」
結局大したアイデアはでなかったので、このままの案で行くことにした。化粧は大目に見れるのが文化祭のいいところだよな。
昼休み、弁当を食べ終わった私は購買へ行こうと席を立った。たまーに飲みたくなるんだよねぇ。甘いイチゴミルク。ジュースかって思うけど、それはそれ。これはこれ。
他の学年の人たちもいる購買の前。自販機の前でお金をいれて、お目当てのイチゴミルクのボタンを押す。
「桜さん。」
自販機がガコンと言う音を立てて、イチゴミルクを落とした。それを拾い、私は声をかけられた方をみる。
「竹彦君。」
「ちょっといい?」
あー。やっぱ女装のことかな。笑顔ではあったけどやっぱやなんだろうな。
つれてこられたのは、校舎の一番上にある音楽室だった。防音設備が整っているその教室は、他の教室とも一番離れていて静かだった。
「何で女装なんて言ったの?」
「お互い様でしょ?」
「え?」
「私がコーヒーのメーカーでバイトして他のあんなに公にしたじゃない。」
「……。」
「心配しなくても別にあなたのことは言わないわよ。」
イチゴミルクのパッケージの外にあるストローをはずして、それを突き刺した。
「お互い様ねぇ。」
それを口に含むと、甘いジュースみたいなモノが口内に広がる。おいしいとは思えない。だけどなんかたまーに飲みたくなる。不思議な飲み物だ。
「一番似合うと思うわよ。それでなくても髪を切って人気がでてるのに、さらに人気がでるかもね。」
「必要ない。近寄ってくる奴は嫌いだ。」
「……そうだったわね。だったら何で髪なんて切ったの?眼鏡も辞めたし。」
「男らしくなりたかったから。」
「……。」
男らしいね……。確かに男らしさの固まりのような柊さんとは真逆を行ってる気がするもんな。かといって葵さんほどのしなやかさもないし。まぁ、三十代の人と比べても仕方ないか。
「髪が長くても男らしい人はいるわ。」
「君の彼氏とか?」
「そうね。」
「……負けたくないから。」
そのとき廊下に柊さんの姿を見た。彼は驚いたようにこちらを見ていたが、ここには入ってこなかった。後ろには彼よりも少し背の低い若い男が脚立を持っていたから。
新人?でも私はその一つ一つをまだ聞けないでいた。
「夏の間に彼を見たのは祭りの時だけだった。本心だけど、やっぱり格好いい人だと思う。」
「男性に言われるのは彼も嬉しいと思うわ。」
「でも必要なときに君のそばにいれないんじゃないのか。」
私は彼を見て言う。
「そんなときはこの夏に沢山あったわ。でも私は頼り、頼られの関係になりたくないの。自立したいから。」
「……そんなものなのかな。」
「えぇ。四六時中彼に付いてくれるわけじゃないもの。誰とでもそうじゃないの?」
「……。」
「あなたもそんな関係がうっとうしいから、人が嫌いなんでしょ?」
「まぁね。」
暑い教室は、エアコンが利いていない。それでも窓を開けると涼しい風が吹いてきた。もう夏はとっくに終わっているのだ。
「お前、一学期謹慎食らったんだから、これくらいやれよ。」
というのが理由らしい。そこで内申を上げてもなぁ。
そして別の日。今度は文化祭での出し物について話し合った。
「何でもいいよー。決めたことには従うしさ。」
「適当に何でもいいよ。」
「休憩所とか?」
「マジで?」
マジキレそう。自分たちの文化祭だろうに。横を見ると、竹彦も同じような感じだった。しかしふと彼は私に話しかけた。
「桜さん、夏休みの合いだコーヒーのメーカーのバイトしてたんだっけ。」
その言葉にクラスの人たちがうん?という表情になる。
「やってたけど。」
「コーヒー豆を安く仕入れられないの?」
「喫茶店でもするの?」
「カフェ。」
待って、「窓」でしてるようなコーヒーをここで入れれるわけないじゃん。
「でも多分喫茶店とかカフェってどこでもやるんじゃない?なんか目立ったことしないと、儲からないよ。」
「……。」
そのとき私の頭の中にピンとひらめいた。
「男子は女装ね。」
「は?」
「女子は男装ね。」
「えー?何言ってんの?桜。」
さすがに向日葵まで非難してきた。
「何でもいいんでしょ?私は考えを一つ言っただけ。これ以外の何かアイデアがあったら言って。」
適当に言ったことだけど、みんな黙り込んでしまった。確かに何でもいい。さっさと決めて。と言ったのはみんなだ。それに文句を言うのなんか筋違いだと思う。
「でも男装ってなんか興味あるよ。コスプレみたいで。」
「コスプレ?なんかいいね。」
やばい。適当に言ったのに、すげぇ食いついてくる。
「女装なんかできっかよ。」
「足の毛剃るのか?」
「俺、無理。」
男子はやっぱり反対らしい。そりゃそうだろうな。恥ずかしいに決まってる。
「なーに。どうせ一日だけじゃない。やろうよ。」
「やだ。」
あーあ。男子対女子の対決になっちゃった。困ったなぁ。ちらりと竹彦の方を見ると、冷静に彼はその様子を見ていたようだった。女装には抵抗がない彼だ。どうでもいいのかもしれない。
ふと私と目があった。そして小声で言う。
「……よく言ったね。」
「ナイスなアイデアだと思うけど。」
「……。」
結局大したアイデアはでなかったので、このままの案で行くことにした。化粧は大目に見れるのが文化祭のいいところだよな。
昼休み、弁当を食べ終わった私は購買へ行こうと席を立った。たまーに飲みたくなるんだよねぇ。甘いイチゴミルク。ジュースかって思うけど、それはそれ。これはこれ。
他の学年の人たちもいる購買の前。自販機の前でお金をいれて、お目当てのイチゴミルクのボタンを押す。
「桜さん。」
自販機がガコンと言う音を立てて、イチゴミルクを落とした。それを拾い、私は声をかけられた方をみる。
「竹彦君。」
「ちょっといい?」
あー。やっぱ女装のことかな。笑顔ではあったけどやっぱやなんだろうな。
つれてこられたのは、校舎の一番上にある音楽室だった。防音設備が整っているその教室は、他の教室とも一番離れていて静かだった。
「何で女装なんて言ったの?」
「お互い様でしょ?」
「え?」
「私がコーヒーのメーカーでバイトして他のあんなに公にしたじゃない。」
「……。」
「心配しなくても別にあなたのことは言わないわよ。」
イチゴミルクのパッケージの外にあるストローをはずして、それを突き刺した。
「お互い様ねぇ。」
それを口に含むと、甘いジュースみたいなモノが口内に広がる。おいしいとは思えない。だけどなんかたまーに飲みたくなる。不思議な飲み物だ。
「一番似合うと思うわよ。それでなくても髪を切って人気がでてるのに、さらに人気がでるかもね。」
「必要ない。近寄ってくる奴は嫌いだ。」
「……そうだったわね。だったら何で髪なんて切ったの?眼鏡も辞めたし。」
「男らしくなりたかったから。」
「……。」
男らしいね……。確かに男らしさの固まりのような柊さんとは真逆を行ってる気がするもんな。かといって葵さんほどのしなやかさもないし。まぁ、三十代の人と比べても仕方ないか。
「髪が長くても男らしい人はいるわ。」
「君の彼氏とか?」
「そうね。」
「……負けたくないから。」
そのとき廊下に柊さんの姿を見た。彼は驚いたようにこちらを見ていたが、ここには入ってこなかった。後ろには彼よりも少し背の低い若い男が脚立を持っていたから。
新人?でも私はその一つ一つをまだ聞けないでいた。
「夏の間に彼を見たのは祭りの時だけだった。本心だけど、やっぱり格好いい人だと思う。」
「男性に言われるのは彼も嬉しいと思うわ。」
「でも必要なときに君のそばにいれないんじゃないのか。」
私は彼を見て言う。
「そんなときはこの夏に沢山あったわ。でも私は頼り、頼られの関係になりたくないの。自立したいから。」
「……そんなものなのかな。」
「えぇ。四六時中彼に付いてくれるわけじゃないもの。誰とでもそうじゃないの?」
「……。」
「あなたもそんな関係がうっとうしいから、人が嫌いなんでしょ?」
「まぁね。」
暑い教室は、エアコンが利いていない。それでも窓を開けると涼しい風が吹いてきた。もう夏はとっくに終わっているのだ。
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