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ライブ
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隠すことは無い。そう一馬は思いながら、今日の練習での出来事を三人に告げる。練習のあれこれを言うことはないが、その有名ロックミュージシャンである加藤啓介の妻が一馬が大学の時にいたジャズ研の先輩だったと言うことを告げた。
「音楽がそんなに好きなのか?」
功太郎は意外そうにそう聞くと、一馬は首を横に振る。
「いいや。どちらかというと音楽をしている男が好きなんだろう。こう……当時から色気が歩いているような女だったし、大学に行きながらジャズ研にも入っていたが、タレントのようにテレビの深夜枠だがバラエティー番組とかに出てたこともあるらしい。」
「有名人なんだな。」
先輩から言われたので一度くらいはその番組を見たことがあるが、並んでいるグラビアも出るよりは少し落ちる感じがするが、それでもそれが大学生だとは誰も思わないだろう。
「あぁ、加藤啓介の三番目の妻だろ?」
圭太はそう言って頷いた。
「三番目?」
「一番目の妻はバンドを組んでたときにまだ食えないときに支えてくれた女。二番目は一番目の妻から寝取ったみたいだ。でも二番目の奥さんも長続きしなかったって言ってたし。それからずっと一人だったのに、元タレントっていう子供か孫かくらい離れた奥さんをもらったって聞いてた。」
圭太はそう言うと、響子は目を丸くして言う。
「詳しいのね。」
「別にゴシップ好きじゃねぇよ。有名な話じゃん。」
音楽をしていると、性に奔放なのだろうというイメージがある。外国の方のロックミュージシャンなんかだと、離婚と結婚を繰り返している人も多い。そして大体が横暴なのだ。
「でもやりにくくないかしら。」
響子はそう言うと、一馬は首を横に振る。
「ずっと付いているみたいだが、逆を言えば加藤さんが奥さんにずっと付いているとも言える。こっちに手を出すことなんか無いだろう。」
「狙われたのか?」
功太郎がそう聞くと、やぶ蛇だったと一馬は咳払いをする。そしてちらっと響子の方を見たが、響子は涼しい顔をしてもう半分ほど減ってしまった焼酎を飲んでいた。そういう女は苦手なのをよく知っているから。
「大学の時にな……。まぁジャズ研の中でもちょっと奔放な人だったからな。誘ったら付いてくる。誘われたら断らない人だった中で、俺は全く興味が無かったからそのプライドもあったんだと思う。」
「一馬さんってその頃は女がいたのか?」
すると一馬はちらっと響子を見た。それに気がついて功太郎は自分が何を聞いたのかと口を押さえる。だが響子は気にすることも無く、一馬を見上げた。
「それは私も気になるわね。どうだったの?」
すると一馬はため息をついていった。
「……高校生の頃から付き合っていた女がいた。けど……まぁ、俺はこんな仕事を始めたし、あっちは普通の一般企業に就職した。次第に気持ちも離れて、半年くらいで別れたかな。それからは付き合ったり、離れたり。まぁ普通の男と変わらないと思う。」
「多分それだけじゃ無いだろ?」
その言葉に一馬は圭太の方を見る。
「どうしてだ。」
「仕事をしてたらそれしか見えないんだろうな。だからそっちがおろそかになったんだ一馬さんは。響子も一緒だろ?」
すると響子はため息をついて言う。
「私は少し事情も違うわ。そりゃね。付き合った男もいないことはないわね。でも……まぁ、手も握らせてくれないって、勝手に離れていくような男ばかり。」
恐怖があった。だから拒絶していたのだが、それを相手はわかってくれることはほとんど無い。だから長く続くことは無かった。
それを壊してくれたのは圭太だろう。それに関しては感謝をしている。だがもうその感情以上のモノはもう無い。
「功太郎はどうなんだよ。」
もうシメにいこうとしていたのか。メニューのご飯のページを見ていた功太郎は、急に言われて自分を指さす。
「俺?」
「前の彼女も年下か?」
すると功太郎は首を横に振る。
「いや……。年上ばっか。何か幼く見えるからかな。俺が何も知らないと思って、手取り足取り教えてくれるような感じばっか。うんざりする。俺、体を売ってたこともあるんだし、そこら辺の知識はあるつもりだけど。」
その言葉に圭太は響子の方を見た。功太郎は響子とキスをしたことがあるのだという。だが響子は全く功太郎に心を動かされなかったのだろう。しかし一馬には惹かれたのだ。その差は何なのだろう。功太郎だって響子が好きだという言葉は嘘では無かったと思うのに。
圭太と功太郎は居酒屋を出ると、そのままタクシーで帰っていった。そして響子と一馬はそのままアパートの方へ向かう。まだ飲み足りない感じはあったが、明日も仕事なのだ。遅くまで引き留められないだろう。それに腹は満たされた。そう思いながら響子を見る。
響子は結構飲んでいたように思えたが、普段と顔色の変化は無い。
「ねぇ。」
「どうした。」
「高校の時に付き合っていた彼女って……今はどうされているの?」
「あまり詳しくは言えないが、結婚はしたと聞いてる。」
「そうなの。お祝いは?」
「する必要ないだろう。もうお互いに思いやっている人がいるんだから。」
その言葉に響子は少し笑う。一馬ならそういう答えを言うだろうと思っていたから。
「初めてだったの?その人が。」
「あぁ。何もかも初めてだった気がする。けどあっちは初めてじゃ無かったな。」
高校生の頃から付き合っていたが、高校生の時は清い関係で手すら繋いでなかった。大学生の時にやっと、ホテルに誘うことが出来たのだ。だが彼女の方はホテルに来るのも手慣れた感じがしていたし、コンドームも付けてくれたと思う。
そしてあの女もとても性欲が強かった気がする。だから一馬はそれが普通だと思っていたのだ。だが他の女では大体体が持たない。それでも一馬は満足出来ないで、意識の無い相手にも容赦なく打ち込むこともあった。
「響子。」
「どうしたの?」
「……さっきの話。」
「さっき?」
「お祖父さんに会わせてくれるんだろう。」
その言葉に響子は足を止めた。そして一馬を見上げる。
「行きたい?」
「あぁ。お前が信用する相手の一人に、挨拶をしたい。」
祖父だけでは無い。いずれ響子の家族にも会わないといけないだろう。大抵の親ならミュージシャンだと言えば安定していない仕事だと思うだろうし、それで響子を養っていけるのかと言うだろう。だが響子は一馬に養ってもらおうなどおそらく思っていない。それに一馬だって響子に養ってもらおうなど思っていない。頼り、頼られ、支え合って夫婦になるのだ。自分を育ててくれた両親のように。
「休みの時ね。一緒に出ることは出来ないけれど……待ち合わせていくしか無いわね。Aの墓園は、今は桜が咲いてて花見客で混雑しているかもしれない。それだと誤魔化すことも出来るかもしれないし。」
「それから……少ししたらうちの両親が一度帰国する。ほら……兄夫婦の子供が中学生になったからと顔を見に来るそうだ。その時、お前にも会わせたい。」
「私が行っても良いの?」
「かまわない。寛容な人だ。きっとお前のことも理解してくれると思う。葉子さんのように。」
「葉子さんに似てる?」
「あぁ。」
足を進めながら、二人でアパートを目指す。二人の帰る場所はここだというように。
「音楽がそんなに好きなのか?」
功太郎は意外そうにそう聞くと、一馬は首を横に振る。
「いいや。どちらかというと音楽をしている男が好きなんだろう。こう……当時から色気が歩いているような女だったし、大学に行きながらジャズ研にも入っていたが、タレントのようにテレビの深夜枠だがバラエティー番組とかに出てたこともあるらしい。」
「有名人なんだな。」
先輩から言われたので一度くらいはその番組を見たことがあるが、並んでいるグラビアも出るよりは少し落ちる感じがするが、それでもそれが大学生だとは誰も思わないだろう。
「あぁ、加藤啓介の三番目の妻だろ?」
圭太はそう言って頷いた。
「三番目?」
「一番目の妻はバンドを組んでたときにまだ食えないときに支えてくれた女。二番目は一番目の妻から寝取ったみたいだ。でも二番目の奥さんも長続きしなかったって言ってたし。それからずっと一人だったのに、元タレントっていう子供か孫かくらい離れた奥さんをもらったって聞いてた。」
圭太はそう言うと、響子は目を丸くして言う。
「詳しいのね。」
「別にゴシップ好きじゃねぇよ。有名な話じゃん。」
音楽をしていると、性に奔放なのだろうというイメージがある。外国の方のロックミュージシャンなんかだと、離婚と結婚を繰り返している人も多い。そして大体が横暴なのだ。
「でもやりにくくないかしら。」
響子はそう言うと、一馬は首を横に振る。
「ずっと付いているみたいだが、逆を言えば加藤さんが奥さんにずっと付いているとも言える。こっちに手を出すことなんか無いだろう。」
「狙われたのか?」
功太郎がそう聞くと、やぶ蛇だったと一馬は咳払いをする。そしてちらっと響子の方を見たが、響子は涼しい顔をしてもう半分ほど減ってしまった焼酎を飲んでいた。そういう女は苦手なのをよく知っているから。
「大学の時にな……。まぁジャズ研の中でもちょっと奔放な人だったからな。誘ったら付いてくる。誘われたら断らない人だった中で、俺は全く興味が無かったからそのプライドもあったんだと思う。」
「一馬さんってその頃は女がいたのか?」
すると一馬はちらっと響子を見た。それに気がついて功太郎は自分が何を聞いたのかと口を押さえる。だが響子は気にすることも無く、一馬を見上げた。
「それは私も気になるわね。どうだったの?」
すると一馬はため息をついていった。
「……高校生の頃から付き合っていた女がいた。けど……まぁ、俺はこんな仕事を始めたし、あっちは普通の一般企業に就職した。次第に気持ちも離れて、半年くらいで別れたかな。それからは付き合ったり、離れたり。まぁ普通の男と変わらないと思う。」
「多分それだけじゃ無いだろ?」
その言葉に一馬は圭太の方を見る。
「どうしてだ。」
「仕事をしてたらそれしか見えないんだろうな。だからそっちがおろそかになったんだ一馬さんは。響子も一緒だろ?」
すると響子はため息をついて言う。
「私は少し事情も違うわ。そりゃね。付き合った男もいないことはないわね。でも……まぁ、手も握らせてくれないって、勝手に離れていくような男ばかり。」
恐怖があった。だから拒絶していたのだが、それを相手はわかってくれることはほとんど無い。だから長く続くことは無かった。
それを壊してくれたのは圭太だろう。それに関しては感謝をしている。だがもうその感情以上のモノはもう無い。
「功太郎はどうなんだよ。」
もうシメにいこうとしていたのか。メニューのご飯のページを見ていた功太郎は、急に言われて自分を指さす。
「俺?」
「前の彼女も年下か?」
すると功太郎は首を横に振る。
「いや……。年上ばっか。何か幼く見えるからかな。俺が何も知らないと思って、手取り足取り教えてくれるような感じばっか。うんざりする。俺、体を売ってたこともあるんだし、そこら辺の知識はあるつもりだけど。」
その言葉に圭太は響子の方を見た。功太郎は響子とキスをしたことがあるのだという。だが響子は全く功太郎に心を動かされなかったのだろう。しかし一馬には惹かれたのだ。その差は何なのだろう。功太郎だって響子が好きだという言葉は嘘では無かったと思うのに。
圭太と功太郎は居酒屋を出ると、そのままタクシーで帰っていった。そして響子と一馬はそのままアパートの方へ向かう。まだ飲み足りない感じはあったが、明日も仕事なのだ。遅くまで引き留められないだろう。それに腹は満たされた。そう思いながら響子を見る。
響子は結構飲んでいたように思えたが、普段と顔色の変化は無い。
「ねぇ。」
「どうした。」
「高校の時に付き合っていた彼女って……今はどうされているの?」
「あまり詳しくは言えないが、結婚はしたと聞いてる。」
「そうなの。お祝いは?」
「する必要ないだろう。もうお互いに思いやっている人がいるんだから。」
その言葉に響子は少し笑う。一馬ならそういう答えを言うだろうと思っていたから。
「初めてだったの?その人が。」
「あぁ。何もかも初めてだった気がする。けどあっちは初めてじゃ無かったな。」
高校生の頃から付き合っていたが、高校生の時は清い関係で手すら繋いでなかった。大学生の時にやっと、ホテルに誘うことが出来たのだ。だが彼女の方はホテルに来るのも手慣れた感じがしていたし、コンドームも付けてくれたと思う。
そしてあの女もとても性欲が強かった気がする。だから一馬はそれが普通だと思っていたのだ。だが他の女では大体体が持たない。それでも一馬は満足出来ないで、意識の無い相手にも容赦なく打ち込むこともあった。
「響子。」
「どうしたの?」
「……さっきの話。」
「さっき?」
「お祖父さんに会わせてくれるんだろう。」
その言葉に響子は足を止めた。そして一馬を見上げる。
「行きたい?」
「あぁ。お前が信用する相手の一人に、挨拶をしたい。」
祖父だけでは無い。いずれ響子の家族にも会わないといけないだろう。大抵の親ならミュージシャンだと言えば安定していない仕事だと思うだろうし、それで響子を養っていけるのかと言うだろう。だが響子は一馬に養ってもらおうなどおそらく思っていない。それに一馬だって響子に養ってもらおうなど思っていない。頼り、頼られ、支え合って夫婦になるのだ。自分を育ててくれた両親のように。
「休みの時ね。一緒に出ることは出来ないけれど……待ち合わせていくしか無いわね。Aの墓園は、今は桜が咲いてて花見客で混雑しているかもしれない。それだと誤魔化すことも出来るかもしれないし。」
「それから……少ししたらうちの両親が一度帰国する。ほら……兄夫婦の子供が中学生になったからと顔を見に来るそうだ。その時、お前にも会わせたい。」
「私が行っても良いの?」
「かまわない。寛容な人だ。きっとお前のことも理解してくれると思う。葉子さんのように。」
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