彷徨いたどり着いた先

神崎

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共犯者

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 どうして夏子と繋がりを持ってしまったのか。そして何度もセックスをしたということは、それだけ夏子の方が良かったのか。響子の頭の中はぐるぐると考えが巡り、倒れそうになる体を必死で踏みしめる。それがわかり一馬は思わずそれを支えようと手で響子の体を支えようとした。だがその手は空を切る。ここで体に触れてしまえば、圭太の心をまたえぐってしまうと思ったからだ。
「……何度も?」
 すると夏子は首を横に振り、椅子から立ち上がると響子にいう。
「そこまでしてないよ。あんなセックスをしてたら仕事に差し支えあるし。」
「あんなセックス?」
「聞く?それ。圭太ってさ。すごいサディストだよ。姉さんもされてるの?」
「サディスト?」
 その言葉に響子は首をかしげた。圭太は打ったり殴ったりなどしない。常に響子が怖くないように、あくまで優しく接するのだ。それは響子の過去を知っての行為だと思うから。
「縛られたりさ、アナ○にバイブ突っ込まれたり、すごかったのは外でローターを入れたら会ってくれるとかいって、外で歩いてるときに急にスイッチ入れたりさ。AVの撮影かっての。」
「……。」
「信也さんでもそんなことをしないわよ。」
 信也という名前に誰だったかと考えを巡らせた。だがすぐに圭太の兄だということに気がついて、さらに驚いたように夏子を見る。
「お兄さんとも?」
「そう。って言うか……もうこうなったら言うけど、信也さんに頼まれてたのよね。」
 その言葉に響子は驚いて夏子を見る。
「何が目的なのかわからないけど、圭太と寝てくれって。でもそんなのもう関係ないな。」
「関係ない?」
「本気で好きになっちゃった。」
 その言葉に一馬は呆れたように夏子を見る。
「それは体だけの繋がりだろう。好きというのはまた違う。」
「あんただって偉そうなことを言っても、姉さんとはそういうことなんでしょう?体が良かったから……。」
「違う。」
「寝てるんでしょう?それで離れられないのは同じじゃない。」
 セックスをしたのは同じだ。その言葉に一馬も言葉を詰まらせる。そして離れられないのは、体の相性も確かに一因かもしれない。
「響子。俺が何をしているのかわかっていて、俺に見せつけるように花岡さんと寝たのか?」
 それならまだ救いがある。響子だって嫉妬することはあるだろう。
「……想像もしてなかったわ。夏子と繋がりがあるなんて思っても見なかった。」
 終わりだ。圭太は深くため息をつく。
「でも夏子だとは思わなかっただけ。女がいるのだろうとは思っていた。多分、それがきっかけだったと思う。」
「え……。」
 一馬の部屋でキスをした。圭太に女がいるかもしれないと思って、その苦しさから逃れるために響子はその救いの手を一馬に求めたのだ。一馬はそれよりも前から響子に惹かれていた。その気持ちを利用したのかもしれない。
 だがそれより以降のことは自分の意思だ。ホテルへ行き、何度も何度も求められたのは、自分が淫乱だからと言われているように感じる。
「夏子を抱いてもお前を想わないときはなかった。いいわけにしか今は聞こえないけど。」
 許してくれるなら戻りたい。一馬と寝ていてもかまわない。前のように優しく抱ける自信もある。響子が求めるなら何度だって抱きたい。そこまで圭太も響子を求めているのだから。
「甘いよね。圭太。一度だけなら気の迷いって思うかもしれないけど、何度も寝てるんじゃない?あたしたちだってそうじゃない。」
 追い詰めるような言葉に、圭太の手が震える。何がそんなに一馬が良かったのだろうか。自分では悪かった原因は何なのだろう。こんなに尽くして、響子に合わせて、響子も自分に合わせてくれているのだと思っていたのに。
「……一度で何度したか覚えているか?」
 一馬は響子にそう聞くと、響子の頬が赤くなる。一馬とのセックスは激しい。それに何度も何度も求められる。抜かないで求められたこともあるのだ。
「そんなことを言う必要があるの?」
「ある。俺はお前ほど相性がいい奴はいないと思うから。」
「へぇ……そんなにいいの?」
 夏子は感心したように一馬を見上げた。AV男優にいそうなタイプだと思う。体も大きいし、体力もありそうだ。
「道具とかは?」
「使わない。俺はそんなモノの使い方などわからないし。」
 あまり性的な知識はないが、体力があるのだろう。それなのに響子は何度も寝たのだという。
「それでも……お前は、花岡さんを選ぶのか?」
 やっと絞り出した声だった。響子はその問いにわずかに頷いた。これで確定してしまったのだ。響子は圭太の手から離れてしまったと。
「私……店を辞めた方がいいかしら。」
「店?」
「雇ってもらっている立場で、その従業員とオーナーがデキているってのも少し考えものだと真二郎からも言われたことはある。別れたときのことを考えろって。付き合っていれば、別れなんか想像しない。だけどそれが来た。店の中でギクシャクするくらいなら……。」
「辞めさせない。」
 ここでも圭太は商売人だった。それは圭太の意地だったのかもしれない。
「功太郎はまだお前ほど使えるとは思えないし、何よりお前がいなければうちの店は潰れる。」
「そんなに買いかぶられても……。」
「買いかぶりじゃない。真二郎のケーキとお前のコーヒーがうちの店の売りなんだから。最初のうちは真二郎が作ったケーキにお前が合わせている感じがした。だけど、今はコーヒーだけを求めてくる客もいるだろう?花岡さんのようにな。」
「それでも上手くやっていけるの?」
 夏子はそう聞くと、圭太は少し頷いた。
「あぁ。最初はギクシャクするかもしれないけど……もう俺だって三十二なんだし。響子だって二十九だろ?その辺を割り切ればやっていける。」
 自分に言い聞かせているようだ。簡単に失恋の傷が癒やせるとは思えないが、圭太にも意地がある。だがふと響子は夏子の方を見て圭太に言う。
「夏子と付き合う?」
 すると夏子の目がキラキラと輝いた。
「本当?あたしと付き合う?あたし本気で好きだよ。」
「いや。お前とは付き合わない。」
「何で?」
「何でって……・好きじゃないから。」
「好きじゃなくてもセックスはデキるくせに。」
「それとこれとは別。」
 身に覚えが無いわけではない一馬も、その言葉に頭をかいた。
「確かにそれとこれとは別だな。だが体の相性だけではどうにもならないだろう。あんたもAVなんかに出ているならわかるだろう?男優によっては相性のいい人もいるだろうし。」
 その言葉に夏子は首を横に振った。
「撮影でしてるセックスって、大げさなところもあるよ。見せるセックスなんだから、感じるのとはまた別だし。」
「そうだったか。それは知らなかったな。」
 AVを見たことが無いわけではない。だがこんな反応をするような女はいないと思っていた。響子に出会うまでは。
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