彷徨いたどり着いた先

神崎

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性癖

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 瑞希と弥生はそのままどこかへ消えて、旭は泊まっているホテルへ帰った。圭太もタクシーに乗ってそのまま最寄り駅へ向かう。そしてタクシーを降りると、携帯電話を取り出した。響子に終わったら連絡をすると言っていたのだ。
 響子は眠そうな声で答えてくれた。クリスマスから年末にかけても忙しいのだ。疲れが溜まっているのかもしれないと電話を切る。
 正月には実家に連れて行きたいと思っていた。だが自分のしていることを思えば諸手をあげて、実家に連れて行くのははばかれる。
 夏子は経験豊富で、あらゆることをさせてくれる。そしてそれを嫌がっていない。そういう仕事をしているのだから当たり前と言えばそうかもしれないが、それを響子にしそうで怖い。響子にそんなことをしたら卒倒する。
 コンビニの雑誌の棚に、エロ本ぎりぎりの雑誌が置いてある。その表紙に愛蜜としての夏子が笑顔で写っていた。紐のような水着で、ぎりぎり乳首や性器を隠しているだけのモノ。それを見て、男たちは想像するのだろう。この奥がどんな色なのか。触れるとどれだけ柔らかいのか。それを望んでいないのに圭太は知っている。
「あれー?」
 声をかけられてそちらを見ると、そこには見覚えのある男が女と立っている。それは光太郎の家の隣に住む牧田純という男だった。女は商売女のような派手な女だ。
「オーナーさん。こんな遅くにコンビニ?」
「飲み会だったんだ。」
「シーズンですもんね。俺もそうだったし。」
 その女は純と圭太を見て少し笑う。
「純君。知り合い?」
「隣の部屋のやつの職場の上司。」
 間違ってはいない。圭太は少し頭を下げる。
「めっちゃ格好いいじゃん。オーナーさん。これから三人でしない?」
「いや……そういうのはちょっと。」
「かたーい。遊んでそうなのに。」
 見た目通りだ。あまり深く言葉を選んで発言しない。圭太は苦笑いをして、ドリンクのコーナーへ向かう。
「オーナーさん。」
 それに純がついてきて、耳元で言う。
「この女ともう一人女が来るんすよ。でも俺、女が二人の3Pってちょっと体力に不安が出てきてさ。」
「ふーん。こういうの買ったら?」
 そういって圭太は小さなアンプルを手にする。精力が付くものだ。
「オーナーさん。しない?別に金も発生しないし、セックスが好きな女ってだけだから。」
「そういうのはちょっとな。」
 やんわりと断ろうとした。だが純は少し笑って言う。
「商売女ですよ。性病の心配もないし、俺黙っとくから。」
「誰に?」
「彼女には。」
 響子の存在は知っているのだろう。それでも純は進めてくるのだ。遊び人としては真二郎の方が確かに格上かもしれない。そんなことを軽く言う男なのだから。
「彼女以外とはしたくないし。」
「そんなこと無いでしょ?」
 そういって純はちらっと雑誌のコーナーを見る。そこには愛蜜としての夏子が、笑顔で表紙を飾っているモノがあった。
「……仲がいいんですか?」
「彼女の妹ってだけ。」
「それだけでホテルなんか行かないですよね。」
 脅す気か。圭太はそう思いながら純を見る。
「セフレが一人増えても二人増えても一緒でしょ?そりゃ、感情は彼女にあるのかもしれないけど、体の相性ってなると違うし。」
「そんなものかな。いや……俺はやっぱ……。」
 断りたい。そう思っていたのに、純はそのアンプルを手にすると圭太に手渡す。
「彼女ではやれないことをやってもいいんじゃないですか?どんなことでも答えてくれるらしいし。それに一回だけだし。そういう女だから。」
 コンビニの外を見る。そこには先ほどの女と、そのそばにいる女が話をしている。ショートカットの女はどこか真子を想像させた。
「気晴らしですよ。それに風俗より良いじゃないですか。」
「俺、一度立たなかったんだよ。彼女以外としようとして。」
「でもあの女とは出来たんでしょ?」
「それは……。」
 愛情なんかではなく、ただの欲望だけだった。
「俺、黙っときますよ。」

 純は女と一回目のセックスをしたあと、隣のリビングをのぞいた。頼まれているとは言え、他の女をあてがうのは心苦しい。それに愛蜜が世間で言われているようにサディストであれば、圭太の性癖にぴったりだと思うから。
 そう思ってそのドアを開ける。するとそこには予想もしない姿があった。
 リビングのソファに座らされている女。足を開かされ、性器と尻にはディルドが刺さっている。足首はソファーの足とつなげるように紐で縛られて、足を閉じさせないようにしている。
 そして乳首には洗濯ばさみのようなモノが挟まっていた。それでも女はびくびくと絶頂に達しているようによだれを垂らし、その性器の隙間からも汁が漏れている。
「……え?」
 思わず声に出した。すると圭太が気が付いたようにベッドルームのドアを見る。圭太は来たときと同じ格好だった。全く脱いでもいない。
「純さんは終わったの?」
「あぁ……。一回目は……。」
 すると圭太はため息を付いて純を見る。
「誰に頼まれたのか知らないけど、俺そういうの必要ないし。女もこれで満足してるみたいだ。これで放置して帰るから。」
「……。」
「とんだ変態だな。さっきからイきっぱなしで。入れてもないのに、自分で喘いでるよ。」
 そういって圭太は女に近づくと、性器に入っているそのディルドのスイッチをいじる。するとそのディルドはさらにうねうねと凶悪に動き出す。
「ああああ!イく!イくぅ!」
 潮とともにディルドが飛び出る。転がったディルドを手にして、純に手渡す。
「この女はサディストで……。」
「サディストはマゾヒストにもなれるんだよ。この女はそっちの方が性に合ってるようだ。」
 すると順応白から女が裸のままリビングにやってくる。するとそのソファの女を見て、あわてて近寄ってきた。
「春香。」
 そういって女を解放する。そして圭太をじっとにらみあげた。
「この変態。」
「変態はそっち。俺はやって欲しいってことをやっただけ。入れてもないのに、勝手に喘いで。」
「純君。こんな人……。」
 すると純も気持ちがそれたようにベッドルームへ向かうと、着ていたモノを手にして戻ってきた。
「俺も帰るわ。」
「純君。」
「悪い。もう連絡しないから。」
 そういって出て行った圭太を追うように、純は部屋を飛び出していく。
「ちょっと。オーナーさん。」
「……。」
 引き留められた圭太はうつむいていた。その様子に純はぽつりと言った。
「悪かったよ。無理矢理させて。」
「……俺……。」
 純の方を見ずに、圭太はぽつりと言った。
「……俺……もう元に戻れないのか。」
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