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性癖
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ドラムの男が席を立ったので、圭太も席を立ってドラムに近づく。そして何の曲を演奏するのかと、即興のバンドメンバーと話をしていた。スタンダードジャズが好きな圭太は、割と歳を取ったプレイヤーとも話が合う。
「「leaf」って昔の曲ですよね。手がもう慣れている感じがする。」
「だったらアドリブを入れて良いよ。頼もしいねぇ。」
演奏が始まると、ぱっと客がステージに目を向ける。旭と弥生はそれを見て少し微笑んだ。
「ドラムって大学からだっけ。」
「そうみたい。でも上手だよね。」
その時入り口から見慣れた顔が見えた。それに弥生が手を振って呼び寄せる。
「瑞希。仕事終わったの?」
瑞希は少し笑って弥生たちのテーブルに近づく。
「うん。今日は早上がりにさせてもらった。春樹君の都合が付いたしね。」
バーテンダーの経験がアルバイトがたまに来る。その男が来れば、瑞希は出ずっぱりにならなくて済むのだ。
「圭太が叩いてるのか。あいつ。もうそろそろ帰った方がいいんだけどな。」
「店って開店が遅いんだろ?」
「それでも仕込みとかで、早く店には行ってるみたいだけどな。」
それでも楽しそうにドラムを叩いている圭太を見ると、もう帰った方が良いとは言いづらい。今まで楽しいことを我慢していたのだ。少しくらいはいい想いをさせたいと思う。
「そういえば駅で、功太郎君に会ったよ。」
「あぁ。ご飯に呼んだのよ。珍しく香がお好み焼きを作りたいって言っててね。」
「そうなんだ。」
ずいぶん雰囲気が変わった気がする。前は高校生のように見えたが、今はずいぶん大人びた感じがした。話をしていても、それは垣間見える。
「二人きり?」
「なわけないじゃない。お向かいの俊君も一緒。」
「俊君って高校生だっけ?俊君と二人の方が怪しくない?」
「ない。ない。俊君本しか読んで無いじゃない。あと陸上のこととかさ。」
「そんなものかな。」
瑞希が童貞を卒業したのは高校生の頃だった。相手は同じアパートに住んでいた中学生の女の子。仲が良かった女の子は、無邪気に瑞希にセックスのことを聞いてきて、自分の見栄と大人ぶった態度を誇示したくてセックスをしたのだ。特に好きとか、そういう感情はなかった。
だがそれから小さい女性が好きで、弥生も歳の割に幼く見える。弥生にはコンプレックスのようだが、瑞希にとっては初めて会ったときから付き合いたいと思っていたのだ。つまり、一目惚れだったのだ。
お好み焼きを香が焼いてくれて、功太郎はそれを食べ終わり満足そうだった。
「美味かったよ。ちくわ入ってるの味が良いよな。」
「だよねぇ。イカとか、たことか入ってるのもあるけど、やっぱりちくわだよね。」
皿を洗っていると、功太郎も隣に来てその皿を拭く。ご馳走になりっぱなしは嫌なのだ。
「お父さんは帰ったこないのか?」
「忘年会って言うか……ほら、営業をしているでしょ?営業先での忘年会なんかにも呼ばれるみたいで、最近ずっと遅いのよね。」
それだけではない。飲み会が終われば、莉子のところへ行くこともあって帰ってくることもないときもある。弥生が夜勤の時は、香はこの部屋で一人きりなのだ。
弥生はそれを気にして、功太郎を呼んでいるのだと思う。だが香自身はそんなことは気にしていない。最近は深夜ラジオを聴くのが好きらしい。
「俊も食べたのか?」
「俊君ね。食べたけど、食べたらすぐ帰って行っちゃった。」
「何で?」
「冬休みの宿題をしたいんですって。新学期になったらすぐテストだから。」
「あぁ。そうだよな。」
あまり高校へは行っていなかったが、確かそんなことがあったような気がする。あまり勉強熱心ではなかったので、功太郎の成績はいつも知ったから数えた方が早かった。
「俊君さ。何か気にしてるみたい。」
「何を?」
「キスしたの。」
そうだった。俊は香とキスをしたのだ。この可愛い唇にどうやってキスをしたのかわからない。だがそれは嫌でも男と女だというのを実感させられるようで、さすがの俊も気恥ずかしかったのだろう。
「お前は気にしてねぇみたいだな。」
「するよ。俊君とのはあまり……気にしてないけど。」
「……。」
「功太郎のはその……何て言って良いのかな。違うの。」
その言葉に功太郎の頬も少し赤くなる。
「そっか。」
「ねぇ。功太郎。」
洗い物が終わって、香は功太郎の方を見上げる。
「どうした。」
「……んー。やっぱいいや。」
この間のをもう一度したい。香はずっとそう思っていたが、功太郎はどう思っているのだろう。功太郎の歳を考えれば、こんなことはきっとあったに違いない。自分ではない別の人とこんなことをしたのだと思う。そう思うと涙が出そうになるのに、明確に恋人だと言えるわけではない。それなのにもう一度、キスがしたいというのは自分がとてつもなく破廉恥になった気がする。
「お前は宿題は終わったのか?」
そんな香の気持ちを知ってか知らずか、功太郎は意地悪く香にそう聞いた。
「あと読書感想文と日記。」
「勉強は終わってんのか。」
「うん。昼にぱぱって。」
「すごいじゃん。」
そういって功太郎は香の頭を撫でる。違う。そんなことをされたいわけじゃない。香は少し唇を尖らせた。
「子供扱いした。」
「……何?大人扱いされたいのか?」
頭に置いた手を頬に持ってくる。功太郎の少しごつごつした手が、香の顔を赤くさせる。
「男ってバカだからさ。一度許したら二度、三度あるんじゃねぇかって思うんだけど。」
「思って良いよ。」
香はそういうとさらに顔を赤くした。すると功太郎は少しかがんで、顔を近づける。目をつぶってそれを待った。だが玄関の方で鍵が開く音がすると、あわてて功太郎は香から離れる。
玄関先で音がした。功太郎は驚いて玄関へ向かうと、そこには玄関先で倒れている父親がいる。
「倒れてんの?マジで?」
「あー……。また飲み過ぎちゃって……。功太郎。悪いけど部屋に連れて行ってくれない?」
「大丈夫か?」
倒れている父親の体を起こす。それを見て香は、あぁ、やはり男の人なんだと思った。自分一人では体を起こすことも出来なくて途方に暮れるのに、軽々と功太郎はその体を起こして部屋に連れて行くことが出来るのだ。
そしてまたもやっとした気持ちになる。さっきまたキスを去れそうになったのに、それを邪魔させられたのだ。
「「leaf」って昔の曲ですよね。手がもう慣れている感じがする。」
「だったらアドリブを入れて良いよ。頼もしいねぇ。」
演奏が始まると、ぱっと客がステージに目を向ける。旭と弥生はそれを見て少し微笑んだ。
「ドラムって大学からだっけ。」
「そうみたい。でも上手だよね。」
その時入り口から見慣れた顔が見えた。それに弥生が手を振って呼び寄せる。
「瑞希。仕事終わったの?」
瑞希は少し笑って弥生たちのテーブルに近づく。
「うん。今日は早上がりにさせてもらった。春樹君の都合が付いたしね。」
バーテンダーの経験がアルバイトがたまに来る。その男が来れば、瑞希は出ずっぱりにならなくて済むのだ。
「圭太が叩いてるのか。あいつ。もうそろそろ帰った方がいいんだけどな。」
「店って開店が遅いんだろ?」
「それでも仕込みとかで、早く店には行ってるみたいだけどな。」
それでも楽しそうにドラムを叩いている圭太を見ると、もう帰った方が良いとは言いづらい。今まで楽しいことを我慢していたのだ。少しくらいはいい想いをさせたいと思う。
「そういえば駅で、功太郎君に会ったよ。」
「あぁ。ご飯に呼んだのよ。珍しく香がお好み焼きを作りたいって言っててね。」
「そうなんだ。」
ずいぶん雰囲気が変わった気がする。前は高校生のように見えたが、今はずいぶん大人びた感じがした。話をしていても、それは垣間見える。
「二人きり?」
「なわけないじゃない。お向かいの俊君も一緒。」
「俊君って高校生だっけ?俊君と二人の方が怪しくない?」
「ない。ない。俊君本しか読んで無いじゃない。あと陸上のこととかさ。」
「そんなものかな。」
瑞希が童貞を卒業したのは高校生の頃だった。相手は同じアパートに住んでいた中学生の女の子。仲が良かった女の子は、無邪気に瑞希にセックスのことを聞いてきて、自分の見栄と大人ぶった態度を誇示したくてセックスをしたのだ。特に好きとか、そういう感情はなかった。
だがそれから小さい女性が好きで、弥生も歳の割に幼く見える。弥生にはコンプレックスのようだが、瑞希にとっては初めて会ったときから付き合いたいと思っていたのだ。つまり、一目惚れだったのだ。
お好み焼きを香が焼いてくれて、功太郎はそれを食べ終わり満足そうだった。
「美味かったよ。ちくわ入ってるの味が良いよな。」
「だよねぇ。イカとか、たことか入ってるのもあるけど、やっぱりちくわだよね。」
皿を洗っていると、功太郎も隣に来てその皿を拭く。ご馳走になりっぱなしは嫌なのだ。
「お父さんは帰ったこないのか?」
「忘年会って言うか……ほら、営業をしているでしょ?営業先での忘年会なんかにも呼ばれるみたいで、最近ずっと遅いのよね。」
それだけではない。飲み会が終われば、莉子のところへ行くこともあって帰ってくることもないときもある。弥生が夜勤の時は、香はこの部屋で一人きりなのだ。
弥生はそれを気にして、功太郎を呼んでいるのだと思う。だが香自身はそんなことは気にしていない。最近は深夜ラジオを聴くのが好きらしい。
「俊も食べたのか?」
「俊君ね。食べたけど、食べたらすぐ帰って行っちゃった。」
「何で?」
「冬休みの宿題をしたいんですって。新学期になったらすぐテストだから。」
「あぁ。そうだよな。」
あまり高校へは行っていなかったが、確かそんなことがあったような気がする。あまり勉強熱心ではなかったので、功太郎の成績はいつも知ったから数えた方が早かった。
「俊君さ。何か気にしてるみたい。」
「何を?」
「キスしたの。」
そうだった。俊は香とキスをしたのだ。この可愛い唇にどうやってキスをしたのかわからない。だがそれは嫌でも男と女だというのを実感させられるようで、さすがの俊も気恥ずかしかったのだろう。
「お前は気にしてねぇみたいだな。」
「するよ。俊君とのはあまり……気にしてないけど。」
「……。」
「功太郎のはその……何て言って良いのかな。違うの。」
その言葉に功太郎の頬も少し赤くなる。
「そっか。」
「ねぇ。功太郎。」
洗い物が終わって、香は功太郎の方を見上げる。
「どうした。」
「……んー。やっぱいいや。」
この間のをもう一度したい。香はずっとそう思っていたが、功太郎はどう思っているのだろう。功太郎の歳を考えれば、こんなことはきっとあったに違いない。自分ではない別の人とこんなことをしたのだと思う。そう思うと涙が出そうになるのに、明確に恋人だと言えるわけではない。それなのにもう一度、キスがしたいというのは自分がとてつもなく破廉恥になった気がする。
「お前は宿題は終わったのか?」
そんな香の気持ちを知ってか知らずか、功太郎は意地悪く香にそう聞いた。
「あと読書感想文と日記。」
「勉強は終わってんのか。」
「うん。昼にぱぱって。」
「すごいじゃん。」
そういって功太郎は香の頭を撫でる。違う。そんなことをされたいわけじゃない。香は少し唇を尖らせた。
「子供扱いした。」
「……何?大人扱いされたいのか?」
頭に置いた手を頬に持ってくる。功太郎の少しごつごつした手が、香の顔を赤くさせる。
「男ってバカだからさ。一度許したら二度、三度あるんじゃねぇかって思うんだけど。」
「思って良いよ。」
香はそういうとさらに顔を赤くした。すると功太郎は少しかがんで、顔を近づける。目をつぶってそれを待った。だが玄関の方で鍵が開く音がすると、あわてて功太郎は香から離れる。
玄関先で音がした。功太郎は驚いて玄関へ向かうと、そこには玄関先で倒れている父親がいる。
「倒れてんの?マジで?」
「あー……。また飲み過ぎちゃって……。功太郎。悪いけど部屋に連れて行ってくれない?」
「大丈夫か?」
倒れている父親の体を起こす。それを見て香は、あぁ、やはり男の人なんだと思った。自分一人では体を起こすことも出来なくて途方に暮れるのに、軽々と功太郎はその体を起こして部屋に連れて行くことが出来るのだ。
そしてまたもやっとした気持ちになる。さっきまたキスを去れそうになったのに、それを邪魔させられたのだ。
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