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チョコレート
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体がもぞもぞして目を覚ました。眠気が頭を重くしているのだろうと思っていたのに、体がもぞもぞとする。それと同時にぞっとした。
中学生の時に監禁されたとき、代わる代わるいろんな男が響子に突っ込んだ。気絶するように眠ってしまった響子を、いつも殴られて無理矢理起こされていたのがほとんどだったと思う。だがそれでも僅かに寝る時間は与えられた。寝ているときは何もしないと思っていたが、寝ている響子に突っ込んできた男もいる。意識が半分無い中、男は笑いながら言った。
「寝ながらでも感じてるぜ。こいつ、すげぇ淫乱だよな。」
「すげぇ濡れてんじゃん。本当に中学生かよ。」
「夢の中でもセックスしてんじゃねぇ?」
「この間まで処女だったの、本当かよ?」
結果、寝かせてくれなかった。それに今でも悪夢をみる。
「何……。」
声を振り絞った。するとその胸に触れる手は、そろそろと下がっていく。体を真二郎の方に向けた。すると真二郎は暗がりの中、少し気まずそうだった。
「ごめん……。」
悪いことをしたと思っているから謝るのだ。真二郎が一番響子の苦しみをわかっていると思っていたのに、結局真二郎も同じなのだと言われているように感じる。
「……やっぱり、あなたリビングで寝てくれる?」
「響子……。」
「こんな真似するなんて……。信じていたのに。」
圭太のことを引き合いに出して、自分だけを信じさせた。卑怯な男。響子の目は呆れてまた真二郎を背中に向けた。
「ごめん……。」
「前も謝ったわよね。そのたびに許してきたの。でも……寝込みを襲うなんて、卑怯だわ。向こうで寝てくれる?」
「……。」
自分のしたことに後悔をしているのかもしれない。だが真二郎はそこを動かなかった。それに響子はため息をつく。
「近くに居すぎたのかもしれないわね。」
レイプされる前から、真二郎は近くにいた。近くの児童養護施設にいた真二郎は、その地区の子供会での交流会で仲良くなったのだ。響子が施設へ遊びに行くこともあったし、真二郎が響子の家に遊びに行くこともあった。
ある程度、大きくなってもその交流は続いて両親も祖父も真二郎を可愛がっていたように思えた。だからこそ、響子がレイプされたときも、ずっと真二郎は味方で居た。それは真二郎が就職をしても、「古時計」で働くようになっても、ずっと側にいたのだ。
悪夢で魘されている響子を受け止めたり、何でもずばっと言ってしまう響子をフォローしてくれるのも真二郎だった。
それだけ側にいたのだ。だからこそ恋愛感情を持つことは出来なかったのだろう。
「あなたがずっと側にいたいというのは、恋愛感情なのかもしれない。だけど……私はあなたをそう言う目では見れないの。」
「家族みたいだから?」
「うん……。」
それが精一杯だった。それ以上、何も言えない。
「失えない?」
「うん……。あなたを失えない。大切だと思っているから。だけどそれは恋愛感情じゃない。」
「……オーナーだって響子に対する気持ちは愛なんかじゃないよ。」
「そうやって、オーナーのことを悪く言って自分に振り向かそうとするのはやめて。卑怯よ。」
それが真二郎のやり方なのだ。弱いところにつけ込んで、自分無しでいられなくする。やはりここが潮時なのかもしれない。一緒の職場でやりにくいかもしれないが、そうしないといけないだろう。
または自分が出て行くか。そっちの方が現実味がある。つまり、圭太の所に転がり込んでも良いと思っていた。
すると真二郎はベッドを降りたような気がした。良かったわかってくれたと思ってまた目をつぶる。しばらくするとまたベッドにあがってきた感触がした。
「何?」
響子は振り向くと、真二郎がベッドに乗りかかっていた。それを見て響子はため息をつく。
「あっちで寝てっていったでしょ?」
「一人で寝ていて魘されているのはどこの誰?」
「あなたに襲われるよりは良いわ。」
すると響子はそう言ってまた壁に向かう。すると真二郎は響子の体を自分の方へ向けた。
「やめてって。しつこいから。」
「俺のことは何も考えてないの?」
その言葉に響子の表情が固まった。そうだ。自分の主張ばかりしたが、真二郎だって響子のことを思ってやったことだ。ゆがんでいるが、真二郎だって響子のことが好きだと言っていたのだから。
「……あなたのこと……。」
「好きな女が隣にいて何もしないほど人間は出来ていないよ。」
「だったらそっちで寝ればいい。セックスをしないこと。それが条件でここに住んでるでしょう?」
その言葉に、真二郎の動きが止まる。
「そうだったね。」
響子は起きあがると、ベッドの上に座る。そして真二郎を見た。
「きっと……オーナー……ううん。圭太と出会う前なら、あなたを好きになっていたでしょうね。恋をするのも臆病になってたし……。」
「俺が言えなかったから。臆病だったから……オーナーに転んだの?」
「そうじゃなくても……きっと好きになってた。」
「……。」
「ごめん……真二郎。」
すると真二郎はそのまま響子を寝かせる。そしてその布団の中で抱きしめた。
「今晩だけ、こうしていて良いかな。いつも響子を慰めるようにしていたけれど……今日は俺のために。」
「わかった。それなら……。」
「お休み。」
真二郎はそう言って響子の頭にキスをする。
しばらくすると響子の寝息が聞こえた。だが真二郎は眠れない。
やはり圭太が邪魔をする。昔からそうだ。そして邪魔をしているとか、思っていないのだ。自分が欲しいものを手にいれて、人をけ落としている。
泣いている人なんか見ていないのだ。一矢報いたい。そのために響子を利用したいと思っている。だが響子は何も知らないのだ。
響子だってまだまだ篭の鳥だ。自分の手の中で泳いでいるだけだと言うことを知らない。
今日だって本当だったら、力ずくでセックスくらいなら出来るはずだ。きっと圭太よりも良い思いをさせられる自信がある。しかし響子はそれを望んでいない。望んでいないものを手を出すのは趣味じゃないし、本当に犯罪になってしまう。
「……。」
さっきまでの感触が手の中に残っているようだ。そしてやはり手に入れたいのはこの温もりだけだった。
中学生の時に監禁されたとき、代わる代わるいろんな男が響子に突っ込んだ。気絶するように眠ってしまった響子を、いつも殴られて無理矢理起こされていたのがほとんどだったと思う。だがそれでも僅かに寝る時間は与えられた。寝ているときは何もしないと思っていたが、寝ている響子に突っ込んできた男もいる。意識が半分無い中、男は笑いながら言った。
「寝ながらでも感じてるぜ。こいつ、すげぇ淫乱だよな。」
「すげぇ濡れてんじゃん。本当に中学生かよ。」
「夢の中でもセックスしてんじゃねぇ?」
「この間まで処女だったの、本当かよ?」
結果、寝かせてくれなかった。それに今でも悪夢をみる。
「何……。」
声を振り絞った。するとその胸に触れる手は、そろそろと下がっていく。体を真二郎の方に向けた。すると真二郎は暗がりの中、少し気まずそうだった。
「ごめん……。」
悪いことをしたと思っているから謝るのだ。真二郎が一番響子の苦しみをわかっていると思っていたのに、結局真二郎も同じなのだと言われているように感じる。
「……やっぱり、あなたリビングで寝てくれる?」
「響子……。」
「こんな真似するなんて……。信じていたのに。」
圭太のことを引き合いに出して、自分だけを信じさせた。卑怯な男。響子の目は呆れてまた真二郎を背中に向けた。
「ごめん……。」
「前も謝ったわよね。そのたびに許してきたの。でも……寝込みを襲うなんて、卑怯だわ。向こうで寝てくれる?」
「……。」
自分のしたことに後悔をしているのかもしれない。だが真二郎はそこを動かなかった。それに響子はため息をつく。
「近くに居すぎたのかもしれないわね。」
レイプされる前から、真二郎は近くにいた。近くの児童養護施設にいた真二郎は、その地区の子供会での交流会で仲良くなったのだ。響子が施設へ遊びに行くこともあったし、真二郎が響子の家に遊びに行くこともあった。
ある程度、大きくなってもその交流は続いて両親も祖父も真二郎を可愛がっていたように思えた。だからこそ、響子がレイプされたときも、ずっと真二郎は味方で居た。それは真二郎が就職をしても、「古時計」で働くようになっても、ずっと側にいたのだ。
悪夢で魘されている響子を受け止めたり、何でもずばっと言ってしまう響子をフォローしてくれるのも真二郎だった。
それだけ側にいたのだ。だからこそ恋愛感情を持つことは出来なかったのだろう。
「あなたがずっと側にいたいというのは、恋愛感情なのかもしれない。だけど……私はあなたをそう言う目では見れないの。」
「家族みたいだから?」
「うん……。」
それが精一杯だった。それ以上、何も言えない。
「失えない?」
「うん……。あなたを失えない。大切だと思っているから。だけどそれは恋愛感情じゃない。」
「……オーナーだって響子に対する気持ちは愛なんかじゃないよ。」
「そうやって、オーナーのことを悪く言って自分に振り向かそうとするのはやめて。卑怯よ。」
それが真二郎のやり方なのだ。弱いところにつけ込んで、自分無しでいられなくする。やはりここが潮時なのかもしれない。一緒の職場でやりにくいかもしれないが、そうしないといけないだろう。
または自分が出て行くか。そっちの方が現実味がある。つまり、圭太の所に転がり込んでも良いと思っていた。
すると真二郎はベッドを降りたような気がした。良かったわかってくれたと思ってまた目をつぶる。しばらくするとまたベッドにあがってきた感触がした。
「何?」
響子は振り向くと、真二郎がベッドに乗りかかっていた。それを見て響子はため息をつく。
「あっちで寝てっていったでしょ?」
「一人で寝ていて魘されているのはどこの誰?」
「あなたに襲われるよりは良いわ。」
すると響子はそう言ってまた壁に向かう。すると真二郎は響子の体を自分の方へ向けた。
「やめてって。しつこいから。」
「俺のことは何も考えてないの?」
その言葉に響子の表情が固まった。そうだ。自分の主張ばかりしたが、真二郎だって響子のことを思ってやったことだ。ゆがんでいるが、真二郎だって響子のことが好きだと言っていたのだから。
「……あなたのこと……。」
「好きな女が隣にいて何もしないほど人間は出来ていないよ。」
「だったらそっちで寝ればいい。セックスをしないこと。それが条件でここに住んでるでしょう?」
その言葉に、真二郎の動きが止まる。
「そうだったね。」
響子は起きあがると、ベッドの上に座る。そして真二郎を見た。
「きっと……オーナー……ううん。圭太と出会う前なら、あなたを好きになっていたでしょうね。恋をするのも臆病になってたし……。」
「俺が言えなかったから。臆病だったから……オーナーに転んだの?」
「そうじゃなくても……きっと好きになってた。」
「……。」
「ごめん……真二郎。」
すると真二郎はそのまま響子を寝かせる。そしてその布団の中で抱きしめた。
「今晩だけ、こうしていて良いかな。いつも響子を慰めるようにしていたけれど……今日は俺のために。」
「わかった。それなら……。」
「お休み。」
真二郎はそう言って響子の頭にキスをする。
しばらくすると響子の寝息が聞こえた。だが真二郎は眠れない。
やはり圭太が邪魔をする。昔からそうだ。そして邪魔をしているとか、思っていないのだ。自分が欲しいものを手にいれて、人をけ落としている。
泣いている人なんか見ていないのだ。一矢報いたい。そのために響子を利用したいと思っている。だが響子は何も知らないのだ。
響子だってまだまだ篭の鳥だ。自分の手の中で泳いでいるだけだと言うことを知らない。
今日だって本当だったら、力ずくでセックスくらいなら出来るはずだ。きっと圭太よりも良い思いをさせられる自信がある。しかし響子はそれを望んでいない。望んでいないものを手を出すのは趣味じゃないし、本当に犯罪になってしまう。
「……。」
さっきまでの感触が手の中に残っているようだ。そしてやはり手に入れたいのはこの温もりだけだった。
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