46 / 339
雨
45
しおりを挟む
着替えを終わって、ガスや電気のチェック、鍵のチェックをする。住宅街の中にあるからか、あまりこの辺は治安が悪い方ではないが最近は空き巣なんかも多いらしい。売り上げは圭太がいつも持っていて、朝通勤する前にメインバンクである銀行に納めに行く。そこから引き落としなどをするのだ。
響子はそのまま帰ったのだろうか。告白されて、断って、それでも同居人としてあの家にのほほんと二人で住めるのだろうか。住むだけならまだしも、同じベッドで寝ることもあるのだという。それは響子が時々うなされるからだ。親切心からなら何も思わない。だがそれだけではないことを今日知らされた。それでも響子は、真二郎を普通に同居人としてのスタンスを保てるのだろうか。
駅へ行く途中、公園がある。ここは割と広い公園で、昼間は遊具目当ての子供やランニングをする人、楽器の練習をする人なんかが居るところだが、夜はセンサー公園と呼ばれて、公園の道を歩くと脇にあるライトが光を付ける。幻想的でカップルのデートスポットになるのだ。
そして知る人ぞ知るナンパのスポットでもある。女が声をかけることもあるし男が待っている女に声をかけるのが一般的で、中には男同士、女同士のナンパもある。真二郎は、ウリセンの仕事をするとき、ゲイが集まるハッテン場の公園へ行くこともあるが、ここで待ち合わせをしているところを何度かみた。普通の男同士で、飲みに行くような感じだったので、本当にこれが仕事なのだろうかと首を傾げたこともあるのだ。
公園の反対側にも入り口があり、そこから出ると少し行ったところにラブホテルがある。ここでデートをしたあと、そこでセックスをするのだろう。真二郎の話ではそのラブホテルは男同士が使えないらしい。男同士や女同士のセックスはかなり汚れることもあり、知識がなければ尚更だ。なので断るラブホテルも多いらしい。
「男同士ねぇ。」
圭太はそうつぶやいて、先を行こうとした。気にならないことはないのだが、自分がその立場になるといくら綺麗な男でもその気にはなれないだろう。一度、神木という幼なじみと同じような幼なじみから冗談混じりでそういう動画を見せられたこともあるが、自分にはしっくりこなかったしむしろ気持ち悪いと思った。
「尻の穴にさ、こう……気持ちいいスポットがあってさ、そこを刺激すると信じられないくらい気持ちいいらしいわ。」
「そうは言ってもなぁ……。興味ねぇな。いくら綺麗でも俺は女の方が良いし。」
あの男はきっと神木に気があったはずだ。しかし神木は全くその気はなかったし、圭太だってそうだった。高校を出てあの男とは別の大学へ行ったのでどうなったかはわからなくなったが、たぶん真二郎と同じような道に進んでいるのだろう。
「行かないって。」
聞き慣れた声が聞こえて、思わず圭太は公園の方へ戻っていく。そこには響子が二人組の男に声をかけられているところだったのだ。
「こんな所で立ちんぼしてんだから、ナンパ待ってたんだろ?行こうぜ。」
「違うから。触らないでよ。」
思わず圭太はそちらに向かうと、響子に声をかけた。
「響子。」
響子は圭太に気がついて、圭太の方へ向かう。すると男たちは顔を見合わせる。
「男連れかよ。」
「あんなところで立ちんぼしてんだから、ナンパかと思うよな。」
「だよ。思わせぶり。」
「どうせババァだよ。若くねぇし。」
そんな勝手なことを言いながら、男たちは行ってしまった。それを見て、圭太は響子の肩を抱く。
「ちょっと……。」
反抗するように響子が言うと、圭太はわざと男たちに聞こえるように言った。
「ババァにも相手にされないようなヤツ、家に帰って大人しくオ○ニーしてろ。バーカ。」
そういってそのまま響子の手を引くと、駆け足で公園をあとにする。後ろから何か言っている声が聞こえたが、いちいち反応していられない。
しばらくして足を止める。駅はすぐだった。
「お前、少し前に出たんじゃなかったのか。」
「ちょっとね……帰りづらくて。」
家に帰れば真二郎が帰ってくる。真二郎に告白されたのだ。その気持ちに答えられないと断っていたが、はいそうですかと気持ちを切り替えて家に戻るほどまだ気持ちの整理がついていなかったのだろう。
「……どっか行くか?気持ちを切り替えるのに……そうだな……車を出そうか。」
「実家にあるんじゃないの?」
「電話すれば持ってきてくれる。ちょっと待ってろ。」
そういって圭太は携帯電話を取り出して、どこかに電話を始めた。
その間、響子は駅の方を見る。終電までにはまだ時間があるようだ。このまま帰ってもかまわない。やっぱり帰るわといえるのに、それをしないのはやはり圭太のことが気にかかるのかもしれない。
「実家ってどこなの?」
電話を終えた圭太にそう聞くと、圭太は少し考えて言う。
「Aかな。ちょっとはずれてるけど。」
「高級住宅街ね。」
「一般的にはな。」
芸能人とかどこかの社長とかが広い家を建てているような所だ。そこに家をたてたのは、おそらく家を建てて首が回らなくなったような人たちに目を光らせるためだ。実際、立派な家ばかりだがその中は空き家という家は少なくない。
前にもみた青いRV車は、中が広い。だからウェディングケーキを運んだりも出来るし、たまにある焼き菓子の大口注文も運んだり出来るのだ。
だからかもしれないが、とても車の中は片づいている。
「普段は兄嫁が使っているって言ってたわね。」
「んー。でも最近しょっちゅう使ってるからかな。兄嫁が自分の車を欲しがっているって言ってた。まぁ、そっちの方がこっちは助かるけどな。」
信号で停まり、その標識を見る。その先は港と書いてあった。
「港?」
「行ったことがあるか?対岸の光が綺麗でさ……。」
カップルのデートスポットなのだ。真子と一度行ったことがあるが、真子は海が苦手ですぐに帰りたいと言っていたのを覚えている。
「女性が好きそうな所をよく知っているのね。」
「まぁな。俺、三十だし、それなりにな。」
「それもそうね。」
気にしていない。一度キスをしたと言っても明確に恋人同士というわけではないし、嫉妬すら出来ないのだ。
好きだという言葉も、まだ響子の心に届いていない。
響子はそのまま帰ったのだろうか。告白されて、断って、それでも同居人としてあの家にのほほんと二人で住めるのだろうか。住むだけならまだしも、同じベッドで寝ることもあるのだという。それは響子が時々うなされるからだ。親切心からなら何も思わない。だがそれだけではないことを今日知らされた。それでも響子は、真二郎を普通に同居人としてのスタンスを保てるのだろうか。
駅へ行く途中、公園がある。ここは割と広い公園で、昼間は遊具目当ての子供やランニングをする人、楽器の練習をする人なんかが居るところだが、夜はセンサー公園と呼ばれて、公園の道を歩くと脇にあるライトが光を付ける。幻想的でカップルのデートスポットになるのだ。
そして知る人ぞ知るナンパのスポットでもある。女が声をかけることもあるし男が待っている女に声をかけるのが一般的で、中には男同士、女同士のナンパもある。真二郎は、ウリセンの仕事をするとき、ゲイが集まるハッテン場の公園へ行くこともあるが、ここで待ち合わせをしているところを何度かみた。普通の男同士で、飲みに行くような感じだったので、本当にこれが仕事なのだろうかと首を傾げたこともあるのだ。
公園の反対側にも入り口があり、そこから出ると少し行ったところにラブホテルがある。ここでデートをしたあと、そこでセックスをするのだろう。真二郎の話ではそのラブホテルは男同士が使えないらしい。男同士や女同士のセックスはかなり汚れることもあり、知識がなければ尚更だ。なので断るラブホテルも多いらしい。
「男同士ねぇ。」
圭太はそうつぶやいて、先を行こうとした。気にならないことはないのだが、自分がその立場になるといくら綺麗な男でもその気にはなれないだろう。一度、神木という幼なじみと同じような幼なじみから冗談混じりでそういう動画を見せられたこともあるが、自分にはしっくりこなかったしむしろ気持ち悪いと思った。
「尻の穴にさ、こう……気持ちいいスポットがあってさ、そこを刺激すると信じられないくらい気持ちいいらしいわ。」
「そうは言ってもなぁ……。興味ねぇな。いくら綺麗でも俺は女の方が良いし。」
あの男はきっと神木に気があったはずだ。しかし神木は全くその気はなかったし、圭太だってそうだった。高校を出てあの男とは別の大学へ行ったのでどうなったかはわからなくなったが、たぶん真二郎と同じような道に進んでいるのだろう。
「行かないって。」
聞き慣れた声が聞こえて、思わず圭太は公園の方へ戻っていく。そこには響子が二人組の男に声をかけられているところだったのだ。
「こんな所で立ちんぼしてんだから、ナンパ待ってたんだろ?行こうぜ。」
「違うから。触らないでよ。」
思わず圭太はそちらに向かうと、響子に声をかけた。
「響子。」
響子は圭太に気がついて、圭太の方へ向かう。すると男たちは顔を見合わせる。
「男連れかよ。」
「あんなところで立ちんぼしてんだから、ナンパかと思うよな。」
「だよ。思わせぶり。」
「どうせババァだよ。若くねぇし。」
そんな勝手なことを言いながら、男たちは行ってしまった。それを見て、圭太は響子の肩を抱く。
「ちょっと……。」
反抗するように響子が言うと、圭太はわざと男たちに聞こえるように言った。
「ババァにも相手にされないようなヤツ、家に帰って大人しくオ○ニーしてろ。バーカ。」
そういってそのまま響子の手を引くと、駆け足で公園をあとにする。後ろから何か言っている声が聞こえたが、いちいち反応していられない。
しばらくして足を止める。駅はすぐだった。
「お前、少し前に出たんじゃなかったのか。」
「ちょっとね……帰りづらくて。」
家に帰れば真二郎が帰ってくる。真二郎に告白されたのだ。その気持ちに答えられないと断っていたが、はいそうですかと気持ちを切り替えて家に戻るほどまだ気持ちの整理がついていなかったのだろう。
「……どっか行くか?気持ちを切り替えるのに……そうだな……車を出そうか。」
「実家にあるんじゃないの?」
「電話すれば持ってきてくれる。ちょっと待ってろ。」
そういって圭太は携帯電話を取り出して、どこかに電話を始めた。
その間、響子は駅の方を見る。終電までにはまだ時間があるようだ。このまま帰ってもかまわない。やっぱり帰るわといえるのに、それをしないのはやはり圭太のことが気にかかるのかもしれない。
「実家ってどこなの?」
電話を終えた圭太にそう聞くと、圭太は少し考えて言う。
「Aかな。ちょっとはずれてるけど。」
「高級住宅街ね。」
「一般的にはな。」
芸能人とかどこかの社長とかが広い家を建てているような所だ。そこに家をたてたのは、おそらく家を建てて首が回らなくなったような人たちに目を光らせるためだ。実際、立派な家ばかりだがその中は空き家という家は少なくない。
前にもみた青いRV車は、中が広い。だからウェディングケーキを運んだりも出来るし、たまにある焼き菓子の大口注文も運んだり出来るのだ。
だからかもしれないが、とても車の中は片づいている。
「普段は兄嫁が使っているって言ってたわね。」
「んー。でも最近しょっちゅう使ってるからかな。兄嫁が自分の車を欲しがっているって言ってた。まぁ、そっちの方がこっちは助かるけどな。」
信号で停まり、その標識を見る。その先は港と書いてあった。
「港?」
「行ったことがあるか?対岸の光が綺麗でさ……。」
カップルのデートスポットなのだ。真子と一度行ったことがあるが、真子は海が苦手ですぐに帰りたいと言っていたのを覚えている。
「女性が好きそうな所をよく知っているのね。」
「まぁな。俺、三十だし、それなりにな。」
「それもそうね。」
気にしていない。一度キスをしたと言っても明確に恋人同士というわけではないし、嫉妬すら出来ないのだ。
好きだという言葉も、まだ響子の心に届いていない。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
性欲の強すぎるヤクザに捕まった話
古亜
恋愛
中堅企業の普通のOL、沢木梢(さわきこずえ)はある日突然現れたチンピラ3人に、兄貴と呼ばれる人物のもとへ拉致されてしまう。
どうやら商売女と間違えられたらしく、人違いだと主張するも、兄貴とか呼ばれた男は聞く耳を持たない。
「美味しいピザをすぐデリバリーできるのに、わざわざコンビニのピザ風の惣菜パンを食べる人います?」
「たまには惣菜パンも悪くねぇ」
……嘘でしょ。
2019/11/4 33話+2話で本編完結
2021/1/15 書籍出版されました
2021/1/22 続き頑張ります
半分くらいR18な話なので予告はしません。
強引な描写含むので苦手な方はブラウザバックしてください。だいたいタイトル通りな感じなので、少しでも思ってたのと違う、地雷と思ったら即回れ右でお願いします。
誤字脱字、文章わかりにくい等の指摘は有り難く受け取り修正しますが、思った通りじゃない生理的に無理といった内容については自衛に留め批判否定はご遠慮ください。泣きます。
当然の事ながら、この話はフィクションです。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる