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子供
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高校生活では女っ気がなかったが、大学になればそれなりに遊べた。ジャズのサークルに入った先輩や、同じゼミの後輩。同級生などそれなりにつきあいも出来たが、すぐに別れはくる。
理由は圭太にもわからない。それをいつも幼なじみの神木に愚痴をこぼしていた。
「何で別れるんだろうな。俺、悦子のためにめっちゃ頑張ったのに。クリスマスとかさ、バイトのシフト増やして○○のネックレスとかやったのに。」
「それじゃねぇの?」
「は?」
ビールを飲みながら神木は言う。
「そのバイトの間放置してたんだろ?だから他に男を作るんだよ。寂しいもんなんだって。女ってのは。」
「けど連絡すれば、そんなことでいちいち連絡しないでなんて言うんだし、あぁ、女ってのはめんどくさいな。」
それでも受け入れて愚痴につきあってくれたのは神木だった。顔もよくてスタイルだってすらっとしている。同じような環境で育ったのに、神木の方はあまりもてないのに、高校からつきあっている彼女といまだに一緒にいるのだ。
「セックスだってさ、ちょっとハウツー本を読んだり、AVみたりして勉強したから満足してると思ったのに。」
「お前、そう言うのも勉強したら身になるんだな。すげぇよ。でもまぁ、AVなんてファンタジーじゃん。参考にならない。」
「まぁな。」
ぐだぐだした大学生活を終えて、就職する。決まったのは「ヒジカタコーヒー」というコーヒーや紅茶などの喫茶関連の卸売り会社で、カフェ事業も展開している。
親は自分の会社に入れたかったようだが、圭太がそれを拒否したので黙ってそこに入れさせたらしい。
そこで圭太はバリスタの資格を取り、夏ごろからある店舗に社員としてはいることになった。一年間、そこで働き、二年目には他店舗で店長になった。
そこで出会ったのは、バイトとしてキャリアが長い真子だった。小柄な体型と童顔な為、高校生のバイトのように見えたが歳は圭太と同じで、圭太にもばしばしと意見を言うはっきりした性格だったと思う。
忘年会で一緒に帰り、そのとき初めてキスをした。恋人同士になるのに時間はそこまで必要ではなく、春には一緒に住むようになった。
そのころ、神木は入った会社で鬱病になり、恋人が出来た圭太に「良かったな」と言ったあと、田舎に奥さんになった恋人と引きこもってしまった。
同棲を初めて二年目のクリスマスイブのことだった。ケーキを作るよと真子が言い、そろそろ自分もけじめを付けないといけないと、圭太は婚約指輪を用意して、家に帰って行ったのだった。
リビングにはチキンと、スープなど、クリスマスらしいメニューが並び、キッチンからは甘い匂いがする。
「圭ちゃん。みて。ほら。」
真子はそう言ってパウンドケーキに、生クリームやイチゴでデコレーションしたケーキを見せる。
「すごいな。手作り?そんな時間があったんだ。」
「ううん。コレね、ホットケーキミックスで作ったの。すごくない?こう言うのもバカに出来ないよね。」
上機嫌にそれをテーブルに置き、エプロンを真子がはずした。今だ。今が良いチャンスだ。そう思ってポケットから指輪のケースを取り出そうとした。そのときだった。
「圭ちゃん。あのね。プレゼントそれだけじゃないの。……子供が出来たの。」
その言葉に圭太は驚いて、思わずそのケースを落としてしまった。
「え?俺の子供?」
その言葉に真子の表情が変わる。呆れたような、怒りのような複雑な表情だった。
「誰って……圭ちゃんしか居ないのに。」
そんな意味で言ったわけではない。だが真子の目から次々と涙がこぼれた。
店長として、ずっと店に引きこもっていた。帰るのも連日遅かった。それに真子にはずっと言い寄っている男もいる。いくら恋人が居ると言っても聞き入れない男。真子も悪い気はしていなかったはずだ。
「あの……。嬉しいよ。」
だがその表情は浮かない。それに真子は突きかかるように、圭太の胸に拳をたてた。
「嘘。面倒だって思ったでしょ?」
「そんなことを思ってないよ。」
ただ、言われたことに頭が追いついていかなかったから。そして自分が計画していたこととは全く違うことを言われたので、戸惑っただけだった。
「でも……俺、ずっとコンドームつけてたのに。」
「違うでしょ?付けてないときもあったよ。自分には責任がないようなことを言わないで。」
「責任って……。」
「もう良い!」
その目は怒りに満ちていた。そう言って真子は寝室にこもってしまった。
それからどんなに謝っても真子は許してくれなかった。最高の日になるはずだったのに、最低な日になってしまったのだ。
転がった指輪を拾い上げて、忌々しく真子の作ったケーキをみていた。
だが、真子にも不自然な点がいくつかあった。それを問いただすわけではなく、見て見ぬ振りをしたのは自分の甘いところだったのかもしれない。
暗い道で、缶コーヒーを買い、響子はそれを圭太に手渡す。
「ブラックで良い?」
「あぁ。」
そしてそれを手にして公園に入っていく。家に来て欲しくないし、どこか居酒屋にいって酒を片手に聞くような話ではない。第一、圭太の表情がどこか死にそうだったのだ。
この公園はゲイのためのハッテン場で、ウリセンのボーイが待ち合わせをしていたり、体目当ての男たちが沢山いる。その中に響子が居るのは異質かもしれない。だがここしかなかった。
冷たいだけが取り柄の缶コーヒーをあけて、口に入れる。
「生活できたの?」
「え……。」
「自分でそんなことを言って、真子さんを怒らせてそれでプロポーズした訳じゃないんでしょ?まさかさらに追い打ちをかけるようなことをいったんじゃないの?」
すると圭太はコーヒーの缶を開けて、ため息を付く。
「指輪を渡して、許してもらおうと思った。だけど、次の日にはいつも通りだったんだ。朝ご飯を作ってくれて先に真子が店に行って、いつも通りだと思った。」
忘れてしまったのかもしれない。それとも許してもらったのかもしれない。改めて今日、プロポーズをしようと決意した。
なのに、その日の夜。帰ってくると異様な臭いが部屋から漂ってきた。暗い部屋の中、電気をつけるとそこにはドアノブに紐を付けて、そこでしゃがんだ状態のまま首を吊っている真子の姿があったのだ。
「……。」
汚物が尻の当たりにあり、青白い顔で、それでも目を見開いていた。その顔を今でも忘れられない。
理由は圭太にもわからない。それをいつも幼なじみの神木に愚痴をこぼしていた。
「何で別れるんだろうな。俺、悦子のためにめっちゃ頑張ったのに。クリスマスとかさ、バイトのシフト増やして○○のネックレスとかやったのに。」
「それじゃねぇの?」
「は?」
ビールを飲みながら神木は言う。
「そのバイトの間放置してたんだろ?だから他に男を作るんだよ。寂しいもんなんだって。女ってのは。」
「けど連絡すれば、そんなことでいちいち連絡しないでなんて言うんだし、あぁ、女ってのはめんどくさいな。」
それでも受け入れて愚痴につきあってくれたのは神木だった。顔もよくてスタイルだってすらっとしている。同じような環境で育ったのに、神木の方はあまりもてないのに、高校からつきあっている彼女といまだに一緒にいるのだ。
「セックスだってさ、ちょっとハウツー本を読んだり、AVみたりして勉強したから満足してると思ったのに。」
「お前、そう言うのも勉強したら身になるんだな。すげぇよ。でもまぁ、AVなんてファンタジーじゃん。参考にならない。」
「まぁな。」
ぐだぐだした大学生活を終えて、就職する。決まったのは「ヒジカタコーヒー」というコーヒーや紅茶などの喫茶関連の卸売り会社で、カフェ事業も展開している。
親は自分の会社に入れたかったようだが、圭太がそれを拒否したので黙ってそこに入れさせたらしい。
そこで圭太はバリスタの資格を取り、夏ごろからある店舗に社員としてはいることになった。一年間、そこで働き、二年目には他店舗で店長になった。
そこで出会ったのは、バイトとしてキャリアが長い真子だった。小柄な体型と童顔な為、高校生のバイトのように見えたが歳は圭太と同じで、圭太にもばしばしと意見を言うはっきりした性格だったと思う。
忘年会で一緒に帰り、そのとき初めてキスをした。恋人同士になるのに時間はそこまで必要ではなく、春には一緒に住むようになった。
そのころ、神木は入った会社で鬱病になり、恋人が出来た圭太に「良かったな」と言ったあと、田舎に奥さんになった恋人と引きこもってしまった。
同棲を初めて二年目のクリスマスイブのことだった。ケーキを作るよと真子が言い、そろそろ自分もけじめを付けないといけないと、圭太は婚約指輪を用意して、家に帰って行ったのだった。
リビングにはチキンと、スープなど、クリスマスらしいメニューが並び、キッチンからは甘い匂いがする。
「圭ちゃん。みて。ほら。」
真子はそう言ってパウンドケーキに、生クリームやイチゴでデコレーションしたケーキを見せる。
「すごいな。手作り?そんな時間があったんだ。」
「ううん。コレね、ホットケーキミックスで作ったの。すごくない?こう言うのもバカに出来ないよね。」
上機嫌にそれをテーブルに置き、エプロンを真子がはずした。今だ。今が良いチャンスだ。そう思ってポケットから指輪のケースを取り出そうとした。そのときだった。
「圭ちゃん。あのね。プレゼントそれだけじゃないの。……子供が出来たの。」
その言葉に圭太は驚いて、思わずそのケースを落としてしまった。
「え?俺の子供?」
その言葉に真子の表情が変わる。呆れたような、怒りのような複雑な表情だった。
「誰って……圭ちゃんしか居ないのに。」
そんな意味で言ったわけではない。だが真子の目から次々と涙がこぼれた。
店長として、ずっと店に引きこもっていた。帰るのも連日遅かった。それに真子にはずっと言い寄っている男もいる。いくら恋人が居ると言っても聞き入れない男。真子も悪い気はしていなかったはずだ。
「あの……。嬉しいよ。」
だがその表情は浮かない。それに真子は突きかかるように、圭太の胸に拳をたてた。
「嘘。面倒だって思ったでしょ?」
「そんなことを思ってないよ。」
ただ、言われたことに頭が追いついていかなかったから。そして自分が計画していたこととは全く違うことを言われたので、戸惑っただけだった。
「でも……俺、ずっとコンドームつけてたのに。」
「違うでしょ?付けてないときもあったよ。自分には責任がないようなことを言わないで。」
「責任って……。」
「もう良い!」
その目は怒りに満ちていた。そう言って真子は寝室にこもってしまった。
それからどんなに謝っても真子は許してくれなかった。最高の日になるはずだったのに、最低な日になってしまったのだ。
転がった指輪を拾い上げて、忌々しく真子の作ったケーキをみていた。
だが、真子にも不自然な点がいくつかあった。それを問いただすわけではなく、見て見ぬ振りをしたのは自分の甘いところだったのかもしれない。
暗い道で、缶コーヒーを買い、響子はそれを圭太に手渡す。
「ブラックで良い?」
「あぁ。」
そしてそれを手にして公園に入っていく。家に来て欲しくないし、どこか居酒屋にいって酒を片手に聞くような話ではない。第一、圭太の表情がどこか死にそうだったのだ。
この公園はゲイのためのハッテン場で、ウリセンのボーイが待ち合わせをしていたり、体目当ての男たちが沢山いる。その中に響子が居るのは異質かもしれない。だがここしかなかった。
冷たいだけが取り柄の缶コーヒーをあけて、口に入れる。
「生活できたの?」
「え……。」
「自分でそんなことを言って、真子さんを怒らせてそれでプロポーズした訳じゃないんでしょ?まさかさらに追い打ちをかけるようなことをいったんじゃないの?」
すると圭太はコーヒーの缶を開けて、ため息を付く。
「指輪を渡して、許してもらおうと思った。だけど、次の日にはいつも通りだったんだ。朝ご飯を作ってくれて先に真子が店に行って、いつも通りだと思った。」
忘れてしまったのかもしれない。それとも許してもらったのかもしれない。改めて今日、プロポーズをしようと決意した。
なのに、その日の夜。帰ってくると異様な臭いが部屋から漂ってきた。暗い部屋の中、電気をつけるとそこにはドアノブに紐を付けて、そこでしゃがんだ状態のまま首を吊っている真子の姿があったのだ。
「……。」
汚物が尻の当たりにあり、青白い顔で、それでも目を見開いていた。その顔を今でも忘れられない。
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