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子供
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サラダもしゃきしゃきしているし、サンドイッチの中のエビもプリプリだ。とても美味しい。
「美味しいねぇ。お母さんが作るサンドイッチと違うけど、このパンみたいなヤツも美味しい。」
「スコーンね。」
「甘いねぇ。」
ココアが入り、生クリームを上に載せる。それをカウンターに響子が乗せた。
「アイスココア。八番。」
「生クリームもりもりだな。」
「見た目も良いじゃない。いつも巻いてないのに、これは巻いたの?」
「派手なのが好きなんでしょ?」
響子はそう言って次のオーダーにはいる。そして圭太がそのカップを持って瑞希たちのテーブルに向かう。
「アイスココアです。」
「わぁ。すごい。」
「カロリー高そう。でもこのコーヒーも美味いな。うちで豆を卸してくれないかな。」
「豆は卸せるかもしれないけど、これと同じように淹れられないだろ?」
「確かに。」
そう言って瑞希はそのコーヒーを口に入れる。香もスプーンを使って生クリームを食べながらアイスココアを口に入れる。すると表情が一変する。
「甘くない。」
「ココアって普通甘くないんだよ。その生クリームを混ぜて、足りなかったら砂糖を入れるか?」
「自販機載って甘いのに。」
自販機と一緒にされたら困る。響子はそう思いながら、ガムシロップを出す。
瑞希たちが帰ったあと、響子はため息を付いた。子供がここに来ることは少ないが騒がしい。
「それにしても何で子供を姉の恋人に預けたのかしら。」
「さぁな。」
その理由は何となく想像が付く。おそらく身内でごたごたが始まっているのだ。子供には聞かせたくないと、瑞希に預けたのだろう。両親と、その子供だけで話し合うこと。それは遺産相続か、離婚するとか、そんなところだ。
汚いところを見せずに、綺麗なところだけを見せるつもりなのだろうか。くだらない。だがそういう人が近くにいるのだ。
何も知らず、傷に触れようともしないから未だに男は恐怖の対象なのだ。真二郎にしか心を許さない理由もわかる。だがそれだけでは何も出来ない。
「……響子。」
片づけをしていた響子が、目だけで圭太を見る。
「何?」
「子供向けのメニューって作れないか。」
「オレンジジュースやミルクセーキはあるけれど、それ以外何が必要?」
「たとえばだ。さっきのアイスココアとかあらかじめ甘くしておくとか。」
「……甘みの感じ方は人それぞれじゃない。」
「子供の舌に合うようなヤツ。」
「子供ねぇ……。居たこと無いしなぁ。千鶴の子供でも合うかしら。」
するとカップをおろしてきた千鶴が口を挟む。
「あー。駄目よ。うちの子供は、カフェインに弱いの。コーヒー牛乳でも目がギンギンに冴えちゃって寝ないんだから。」
「そっか……。だったらどうするかなぁ。」
「……。」
すると響子は咳払いをしていう。
「居ないことはない。でもこちらで作るわ。」
「何?誰の子供?」
「別に良いでしょ?一週間くらいで作って持ってくるわ。」
そう言って響子は洗い終わったカップを籠に入れると、キッチンへそれを持って行った。
「すいませーん。」
「はい。はーい。」
千鶴が向かい、ケーキの注文を取る。
あの日以来、響子との間に壁が出来たようだ。その理由はわかる。響子の過去を告白したからだ。男に対して絶望しかない。そして人間不信になったのは、そのことを書き立てられたからだ。
子供は正直だから、響子が怖いといった。響子が他人を寄せ付けないようにしているのを子供は感じているのだ。
今日、真二郎は早めに帰って行った。今日はウリセンの客の中でも、上客相手だ。前のように朝までつきあうことはないが、いつもの客よりは長めに一緒にいることになる。だから早めに出ておきたいのだ。
「お疲れさまでした。」
「おぉ。お疲れ。」
店に残っているのは響子と圭太だけだ。それが不安になるが、そんなことで客を待たせられない。足早に店を出ていった。
そして残ったのは響子と圭太だけだった。圭太は金の計算を終えると、パソコンをシャットダウンさせる。すると響子も豆を広げて、エプロンを取った。
「先に着替えて良いかしら。」
「良いよ。お前も用事があるのか?」
「ちょっとね。」
そう言って更衣室へ向かう。圭太はカップを持ってカウンターの中にはいると、その中でカップを洗った。その間にも響子があの更衣室の中で、半裸になっているのを想像する。一度見たが、女らしい体つきだと思った。
だがあの体を知っているのは、少なくとも五人以上。拉致監禁をして代わる代わる響子を強姦した男たち。響子の話ではもっと人は居たはずだという。だが逃げた人たちはまだ捕まっていない。いらいらする。
「くそ。」
とっくに煙草をやめたはずだった。だがこんな時は口寂しくなる。
「何ぼんやりしてんのよ。」
着替え終わった響子が圭太に声をかけた。すると圭太はカウンターを出ると、響子に言った。
「どこの子供に試飲させるんだよ。」
「あぁ。その話?別に隠してないけど一緒に来るんなら来てもかまわない。」
その言葉に圭太はカウンターを出ると、響子に言う。
「ちょっと着替えてくるから待ってろ。」
また響子の一面がみれる。それだけでぞくそくする。やばい。本気で好きになったのかもしれない。
「……。」
響子も待っている間、壁にもたれ掛かった。どうして付いてくればいい何て言ったのだろう。隠すことではないが、このままぎくしゃくな店のままで居たくないと思ったのだ。
きっと瑞希は何か感じていた。だから何も聞かなかったのだ。
あぁいう男の方が信用できない。圭太以上に信用できないのだ。
「美味しいねぇ。お母さんが作るサンドイッチと違うけど、このパンみたいなヤツも美味しい。」
「スコーンね。」
「甘いねぇ。」
ココアが入り、生クリームを上に載せる。それをカウンターに響子が乗せた。
「アイスココア。八番。」
「生クリームもりもりだな。」
「見た目も良いじゃない。いつも巻いてないのに、これは巻いたの?」
「派手なのが好きなんでしょ?」
響子はそう言って次のオーダーにはいる。そして圭太がそのカップを持って瑞希たちのテーブルに向かう。
「アイスココアです。」
「わぁ。すごい。」
「カロリー高そう。でもこのコーヒーも美味いな。うちで豆を卸してくれないかな。」
「豆は卸せるかもしれないけど、これと同じように淹れられないだろ?」
「確かに。」
そう言って瑞希はそのコーヒーを口に入れる。香もスプーンを使って生クリームを食べながらアイスココアを口に入れる。すると表情が一変する。
「甘くない。」
「ココアって普通甘くないんだよ。その生クリームを混ぜて、足りなかったら砂糖を入れるか?」
「自販機載って甘いのに。」
自販機と一緒にされたら困る。響子はそう思いながら、ガムシロップを出す。
瑞希たちが帰ったあと、響子はため息を付いた。子供がここに来ることは少ないが騒がしい。
「それにしても何で子供を姉の恋人に預けたのかしら。」
「さぁな。」
その理由は何となく想像が付く。おそらく身内でごたごたが始まっているのだ。子供には聞かせたくないと、瑞希に預けたのだろう。両親と、その子供だけで話し合うこと。それは遺産相続か、離婚するとか、そんなところだ。
汚いところを見せずに、綺麗なところだけを見せるつもりなのだろうか。くだらない。だがそういう人が近くにいるのだ。
何も知らず、傷に触れようともしないから未だに男は恐怖の対象なのだ。真二郎にしか心を許さない理由もわかる。だがそれだけでは何も出来ない。
「……響子。」
片づけをしていた響子が、目だけで圭太を見る。
「何?」
「子供向けのメニューって作れないか。」
「オレンジジュースやミルクセーキはあるけれど、それ以外何が必要?」
「たとえばだ。さっきのアイスココアとかあらかじめ甘くしておくとか。」
「……甘みの感じ方は人それぞれじゃない。」
「子供の舌に合うようなヤツ。」
「子供ねぇ……。居たこと無いしなぁ。千鶴の子供でも合うかしら。」
するとカップをおろしてきた千鶴が口を挟む。
「あー。駄目よ。うちの子供は、カフェインに弱いの。コーヒー牛乳でも目がギンギンに冴えちゃって寝ないんだから。」
「そっか……。だったらどうするかなぁ。」
「……。」
すると響子は咳払いをしていう。
「居ないことはない。でもこちらで作るわ。」
「何?誰の子供?」
「別に良いでしょ?一週間くらいで作って持ってくるわ。」
そう言って響子は洗い終わったカップを籠に入れると、キッチンへそれを持って行った。
「すいませーん。」
「はい。はーい。」
千鶴が向かい、ケーキの注文を取る。
あの日以来、響子との間に壁が出来たようだ。その理由はわかる。響子の過去を告白したからだ。男に対して絶望しかない。そして人間不信になったのは、そのことを書き立てられたからだ。
子供は正直だから、響子が怖いといった。響子が他人を寄せ付けないようにしているのを子供は感じているのだ。
今日、真二郎は早めに帰って行った。今日はウリセンの客の中でも、上客相手だ。前のように朝までつきあうことはないが、いつもの客よりは長めに一緒にいることになる。だから早めに出ておきたいのだ。
「お疲れさまでした。」
「おぉ。お疲れ。」
店に残っているのは響子と圭太だけだ。それが不安になるが、そんなことで客を待たせられない。足早に店を出ていった。
そして残ったのは響子と圭太だけだった。圭太は金の計算を終えると、パソコンをシャットダウンさせる。すると響子も豆を広げて、エプロンを取った。
「先に着替えて良いかしら。」
「良いよ。お前も用事があるのか?」
「ちょっとね。」
そう言って更衣室へ向かう。圭太はカップを持ってカウンターの中にはいると、その中でカップを洗った。その間にも響子があの更衣室の中で、半裸になっているのを想像する。一度見たが、女らしい体つきだと思った。
だがあの体を知っているのは、少なくとも五人以上。拉致監禁をして代わる代わる響子を強姦した男たち。響子の話ではもっと人は居たはずだという。だが逃げた人たちはまだ捕まっていない。いらいらする。
「くそ。」
とっくに煙草をやめたはずだった。だがこんな時は口寂しくなる。
「何ぼんやりしてんのよ。」
着替え終わった響子が圭太に声をかけた。すると圭太はカウンターを出ると、響子に言った。
「どこの子供に試飲させるんだよ。」
「あぁ。その話?別に隠してないけど一緒に来るんなら来てもかまわない。」
その言葉に圭太はカウンターを出ると、響子に言う。
「ちょっと着替えてくるから待ってろ。」
また響子の一面がみれる。それだけでぞくそくする。やばい。本気で好きになったのかもしれない。
「……。」
響子も待っている間、壁にもたれ掛かった。どうして付いてくればいい何て言ったのだろう。隠すことではないが、このままぎくしゃくな店のままで居たくないと思ったのだ。
きっと瑞希は何か感じていた。だから何も聞かなかったのだ。
あぁいう男の方が信用できない。圭太以上に信用できないのだ。
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