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気持ち とは 裏腹に
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家の仕事として桐はお風呂を沸かすのと、洗濯物を取り入れることだけはしてくれている。それだけでも大変助かっていた。
一人の時は夕方に急に降ってくる雨に絶望することもあったし、寒いときは温かいお風呂が沸くまで寒い思いをしないといけなかった。
今こうして温かい湯船に使っている。それだけで疲れがお湯の中に溶けてしまいそうだった。
しかしこうしてもいられない。
眠ってしまいそうに心地いい湯船を出ると、体を拭いて部屋着に着替えた。そして自分の部屋に戻ろうとしたときだった。
「桐。」
お湯をためるためのポットを持った桐がそこにいた。
「お湯が切れた。」
「あまりコーヒーばかり飲んでも眠れなくなるわ。」
「寝たいときに寝る。今は寝たくない気分だ。」
桐らしい。私はそう思い、その場を離れようとした。
「依。」
「何?」
振り返ると、彼は少し笑っていた。
「話がいいところに来ているんだ。ちょっと覗いてみないか。」
「え?」
「女の意見を聞きたいんだ。今回のは女を対象にした官能小説だし。」
「…仕事は昼間にするっていっているでしょう?今は眠りたいの。」
「ちょっとでいい。」
「…どうしたの?そんな強引に。」
「いいから。」
引きずられるように、私は部屋の中に入っていった。
煙草の匂いと、コーヒーの匂いが入り交じった部屋になってしまった。もう古い家の独特の匂いが、無くなってしまったかのように。
「これだ。」
プリントアウトしていないそのパソコンの画面を覗いてみる。それはいわゆる近親相姦もので、性に無頓着な姉が生意気な弟に無理矢理ながらも処女を奪われ、それから性に目覚めていく話だった。
最初は弟の部屋で、それから学校、姉の会社、公園、海いろんなところで乱れている描写は、女性に受け入れられるだろうか。
「桐。これは、あまりテーマに合っていないわ。男性誌の方で発表したら…。」
すると後ろにいた桐が思ったよりも私の側にいた。振り返ると、キスをしそうなくらい近い。
「近いわ。」
桐の体を押しのけようとした。しかし彼はそこから一歩も引こうとしない。
「桐。」
そのとき彼の顔が近づいてきた。唇を重ねてきたのだ。唇を割り、口内を舌が別の生き物のようにうごめいていた。不覚にもそれが気持ちいいと思えてしまう。
コーヒーと煙草の匂いがするそのキスを。
しかし我に返る。伊勢さんの顔が浮かんだのだ。私はその舌の先を思いっきり噛んだ。
「イタッ!」
思わず桐は私を離す。私が押し出されたのは、資料の上山があるところでそれが崩れてしまう。
そんなことを気にしているしている場合じゃない。必死に立ち上がり、その部屋を出ようと立ち上がろうとした。しかし桐は私の手をつかんだ。
「桐。やめて。」
「やめない。」
振り返る。その桐の表情に、私はぞっとした。それは彼が私を好きだとかそういう感情ではなく、ただ女を求めている。それだけに見えたから。
「やだ…。」
座ったまま後ろに下がる。それでも手は離してくれない。
「桐。」
「俺のものだ。ずっと俺のものだったんだ。」
再びキスを重ねる。口の橋から血が流れ、それでも彼は止めようとしない。
「依。」
名前を呼ぶ。その声も、その手も、温もりも伊勢さんとは違う。しかし、私はそれから逃れられなかった。
手を縛られ、シャツをまくり上げられ、その舌や手が触れる度に、不覚にも声を上げてしまう。
「だめ…。桐…。だめだって…。」
「だめだっていってない。体は正直だ。」
長い愛撫は、伊勢さんでも触れたことのないところまで触れてくる。その背徳がますます桐の気持ちも高揚させてしまったのかもしれない。
やっと一つになったとき、私はすぐにまた達してしまった。それを望んでいたかのように。
「出ていって…。」
絞り出すような声で、私は桐に言う。しかし桐はそれが聞こえていないかのように、またパソコンに向かって仕事を始めていた。
「桐。聞こえている?」
すると桐はコーヒーを口に含むと、少し笑う。
「あんなに乱れてたのに?気持ちよさそうだったけどね。」
ベッドの上の枕を彼めがけて投げる。しかし彼はその行動が予想できていたのか、それを受け止めた。
「出ていかないなら、私が出ていく。」
ベッドから降りて、私は部屋を出ていこうとした。すると彼が追いかけてくる。
「どこへ行くの?伊勢さんのところ?それとも成?」
「あなたには関係ないわ。そうでしょ?」
私は桐をどんな目で見ていたのだろう。ゴミを見るような目で見ていたのだろうか。それとも、性犯罪者のような目で見ていたのか。
「私の恋人は一人だけ。あなたじゃないの。」
すると彼はむっとしたように私の唇にキスをした。そして離したとき、私の目の前で怒鳴りつけるように言う。
「俺のキスの方が気持ちいいだろう。セックスだって…。」
「でも…私は伊勢さんが好きなの。あなたじゃない。」
「はっきり言われたわけじゃない。」
「…。」
「若い女が好きなだけだ。」
「違うわ。」
「いい加減目を覚ませ。」
「目を覚ますのあなたの方よ。」
手をふりほどき、部屋を出ていく。そして桐のいる家を飛び出し、向かった先は、誰もいない伊勢さんの部屋だった。
一人の時は夕方に急に降ってくる雨に絶望することもあったし、寒いときは温かいお風呂が沸くまで寒い思いをしないといけなかった。
今こうして温かい湯船に使っている。それだけで疲れがお湯の中に溶けてしまいそうだった。
しかしこうしてもいられない。
眠ってしまいそうに心地いい湯船を出ると、体を拭いて部屋着に着替えた。そして自分の部屋に戻ろうとしたときだった。
「桐。」
お湯をためるためのポットを持った桐がそこにいた。
「お湯が切れた。」
「あまりコーヒーばかり飲んでも眠れなくなるわ。」
「寝たいときに寝る。今は寝たくない気分だ。」
桐らしい。私はそう思い、その場を離れようとした。
「依。」
「何?」
振り返ると、彼は少し笑っていた。
「話がいいところに来ているんだ。ちょっと覗いてみないか。」
「え?」
「女の意見を聞きたいんだ。今回のは女を対象にした官能小説だし。」
「…仕事は昼間にするっていっているでしょう?今は眠りたいの。」
「ちょっとでいい。」
「…どうしたの?そんな強引に。」
「いいから。」
引きずられるように、私は部屋の中に入っていった。
煙草の匂いと、コーヒーの匂いが入り交じった部屋になってしまった。もう古い家の独特の匂いが、無くなってしまったかのように。
「これだ。」
プリントアウトしていないそのパソコンの画面を覗いてみる。それはいわゆる近親相姦もので、性に無頓着な姉が生意気な弟に無理矢理ながらも処女を奪われ、それから性に目覚めていく話だった。
最初は弟の部屋で、それから学校、姉の会社、公園、海いろんなところで乱れている描写は、女性に受け入れられるだろうか。
「桐。これは、あまりテーマに合っていないわ。男性誌の方で発表したら…。」
すると後ろにいた桐が思ったよりも私の側にいた。振り返ると、キスをしそうなくらい近い。
「近いわ。」
桐の体を押しのけようとした。しかし彼はそこから一歩も引こうとしない。
「桐。」
そのとき彼の顔が近づいてきた。唇を重ねてきたのだ。唇を割り、口内を舌が別の生き物のようにうごめいていた。不覚にもそれが気持ちいいと思えてしまう。
コーヒーと煙草の匂いがするそのキスを。
しかし我に返る。伊勢さんの顔が浮かんだのだ。私はその舌の先を思いっきり噛んだ。
「イタッ!」
思わず桐は私を離す。私が押し出されたのは、資料の上山があるところでそれが崩れてしまう。
そんなことを気にしているしている場合じゃない。必死に立ち上がり、その部屋を出ようと立ち上がろうとした。しかし桐は私の手をつかんだ。
「桐。やめて。」
「やめない。」
振り返る。その桐の表情に、私はぞっとした。それは彼が私を好きだとかそういう感情ではなく、ただ女を求めている。それだけに見えたから。
「やだ…。」
座ったまま後ろに下がる。それでも手は離してくれない。
「桐。」
「俺のものだ。ずっと俺のものだったんだ。」
再びキスを重ねる。口の橋から血が流れ、それでも彼は止めようとしない。
「依。」
名前を呼ぶ。その声も、その手も、温もりも伊勢さんとは違う。しかし、私はそれから逃れられなかった。
手を縛られ、シャツをまくり上げられ、その舌や手が触れる度に、不覚にも声を上げてしまう。
「だめ…。桐…。だめだって…。」
「だめだっていってない。体は正直だ。」
長い愛撫は、伊勢さんでも触れたことのないところまで触れてくる。その背徳がますます桐の気持ちも高揚させてしまったのかもしれない。
やっと一つになったとき、私はすぐにまた達してしまった。それを望んでいたかのように。
「出ていって…。」
絞り出すような声で、私は桐に言う。しかし桐はそれが聞こえていないかのように、またパソコンに向かって仕事を始めていた。
「桐。聞こえている?」
すると桐はコーヒーを口に含むと、少し笑う。
「あんなに乱れてたのに?気持ちよさそうだったけどね。」
ベッドの上の枕を彼めがけて投げる。しかし彼はその行動が予想できていたのか、それを受け止めた。
「出ていかないなら、私が出ていく。」
ベッドから降りて、私は部屋を出ていこうとした。すると彼が追いかけてくる。
「どこへ行くの?伊勢さんのところ?それとも成?」
「あなたには関係ないわ。そうでしょ?」
私は桐をどんな目で見ていたのだろう。ゴミを見るような目で見ていたのだろうか。それとも、性犯罪者のような目で見ていたのか。
「私の恋人は一人だけ。あなたじゃないの。」
すると彼はむっとしたように私の唇にキスをした。そして離したとき、私の目の前で怒鳴りつけるように言う。
「俺のキスの方が気持ちいいだろう。セックスだって…。」
「でも…私は伊勢さんが好きなの。あなたじゃない。」
「はっきり言われたわけじゃない。」
「…。」
「若い女が好きなだけだ。」
「違うわ。」
「いい加減目を覚ませ。」
「目を覚ますのあなたの方よ。」
手をふりほどき、部屋を出ていく。そして桐のいる家を飛び出し、向かった先は、誰もいない伊勢さんの部屋だった。
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