隣の芝生は青い

神崎

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#麻薬のような体#

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 アパートの部屋に帰る。リビングは真っ暗なのは、もう小夜子が眠っているからだと思った。
 結局自分の父親の手を借りてすべては終わった。父親は帰るとき、斉藤の耳元で言う。
「お前は無力だな。いつでも無力だ。」
 長井を始末させるように指示をした父と、その見返りを払うように自分の体を差し出した啓子。結局自分は何もしていなかった。無力だ。
 とりあえずシャワーでも浴びようと、彼はバスルームへ向かう。
 だがそのシャワーを浴びても、そのもやもやは取れなかった。
 バスルームを出て、リビングに戻ってきた。そして小夜子の部屋のドアを見る。ここで小夜子が出てきたらどうするだろう。自分に歯止めが利くとは思えない。押さえきれないまま、彼は彼女を力任せに抱くだろうか。
「……帰ってたんですか?」
 彼女の姿を見ないために、ドアに背を向けていた。だが彼女はドアを開けて彼に声をかけてしまった。何も知らないまま。
「小夜子さん。今は、私に話しかけないでください。」
「……。」
 こんな斉藤を見るのは初めてだった。怒っているのか、悲しんでいるのかわからない。だが放っておくわけにはいかないだろう。彼女は、キッチンへ向かうと冷蔵庫から水を取り出して、コップに注いだ。そして彼の側にあるローテーブルにそれを置く。
「落ち着いたら、話してください。」
 そう言って彼女は自分の部屋に戻ろうとしてドアを開け、もう一眠りしようと思ったときだった。
 ドアを閉めるのを拒否するように、彼はそのドアに手を添えた。
「え?」
「今から抱きたい。激しくしたい。」
 ぞっとした。その暗がりで見る目が、怖いと思った。
「斉藤さん。……やめて下さい。」
「「斉藤さん」ではないと、何度も言ってますよね。小夜子。二人の時は何て呼ぶんですか。」
「……私は今日あなたに抱かれたくはないんです。」
 頭に血が上っている彼に抱かれて何が嬉しいだろう。彼女はその部屋から追い出そうと、彼の体を押しやる。しかしそれは逆効果だった。
 後ろ手でドアを閉められて、その手を掴まれた。そして軽々と彼女をベッドに放り投げた。
「いたっ!」
 スプリングが甘くなっているベッドは、彼女が投げられただけできしむ。そして彼はその彼女の上にのしかかった。暗くしている部屋のベッドサイドのランプをつけると、彼女の少しおびえた表情が見えた。それがさらに彼をそそらせる。
「二人の時は何て呼ぶんですか。」
「……真一さん……ですか。でも母さんがすぐ戻って……。」
「明日いっぱい、啓子さんは戻ってきません。」
 彼は彼女の手を掴み、唇を舐める。すると彼女は観念したように、その唇を軽く開いた。するとおもむろに彼はその唇に舌をねじ込んだ。
「……んっ。ふっう……。」
 シャンプーの匂いが鼻孔をくすぐる。おそらく彼女と同じ匂いのモノ。啓子とは違う。外見で売っている啓子は、シャンプー一つ、トリートメント一つ、こだわりのモノを使うが、彼女はそんなモノに興味はない。
 おそらく斉藤もそうなのだろう。
「いい顔になってきましたね。」
 いつも暗がりでしているその行為だったのに、今日は明かりがある。薄く彼女の表情がとろけてきているのもわかるし、シャツを脱がせ、胸の先の乳首がすでに硬く立ってきているのもわかる。
「イタッ。」
 思わず乳首を噛んだところに力が入ってしまったらしい。お詫びのようにそこを舐めると、彼女はまた声を漏らす。
「小夜子。それ、舐めて下さい。」
 ジーパンのチャックを開けて、下着を取ると、そこには硬くそそり立ったモノがある。それをくわえろということだろう。
「あぁ……。うん……。」
 たどたどしくも、彼女はそれを丁寧にした。
「慣れてますね。一巳君にしていたんですか。」
「……一度、しましたけど……。」
「そういうことも勉強したってことですか。」
 すべては一巳のためというわけだ。そう思うとさらにいらいらしてくる。
「一度出します。」
 彼は彼女の頭を掴み、それを喉の奥まで入れ込む。
「ぐっ……。」
 苦しい。息が出来ない。だが彼は激しく腰を動かし、それを彼女の口内に放出した。
「あっ……。」
 すると彼女の口の中に生温かいモノが注がれた。思わずそれを出そうとしたが、彼はそれを許さなかった。
「飲んで。」
「……。」
 涙目になり、出したいと目で訴えたが、それを許してくれなかった。彼女はそれを喉に流し込む。すると彼は彼女を抱き抱えると、彼の膝の上に載せて抱きしめた。
「小夜子……。」
 愛しているのはこの腕ではない。それはわかっているのに、逆らえない。
「真一さん……。何で……。」
 多少の強引なことはあったが、なぜ今日はこんなにも強く当たるのだろう。
「さんもいらないですよ。」
 そういって彼は彼女のその下に手を伸ばす。するといつもよりも濡れていた。
「私のをくわえながら、あなたはこんなに濡らしていたんですね。淫乱な人だ。」
「……そんなこと……あっ!」
 指を入れられて、感じるところに指を当てられる。すると彼女は彼の首にしがみつくように手を伸ばしてきた。
「ほら。もうこんなになってる。だらしないですよ。」
「そんなこと……いわれてもっ……んっ。あっ!あっ!そこ責められると……。」
「どうなのですか。言って。小夜子。」
 指を下げて、彼は彼女の穴に自分のモノをこすりつけた。それだけでぐじゅぐじゅと彼女の中から切ない音が聞こえる。
「あっ。あっ。」
「入り口もいいんですか。」
 ぞわぞわする。彼女のその表情が。そしてそこをこすられることで、違う快感がおそってくる。
「このまま入りそうですね。どうしますか。入れます?」
「……え?」
「入れたいなら、自分で入れてみて。さ、見てますから。」
 起立したそのモノを、彼女は自分の中に誘い込んだ。入り口はやはり狭く、少しだけ入ったところで彼女は一度止める。
「苦しいです。」
「もっと苦しくなりますよ。小夜子。腰落として。」
 すると彼女は、ゆっくりと腰を落とした。
「ああああ!」
 入れただけなのに、彼女は軽い痙攣を起こしている。
「もうイったんですか。」
 すると彼女は目をつぶり彼にしがみつきながら、首を縦に振る。
「そのまま、じゃあイきまくりましょうね。私は一度出したから余裕はありますし。」
「し……しんい……ち……。あん!ああ!」
 下から突く度に、彼女は乱れて悶えている。その表情は、いつもの彼女ではない。ただの女だった。
「いい。あぁ。小夜子の中。すごく気持ちいい。」
 夜明けまで彼らは繋がりあい、彼女はは何度絶頂を迎え、彼は何度彼女の中に出したのかわからない。
 明日が来なければいい。明日の現実を、彼女に知られなければいい。
 だが朝はやってくる。彼女は目を覚ますと、その横に斉藤がいた。
「朝……。」
 学校は休みだった。休みで良かった。こんな体で人前には出られない。
「おはようございます。」
 目を覚ましたのは、彼女だけではなく斉藤も一緒だった。
「何時間寝れましたかね。」
「さぁ。二時間ってところでしょうか。」
「としたら、今七時ですか。」
「はい。」
「そう……。小夜子。」
 彼は彼女の体に手を伸ばした。
「昨日あんなにしたのに?」
「えぇ。言ったでしょう?あなたの体は麻薬のようだと。」
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