セックスの価値

神崎

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雪深い街

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 自分たちでもって来た酒を自分たちで殆ど空けて、裕太たちは「明日早いから」と言って出て行ってしまった。
 桂にとっては懐かしい名前が沢山出てきた。AV男優として食えるようになれるのはほんの一部で、その殆どが汁男優のまままともな仕事に戻っていったり、水商売に転んだりしている。だがそれもまだいい方だろう。
 殆どが行方しれずになっていた。桂を陥れようとした男も、仲良くしていた男も、今は連絡も付かない。きっと町ですれ違っても彼は気がつかないだろう。それほど容姿も変わっているのだから。
「ねぇ。後悔してる?」
 春川はその気持ちが分かったのかもしれない。お茶を入れて、彼の前に置く。
「AVをやめて、まっとうな役者になるってことか?」
「……そうね。」
「遅かれ早かれそうなることだった。あんたのせいじゃない。あんたこそ後悔していないのか。」
「何が?」
「あんたの性格だったら、模倣されようと、他の女と寝ようと、祥吾さんのところにいたいと思ったんじゃないのか。」
 その言葉に彼女はうつむいた。昨日合った祥吾のことを思い出したのだ。
「……ううん。それはない。模倣されて嬉しいなんて思うことなんかないわ。私は一応作家だし。」
「……何か気になることがあるのか?」
 隠し事はしたくない。おそらく怒るかもしれないが、それでも彼には正直でいよう。
「昨日……先生のところへいったの。服を取りに……。」
「……。」
「先生のそばにはもう新しい女性がいたの。もう私の場所はないってやっと思えた。だけど……。」
「戻りたいのか?」
 彼女はその問いには首を横に振る。
「ううん。複雑だと思ったの。結局その程度だったんだなっておもって。」
 すると桂は彼女の体を抱き寄せた。
「俺にはあんたが必要だ。存在は大きい。」
「うん。私もあなたが必要よ。啓治、キスして。今は何もかも忘れさせてくれる?明日のこともどうでもいいくらい。」
 彼は彼女を少し離し、彼女の唇に軽くキスをする。すると今度は彼女からキスをした。すると彼は押さえられないように、その唇にむさぼるように深くキスをした。舌が絡まると、彼女は彼の首に手を回した。そして彼はそのまま彼女の浴衣の帯に手をかける。
「んっ……。」
 苦しそうに声を上げて、それでも唇を離そうとしない。
 足下に帯が落ち、肩に浴衣がかかっただけになる。その状態で、やっと彼は唇を離した。
「俺も脱がせて。」
 前に帯があるのを見て、彼女はその帯に手をかけた。帯が落ちて、そのたくましい体が現れる。それに顔を寄せると彼は下着に手をかけようとして、その手が止まった。
「どうしたの?」
「聡美っていただろ?昼に会った。」
「あぁ。居酒屋でも会ったわ。」
「高校の時に、初めてやった女。」
「知ってる。」
「どうでも良くてな。セックス誰でもしてるし、誰でもさせてくれれば良かった。あのときからかな。セックスの価値が下がったの。」
「……。」
「図書館にいた女が好きだった。あんたに似てたよ。」
「……私に似てる人って……。」
 どんな人なのだろう。想像がつかなかった。
「清楚だった。キス一つしたことがないんだろうと思ってたのに、あの日、教師とセックスしてた。」
「……。」
「年の離れた男だった。そいつの腕の中で凄いあえいでいたのを聞いてな、それからどうでも良くなった。」
「……今は?」
 体が震える。その女の人と自分を重ねているのだろうかと、彼女は少し怖くなったのだ。
「あんたと出会って、がらっと変わった。もうあんたしか見てないんだ。」
 そういって彼は彼女を少し離すと、左手を握る。そして浴衣の袂から指輪を取り出す。それを薬指にはめた。
「良くも変えてくれたな。」
「……こっちの台詞よ。良く先生から離してくれたわね。」
 額を合わせて笑い会った。そして再びキスをする。唇を離すと、首元に唇を寄せた。そしてそこを軽く吸うと彼女の吐息が漏れる。
「あっ……。」
 下着越しに胸に触れる。そしてその音を感じる。
「……どきどきしてるな。」
「あなたも?」
「あぁ。抱く度に緊張する。」
 胸に耳を当てると、彼の鼓動が聞こえた。
「本当。どきどきしてる。」
「春。」
 彼はそういって彼女を抱き上げて、布団に寝かす。葵は気を利かせて、布団を二つではなくダブルサイズの布団を用意してくれた。
 下着を取ると、大きな胸が目に飛び込んでくる。そこに手を伸ばすと、彼女は顔を背ける。
「何でこっち見ないんだ。」
「恥ずかしい。」
「何を今更。春。こっち見て。」
 おそるおそる見る桂の頬も赤く染まっている。乳房に触れ、その堅くなっている乳首を摘んだ。
「あっ……。」
 ビクッと彼女の体が震える。
「すご……。もうこんなに固い。」
「おかしい。こんなに……啓治……何か……。」
 赤く染まる肌。彼はその乳首を指でいじり、そして唇を乳房に寄せて跡を付けた。
「……やばい。もう入れれるくらい立ってる。」
「うん。そうね……。」
 彼女はその彼のものに手を這わせた。そこには固く反り上がったものがあった。
「あっ……いきなり触るな。」
「下着越しよ?」
「お互い凄い敏感になってるな。やばい。朝までしないと収まらないかもな。」
「でも……家族風呂に入りたい。」
「風呂場でもしよう。」
「怒られるわよ。」
 彼はそういって、彼女のその下着の下に手を伸ばした。
「ああっ!」
 一瞬彼女の手が離れた。それくらい彼女のそこは胸よりもさらに敏感になっていたのだ。
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