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もう一つの恋
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竜がその場で眠ってしまって、桂はやっと一息を付いた。そして店員に声をかける。
「コーヒーもらえますか。」
するとヒロの隣にいた春川もそれに乗っかるように、店員に声をかけた。
「私も貰えますか。」
「コーヒー二つですね。」
そろそろお開きだろう。だが春川の隣に行くことはなかった。春川の隣にはヒロはいなくなったが、真由がずっといる。真由はレズビアンの撮影をしたことがあるとは言っていたが、恋愛対象が女性だとは聞いたことはない。だが邪魔だ。彼はそう思いながら、里香の話に耳を傾けていた。
「里香さん。そういえば結婚するって言ってたね。」
「えぇ。子供もなついてくれてるし、今日も彼が見てくれたからここに来れたのよ。」
「理解があって良かった。」
「えぇ。こういう仕事をしていると、どうしても股が緩いとか、薬でもしてるんじゃないかとかそういうことを言われるけれど、仕事以外で誰とでもセックスする訳じゃないわよ。あなたもそう?」
「昔は節操なかった。オナニーするのが恥だと思ってたこともあったしな。」
「すごいわね。なんか、モテる男って感じ。」
「昔の話だって。今は面倒。」
「今でもモテるでしょ?特にさ、今度普通の映画でるみたいだし、何か騒がれてるの知ってる?」
「周りだけだよ。それに割と普通の映画はレッスンとか、指導とか、話し方とかの指導があったり結構忙しくて、そんなものに耳を傾ける暇がないな。」
「そんなに忙しいと、彼女とも会えないでしょ?」
里香はそう言って煙草に火をつけた。そして春川の方をみる。
「そもそもあまり会える人じゃないから。」
「あれ?本当にいるんだ。カマをかけただけなのに。ふーん。」
「カマをかけたのかよ。まぁいいけど。」
視線の先には春川がいる。彼女は、真由と何かを話しているらしい。
「もしかして……ねぇ。」
「何?」
「あの子、結婚しているって言ってたわよ。確かにレスだって言ってたけど……。」
「人妻はない。」
「それもそうね。あたしも不倫にならないようにしようっと。」
コーヒーが運ばれて、彼はそれを受け取る。そして春川もそれを受け取った。
「もう締めのつもりなんだ。」
「そうね。そろそろ帰らないと。」
「えー?二次会行こうよ。ホスト行きたいって言ってたじゃん。」
ホストクラブの男にも話が聞きたいのは確かだが、今日はやめておこう。春川はちらりと桂をみる。桂は里香と何か話し込んでいた。そして北川も、達哉やアリスと何か話している。ホストクラブへ行こうとかという雰囲気ではないように見える。
「旦那にお使いものを頼まれているの。まだ?ってさっきメッセージ来た。」
「春川さんって、ホント旦那さん好きだよね。」
真由はそう言って、煙草を消した。そしてその隣にいる春樹に声をかける。
「あんたもガンバんなさいよ。」
「何、年上面して。」
「あたしの方が年上よ。」
みんなで外にでて、それぞれタクシーに乗り込んだ。春川も今日は車を家に一旦置いてここまで来たのだ。アリスと北川と達哉。里香と真由とヒロ、裕樹は同じタクシーに。そしてべろんべろんに酔っている竜は桂が家まで送ると言い出した。
「私も行きます。」
春川はそう言って、桂や竜の乗っているタクシーに乗り込んだ。
「別に俺一人でもいいんですけど。」
桂はそう言っていたが、内心嬉しかった。彼女と帰るということは、彼の元へ来ることがあるのかもしれないと。
「そこを右です。」
桂は助手席に乗り、後ろの席には春川と眠っている竜がそこにいた。同じようなマンションが並ぶ通りで、彼は迷うことなくタクシーを一つのマンションに案内した。
桂がそのマンションの入り口に向かい、入ってすぐのところでドアベルを鳴らしていた。おそらく奥さんが来てくれるのだろう。そろそろ竜を起こさないといけない。春川は彼の肩を揺する。
「竜さん。そろそろ起きましょうか。家に着きましたよ。」
すると彼は目を半分開けて、こちらを見た。春川だとわかって、彼は頭をかきむしる。
「あー。人妻かぁ。くそぉ。桂の奴何で……。」
「え?」
ふわっとあくびをして、彼は彼女を横目でみる。
「春川さん。あいつの好きな奴のことを知っている?」
「さぁ。どうしました?」
「人妻だってさ。あいつ不倫願望でもあるのかねぇ。」
ドキッとした。そんなことまで話しているのかと。
「そうでしたか。」
「俺も毎日に近いくらいヤってるけど、本当に感情でヤりたいと思ってんのは妻だけなんだけどな。」
「……意外。一途なんですね。」
「だろ?だから……俺だったら妻が不倫してたなんて知ったら、そいつぶちのめすけどな。」
「感謝をしないといけませんよ。奥様もあなたを信じてるんですから。」
すると向こうから桂に連れられて、体格のいい女性が降りてきた。絵に描いたような「肝っ玉母さん」のような人だった。
「竜生。さっさと降りて。」
竜は引きずられるようにして、タクシーを降りた。
「毎回毎回、こんなに鳴るまで飲んで。バカじゃないのかしら。ありがとうね。桂君。これ。タクシー代。」
「お気遣いなく。ではお疲れさまでした。」
桂はそう言って後部座席に乗り込む。それは春川の隣だった。そしてタクシーはまた走っていく。
「お使いものがあるんですか?」
「……えぇ。今日は帰らないと。」
帰りたくない。そう言っているようだ。ここで肩を抱き寄せて、キスをしたい。だけどそれは出来ないのだ。何があってもタクシーの運転手にばれてしまう。どこから噂が流れるのかわからないのだ。
「あ、すいません。運転手さん。そこで下ろしてください。」
そう言った先は、コンビニだった。
「俺も降ります。精算を。」
桂はそう言ってお金を払う。
「あぁ。桂さん。いくらお支払いすればいいですか?」
「いいんです。さっき竜さんの奥さんからいただいているし。」
それで支払いをさっさと済ませている間、彼女はコンビニに入って行く。そしてすぐに出てきた。どうやらお使いものとは煙草だったらしい。
「煙草が切れそうだから、帰りに買ってきてほしいといわれただけですよ。」
「だったら……そんなに急ぐことは……。」
すると彼女は彼を見上げる。
「すぐに帰らせたいんですか?」
「ルー。」
「ここでは何も出来ません。桂さん。わかっているでしょう?」
「……連れて帰ってもいいんですか?」
すると彼女は少し笑いながらいう。
「二次会に顔を出してすぐ帰るといっておきました。」
「悪い奴ですね。」
それでも良かった。彼は近くにある自分の家に足を進めると、彼女もまた彼を追って足を進める。
「コーヒーもらえますか。」
するとヒロの隣にいた春川もそれに乗っかるように、店員に声をかけた。
「私も貰えますか。」
「コーヒー二つですね。」
そろそろお開きだろう。だが春川の隣に行くことはなかった。春川の隣にはヒロはいなくなったが、真由がずっといる。真由はレズビアンの撮影をしたことがあるとは言っていたが、恋愛対象が女性だとは聞いたことはない。だが邪魔だ。彼はそう思いながら、里香の話に耳を傾けていた。
「里香さん。そういえば結婚するって言ってたね。」
「えぇ。子供もなついてくれてるし、今日も彼が見てくれたからここに来れたのよ。」
「理解があって良かった。」
「えぇ。こういう仕事をしていると、どうしても股が緩いとか、薬でもしてるんじゃないかとかそういうことを言われるけれど、仕事以外で誰とでもセックスする訳じゃないわよ。あなたもそう?」
「昔は節操なかった。オナニーするのが恥だと思ってたこともあったしな。」
「すごいわね。なんか、モテる男って感じ。」
「昔の話だって。今は面倒。」
「今でもモテるでしょ?特にさ、今度普通の映画でるみたいだし、何か騒がれてるの知ってる?」
「周りだけだよ。それに割と普通の映画はレッスンとか、指導とか、話し方とかの指導があったり結構忙しくて、そんなものに耳を傾ける暇がないな。」
「そんなに忙しいと、彼女とも会えないでしょ?」
里香はそう言って煙草に火をつけた。そして春川の方をみる。
「そもそもあまり会える人じゃないから。」
「あれ?本当にいるんだ。カマをかけただけなのに。ふーん。」
「カマをかけたのかよ。まぁいいけど。」
視線の先には春川がいる。彼女は、真由と何かを話しているらしい。
「もしかして……ねぇ。」
「何?」
「あの子、結婚しているって言ってたわよ。確かにレスだって言ってたけど……。」
「人妻はない。」
「それもそうね。あたしも不倫にならないようにしようっと。」
コーヒーが運ばれて、彼はそれを受け取る。そして春川もそれを受け取った。
「もう締めのつもりなんだ。」
「そうね。そろそろ帰らないと。」
「えー?二次会行こうよ。ホスト行きたいって言ってたじゃん。」
ホストクラブの男にも話が聞きたいのは確かだが、今日はやめておこう。春川はちらりと桂をみる。桂は里香と何か話し込んでいた。そして北川も、達哉やアリスと何か話している。ホストクラブへ行こうとかという雰囲気ではないように見える。
「旦那にお使いものを頼まれているの。まだ?ってさっきメッセージ来た。」
「春川さんって、ホント旦那さん好きだよね。」
真由はそう言って、煙草を消した。そしてその隣にいる春樹に声をかける。
「あんたもガンバんなさいよ。」
「何、年上面して。」
「あたしの方が年上よ。」
みんなで外にでて、それぞれタクシーに乗り込んだ。春川も今日は車を家に一旦置いてここまで来たのだ。アリスと北川と達哉。里香と真由とヒロ、裕樹は同じタクシーに。そしてべろんべろんに酔っている竜は桂が家まで送ると言い出した。
「私も行きます。」
春川はそう言って、桂や竜の乗っているタクシーに乗り込んだ。
「別に俺一人でもいいんですけど。」
桂はそう言っていたが、内心嬉しかった。彼女と帰るということは、彼の元へ来ることがあるのかもしれないと。
「そこを右です。」
桂は助手席に乗り、後ろの席には春川と眠っている竜がそこにいた。同じようなマンションが並ぶ通りで、彼は迷うことなくタクシーを一つのマンションに案内した。
桂がそのマンションの入り口に向かい、入ってすぐのところでドアベルを鳴らしていた。おそらく奥さんが来てくれるのだろう。そろそろ竜を起こさないといけない。春川は彼の肩を揺する。
「竜さん。そろそろ起きましょうか。家に着きましたよ。」
すると彼は目を半分開けて、こちらを見た。春川だとわかって、彼は頭をかきむしる。
「あー。人妻かぁ。くそぉ。桂の奴何で……。」
「え?」
ふわっとあくびをして、彼は彼女を横目でみる。
「春川さん。あいつの好きな奴のことを知っている?」
「さぁ。どうしました?」
「人妻だってさ。あいつ不倫願望でもあるのかねぇ。」
ドキッとした。そんなことまで話しているのかと。
「そうでしたか。」
「俺も毎日に近いくらいヤってるけど、本当に感情でヤりたいと思ってんのは妻だけなんだけどな。」
「……意外。一途なんですね。」
「だろ?だから……俺だったら妻が不倫してたなんて知ったら、そいつぶちのめすけどな。」
「感謝をしないといけませんよ。奥様もあなたを信じてるんですから。」
すると向こうから桂に連れられて、体格のいい女性が降りてきた。絵に描いたような「肝っ玉母さん」のような人だった。
「竜生。さっさと降りて。」
竜は引きずられるようにして、タクシーを降りた。
「毎回毎回、こんなに鳴るまで飲んで。バカじゃないのかしら。ありがとうね。桂君。これ。タクシー代。」
「お気遣いなく。ではお疲れさまでした。」
桂はそう言って後部座席に乗り込む。それは春川の隣だった。そしてタクシーはまた走っていく。
「お使いものがあるんですか?」
「……えぇ。今日は帰らないと。」
帰りたくない。そう言っているようだ。ここで肩を抱き寄せて、キスをしたい。だけどそれは出来ないのだ。何があってもタクシーの運転手にばれてしまう。どこから噂が流れるのかわからないのだ。
「あ、すいません。運転手さん。そこで下ろしてください。」
そう言った先は、コンビニだった。
「俺も降ります。精算を。」
桂はそう言ってお金を払う。
「あぁ。桂さん。いくらお支払いすればいいですか?」
「いいんです。さっき竜さんの奥さんからいただいているし。」
それで支払いをさっさと済ませている間、彼女はコンビニに入って行く。そしてすぐに出てきた。どうやらお使いものとは煙草だったらしい。
「煙草が切れそうだから、帰りに買ってきてほしいといわれただけですよ。」
「だったら……そんなに急ぐことは……。」
すると彼女は彼を見上げる。
「すぐに帰らせたいんですか?」
「ルー。」
「ここでは何も出来ません。桂さん。わかっているでしょう?」
「……連れて帰ってもいいんですか?」
すると彼女は少し笑いながらいう。
「二次会に顔を出してすぐ帰るといっておきました。」
「悪い奴ですね。」
それでも良かった。彼は近くにある自分の家に足を進めると、彼女もまた彼を追って足を進める。
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