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人体改造の男
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女性だから、男性だから、話せないことがある。だが彼女はきっとその境のない人なのだ。
彼女が取材をしているところを見たことがある。折しも、AVの撮影の時だった。桂が相手役。女性は、真由という女。ロリータ系の女性と、でかい男の対比がたまらないらしい。
彼女は気難しいといわれている桂にも、レズっ気のある真由の懐にもすっと入っていっていたような気がした。そしてドアの隙間から見えるあの光景。
「マジだ。べとべとしてる。ヤる前にも触っておけば良かった。」
男の裸体にもためらい無く触れる女。それが取材対象だからだろうか。取材だからといってそんなことが出来るのだろうか。
それから彼女が気になっていた。しかし彼女が納品している雑誌に、彼女のことを聞いても「言えない」ということしか聞けない。
かろうじて聞けたのは、既婚者であるということだけ。
それ以上に何か知れないだろうか。そのときだった。
夜の繁華街で、桂と一緒に歩いていた春川を見た。背の高い桂と背の低い春川とは、釣り合いが良くない感じがしたがそれでも彼女は、いつも通り笑っていた。そして桂も笑っている。
何だ。このもやもやした感じは。充はたまらずに彼女に声をかけた。
春川は呆れたように、充を見ていた。部屋にまで上がり込んできた彼は、禁煙だというのを不服そうに見ている。
「部屋にまで来るとはね。」
「あんたのことが知れるまでは追いかけるから。あんたなかなか掴まらないし。」
「……西川さん。あなたいくつ?」
「歳ですか?三十二。」
「若いですね。」
「あんたは?」
「二十五。」
「さらに若ぇ。」
この男が部屋にいれば、仕事も出来ない。風呂にすら入れないのだ。彼女は早く彼が変える方法はないかと画策する。しかし見あたらない。いっそのこと、すべてをばらしてやろうかとも思う。だがそれだけは出来ない。自分がここにいることを知られてはいけないのだ。
だから覆面をつけて、書いていたのに。
「どんだけ経験豊富なの?」
「は?」
「まさか、文章だけで経験はないなんて言わないよな?」
「無いよ。」
「は?」
今度は彼が聞く番だった。
「旦那とはレス歴が長い。たぶん二、三年はしてない。旦那の方はそれなりに相手はいるみたいだけど、私は必要ないから。」
「マ○コにカビが生えるぜ。」
「生えないわよ。バカね。私が文章にしているのは事実だけ。第三者から見て、その事実を文章にしているだけ。悪いわね。何の役にも立てなくて。」
「それであんな文章を?」
「……自分で体験したのだったらもっとリアリティが出るのだろうけど、今はそういうの求められてないし。」
「だったら……俺がしてやろうか?」
「必要ない。」
「相手いねぇんだろ?」
「いらない。」
「欲求不満の人妻だろ?」
「欲求不満ではない。しなくても良いってこと。」
備え付けられているミニ冷蔵庫を開ける。水が入っていた。それは飲んでもかまわないらしい。彼女は棚に入っているコップを取り出すと、水を注いだ。
「ただの肉よ。男は精液を出したいだけ。女は穴を埋めて欲しいだけ。」
「すげぇ言いようだな。あんた、セックスでイったこと無いの?」
その言葉に彼女はふと桂を思い出した。
桂とするまでは、本気でそう思っていた。だが違う。自分の体が別人になったように、声を上げ、彼を求め、もっと打ち込んで欲しいと懇願した。
彼もそう思ってくれていたに違いない。
「あるわ。」
「それでもそれを言えるんだな。」
「一時の気の迷いでしょ。」
水を口に含むと、コップを置いた。
「なぁ。男と女が密室にいて、何にもないってあり得るかな。」
「あるわ。あなたが本当に私を取材対象だと思っているならね。」
彼はゆっくりとキッチンに入ってくる。そして彼女の背中側に立つ。
「取材対象ね。俺はあんたがただの隙だらけの女にしか見えねぇ。」
すると彼は彼女の肩を掴む。しかし彼女はそれをふりほどいた。
「やめて。」
「説得力ねぇよ。」
「……だったら私もあなたを取材対象としてみるわ。聞かせてくれる?あの外国での女性の扱いについて。」
「……あのことは……。」
「割礼でもしていたところを見たの?」
「やめろ。」
彼は頭を押さえて、彼女から離れた。
「無理矢理にでも見て、追い出されたのではないの?それでもジャーナリストとして、あなたはそこを取材しようとした。誰もが止めるのを聞かずに。だから……。」
「やめろって言ってんだろ!襲うぞ。」
「出来ないわよ。あんたがこの国にいることだけで、それがなにを意味しているか安易に想像着くわ。踏み込んではいけないところもあるのに、それに踏み込んでしまったのでしょう?」
がたん!
コップは割れなかった。だが水をこぼして、床に転がる。キッチンに押しつけられて、彼は力ずくで彼女を押し倒されたのだ。強気で彼を見ている。だがその目はおびえているようにも見えた。
「……どうせ一人でしてんだろ?本物の方がいいに決まってる。ヤってやるよ。」
そういって彼は彼女の口元にまた唇を寄せようとした。彼女は抵抗しない。そのまま素直に、彼は彼女の唇に唇を重ね、軽く触れた。だがすぐ唇に、痛みを感じて彼は彼女を離す。
その隙に彼女はそこを逃げ出して、ポケットに入っていた携帯電話に手を伸ばす。
「来て!」
するとすぐにドアが開いた。そこには桂と達哉の姿がある。
「何だ。お前等。」
すると達哉は彼の腕をつかみ、後ろに捻りあげる。
「いてぇ!」
すると桂は座り込んで彼を見上げる。
「誰に頼まれたんだ。言えよ。」
「……。」
その表情に怖いモノなどないと思っていた、達哉も、そして充もぞっとした。
彼女が取材をしているところを見たことがある。折しも、AVの撮影の時だった。桂が相手役。女性は、真由という女。ロリータ系の女性と、でかい男の対比がたまらないらしい。
彼女は気難しいといわれている桂にも、レズっ気のある真由の懐にもすっと入っていっていたような気がした。そしてドアの隙間から見えるあの光景。
「マジだ。べとべとしてる。ヤる前にも触っておけば良かった。」
男の裸体にもためらい無く触れる女。それが取材対象だからだろうか。取材だからといってそんなことが出来るのだろうか。
それから彼女が気になっていた。しかし彼女が納品している雑誌に、彼女のことを聞いても「言えない」ということしか聞けない。
かろうじて聞けたのは、既婚者であるということだけ。
それ以上に何か知れないだろうか。そのときだった。
夜の繁華街で、桂と一緒に歩いていた春川を見た。背の高い桂と背の低い春川とは、釣り合いが良くない感じがしたがそれでも彼女は、いつも通り笑っていた。そして桂も笑っている。
何だ。このもやもやした感じは。充はたまらずに彼女に声をかけた。
春川は呆れたように、充を見ていた。部屋にまで上がり込んできた彼は、禁煙だというのを不服そうに見ている。
「部屋にまで来るとはね。」
「あんたのことが知れるまでは追いかけるから。あんたなかなか掴まらないし。」
「……西川さん。あなたいくつ?」
「歳ですか?三十二。」
「若いですね。」
「あんたは?」
「二十五。」
「さらに若ぇ。」
この男が部屋にいれば、仕事も出来ない。風呂にすら入れないのだ。彼女は早く彼が変える方法はないかと画策する。しかし見あたらない。いっそのこと、すべてをばらしてやろうかとも思う。だがそれだけは出来ない。自分がここにいることを知られてはいけないのだ。
だから覆面をつけて、書いていたのに。
「どんだけ経験豊富なの?」
「は?」
「まさか、文章だけで経験はないなんて言わないよな?」
「無いよ。」
「は?」
今度は彼が聞く番だった。
「旦那とはレス歴が長い。たぶん二、三年はしてない。旦那の方はそれなりに相手はいるみたいだけど、私は必要ないから。」
「マ○コにカビが生えるぜ。」
「生えないわよ。バカね。私が文章にしているのは事実だけ。第三者から見て、その事実を文章にしているだけ。悪いわね。何の役にも立てなくて。」
「それであんな文章を?」
「……自分で体験したのだったらもっとリアリティが出るのだろうけど、今はそういうの求められてないし。」
「だったら……俺がしてやろうか?」
「必要ない。」
「相手いねぇんだろ?」
「いらない。」
「欲求不満の人妻だろ?」
「欲求不満ではない。しなくても良いってこと。」
備え付けられているミニ冷蔵庫を開ける。水が入っていた。それは飲んでもかまわないらしい。彼女は棚に入っているコップを取り出すと、水を注いだ。
「ただの肉よ。男は精液を出したいだけ。女は穴を埋めて欲しいだけ。」
「すげぇ言いようだな。あんた、セックスでイったこと無いの?」
その言葉に彼女はふと桂を思い出した。
桂とするまでは、本気でそう思っていた。だが違う。自分の体が別人になったように、声を上げ、彼を求め、もっと打ち込んで欲しいと懇願した。
彼もそう思ってくれていたに違いない。
「あるわ。」
「それでもそれを言えるんだな。」
「一時の気の迷いでしょ。」
水を口に含むと、コップを置いた。
「なぁ。男と女が密室にいて、何にもないってあり得るかな。」
「あるわ。あなたが本当に私を取材対象だと思っているならね。」
彼はゆっくりとキッチンに入ってくる。そして彼女の背中側に立つ。
「取材対象ね。俺はあんたがただの隙だらけの女にしか見えねぇ。」
すると彼は彼女の肩を掴む。しかし彼女はそれをふりほどいた。
「やめて。」
「説得力ねぇよ。」
「……だったら私もあなたを取材対象としてみるわ。聞かせてくれる?あの外国での女性の扱いについて。」
「……あのことは……。」
「割礼でもしていたところを見たの?」
「やめろ。」
彼は頭を押さえて、彼女から離れた。
「無理矢理にでも見て、追い出されたのではないの?それでもジャーナリストとして、あなたはそこを取材しようとした。誰もが止めるのを聞かずに。だから……。」
「やめろって言ってんだろ!襲うぞ。」
「出来ないわよ。あんたがこの国にいることだけで、それがなにを意味しているか安易に想像着くわ。踏み込んではいけないところもあるのに、それに踏み込んでしまったのでしょう?」
がたん!
コップは割れなかった。だが水をこぼして、床に転がる。キッチンに押しつけられて、彼は力ずくで彼女を押し倒されたのだ。強気で彼を見ている。だがその目はおびえているようにも見えた。
「……どうせ一人でしてんだろ?本物の方がいいに決まってる。ヤってやるよ。」
そういって彼は彼女の口元にまた唇を寄せようとした。彼女は抵抗しない。そのまま素直に、彼は彼女の唇に唇を重ね、軽く触れた。だがすぐ唇に、痛みを感じて彼は彼女を離す。
その隙に彼女はそこを逃げ出して、ポケットに入っていた携帯電話に手を伸ばす。
「来て!」
するとすぐにドアが開いた。そこには桂と達哉の姿がある。
「何だ。お前等。」
すると達哉は彼の腕をつかみ、後ろに捻りあげる。
「いてぇ!」
すると桂は座り込んで彼を見上げる。
「誰に頼まれたんだ。言えよ。」
「……。」
その表情に怖いモノなどないと思っていた、達哉も、そして充もぞっとした。
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