セックスの価値

神崎

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海に叫ぶ

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 そそり立った肉棒を突き刺して、腰を打ち付ける。そのたびに女優は高くあえいでいた。
「あっん……あん!先生……もっと……。もっと打ち付けてっ。んっ!」
「ほら。こっちもくわえて。口がお留守になってる。」
 竜も白衣を着たまま、看護師に扮した女優に肉棒をくわえさせている。全裸ではなく、白衣を着たまま。そして女優も頭にナースキャップをかぶったままだがほとんど全裸の状態で、診察台の上であえいでいる。
「あっ!ああああ!」
 ひときわ高くあえぎ、彼女は達してしまったようだ。それを見て、桂はそこから抜き取る。そしてそれを見て竜がさらに彼女の中に入れる。また大きさの違うモノを打ち付けられて、声を枯らすほど喘いでいた。
 自分がイかなくてもいい。彼女がイっている体、表情をカメラが撮るのだ。その間、彼は自分の肉棒を彼女に握らせる。
 やがて彼女の顔に射精する。白い液体が、彼女の綺麗な顔を汚した。
「舐めろ。」
 そう言ってその顔にまた肉棒を押しつけて、舐めさせる。そしてやっと離し、満足そうな彼女の顔をしばらく映すと、監督の声が聞こえる。
「OK!」
 桂は白衣を脱ぎ捨てると、バスローブを渡されそれを羽織った。竜も同じようにそれを羽織る。女性はまだ動けないようで、フォローするスタッフの女性がタオルや濡れたティッシュを持って来ていた。
「桂。お前なんかすげぇな。」
 体を拭いている桂に竜が声をかけてきた。
「何が?」
「なんか、鬼気迫ってるっていうかさ。確かに今日はSっぽくやれっていう指示だったけど、女がちょっとビビってたぜ。」
 確かにそう言われた。でもだからと言ってそんなに酷くするつもりはなかったのだが、そうとらえられたのなら仕方がない。
「不完全燃焼っていうか。」
「マジで?どんだけ絶倫なんだよ。」
 下品に笑いながら、竜と共に桂は控え室へ戻っていった。今日は二人が同じ控え室を使う。セットで使われた病院の診察室を抜けると、普段通りの風景が目に映る。
「あと何発いけるんだよ。」
「一発でいいんですけどね。。」
 控え室のドアを開けて、ソファに置いてあったバッグを手にする。そして携帯電話を見ると、ため息を付いた。彼女からの連絡は相変わらずない。
 デートをすると言う約束をしていたのに、彼女は忘れてしまったのだろうか。それとも自分から言わないといけないのだろうか。
 携帯電話をしまうと、スケジュール帳をみる。無理だな。撮影、撮影、そのあと「薔薇」の顔合わせ、そのためのレッスン。付け焼き刃じゃないだろうか。そのためにはまた彼女に会う暇はない。
「……休みが欲しい。」
「お前、お盆も実家帰らなかったんだろ?死んだばーちゃんが泣くぜ。枕元に立ってさ。」
「竜さんそんなこと信じてんの?」
「俺んち、実家寺だしな。」
「ふーん。」
 スケジュール帳をバックにしまうと、竜は意味ありげに桂に近づく。そしてささやくように耳元で聞いてきた。
「お前、女出来た?」
「は?」
 驚いたように彼をみる。
「女に会えねぇから、休みが欲しいんだろ?」
「違いますよ。」
 それだけを言うと彼はタオルを持つ。
「シャワー先使っていいっすか。」
「あぁ。」
 桂は確かに変わった。撮影の時こそ別人のように役になり切るし、役が無い役であれば、あくまで優しい自分を演じているようだ。しかしいったんカメラが止まると昔は無気力な感じに見えていたのに、今はどことなく生き生きしているように見える。
 確かにこんなAV男優ではない仕事が出来たと言って張り切ってはいたが、それにしても艶っとしているような気がした。
 そのとき携帯電話のバイブ音がした。自分のモノかと思って竜は、自分のバックの携帯電話を取り出す。しかし自分のではない。だったら……桂のか。女かもしれない。その好奇心が、たまたま出ていた携帯電話の着信相手に視線を移す。
”母さん”
 彼は舌打ちをして、それを見なかったことにした。

「あー。今度来るって?んー。いつ?九月?わかった。空けとく。え?あーはいはい。わかった。」
 シャワーからあがってきた桂は、携帯電話で母親と話していた。竜はその間シャワーへ向かっている。
 誰も居ないその部屋で、彼はメッセージを打った。
「会いたい。」
 送信ボタンを押そうとして、止める。そしてメッセージを消去した。彼女も忙しい人だ。旦那の相手、旦那の助手、家のこと、自分の仕事。寝る暇がないほどだと思う。だから迷惑はかけたくない。第一、旦那に気づかれてはいけないのだ。
「あー。」
 会いたい。まるで初恋だ。こんなに強烈に誰かを好きになったことがあるだろうか。
 携帯電話をしまい、彼は服に着替えた。そのとき部屋のドアがノックされる音がする。
「はい。」
 ドアを開けると、一人の男性が立っていた。それは少し小太りで、無精ひげの男。
「桂さん。お久しぶりです。覚えてますか。」
「あー。久しぶり。ライターだっけ?確か芹沢さん。」
「そうっす。あ、竜さんも居ます?」
「竜さん、まだシャワー浴びてて。もう少しで来ると思うけど。確かインタビューでしたっけ?中でいいんですか?」
「えぇ。まさか外でそんな話できないでしょ?」
「確かに。」
 そう言って芹沢を中に入れた。
「でもあれですよね。」
「何かあった?」
「いや。さっきですよ。ここ来る前にちょっと聞きたいことをまとめるのにカフェに居たんですけどね。女の声で「フェラチオ」とか言ってる声が聞こえてさ。最近の若い女って、恥じらい無いっすね。」
 彼の言葉に桂は動きを止めた。そんな言葉を恥ずかしくもなく言える女は、彼の中で一人しか居ない。
「ふーん。別にいいんじゃねぇの?」
「でもほら、恥ずかしそうに言うのが男心くすぐるって言うか。あんなに堂々と言われると萎えるわ。」
「どんな奴?」
「男連れだったな。若い男でスーツでさ、女は若そうに見えるけどおばちゃんみたいだった。」
 決定的。それは彼女だ。そして男と一緒にカフェに行くような仲のやつがいる。それを想像しただけでも腹が立つ。
 そのとき竜が戻ってきた。まだバスローブ姿だったが、芹沢の姿を見てにっこりと笑う。
「ひさしぶりー。いつ以来だっけ。」
「ですねぇ。インタビューさせてくださいよー。」
「ネタに詰ってんな。何話せばいいんだよ。」
「女はどうやって落とすか。」
「そんなん、桂にだけに聞けよ。」
 竜は笑いながら服に着替え始めた。
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