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倉庫の窓を開けて脚立を使い、普段在庫として保管してある備品を棚から下ろしていく。そして天井に張った蜘蛛の巣や埃を落とし、棚に溜まった埃を払って雑巾で拭き上げていく。
その間、清子はその既存の在庫を数えていった。棚卸しの意味も込めて、やることは多いのだ。
「どう?十六時までに終わりそう?」
史が倉庫をのぞいてくる。マスクをした社員が煙そうに、掃除をしていた。その中に居る清子もマスクをして数を数えながら、史の問いに答えてくれる。
「終わると思いますよ。」
「わかった。最大は十七時までだから、早く終わる分には助かるよ。」
それにしてもよくこんなに物がここに入っていたなと感心する。片隅には、試供品としてもらった古い型のディルドなんかもある。
「懐かしいな。これ。」
「あー。今はこれの後継機だろ?でもこっちの方が割といい反応するみたいだけど。」
「メーカーも必死だよな。こういうおもちゃも売っていかないといけないし。」
「ローションはさすがに捨てようぜ。使用期限とかあるのかね。こういうの。」
男たちがそういいながら、捨てるものなどをより分けている。試供品で貰った物は、数に入らないのだ。
「お。これまだ新しいな。徳成さんこれいらない?」
そういって男がローションが入った筒を手にする。
「ローション?化粧水か何かですか?私、化粧水もつけないから……。」
すると男たちが顔を見合わせて笑う。
「違うよ。これ、セックスの時に使うんだよ。」
「あぁ。そういうローションですか。」
「編集長のでっかいだろ?きつくない?」
大きいとか小さいとかはよくわからない。だが毎回自分ではないように感じてしまう。
「潤滑油みたいなものですね。」
すると外から帰ってきた晶が、倉庫をのぞき見た。
「お、だいぶ進んだな。」
晶は他の部署の依頼で、外に出ていたのだ。この年末ではなくては撮れないモノがあるらしい。
「どうだった?市場。」
「あ、A区だろ?すげぇ人。明日はもっとひどいんだろうな。」
「大晦日だし、明日の方が人が多いだろ?明日の方が良かったんじゃねぇのかな。」
「明日は会社も休みだし、そこまでがつがつしなくていいんだろうよ。写真渡してきたし。ん?清子何持ってんだ?」
清子が手にしているモノを見て、晶はにやっと笑う。
「ローションか。古いモノだったら、肌が荒れるぞ。」
「そうでもないヤツ。あれだったら持って行っても良いって言ってるんだよな。ほら、編集長のでかいから。」
その言葉に晶も苦笑いをする。
「そうだったな。でも清子には必要ないだろ?」
「え?」
「ローションいらないくらい濡れるだろうし。」
さすがにその言葉はない。清子は晶にそのローションを手渡して言う。
「あなたが使ったらどうですか?」
「俺?俺が使ってどうすんだよ。」
「ア○ルにも使えるそうですよ。掘って貰ったら?」
その言葉に掃除をしていた男たちが笑う。
「ははっ。徳成さんも言うようになったね。」
「そうでなくちゃ、エロ本の編集なんか出来ないよ。」
対して晶は不機嫌そうに、ローションを清子に返す。
今日、清子を連れて帰る。そう思っていたが、その隙がない。やはりあの会議室で、やっとくべきだったか。晶はそう思いながら、倉庫をあとにする。
オフィスに戻るとそこも大掃除をしていて、史はバックナンバーをまとめていた。毎年、バックナンバーはまとめて業者に引き取って貰う。
中古の雑誌だが、それでもバックナンバーが欲しいという人が利用するのだろう。ゴミになるよりはましだ。
オフィスに保管しているのは、毎月二、三冊のみ。史は昨年度のモノをまとめている。
「結構量があるな。」
史の所へやってくると、史は少し笑って晶に言う。
「久住も自分の机を掃除しろよ。十六時までだから。」
「俺、普段から掃除してるから、あまりねぇんだよ。」
「だったら、他の人のを手伝って。倉庫はどうだった?」
「……その前にさちょっと話があるんだけど、あとで時間ねぇかな。」
「話?」
史は手を止めて晶の方を見る。もしかしたら、今朝のことを告白するのかもしれない。二人でどこかへ行っていたと。今日は気が回らなかったが、仕事が終われば冷静になれる。
「良いよ。終わったらな。」
そのとき倉庫の掃除を終えた三人が戻ってくる。狭い倉庫なので掃除できる人数がぎりぎりだったのだろう。
「誰かディルドいる?ローションもあるけど。」
「あーあたし、あれ欲しいんだ。」
女性社員が手を止めてその箱に近づいていく。それを見て史は呆れたようにそちらを見る。女性だからと言って、あまり大人のおもちゃなどに慣れて欲しくないと思っていたのだ。
清子を見ると、清子の手には何も握られていない。やはり興味がなかったのだろう。少しほっとした。
今度道具を使ってみようか。縛ってみるのも良いかもしれない。初めては自分がやってみたいと思うのだ。だが本当の初めては史ではない。
このうだつの上がらないぼさぼさの髪を持ったこの男が、清子の初めてを奪ったのだ。それが許せない。
「あれ?お前、ディルドもってねぇの?」
晶が聞くと、清子は首を横に振る。
「必要ないですよ。」
「知ってる?ア○ニー用のディルド。」
「自分でやってください。」
セクハラぎりぎりのような会話を晶としている。気のせいかもしれないが、今日は晶と距離が近い気がしていた。それを清子もいやがっていない。
「了はいらないのか?」
晶が了にそう声をかけると、了は首を傾げた。
「良いよ。俺は。」
「カッコつけやがって。」
晶がそういうと、了は少し笑っていった。
「家にあるから。」
「え?」
了はそういってディルドを手にする。
「電マ無いんですか?」
「それは、電気屋に行った方が良いよ。」
「うちの調子が悪いから、やっぱ防水じゃないといけないですね。あいつすぐ潮噴くし。」
了がここにいたのは昨日からだ。だが涼しい顔をして興味がないふりをしていただけだったのを初めて知る。
その間、清子はその既存の在庫を数えていった。棚卸しの意味も込めて、やることは多いのだ。
「どう?十六時までに終わりそう?」
史が倉庫をのぞいてくる。マスクをした社員が煙そうに、掃除をしていた。その中に居る清子もマスクをして数を数えながら、史の問いに答えてくれる。
「終わると思いますよ。」
「わかった。最大は十七時までだから、早く終わる分には助かるよ。」
それにしてもよくこんなに物がここに入っていたなと感心する。片隅には、試供品としてもらった古い型のディルドなんかもある。
「懐かしいな。これ。」
「あー。今はこれの後継機だろ?でもこっちの方が割といい反応するみたいだけど。」
「メーカーも必死だよな。こういうおもちゃも売っていかないといけないし。」
「ローションはさすがに捨てようぜ。使用期限とかあるのかね。こういうの。」
男たちがそういいながら、捨てるものなどをより分けている。試供品で貰った物は、数に入らないのだ。
「お。これまだ新しいな。徳成さんこれいらない?」
そういって男がローションが入った筒を手にする。
「ローション?化粧水か何かですか?私、化粧水もつけないから……。」
すると男たちが顔を見合わせて笑う。
「違うよ。これ、セックスの時に使うんだよ。」
「あぁ。そういうローションですか。」
「編集長のでっかいだろ?きつくない?」
大きいとか小さいとかはよくわからない。だが毎回自分ではないように感じてしまう。
「潤滑油みたいなものですね。」
すると外から帰ってきた晶が、倉庫をのぞき見た。
「お、だいぶ進んだな。」
晶は他の部署の依頼で、外に出ていたのだ。この年末ではなくては撮れないモノがあるらしい。
「どうだった?市場。」
「あ、A区だろ?すげぇ人。明日はもっとひどいんだろうな。」
「大晦日だし、明日の方が人が多いだろ?明日の方が良かったんじゃねぇのかな。」
「明日は会社も休みだし、そこまでがつがつしなくていいんだろうよ。写真渡してきたし。ん?清子何持ってんだ?」
清子が手にしているモノを見て、晶はにやっと笑う。
「ローションか。古いモノだったら、肌が荒れるぞ。」
「そうでもないヤツ。あれだったら持って行っても良いって言ってるんだよな。ほら、編集長のでかいから。」
その言葉に晶も苦笑いをする。
「そうだったな。でも清子には必要ないだろ?」
「え?」
「ローションいらないくらい濡れるだろうし。」
さすがにその言葉はない。清子は晶にそのローションを手渡して言う。
「あなたが使ったらどうですか?」
「俺?俺が使ってどうすんだよ。」
「ア○ルにも使えるそうですよ。掘って貰ったら?」
その言葉に掃除をしていた男たちが笑う。
「ははっ。徳成さんも言うようになったね。」
「そうでなくちゃ、エロ本の編集なんか出来ないよ。」
対して晶は不機嫌そうに、ローションを清子に返す。
今日、清子を連れて帰る。そう思っていたが、その隙がない。やはりあの会議室で、やっとくべきだったか。晶はそう思いながら、倉庫をあとにする。
オフィスに戻るとそこも大掃除をしていて、史はバックナンバーをまとめていた。毎年、バックナンバーはまとめて業者に引き取って貰う。
中古の雑誌だが、それでもバックナンバーが欲しいという人が利用するのだろう。ゴミになるよりはましだ。
オフィスに保管しているのは、毎月二、三冊のみ。史は昨年度のモノをまとめている。
「結構量があるな。」
史の所へやってくると、史は少し笑って晶に言う。
「久住も自分の机を掃除しろよ。十六時までだから。」
「俺、普段から掃除してるから、あまりねぇんだよ。」
「だったら、他の人のを手伝って。倉庫はどうだった?」
「……その前にさちょっと話があるんだけど、あとで時間ねぇかな。」
「話?」
史は手を止めて晶の方を見る。もしかしたら、今朝のことを告白するのかもしれない。二人でどこかへ行っていたと。今日は気が回らなかったが、仕事が終われば冷静になれる。
「良いよ。終わったらな。」
そのとき倉庫の掃除を終えた三人が戻ってくる。狭い倉庫なので掃除できる人数がぎりぎりだったのだろう。
「誰かディルドいる?ローションもあるけど。」
「あーあたし、あれ欲しいんだ。」
女性社員が手を止めてその箱に近づいていく。それを見て史は呆れたようにそちらを見る。女性だからと言って、あまり大人のおもちゃなどに慣れて欲しくないと思っていたのだ。
清子を見ると、清子の手には何も握られていない。やはり興味がなかったのだろう。少しほっとした。
今度道具を使ってみようか。縛ってみるのも良いかもしれない。初めては自分がやってみたいと思うのだ。だが本当の初めては史ではない。
このうだつの上がらないぼさぼさの髪を持ったこの男が、清子の初めてを奪ったのだ。それが許せない。
「あれ?お前、ディルドもってねぇの?」
晶が聞くと、清子は首を横に振る。
「必要ないですよ。」
「知ってる?ア○ニー用のディルド。」
「自分でやってください。」
セクハラぎりぎりのような会話を晶としている。気のせいかもしれないが、今日は晶と距離が近い気がしていた。それを清子もいやがっていない。
「了はいらないのか?」
晶が了にそう声をかけると、了は首を傾げた。
「良いよ。俺は。」
「カッコつけやがって。」
晶がそういうと、了は少し笑っていった。
「家にあるから。」
「え?」
了はそういってディルドを手にする。
「電マ無いんですか?」
「それは、電気屋に行った方が良いよ。」
「うちの調子が悪いから、やっぱ防水じゃないといけないですね。あいつすぐ潮噴くし。」
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