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来訪
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清子は喫煙所へ向かうと、いらついたように煙草に火をつけた。そして煙を吐き出すと、昔を思い出していた。
晶と了は年の差があまりない。二十五の晶と了は二十三くらいだと思う。晶と茂が半分しか血が繋がっていないのと同じく、晶と了も半分しか血は繋がっていない。だからだろう。茂と了はよく似ている。
あの男の為に晶は危ない橋を渡ってまで金を無心していたのだ。
してもらって当然だと思っているのだろうか。だとしたら大きな勘違いをしている。
そのときポケットに入れていた携帯電話が鳴る。清子はそれを手にすると、相手は我孫子だった。
「もしもし……。」
我孫子はこの会社に沢木が来ること走っていた。そして清子とぶつかるだろうなと言うことはだいたい予想をつけていたらしい。
「あんな「男」を全面に出したような男は、お前嫌いだもんな。」
「「男」を全面に出すのを悪いと思ったことはありませんよ。でも……いい歳してあんなにちゃらちゃらしてるのはどうも……。」
「いい歳って言っても、あいつまだ三十五だぞ。」
史と同じ歳なのか。それにしては全く落ち着きがない。
「半年だろ?それから在宅勤務に移すって言ってたし、半年くらい辛抱すればいいだろ?」
「まぁ……我慢しますよ。仕事ですから。」
「やっとお前らしさがでたな。」
「え?」
灰を落として、清子は意外そうに我孫子に聞いた。
「前だったら「関係ない」「関わらない」ってずっと言ってたのに、最近さ、お節介ばっかしてんじゃねぇか。」
「……そう見えますか?」
「見えるね。何だよ。この前のヤクザと関わった社員の尻拭いのための弁護士って。」
「それは……。」
晶のためだった。だが晶が必死に稼いで、弟のためと言っていた弟はあんな人物だったのだ。紹介しなければよかったと、今は後悔していた。
「いいか?お前はヤクザなんかと関わるなよ。弁護士だって無償でやってんじゃねぇからな。」
「わかりました。」
「変なサイトには関わらないことだ。」
電話を切ると、清子はため息をついた。そして煙草を消すと、喫煙所を出てきた。するとエレベーターから晶が上がってくる。
「清子。」
「……。」
「なにいきなり疲れてんだよ。」
「了君が来てるから。」
「了?うちの?へ?何であいつ来てんの?」
晶は知らなかったのか。清子は少しため息をついて、「pink倶楽部」の編集部に了と優が来たことを言った。
「へぇ。あいつエンジニアとか言ってたんだけど、お前と同じような仕事か。」
「大学がそういう関係だってんでしょうね。」
一番苦手なタイプだ。学歴があって、清子のように学がなく事故努力した人を卑下してみることもある。
特に了はその典型的なタイプだろう。昔から性格は変わっていない。
「まぁ、お前、半年くらいしかいないんだろ?我慢しろよ。」
我孫子と同じようなことを言っているな。清子はそう思いながら、自販機に向かう。
「コーヒー?」
「えぇ。」
「俺にも買って。」
「何でですか。」
「けち。」
仕方ないな。そう思いながら、自販機のボタンを押して携帯電話をかざす。
「お、了。」
するとエレベーターから上がってきた男に、清子は顔をひきつらせた。
「……晶兄。」
「お前こっちの会社に来るんだって。言ってくれればいいのに。」
「俺は年明けから。沢木さんは今週から入るみたいだけど。」
ちらっと清子をみる。すると清子は選んだコーヒーを手にして、その様子を見ていた。
「清子さん。波風立たせないでくれって沢木さんから言われてる。だから、あんたとは衝突したくない。でも高校だって満足に行ってない人にでかい顔されたくないってのは本音。」
すると清子は了を見上げていった。
「そういう方って結構見てきました。いろんなところに派遣されましたからね。でも正直、そういう方に限って何も知らない。」
「俺が無能だっていいたいのか?」
了はムキになって清子に突っかかる。だが清子は冷静に言う。
「我孫子さんから講義を受けたことは?」
「あの人の講義取ってなかったからな。あの人の取ると単位が取れるものも取れなくなるっていう噂だったし。」
「だったら……滝口教授や江口教授は?」
「江口教授のは受けたことはあるけど……。」
どうしてそんな教授のことまで知っているのだろう。大学へ行っていないというのは嘘なのだろうか。そう思うくらい清子の知識が広かった。
「清子。今の全部大学の教授の名前?」
「そうですね。大学で外部講師をしながら研究所に所属している方です。私はそういう方の講習しか受けられなかったですが。江口教授の講義は、主にプログラムの中でのC言語に特化してます。ウィルス関係も強いですね。年明けに慎吾さんと講義へ行こうと話をしていますが……。」
ほとんどわからない言葉で、晶は首を傾げる。だが了はぐっと唇を噛んだ。こんな女性がどうしてそんなことまで知っているのだろうか。
「慎吾もそのなんちゃら言語ってのとか知ってるのか?」
「私よりも詳しいですよ。私が特化しているのは、ウェブ関係のトラブルとかそういった関係です。」
「あー確かにそうかも。いつか言ってたな。で、了。お前は何が詳しいんだ。」
晶は無神経に了に聞く。すると了はぐっと言葉に詰まった。
「まだ若いんですから、これからじゃないんですか。沢木さんは、ウィルス関係に特化していると我孫子さんから聞きました。」
「ふーん。だったら、清子がいるうちに聞いておいた方がいいかもな。半年後にはいなくなるんだろ?お前。」
「そうですけど……私なんかに教わることはありませんよ。大学をでていらっしゃるのですから。」
いなくなる?どう言うことだろう。清子はいなくなるのだろうか。
「清子さん、いなくなるんですか?」
「半年後には在宅勤務です。それでいいと言っていたので。」
「家って……。」
実家に帰るのだろうか。実家というと、あの大きいが幽霊屋敷みたいな家だろうか。
「だからあまり私には関わることはないのでしょうね。そちらはそちらで頑張ってください。」
その言葉にさらに了のいらつきが高まってくる。
「で、お前、何しにきたの?この階に。」
「あぁ。そうだった。飲み会の件ですけど、今日がやっぱいいみたいです。ほかの人たちも残った雑務があるし、沢木さんもどれくらい出来るのか知りたいし、後どんな人間なのか知るための飲み会だから。」
「……わかりました。出席にしておいてください。」
面倒だな。そう思いながら、清子は晶の方をちらっとみる。晶は関心がなくなったのか、自販機の方を見ている。
「コーヒーいるんですか?」
「マジでおごってくれるのか?」
「仕方ないでしょ?どれですか?」
「じゃあ、これでいいわ。」
晶はボタンを押すと、清子はアプリを起動させて携帯電話をかざす。
「お前、相変わらずブラックなんだな。あまりコーヒーばっか飲むと貧血になるぞ。」
「え?そうなんですか?」
「鉄分を吸収しない事もあるらしいし。お茶の方がいいらしいけどな。」
「今度から水にしよう。」
「だな。男は貧血の心配ってあまりねぇけどな。」
その様子を了は見ながら、さっき史を見たとき清子は史を頼っているように見えたが、晶とは対等に見える。やはりこの二人が付き合っているのだろう。
だから晶が艶っとして見えるのだ。結婚する相手との有能金や結婚資金の世話になっているのだから、こっちもうまくいけばいい。
正直清子はあまりいい印象がないが、晶が気に入っているなら仕方がないだろう。弟としては、一番晶が苦労して見えるのだ。だから幸せを願わないわけはない。
晶と了は年の差があまりない。二十五の晶と了は二十三くらいだと思う。晶と茂が半分しか血が繋がっていないのと同じく、晶と了も半分しか血は繋がっていない。だからだろう。茂と了はよく似ている。
あの男の為に晶は危ない橋を渡ってまで金を無心していたのだ。
してもらって当然だと思っているのだろうか。だとしたら大きな勘違いをしている。
そのときポケットに入れていた携帯電話が鳴る。清子はそれを手にすると、相手は我孫子だった。
「もしもし……。」
我孫子はこの会社に沢木が来ること走っていた。そして清子とぶつかるだろうなと言うことはだいたい予想をつけていたらしい。
「あんな「男」を全面に出したような男は、お前嫌いだもんな。」
「「男」を全面に出すのを悪いと思ったことはありませんよ。でも……いい歳してあんなにちゃらちゃらしてるのはどうも……。」
「いい歳って言っても、あいつまだ三十五だぞ。」
史と同じ歳なのか。それにしては全く落ち着きがない。
「半年だろ?それから在宅勤務に移すって言ってたし、半年くらい辛抱すればいいだろ?」
「まぁ……我慢しますよ。仕事ですから。」
「やっとお前らしさがでたな。」
「え?」
灰を落として、清子は意外そうに我孫子に聞いた。
「前だったら「関係ない」「関わらない」ってずっと言ってたのに、最近さ、お節介ばっかしてんじゃねぇか。」
「……そう見えますか?」
「見えるね。何だよ。この前のヤクザと関わった社員の尻拭いのための弁護士って。」
「それは……。」
晶のためだった。だが晶が必死に稼いで、弟のためと言っていた弟はあんな人物だったのだ。紹介しなければよかったと、今は後悔していた。
「いいか?お前はヤクザなんかと関わるなよ。弁護士だって無償でやってんじゃねぇからな。」
「わかりました。」
「変なサイトには関わらないことだ。」
電話を切ると、清子はため息をついた。そして煙草を消すと、喫煙所を出てきた。するとエレベーターから晶が上がってくる。
「清子。」
「……。」
「なにいきなり疲れてんだよ。」
「了君が来てるから。」
「了?うちの?へ?何であいつ来てんの?」
晶は知らなかったのか。清子は少しため息をついて、「pink倶楽部」の編集部に了と優が来たことを言った。
「へぇ。あいつエンジニアとか言ってたんだけど、お前と同じような仕事か。」
「大学がそういう関係だってんでしょうね。」
一番苦手なタイプだ。学歴があって、清子のように学がなく事故努力した人を卑下してみることもある。
特に了はその典型的なタイプだろう。昔から性格は変わっていない。
「まぁ、お前、半年くらいしかいないんだろ?我慢しろよ。」
我孫子と同じようなことを言っているな。清子はそう思いながら、自販機に向かう。
「コーヒー?」
「えぇ。」
「俺にも買って。」
「何でですか。」
「けち。」
仕方ないな。そう思いながら、自販機のボタンを押して携帯電話をかざす。
「お、了。」
するとエレベーターから上がってきた男に、清子は顔をひきつらせた。
「……晶兄。」
「お前こっちの会社に来るんだって。言ってくれればいいのに。」
「俺は年明けから。沢木さんは今週から入るみたいだけど。」
ちらっと清子をみる。すると清子は選んだコーヒーを手にして、その様子を見ていた。
「清子さん。波風立たせないでくれって沢木さんから言われてる。だから、あんたとは衝突したくない。でも高校だって満足に行ってない人にでかい顔されたくないってのは本音。」
すると清子は了を見上げていった。
「そういう方って結構見てきました。いろんなところに派遣されましたからね。でも正直、そういう方に限って何も知らない。」
「俺が無能だっていいたいのか?」
了はムキになって清子に突っかかる。だが清子は冷静に言う。
「我孫子さんから講義を受けたことは?」
「あの人の講義取ってなかったからな。あの人の取ると単位が取れるものも取れなくなるっていう噂だったし。」
「だったら……滝口教授や江口教授は?」
「江口教授のは受けたことはあるけど……。」
どうしてそんな教授のことまで知っているのだろう。大学へ行っていないというのは嘘なのだろうか。そう思うくらい清子の知識が広かった。
「清子。今の全部大学の教授の名前?」
「そうですね。大学で外部講師をしながら研究所に所属している方です。私はそういう方の講習しか受けられなかったですが。江口教授の講義は、主にプログラムの中でのC言語に特化してます。ウィルス関係も強いですね。年明けに慎吾さんと講義へ行こうと話をしていますが……。」
ほとんどわからない言葉で、晶は首を傾げる。だが了はぐっと唇を噛んだ。こんな女性がどうしてそんなことまで知っているのだろうか。
「慎吾もそのなんちゃら言語ってのとか知ってるのか?」
「私よりも詳しいですよ。私が特化しているのは、ウェブ関係のトラブルとかそういった関係です。」
「あー確かにそうかも。いつか言ってたな。で、了。お前は何が詳しいんだ。」
晶は無神経に了に聞く。すると了はぐっと言葉に詰まった。
「まだ若いんですから、これからじゃないんですか。沢木さんは、ウィルス関係に特化していると我孫子さんから聞きました。」
「ふーん。だったら、清子がいるうちに聞いておいた方がいいかもな。半年後にはいなくなるんだろ?お前。」
「そうですけど……私なんかに教わることはありませんよ。大学をでていらっしゃるのですから。」
いなくなる?どう言うことだろう。清子はいなくなるのだろうか。
「清子さん、いなくなるんですか?」
「半年後には在宅勤務です。それでいいと言っていたので。」
「家って……。」
実家に帰るのだろうか。実家というと、あの大きいが幽霊屋敷みたいな家だろうか。
「だからあまり私には関わることはないのでしょうね。そちらはそちらで頑張ってください。」
その言葉にさらに了のいらつきが高まってくる。
「で、お前、何しにきたの?この階に。」
「あぁ。そうだった。飲み会の件ですけど、今日がやっぱいいみたいです。ほかの人たちも残った雑務があるし、沢木さんもどれくらい出来るのか知りたいし、後どんな人間なのか知るための飲み会だから。」
「……わかりました。出席にしておいてください。」
面倒だな。そう思いながら、清子は晶の方をちらっとみる。晶は関心がなくなったのか、自販機の方を見ている。
「コーヒーいるんですか?」
「マジでおごってくれるのか?」
「仕方ないでしょ?どれですか?」
「じゃあ、これでいいわ。」
晶はボタンを押すと、清子はアプリを起動させて携帯電話をかざす。
「お前、相変わらずブラックなんだな。あまりコーヒーばっか飲むと貧血になるぞ。」
「え?そうなんですか?」
「鉄分を吸収しない事もあるらしいし。お茶の方がいいらしいけどな。」
「今度から水にしよう。」
「だな。男は貧血の心配ってあまりねぇけどな。」
その様子を了は見ながら、さっき史を見たとき清子は史を頼っているように見えたが、晶とは対等に見える。やはりこの二人が付き合っているのだろう。
だから晶が艶っとして見えるのだ。結婚する相手との有能金や結婚資金の世話になっているのだから、こっちもうまくいけばいい。
正直清子はあまりいい印象がないが、晶が気に入っているなら仕方がないだろう。弟としては、一番晶が苦労して見えるのだ。だから幸せを願わないわけはない。
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